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褐色細胞腫

執筆者:

Ashley B. Grossman

, MD, University of Oxford; Fellow, Green-Templeton College

最終査読/改訂年月 2019年 7月

褐色細胞腫は,典型的には副腎に局在する,クロム親和性細胞から成るカテコールアミン産生腫瘍である。持続性または発作性の高血圧を引き起こす。診断は,血中または尿中のカテコールアミン産物の測定による。画像検査,特にCTまたはMRIは腫瘍の局在同定に役立つ。治療は,可能であれば腫瘍の切除による。血圧調節のための薬物療法にはα遮断薬が使用され,通常はβ遮断薬と併用される。

副腎機能の概要も参照のこと。)

分泌されるカテコールアミンには, ノルアドレナリン アドレナリン ドパミン,およびドーパが様々な比率で含まれている。褐色細胞腫の約90%は副腎髄質に認められるが,神経堤細胞に由来する他の組織に生じる場合もある。考えられる部位としては以下のものがある:

  • 交感神経鎖の傍神経節

  • 後腹膜腔の傍大動脈部

  • 頸動脈小体

  • Zuckerkandl器官(大動脈分岐部)

  • 泌尿生殖器系

  • 心嚢

  • 類皮嚢胞

副腎髄質の褐色細胞腫は男女で同等に発生し,両側性が10%(小児では20%),悪性が10%未満である。副腎外腫瘍では,30%が悪性である。褐色細胞腫はいずれの年齢でも発生しうるが,発生頻度のピークは20代から40代である。50%近くが生殖細胞系列変異によるものと考えられている。

褐色細胞腫の大きさは様々であるが,平均で直径5~6cmである。重さは50~200gであるが,数キログラムの腫瘍も報告されている。まれに,腫瘍が触知できるほど,または圧迫や閉塞による症状が生じるほど増大することがある。組織学的所見にかかわらず,被膜侵襲がみられず転移がなければ腫瘍は良性とみなされるが,例外もある。一般に,大きい腫瘍ほど悪性である可能性が高い。

褐色細胞腫は家族性多発性内分泌腫瘍症(MEN)2A型または2B型の部分症である場合があり,その場合は他の内分泌腫瘍(副甲状腺癌または甲状腺髄様癌)が併存するか,後に発生する。褐色細胞腫は,神経線維腫症患者の1%に発生し,フォン・ヒッペル-リンドウ病でみられるように血管芽腫および腎細胞癌が随伴することもある。家族性の褐色細胞腫および頸動脈小体腫瘍は,コハク酸脱水素酵素またはその他のシグナル伝達分子をコードする遺伝子の変異に起因する場合がある。

症状と徴候

著明な高血圧がみられ,患者の45%で発作性である。高血圧患者の約1/1000で褐色細胞腫が認められる。一般的な症状および徴候は以下のものである:

  • 頻脈

  • 発汗

  • 起立性低血圧

  • 頻呼吸

  • 冷たく湿った皮膚

  • 重度の頭痛

  • 狭心症

  • 動悸

  • 悪心および嘔吐

  • 心窩部痛

  • 視覚障害

  • 呼吸困難

  • 錯感覚

  • 便秘

  • 死の切迫感

発作を誘発する因子は,腫瘍の触診,体位変換,腹部の圧迫またはマッサージ,麻酔導入,心的外傷,拮抗のないβ遮断作用(β作用を介した血管拡張を阻害することによって逆説的に血圧を上昇させる),排尿(腫瘍が膀胱にある場合)などである。高齢患者では,持続性高血圧を伴う重度の体重減少が褐色細胞腫を示唆する。

発作時に診察が行われない限り,身体診察は高血圧を除き通常は正常である。網膜症や心拡大は高血圧の程度から予期されるほどは重度ではないことが多いが,特異的なカテコールアミン心筋症が生じる場合がある。

診断

  • 血漿遊離メタネフリンまたは尿中メタネフリン

  • カテコールアミンのスクリーニングが陽性の場合,胸部および腹部画像検査(CTまたはMRI)

  • 場合により,I-123 MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)による核医学検査または68Ga-DOTATATEによるPET

典型的な症状を呈するか,または特に突発性,重度,もしくは間欠的で説明不能な高血圧を来す患者で褐色細胞腫を疑う。診断には,血中および尿中のカテコールアミン産物高値の証明が必要である。

