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アジソン病

(原発性または慢性副腎皮質機能不全)

執筆者:

Ashley B. Grossman

, MD, University of Oxford; Fellow, Green-Templeton College

最終査読/改訂年月 2019年 7月
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アジソン病は潜行性で通常は進行性の副腎皮質の機能低下である。低血圧,色素沈着など種々の症状を引き起こし,心血管虚脱を伴う副腎クリーゼにつながる恐れがある。診断は臨床的に行われ,血漿副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)高値および血漿コルチゾール低値の所見によってなされる。治療は原因に応じて異なるが,一般にはヒドロコルチゾンや,ときに他のホルモンを用いる。

アジソン病は年間10万人当たり約4人に発生する。アジソン病はあらゆる年齢層に発生し,ほとんど性差がなく,代謝ストレス,感染症,または外傷の際に臨床的に顕在化する傾向がある。

副腎クリーゼ(重度の症状の発生)は急性感染(一般的な原因,特に敗血症)によって誘発される場合がある。その他の原因としては,外傷,外科手術,大量発汗によるナトリウム喪失などがある。治療を行っても,アジソン病は死亡率のわずかな上昇につながる可能性がある。この死亡率の上昇が,副腎クリーゼに対する不適切な治療や意図しない過量補充の長期合併症によるものかどうかは不明である。

病因

米国の症例の約70%は特発性の副腎皮質萎縮によるもので,おそらく自己免疫的な機序による。残りは,肉芽腫(例,結核 結核 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 結核 ヒストプラズマ症 ヒストプラズマ症 ヒストプラズマ症は,Histoplasma capsulatumにより引き起こされる肺および播種性感染症であり,しばしば慢性に経過し,無症状の初感染に続いて発症するのが通常である。症状は,肺炎症状または非特異的慢性疾患症状である。診断は,喀痰中もしくは組織中の菌の同定,または特異的な血清および尿抗原検査による。治療が必要な場合は,アムホテリシンBまたはアゾール系薬剤を使用する。... さらに読む ヒストプラズマ症 ),腫瘍,アミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは,異常凝集したタンパク質から成る不溶性線維の細胞外蓄積を特徴とする多様な疾患群である。これらのタンパク質は局所に蓄積してほとんど症状を引き起こさない場合もあるが,全身の複数の臓器に蓄積して,重度の多臓器不全をもたらすこともある。アミロイドーシスは原発性の場合と,種々の感染症,炎症,または悪性疾患に続発する場合とがある。診... さらに読む アミロイドーシス ,出血,または炎症性壊死などによる副腎の破壊に起因する。副腎皮質機能低下症は,コルチコステロイド合成を阻害する薬物(例,ケトコナゾール,麻酔薬エトミデート[etomidate])の投与が原因となる場合もある。

多腺性機能不全症候群 多腺性機能不全症候群 多腺性機能不全症候群(PDS)は,共通の原因による,数種の内分泌腺機能の連続的または同時的な低下を特徴とする。病因は自己免疫性であることが最も多い。機能不全の組合せにより,3つの病型のいずれかに分類される。診断には,ホルモン濃度と障害された内分泌腺に対する自己抗体の測定が必要である。治療法としては,欠損または欠乏しているホルモンの補充のほ... さらに読む では,アジソン病が糖尿病または甲状腺機能低下症と併存することがある。小児では,先天性副腎過形成症 先天性副腎過形成症の概要 先天性副腎過形成症は遺伝性疾患の一群で,いずれもコルチゾール,アルドステロンまたはその両方の合成が不十分であることを特徴とする。最もよくみられる型では,蓄積されたホルモン前駆体がアンドロゲン産生経路へ流入し,アンドロゲン過剰が生じる;まれな型ではアンドロゲン合成も不十分である。 様々な形態をとる先天性副腎過形成症においては,コレステロールから副腎ステロイドホルモンを合成する際に必要となる副腎酵素の1つに常染色体劣性遺伝性の欠損が生じるこ... さらに読む が原発性副腎機能不全の最も一般的な原因であるが,それ以外の遺伝性疾患が原因として認識されることが増えている。

