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急性ポルフィリン症

執筆者:

Herbert L. Bonkovsky

, MD, Wake Forest University School of Medicine;


Sean R. Rudnick

, MD, Wake Forest University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2019年 6月
本ページのリソース

急性ポルフィリン症は,ヘム生合成経路の特定の酵素の欠損に起因する疾患であり,結果としてヘム前駆体が蓄積し,腹痛および神経症状の間欠的発作が引き起こされる。発作は特定の薬剤やその他の因子によって誘発される。診断は,発作時に尿中に認められるポルフィリン前駆体のδ-アミノレブリン酸およびポルフォビリノーゲンが高値であることに基づく。発作の治療にはブドウ糖を用いるか,またはより重度の場合はヘムの静注を行う。鎮痛を含む対症療法を必要に応じて行う。

ポルフィリン症の概要も参照のこと。)

急性ポルフィリン症としては以下のものがある(有病率の高い順):

  • 急性間欠性ポルフィリン症(AIP)

  • 異型ポルフィリン症(VP)

  • 遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)

  • δ-アミノレブリン酸脱水酵素(ALAD)欠損性ポルフィリン症(極めてまれ)

異型ポルフィリン症および遺伝性コプロポルフィリン症の患者では,神経内臓症状を認めるか否かにかかわらず,水疱性の発疹が生じることがあり,特に,手,前腕,顔面,頸部,またはその他の露光部皮膚によくみられる。

ヘテロ接合体では,急性ポルフィリン症が思春期前に臨床的に発現することはまれである;思春期後は約2~4%の症例でのみ発現する。ホモ接合体および複合ヘテロ接合体では,通常小児期に発症し,症状はしばしば重度である。

誘発因子

多数の誘発因子が存在し,典型的には欠陥酵素の触媒能以上にヘム生合成を促進する。結果として,ポルフィリン前駆体であるポルフォビリノーゲン(PBG)およびδ-アミノレブリン酸(ALA)の蓄積,またはALAD欠損性ポルフィリン症の場合はALAのみの蓄積が生じる。

発作はおそらく,ときに同定不能ないくつかの因子に起因する。同定されている誘発因子としては以下のものがある:

  • 女性のホルモン変化

  • 薬物

  • 低カロリー低炭水化物食

  • アルコール

  • 有機溶剤への曝露

  • 感染症その他の疾患

  • 手術

  • 精神的ストレス

ホルモン因子が重要である。女性は,特にホルモンが変化する時期には男性よりも発作を起こしやすい(例,月経周期の黄体期,経口避妊薬の使用中,妊娠初期の数週間,出産直後)。それにもかかわらず,妊娠は禁忌ではない。

その他の因子には,薬物(バルビツール酸系,ヒダントイン,他の抗てんかん薬,およびスルホンアミド系抗菌薬ー薬物とポルフィリン症の表を参照)および生殖ホルモン(プロゲステロンおよび関連ステロイド),特に肝ALA合成酵素やチトクロムP450酵素を誘導するものがある。発作は誘発因子となる薬物への曝露後,通常24時間以内に生じる。

異型ポルフィリン症および遺伝性コプロポルフィリン症では日光曝露により皮膚症状が誘発される。

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薬物とポルフィリン症*

分類/治療する疾患

安全ではない

安全

おそらく安全

鎮痛薬

デクストロプロポキシフェン(dextropropoxyphene)†

ジクロフェナク

メプロバメート

プロポキシフェン†

トラマドール

アスピリン

ブプレノルフィン

カフェイン

コデイン

モルヒネ

プロポフォール

アトロピン

デキシブプロフェン(dexibuprofen)†

フェンタニル

ヒドロモルフォン

ケトベミドン(ketobemidone)†

ケトプロフェン

ナプロキセン

麻酔薬(局所)

リドカイン

ブピバカイン

アルチカイン

麻酔薬(前投薬,導入,または維持)

バルビツール酸系薬剤

アトロピン

モルヒネ

プロポフォール

アルフェンタニル(alfentanil)