血液検査

血漿遊離メタネフリンは最大で99%の感度を示す。 アドレナリン ノルアドレナリンの間欠的な分泌とは異なり,血漿メタネフリンは持続的に上昇しているため,この検査は循環血液中の アドレナリンおよび ノルアドレナリンを測定するよりも感度が高い。血漿 ノルアドレナリンの著明な上昇は,診断の確実性を高める。

尿検査

尿中メタネフリンは血漿遊離メタネフリンよりも若干特異度が低いが,感度は約95%である。患者が高血圧の状態で2,3回結果が正常であれば,褐色細胞腫の可能性は極めて低くなる。尿中 ノルアドレナリンの測定と尿中 アドレナリンの測定は,ほぼ同等の精度がある。 アドレナリンおよび ノルアドレナリンの主な尿中代謝物は,メタネフリン,バニリルマンデル酸(VMA),およびホモバニリン酸(HVA)である。健常者におけるこれらの排泄量はごく少量である。24時間での正常値は以下の通りである:

  • 遊離 アドレナリンおよび ノルアドレナリン< 100μg(< 582nmol)

  • 総メタネフリン < 1.3mg(< 7.1μmol)

  • VMA < 10mg(< 50µmol)

  • HVA < 15mg(< 82.4µmol)

褐色細胞腫では, アドレナリン ノルアドレナリン,およびそれらの代謝物の尿中排泄量の増加は間欠的である。これらの物質の排泄亢進は以下の状態でも起こりうる:

  • その他の疾患(例,神経芽腫,昏睡,脱水,睡眠時無呼吸)

  • 極度のストレス

  • ラウオルフィアアルカロイド,メチルドパ,カテコールアミンによる治療を受けている

  • 大量のバニラを含む食品の摂取

その他の検査

血液量が減少し,ヘモグロビン値とヘマトクリット値が偽性高値を示すことがある。高血糖,糖尿,または顕性糖尿病を呈することがあり,空腹時の血漿遊離脂肪酸およびグリセロールの上昇を伴う。血漿 インスリンは血漿血糖値にそぐわない低値を示す。褐色細胞腫の切除後に低血糖が起こることがあり,特に経口血糖降下薬による治療を受けている患者で多い。

ヒスタミンまたはチラミンを用いた誘発試験は危険であり,行うべきではない。血圧が正常な褐色細胞腫患者にグルカゴン0.5~1mgを急速静注すると,2分以内に35/25mmHgを上回る血圧上昇が誘発されるが,現在では基本的に不要である。高血圧クリーゼの治療のためにメシル酸フェントラミンを使用できる状態にしておく必要がある。

パール&ピットフォール

  • ヒスタミンまたはチラミンを用いた誘発試験は危険であり,行うべきではない。

誘発試験よりもスクリーニング検査が望ましい。一般的なアプローチは,スクリーニング検査として血漿または尿中メタネフリンを測定し,誘発試験を避けることである。血漿カテコールアミン値が上昇している患者ではクロニジン経口投与またはペントリニウム静注による抑制試験が使用できるが,必要となることはまれである。

腫瘍の局在を明らかにするための画像検査は通常スクリーニングの結果が異常であった患者に対して実施する。検査では,胸部および腹部のCTおよびMRIを施行する(単純および造影)。等張性造影剤を使用する場合は,アドレナリン受容体の遮断は不要である。FDG(フルオロデオキシグルコース)-PETも用いられて成果を収めており,特にコハク酸脱水素酵素の遺伝子変異を有する患者で役立つが,68Ga-DOTATATEを用いるPETの方が有用であることがわかってきている。

大静脈にカテーテルを挿入する検査では,副腎静脈を含む複数の部位で血漿カテコールアミンを繰り返し測定することが,腫瘍の局在を知る上で役立つことがある:腫瘍を灌流する静脈では ノルアドレナリン値が上昇する。副腎静脈血の ノルアドレナリン/ アドレナリン比は,小さな副腎腫瘍の検索に役立つことがあるが,現在ではその測定が必要になることはまれである。

放射性医薬品を用いた核医学検査も褐色細胞腫の局在診断に役立つ可能性がある。核医学検査は急速に進歩しており,I-123 MIBGは68Ga-DOTATATEによるPETに取って代わられようとしている。