病態生理

ミネラルコルチコイドとグルココルチコイドのいずれもが欠乏する。

ミネラルコルチコイド欠乏症

ミネラルコルチコイドはナトリウム再吸収およびカリウム排泄を促進するため,ミネラルコルチコイドの欠乏はナトリウム排泄の増加およびカリウム排泄の減少をもたらす;これは主に尿中への排泄であるが,汗,唾液,消化管への排泄も含まれる。血清ナトリウム濃度の低下(低ナトリウム血症 低ナトリウム血症 低ナトリウム血症とは,血清ナトリウム濃度が136mEq/L未満に低下することであり,溶質に対する水分の過剰が原因である。一般的な原因としては,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患,ADH不適合分泌症候群(SIADH)などがある。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧によって水分が脳細胞内に移動し,浮腫を引き起こすことが原因),頭痛,錯乱,および昏迷などがみられる;痙攣発作や昏睡が生じることがあ... さらに読む )およびカリウム濃度の上昇(高カリウム血症 高カリウム血症 高カリウム血症とは,血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ることであり,通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生する。通常,カリウム摂取の増加,腎臓からのカリウム排泄を障害する薬剤,および急性腎障害または慢性腎臓病など,いくつかの寄与因子が同時に存在する。高カリウム血症は,糖尿病性ケトアシドーシスや,代謝性アシドーシスでも生じる可能性がある。臨床症状は一般に神経筋症状であり,筋力低下および,重... さらに読む )が結果として生じる。

グルココルチコイド欠乏症

グルココルチコイドの欠乏は低血圧の一因であり,インスリン感受性の著明な亢進および炭水化物,脂肪,タンパク質の代謝障害をもたらす。コルチゾールが欠乏すると,タンパク質から十分な炭水化物が生成されなくなり,結果として低血糖と肝グリコーゲンの減少が生じる。続いて筋力低下が起こるが,これは一部には神経筋機能不全によるものである。感染,外傷,その他のストレスに対する抵抗力が低下する。心筋の衰弱および脱水により心拍出量が減少し循環不全が生じうる。

症状と徴候

アジソン病の初期にみられる症状および徴候は,筋力低下,疲労,起立性低血圧である。

色素沈着は,体の露出部,および程度は低いが非露出部にも生じるびまん性の黒色化を特徴とし,特に圧のかかる部位(骨隆起部),皮膚のしわ,瘢痕,伸側表面に認められる。黒色の雀卵斑は前頭部,顔面,頸部,および肩に一般的に認められる。乳輪および唇,口腔,直腸,腟などの粘膜に青黒色の変色がみられる。

食欲不振,悪心,嘔吐,下痢がしばしば生じる。代謝低下とともに耐寒性低下が認められることがある。めまいや失神が生じうる。

緩徐な発症および初期症状の非特異的な性質により,初期にしばしば神経症と誤診される。体重減少,脱水,低血圧はアジソン病の後期にみられる特徴である。

副腎クリーゼ

副腎クリーゼは以下を特徴とする:

  • 著明な無力症(筋力低下)

  • 腹部,腰部,または下肢の重度の疼痛

  • 末梢血管虚脱

  • 高窒素血症を伴う腎機能の停止

体温は低下する場合もあるが,高熱がみられることも多い(特に急性感染によってクリーゼが誘発された場合)。

副腎機能の喪失が部分的である(副腎皮質の予備能が限られている)患者は,かなりの割合で健康そうに見えるが,生理的なストレス下(例,外科手術,感染,熱傷,重症疾患)で副腎クリーゼが生じる。ショックおよび発熱が唯一の徴候である場合もある。