デスフルラン

ドロペリドール

フェンタニル

イソフルラン

レミフェンタニル

スコポラミン

スフェンタニル

抗うつ薬

リチウム

フルオキセチン

止瀉薬

活性炭

ロペラミド

制吐薬

クロルプロマジン

グラニセトロン

オンダンセトロン

スコポラミン

トロピセトロン†

血糖降下薬

スルホニル尿素

アカルボース

インスリン

メトホルミン

抗感染症薬

クロラムフェニコール

クリンダマイシン

エリスロマイシン

インジナビル

ケトコナゾール

メシリナム†

ニトロフラントイン

ピバンピシリン(pivampicillin)†

ピブメシリナム†

リファンピシン

リトナビル

スルホンアミド系

トリメトプリム

アシクロビル

アミカシン

アモキシシリン

アモキシシリン + β-ラクタマーゼ阻害薬

アンピシリン

クロキサシリン†

ジクロキサシリン

フシジン酸†

ガンシクロビル

ゲンタマイシン

免疫グロブリン

免疫血清

ヒプル酸メテナミン

ネチルマイシン†

オセルタミビル

ベンジルペニシリン

ペニシリンV

ピペラシリン

テイコプラニン†

トブラマイシン

ワクチン

バラシクロビル

バンコマイシン

ザナミビル

アムホテリシンB

アジスロマイシン

バカンピシリン†

セファロスポリン系

シプロフロキサシン

ジダノシン

エタンブトール

エルタペネム(ertapenem

ファムシクロビル

フルシトシン

ホスカルネット

ホスホマイシン

イミペネム/シラスタチン

レボフロキサシン

メロペネム

モキシフロキサシン

ノルフロキサシン†

オフロキサシン

ピペラシリン + タゾバクタム

リバビリン

抗炎症薬または抗リウマチ薬

ヒアルロン酸

ペニシラミン

サリチル酸塩

アバカビル

デキシブプロフェン(dexibuprofen)†

イブプロフェン

ケトプロフェン

ラミブジン

ロルノキシカム†

ナプロキセン

ピロキシカム

フマル酸テノホビル ジソプロキシル

テノキシカム†

ザルシタビン†

抗けいれん薬

バルビツール酸系薬剤

カルバマゼピン

ジオン系(パラメタジオン[paramethadione]†,トリメタジオン)

フェルバメート(felbamate

ラモトリギン

メフェニトイン(mephenytoin)

フェニトイン

プリミドン

スクシンイミド系(エトスクシミド,メトスクシミド[methsuximide])

バルプロ酸

クロナゼパム

ジアゼパム(活動性の発作)

ガバペンチン

レベチラセタム

トピラマート

ビガバトリン

抗不安薬,催眠鎮静薬,または抗精神病薬

エスクロルビノール†

グルテチミド†

ヒドロキシジン

メプロバメート

クロルプロマジン

ドロペリドール

フルオキセチン

フルフェナジン

ハロペリドール

レボメプロマジン†

プロクロルペラジン

プロピオマジン(propiomazine)†

アルプラゾラム

クロザピン

ジキシラジン(dixyrazine)†

エスゾピクロン

ロラゼパム

オランザピン

オキサゼパム

ペルフェナジン

トリアゾラム

心血管疾患の治療薬

ジヒドララジン(dihydralazine)†

エルゴロイドメシレート(ergoloid mesylates

ヒドララジン

リドカイン

メチルドパ

ニフェジピン

スピロノラクトン

アミロライド(amiloride

β遮断薬

コレスチラミン

コレスチポール

ジゴキシン

ジルチアゼム

エナラプリル

アドレナリン

ヘパリン

リシノプリル

ロサルタン

ナイアシン

有機硝酸薬

アデノシン

アムリノン

ベンドロフルメチアジド

ベザフィブラート†

ブメタニド

ジギタリス配糖体

ドブタミン

ドパミン

ドペキサミン(dopexamine)†

ドキサゾシン

エタクリン酸

エチレフリン†

フェノフィブラート

フロセミド

ヒドロクロロチアジド

ミルリノン

フェニレフリン

プロスタグランジン

キニジン

ホルモン

ダナゾール

プロゲステロン

合成プロゲスチン

生殖ホルモン以外のホルモン(グルココルチコイドなど)