関連する遺伝性疾患の徴候(例,神経線維腫症のカフェオレ斑)を検索すべきである。患者には,血清 カルシトニン測定および臨床所見から必要と考えられるその他の検査を用いてMENのスクリーニングを行うべきである。多くの医療機関では,褐色細胞腫が交感神経系の傍神経節を侵している場合には特に,遺伝子検査をルーチンに実施している。

治療

  • α遮断薬とβ遮断薬の併用による高血圧のコントロール

  • 周術期の慎重な血圧及び循環血液量のコントロール下での腫瘍の外科的切除

外科手術による切除が第1選択の治療法である。α遮断薬とβ遮断薬の併用(通常はフェノキシベンザミン[phenoxybenzamine]20~40mg,経口,1日3回とプロプラノロール20~40mg,経口,1日3回)によって高血圧がコントロールされるまでは一般に手術を遅らせる。血圧は <130/80mmHg未満を目指すべきである;目標には特定の姿勢での血圧低下を含めるべきという意見もあるが,必須ではない。心血管系が再度安定を取り戻すには約10~14日かかり,その後は遮断薬が効果的であると想定できる。α遮断が十分に達成されるまではβ遮断薬を使用すべきではない。ドキサゾシンなど一部のα遮断薬は同様に効果的であるが,忍容性がより高い。術前または術中の高血圧クリーゼに対し,ニトロプルシドを点滴する場合がある。

パール&ピットフォール

  • β遮断薬の前に,まずα遮断薬を投与する。β2遮断作用が拮抗されない状態では,β作用を介した血管拡張が阻害され,逆説的に血圧が上昇する。

両側性腫瘍が証明されているまたは疑われる場合には(MEN患者などでみられる),十分量のヒドロコルチゾン(100mg,1日2回静注)を術前および術中に投与することによって両側の副腎摘出による急性グルココルチコイド欠乏を回避する。

大半の褐色細胞腫は腹腔鏡下で切除可能である。血圧を動脈内カテーテルを介して持続的にモニタリングしなければならず,また,循環血液量の状態も注意深くモニタリングする。麻酔は不整脈源性ではない薬物(例,チオバルビツール酸系薬剤)で導入し,吸入薬(例,エンフルラン,イソフルラン)で維持する。手術中は,高血圧発作をフェントラミン1~5mgの静注またはニトロプルシド点滴(2~4μg/kg/分)でコントロールし,頻拍性不整脈はプロプラノロール0.5~2mg静注でコントロールすべきである。筋弛緩が必要な場合はヒスタミンを放出しない薬物が望ましい。アトロピンを術前に使用するべきではない。

失血に備えて,腫瘍切除に先立ち術前輸血(1~2単位)を行う場合がある。術前に良好な血圧コントロールが得られた場合には,血液量を増加させるために高塩分食が推奨される。低血圧が生じた場合は,ブドウ糖液にノルアドレナリン4~12mg/Lを溶解した点滴を検討することがある。 ノルアドレナリンにほとんど反応しない一部の低血圧患者では,ヒドロコルチゾン100mgの静注が有効な場合があるが,通常は十分な補液のみで事足りる。

転移性の悪性褐色細胞腫はα遮断薬およびβ遮断薬で治療すべきである。腫瘍の増大が緩徐で,長期生存が得られる場合もある。しかし,腫瘍の成長が急速な場合でも血圧のコントロールは可能である。残存病変を有する患者では,1-131 MIBGが症状の緩和に役立つ可能性がある。チロシン水酸化酵素阻害薬であるメチロシン(metyrosine)は,血圧コントロールが難しい患者において,カテコールアミン産生を抑制する目的で使用されることがある。放射線療法により骨痛が軽減する可能性がある。化学療法が効果的であることはまれであるが,最も一般的に試みられるレジメンは,シクロホスファミド,ビンクリスチン,およびダカルバジンの併用である。最近のデータでは,化学療法薬剤であるテモゾロミドとスニチニブによる分子標的療法において有望な結果が示されている。

要点

  • 高血圧は,持続性の場合もあれば,間欠性の場合もある。

  • 診断には,血清中および尿中のカテコールアミン産物(典型的には血液中の血漿遊離メタネフリンまたは24時間尿中メタネフリン)高値の証明が必要である。

  • 腫瘍については,ときに放射性標識化合物を用いて,画像検査により局在を診断すべきである。

  • 腫瘍を切除するまでの間,α遮断薬とβ遮断薬を併用投与する。

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