診断

  • 電解質

  • 血清コルチゾール

  • 血漿ACTH

  • ときに,ACTH刺激試験

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鑑別診断

色素沈着は,肺癌 肺癌 肺癌は世界におけるがん関連死因の第1位である。約85%の症例に喫煙の関連がみられる。症状としては,咳嗽,胸部不快感または胸痛,体重減少などのほか,頻度は低いものの喀血もありうるが,多くの患者では何の臨床症状もないまま転移を来す。診断は,典型的には胸部X線またはCTによって行い,生検によって確定する。治療には,病期に応じ手術,化学療法,放射線療法,またはこれらの組合せなどがある。過去数十年間,肺癌患者の予後は不良であり,診断時から5年を超... さらに読む 肺癌 ,重金属(例,鉄,銀)の摂取,慢性皮膚疾患,またはヘモクロマトーシス 鉄過剰症の概要 一般成人では,1日当たり約1mgの鉄(Fe)が表皮細胞および消化管細胞の剥離により喪失している;閉経前の女性では,さらに平均0.5~1mg/日の鉄が月経により失われる。この鉄の喪失は,米国の一般的食事に含まれる10~20mgの鉄の一部を吸収することによって均衡が保たれている。鉄の吸収は,体内の貯蔵鉄量により調節されており,通常は身体の必要... さらに読む によっても生じうる。ポイツ-イェガース症候群 ポイツ-イェガース症候群 ポイツ-イェガース症候群は,過誤腫性ポリープが胃,小腸,および結腸に多発する常染色体優性遺伝疾患であり,特徴的な色素性皮膚病変を伴う。 大半(66~94%)の症例はがん抑制遺伝子STK11/LKB1(セリン/トレオニンキナーゼ11)の生殖細胞系列変異が原因のようである。患者は消化管および消化管以外での発がんリスクが有意に高い。消化器癌としては,膵癌,胃癌,小腸癌,結腸癌などがある。消化器以外のがんとしては,乳癌,肺癌,子宮体がん,卵巣が... さらに読む ポイツ-イェガース症候群 は,頬粘膜および直腸粘膜の色素沈着を特徴とする。しばしば色素沈着に伴って白斑 白斑 白斑とは,皮膚メラノサイトの欠損によって皮膚に様々な大きさの脱色素斑が生じる病態である。原因は不明であるが,遺伝因子と自己免疫因子が関与している可能性が高い。診断は通常,皮膚の診察所見から明らかとなる。一般的な治療法としては,コルチコステロイドの外用(しばしばカルシポトリオールとの併用),カルシニューリン阻害薬(タクロリムスおよびピメクロリムス),ナローバンドUVB(紫外線B波)療法またはソラレンとUVAの併用療法などがある。多くの疾患... さらに読む 白斑 が生じ,アジソン病が示唆される場合もあるが,この組合せは他の疾患でも生じうる。

アジソン病に起因する筋力低下は安静によって軽減し,活動後よりも午前中にしばしば悪化する精神神経疾患による筋力低下とは異なる。筋力低下の原因となる大半のミオパチーは,その分布,異常な色素沈着の欠如,および特徴的な臨床検査所見によって鑑別できる。

アジソン病による血清ナトリウム低値 低ナトリウム血症 低ナトリウム血症とは,血清ナトリウム濃度が136mEq/L未満に低下することであり,溶質に対する水分の過剰が原因である。一般的な原因としては,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患,ADH不適合分泌症候群(SIADH)などがある。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧によって水分が脳細胞内に移動し,浮腫を引き起こすことが原因),頭痛,錯乱,および昏迷などがみられる;痙攣発作や昏睡が生じることがあ... さらに読む は,心疾患または肝疾患を伴う浮腫患者(特に利尿薬を使用している患者),抗利尿ホルモン不適合分泌症候群 ADH不適合分泌症候群 低ナトリウム血症とは,血清ナトリウム濃度が136mEq/L未満に低下することであり,溶質に対する水分の過剰が原因である。一般的な原因としては,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患,ADH不適合分泌症候群(SIADH)などがある。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧によって水分が脳細胞内に移動し,浮腫を引き起こすことが原因),頭痛,錯乱,および昏迷などがみられる;痙攣発作や昏睡が生じることがあ... さらに読む (SIADH)の希釈性低ナトリウム血症,および塩類喪失性腎炎によるものと鑑別しなければならない。アジソン病患者とは異なり,これらの患者が色素沈着,高カリウム血症,およびBUNの上昇を示す可能性は低い。