天然 エストロゲン

下剤

ビサコジル

カスカラサグラダ

食物繊維

ラクチトール†

ラクツロース

ラウリル硫酸

オオバコ種子

センナ配糖体

ジオクチルソジウムスルホサクシネート

ピコスルファートナトリウム†

ソルビトール

片頭痛の治療薬

麦角製剤

筋弛緩薬

カリソプロドール

オルフェナドリン(orphenadrine

アトラクリウム(atracurium

シサトラクリウム(cisatracurium)

ミバクリウム(mivacurium)†

パンクロニウム

ロクロニウム

スキサメトニウム(サクシニルコリン)

ベクロニウム

バクロフェン

骨粗鬆症

ビスホスホネート

カルシウムサプリメント

消化性潰瘍の治療薬

アルギン酸

カルシウム含有制酸薬

シメチジン

マグネシウム含有制酸薬

スクラルファート

ファモチジン

ミソプロストール

ニザチジン

ラニチジン

呼吸器疾患の治療薬

クレマスチン

ジメンヒドリナート

サルブタモール(アルブテロール)

アリメマジン†

コデイン

コルチコステロイド

ジパルミトイルホスファチジルコリン(dipalmitoyl phosphatidylcholine)

ドルナーゼ アルファ

エフェドリン

エチルモルヒネ

イプラトロピウム

フェニルプロパノールアミン†

ホスフォリピッドサーファクタント(phospholipid surfactant)

バンブテロール(bambuterol)†

クロモグリク酸(cromolyn

デスロラタジン

フェノテロール†

フェキソフェナジン

ホルモテロール

レボカバスチン†

リドカイン(含嗽用溶液)

ロラタジン

ミゾラスチン†

オキシメタゾリン

サルメテロール

テルブタリン

チオトロピウム

*上述一覧表中の薬物の分類は,臨床的観察,文献中の症例報告,ならびにその物質の構造および代謝から導き出された理論的考察の組合せに基づく。しかし,臨床的観察は多数の症例では信頼性が低い。また,疾患の活性化に関する生化学モデルおよび分子生物学的モデルは不完全である。本一覧はガイダンスとしてのみ使用されることを意図しており,完全ではなく,また全患者に適応可能でもない。急性ポルフィリン症の遺伝子変異の保有者では,薬剤は常に慎重に使用しなければならない。特定の薬剤に関する質問があれば,コンサルテーションが可能である(www.drugs-porphyria.org)。

†米国では入手不能。

症状と徴候

急性ポルフィリン症の症状および徴候は,神経系,腹部,またはその両方(内臓神経)にみられる。発作は数時間または数日かけて発症し,最長で数週間持続する場合がある。遺伝子キャリアの大半は,生涯のうちに全く発作を経験しないか,経験したとしてもわずかである。残りのキャリアには症状が繰り返し発生する。女性では,発作の再発がしばしば月経周期の黄体期と一致する。

ポルフィリン症の急性発作

典型的には便秘,疲労,易刺激性,および不眠が急性発作に先行する。発作の一般的な症状は腹痛および嘔吐である。疼痛は耐え難いことがあり,腹部圧痛または他の身体徴候の程度とは不釣り合いである。腹部症状は内臓神経に対する作用または局所の血管収縮虚血に起因する可能性がある。炎症が存在しないため,腹部に圧痛はなく,腹膜刺激徴候もない。体温および白血球数は正常またはわずかに上昇するのみである。麻痺性イレウスの結果,腸管の膨満が生じる恐れがある。発作中の尿は赤色または赤褐色でポルフォビリノーゲン陽性である。

末梢神経系および中枢神経系の全構成要素が影響を受ける可能性がある。運動神経障害が重度の遷延性発作でよくみられる。筋力低下は通常四肢に始まるが,あらゆる運動神経または脳神経を巻き込んで四肢麻痺に発展する可能性がある。延髄が侵されると呼吸不全が引き起こされる。