検査

朝の血清コルチゾールおよび血漿ACTHの測定をはじめとする臨床検査によって副腎機能不全が確定される(アジソン病の診断確定のための血清検査 アジソン病の診断確定のための血清検査 アジソン病は潜行性で通常は進行性の副腎皮質の機能低下である。低血圧,色素沈着など種々の症状を引き起こし,心血管虚脱を伴う副腎クリーゼにつながる恐れがある。診断は臨床的に行われ,血漿副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)高値および血漿コルチゾール低値の所見によってなされる。治療は原因に応じて異なるが,一般にはヒドロコルチゾンや,ときに他のホルモンを用いる。 (副腎機能の概要も参照のこと。)... さらに読む アジソン病の診断確定のための血清検査 の表を参照)。ACTH高値( 50pg/mL[≥ 11pmol/L])とそれに伴うコルチゾール低値(< 5μg/dL[< 138nmol/L])が診断に有用であり,特に重度のストレスを受けた患者やショック状態にある患者でこの所見がみられる場合は,本疾患の可能性が高い。ACTH低値(< 5pg/mL [< 1.1pmol/L])とコルチゾール低値は,二次性副腎機能不全 二次性副腎機能不全 二次性副腎機能不全は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)欠乏による副腎機能低下である。症状はアジソン病と同じで,疲労,筋力低下,体重減少,悪心,嘔吐,および下痢などがあるが,通常,循環血液量減少の程度は比較的小さい。診断は臨床的に行い,血漿コルチゾール低値を伴う血漿ACTH低値などの臨床検査所見による。治療は原因に応じて異なるが,一般にはヒドロコルチゾンを用いる。 (副腎機能の概要も参照のこと。)... さらに読む を示唆する。コルチゾールが極めて低値の場合,ACTHの値が正常範囲内にあるのは不適切であるということに留意すべきである。

ACTH値およびコルチゾール値が正常範囲の境界上にあり,副腎機能不全が臨床的に疑われる場合で,特に大手術が行われようとしている患者では,誘発試験を実施しなければならない。時間が不足している場合(例,緊急手術)には,患者にヒドロコルチゾンの経験的投与を行い(例,100mgを静注または筋注),続いて誘発試験を実施する。

誘発試験

アジソン病は,外因性ACTHによる血清コルチゾール値の上昇が生じないことを証明することで診断される。二次性副腎機能不全は持続的(prolonged)ACTH刺激試験,グルカゴン刺激試験,またはインスリン負荷試験によって診断される。グルカゴン刺激試験において,二次性副腎機能不全患者ではグルカゴンに反応した血漿ACTHおよびコルチゾールの上昇はみられない。重度の副腎機能不全が疑われる患者には,インスリン負荷試験は推奨されない。

ACTH刺激試験は,テトラコサクチド(合成ACTH)250μgを静注または筋注し,その後血清コルチゾールを測定することにより行う。二次性副腎機能不全 二次性副腎機能不全 二次性副腎機能不全は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)欠乏による副腎機能低下である。症状はアジソン病と同じで,疲労,筋力低下,体重減少,悪心,嘔吐,および下痢などがあるが,通常,循環血液量減少の程度は比較的小さい。診断は臨床的に行い,血漿コルチゾール低値を伴う血漿ACTH低値などの臨床検査所見による。治療は原因に応じて異なるが,一般にはヒドロコルチゾンを用いる。 (副腎機能の概要も参照のこと。)... さらに読む が疑われる患者は,高用量ACTHには正常に反応する可能性があるため,標準量250μgの代わりに1μgを静注する低用量ACTH刺激試験を行うべきと考える専門家もいる。グルココルチコイドの補充を受けている患者またはスピロノラクトンを使用している患者では,これらの薬物を試験当日に使用すべきではない。

注射前の血清コルチゾール値の正常範囲は,採用する測定法にいくぶん依存して変動するが,典型的には5~25μg/dL(138~690nmol/L)で,30~90分後に前値の2倍となり,最低でも20μg/dL(552nmol/L)に達する。アジソン病患者では,注射前は低値または正常低値を示し,30分後のピークが15~18μg/dL (414~497nmol/L) を超えることはない。しかしながら,正確な正常値は採用するコルチゾールの測定法によって異なるため,検査室毎に正常範囲を検証しておくべきである。

パール&ピットフォール

  • インスリンを用いた誘発試験は危険であり,行うべきではない。

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二次性副腎機能不全では,テトラコサクチドに対して正常な反応がみられる場合がある。しかし,下垂体不全により副腎萎縮(結果としてACTHに対する反応不全)が起こる可能性があるため,下垂体疾患が疑われる患者にはACTH刺激試験前の3日間,長時間作用型ACTHの1mg,1日1回筋注を前もって行う必要が生じうる。

持続的ACTH刺激試験(検体を24時間採取)が二次性(または三次性,すなわち視床下部性)の副腎機能不全の診断に用いられることがある。テトラコサクチド1mgを筋注しコルチゾールを24時間(典型的には,1,6,12,および24時間後)測定する。最初の1時間の結果は,迅速試験(採血を1時間後に中止する)と持続試験とで同様であるが,アジソン病では60分以降にさらなる上昇はみられない。二次性および三次性の副腎機能不全では,コルチゾール値は24時間以上上昇し続ける。副腎萎縮が遷延している例でのみ副腎の前処置(長時間作用型ACTHを使用)が必要となる。正常な反応が得られればさらなる検査は不要であるため,単純な迅速試験が通常は初めに行われる。

副腎クリーゼが疑われる場合,ACTH刺激試験によるアジソン病の確定を患者が回復するまで延期する。ACTH刺激試験を実施した場合は,ACTH高値とコルチゾール低値で診断が確定される。

病因の検査

欧米では,他の原因を示す所見が存在しなければ,原因は通常自己免疫にあるとみなされる。副腎の自己抗体が評価できる。

結核を調べるため胸部X線を実施すべきである;疑いがある場合は,副腎のCTが役に立つ。副腎は,自己免疫疾患患者では萎縮するが,結核またはその他の肉芽腫の患者では肥大し(初期),しばしば石灰化を伴う。両側性の副腎過形成症は,特に小児および若年成人では,酵素の遺伝性欠損を示唆する。

治療

  • ヒドロコルチゾンまたはプレドニゾン

  • フルドロコルチゾン

  • 疾患併発時の用量増量

正常では,コルチゾール分泌は早朝に最大となり夜は最小となる。そのため,ヒドロコルチゾン(コルチゾールと同じ)は典型的な1日総用量である15~30mgを2回または3回に分割して投与する。1つの投与法として,総用量の半量を午前中に投与し,残りの半量を昼食時と夕方で分割して投与する(例,10mg,5mg,5mg)方法がある。また,3分の2を午前中に投与し,3分の1を夕方に投与することもある。不眠症をもたらすことがあるため,就寝直前の投与は一般に避けるべきである。あるいは,プレドニゾンを午前中に5mg経口投与し,場合により午後にも追加で2.5mg経口投与してもよい。さらに,アルドステロンの補充にはフルドロコルチゾン0.1~0.2mg,経口,1日1回の投与が推奨される。フルドロコルチゾンの用量調整の最も簡単な方法は,確実にレニンが正常範囲内に入り,血圧および血清カリウム値が正常となるようにすることである。

正常な水分補給状態,および起立性低血圧がみられないことが,十分な補充療法が行われている証拠である。一部の患者ではフルドロコルチゾンが高血圧を引き起こすが,これは用量を減らすか利尿作用のない降圧薬を開始して治療する。降圧薬の使用回避のため,フルドロコルチゾンの投与量が過少となる傾向が一部の医師でみられる。