中枢神経系が侵された場合は,痙攣発作や精神症状(例,無関心,抑うつ,興奮,明らかな精神病,幻覚)が引き起こされることがある。痙攣,精神病的行動,および幻覚は,低ナトリウム血症もしくは低マグネシウム血症に起因するか,またはこれらにより増悪することがあり,これらは不整脈の一因にもなりうる。低ナトリウム血症は, バソプレシン(抗利尿ホルモン[ADH])の過剰分泌による急性発作時および/または急性発作に対する標準治療である低張液(5%または10%ブドウ糖水溶液)の静脈内投与時に生じる場合がある。

過剰なカテコールアミンは一般に不穏および頻脈を引き起こす。まれに,カテコールアミン誘発性の不整脈によって突然死が引き起こされる。一過性の血圧上昇を伴う動揺性高血圧により血管の変化が生じ,治療しなければ不可逆性の高血圧へと進展する。急性ポルフィリン症の慢性腎臓病は多因子によるものである;急性高血圧(慢性的な高血圧症につながりうる)が主要な誘発因子である可能性が高い。

亜急性および慢性の症状

一部の患者では程度の軽い症状(例,便秘,疲労,頭痛,背部痛または大腿部痛,錯感覚,頻脈,呼吸困難,不眠,抑うつ,不安または他の気分障害,痙攣発作)が遷延する。発作間欠期の慢性症状はおそらくほとんどの患者にみられ,最も頻度の高い症状は疼痛である。多くの患者が日常的に症状を経験している。

異型ポルフィリン症および遺伝性コプロポルフィリン症の皮膚症状

内臓神経症状が認められない場合でも,皮膚の脆弱性および水疱性発疹が露光部に生じる場合がある。しばしば患者は日光曝露との関連に気づかない。皮膚症状は晩発性皮膚ポルフィリン症,通常は,手および前腕の背側,顔面,耳,ならびに頸部に病変が生じる。

急性ポルフィリン症の晩期症状

急性発作時の運動障害が,発作の間欠期に持続性の筋力低下および筋萎縮につながる場合がある。急性間欠性ポルフィリン症では中年以降に,肝硬変,肝細胞癌,全身性動脈高血圧症,腎障害がみられる頻度が増え,おそらくこれは異型ポルフィリン症および遺伝性コプロポルフィリン症,特にポルフィリン症発作の既往がある患者にもあてはまる。

診断

  • ポルフォビリノーゲン(PBG)の尿スクリーニング検査

  • 尿の検査結果が陽性の場合,ALAおよびPBGの定量

  • 急性間欠性ポルフィリン症の確認には,赤血球PBGデアミナーゼ活性の測定

  • 病型を同定すべき場合,遺伝子解析

急性発作

急性発作は急性腹症(ときに不必要な外科手術につながる)の他の原因や原発性の神経または精神障害と混同されるため,誤診がよくみられる。しかしながら,過去に遺伝子キャリアと診断された患者や家族歴が陽性の患者ではポルフィリン症を疑うべきである。遺伝子キャリアであることが判明している場合でも,他の原因を考慮しなければならない。

症状発生前には存在しなかった赤色または赤褐色の尿は主要な徴候であり,本格的な発作の際に認められる。原因不明の腹痛を呈する患者で,特に重度の便秘,嘔吐,頻脈,筋力低下,延髄障害,または精神症状が生じた場合には,尿検体を調べるべきである。

ポルフィリン症が疑われる場合には,定量的または半定量的な迅速検査法を用いて尿でPBGを分析する。結果が陽性の場合または臨床的な疑いが強い場合には,ALAおよびPBGの定量が必要であり,同じ検体での測定が望ましい。正常範囲の5倍を上回るPBGまたはALAの高値は,それと同程度のポルフィリン前駆体の排泄増加が疾患の潜伏期でも生じる遺伝子キャリアでない限り,ポルフィリン症の急性発作を示唆する。

尿中のPBGおよびALA値が正常範囲内であれば別の診断を考慮しなければならない。尿中総ポルフィリンの測定およびこれらのポルフィリンの高速液体クロマトグラフィーによるプロファイルが役立つ。尿中のALAおよびコプロポルフィリンが高値でPBGが正常範囲内またはわずかに高値であれば,鉛中毒,ALAD欠損性ポルフィリン症,または遺伝性高チロシン血症1型が示唆される。24時間蓄尿検体の分析は不要である。その代わりに随時尿検体が用いられ,PBG濃度およびALA濃度を検体のクレアチニン濃度と関連させることによって希釈を補正する。