併発疾患(例,感染症)は重篤である可能性があり,精力的に治療すべきである;罹患中はヒドロコルチゾンの用量を倍増すべきである。悪心および嘔吐のために内服が困難な場合は,注射剤による治療が必要となる。患者には,補充用のプレドニゾンまたはヒドロコルチゾンをいつ服用するかを指示し,緊急時にはヒドロコルチゾンの自己注射を行うよう指導すべきである。ヒドロコルチゾン100mgをあらかじめ充填した注射器を患者が使用できるようにすべきである。診断およびコルチコステロイドの用量を記入した腕輪または携帯用カードは,副腎クリーゼで患者が意思の疎通ができなくなった場合に役立つ。

極めて暑い気候で生じるような重度の塩類喪失がみられる場合,フルドロコルチゾンの用量を増やす必要が生じうる。

糖尿病とアジソン病が併存する場合は,ヒドロコルチゾンの用量は30mg/日を超えるべきではない;これを超えるとインスリンの必要量が増す。

副腎クリーゼの治療

副腎クリーゼが疑われる場合には,早急に治療を開始すべきである。(注意:副腎クリーゼでは,コルチコステロイド療法の開始が遅れると,特に低血糖および低血圧がある場合には致死的となる可能性がある。)。急性の場合には,ACTH刺激試験による確定は患者が回復するまで延期すべきである。

ヒドロコルチゾン100mgを30秒かけて静注し,最初の24時間は6~8時間毎に再投与する。5%ブドウ糖・生理食塩水1Lを1~2時間かけて投与し,速やかに血管内容量を増量する。低血圧,脱水,低ナトリウム血症が是正されるまで,さらに生理食塩水を点滴静注する。補液中に血清カリウム値が低下し,補充が必要となる場合がある。高用量ヒドロコルチゾンを投与する場合,ミネラルコルチコイドは不要である。それほど急性ではない場合は,ヒドロコルチゾン50または100mgを6時間毎に筋注する。初回のヒドロコルチゾン投与から1時間以内に,血圧の回復および全身状態の改善が生じるべきである。ヒドロコルチゾンの効果が得られるまで強心薬が必要となることがある。

患者に著明な改善が認められた場合は,総量で150mgのヒドロコルチゾンを通常は次の24時間で投与し,3日目には75mgを投与する。前述の通り,その後は維持量のヒドロコルチゾン(15~30mg)およびフルドロコルチゾン(0.1mg)を毎日経口投与する。回復は,基礎にある原因(例,感染,外傷,代謝ストレス)の治療と十分なヒドロコルチゾン療法に依存する。

副腎機能が部分的に残存している患者が,ストレス下で副腎クリーゼを発症した場合も同様のヒドロコルチゾン治療を行うが,補液の必要量ははるかに少ない可能性がある。

パール&ピットフォール

  • 副腎クリーゼが疑われる場合は,ヒドロコルチゾン療法を直ちに開始する;検査などで遅れた場合,致死的となりうる。

合併症の治療

ときに水分補給の過程で40.6℃を超える発熱がみられる。血圧の低下がみられる場合を除き,解熱薬(例,アスピリン650mg)を経口で慎重に投与することもある。コルチコステロイド療法の合併症として精神病的反応が生じる場合がある。精神病的反応が生じた場合は,ヒドロコルチゾンの用量を血圧および良好な心血管機能を維持できる最小量まで減量できる。抗精神病薬が一時的に必要となることがあるが,長期にわたり使用すべきではない。

要点

  • アジソン病は,原発性の副腎機能不全である。

  • 筋力低下,疲労,および色素沈着(全身性の黒化または皮膚および粘膜における限局性の黒い斑点)が典型的にみられる。

  • 血清ナトリウム低値,血清カリウム高値,およびBUN(血中尿素窒素)高値がみられる。

  • 通常,血漿ACTHが高値であり,血清コルチゾールが低値である。

  • 補充量のヒドロコルチゾンおよびフルドロコルチゾンを投与するが,別の疾患の併発時は増量すべきである。

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