電解質(マグネシウムを含む)を測定すべきである。低張液輸液後の過度の嘔吐もしくは下痢または抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)による,低ナトリウム血症が存在する可能性がある。

急性ポルフィリン症の病型の決定

治療は急性ポルフィリン症の病型に依存しないため,特定の病型の同定は主に近親者での遺伝子キャリアを見つけるために行われる。近親者の過去の検査から病型および遺伝子変異が既知である場合,診断は明確であるが,確定を遺伝子解析により行う場合がある。

赤血球中の酵素であるALADおよびPBGデアミナーゼの活性は,容易に測定可能であり,それぞれ,ALAD欠損性ポルフィリン症および急性間欠性ポルフィリン症の診断確定に役立てることができる。赤血球PBGデアミナーゼ濃度が正常範囲の約50%であれば急性間欠性ポルフィリン症を示唆する。

診断の手引きとなる家族歴が認められない場合,ポルフィリン(および前駆体)の特徴的な蓄積パターンおよび血漿中,尿中,便中への排泄パターンによって急性ポルフィリン症の様々な病型を鑑別する。尿検査でALA濃度およびPBG濃度の上昇が示された場合は,便中のポルフィリンを測定することがある。便中のポルフィリンは,急性間欠性ポルフィリン症では通常は正常範囲内またはわずかに上昇しているが,遺伝性コプロポルフィリン症および異型ポルフィリン症では上昇している。これらのマーカーは疾患の無活動期には認められないことが多い。Soret帯(約410nm)励起後の血漿の蛍光発光によって,それぞれ異なる発光ピークをもつ遺伝性コプロポルフィリン症と異型ポルフィリン症を鑑別できる。

急性ポルフィリン症の家族に対する検査

常染色体優性型の急性ポルフィリン症(急性間欠性ポルフィリン症,遺伝性コプロポルフィリン症,異型ポルフィリン症)の遺伝子キャリアの子供が疾患を遺伝的に受け継ぐリスクは50%である。一方,ALAD欠損性ポルフィリン症(常染色体劣性遺伝)の患者の子供は絶対保因者であるものの,臨床的な疾患を発症する可能性は極めて低い。早期診断とそれに続くカウンセリングにより罹病のリスクが低下するため,罹患家系の小児には思春期発来前に検査を行うべきである。発端者で変異が同定されている場合は遺伝子検査を行う。同定されていなければ関連する赤血球または白血球の酵素濃度を測定する。遺伝子解析は子宮内診断(羊水穿刺または絨毛採取による)で行えるが,大半の遺伝子キャリアの予後は良好であるため,ほとんど適応とはならない。

予後

医療およびセルフケアの進歩によって,症状を有する急性ポルフィリン症患者の予後は改善している。それでもなお,一部の患者では発作の再発または永続的な麻痺や腎不全を伴う進行性の病態が生じる。また,オピオイド鎮痛薬が頻繁に必要になるとオピオイド依存につながる可能性もある。

治療

  • 可能であれば誘因を除去する

  • ブドウ糖(経口または静注)

  • ヘムの静注

急性発作の治療は,全ての急性ポルフィリン症で同じである。考えられる誘因(例,過剰なアルコール摂取,薬剤)を同定し取り除く。発作が軽度でない限り,患者を暗く静かな個室に入院させる。心拍数,血圧,および水・電解質バランスをモニタリングする。神経学的状態,膀胱機能,筋肉および腱の反射機能,呼吸機能,酸素飽和度を継続的にモニタリングする。症状(例,疼痛,嘔吐)はポルフィリン生成作用のない薬物を用いて必要に応じて治療する(薬物とポルフィリン症の表を参照)。

ブドウ糖を1日当たり300~500g投与することにより肝ALA合成酵素(ALAS 1)のダウンレギュレーションが起こり,症状が緩和される。ブドウ糖は嘔吐がなければ経口で投与できるが,嘔吐があれば静注する。通常のレジメンでは,10%ブドウ糖液3Lを中心静脈カテーテルから24時間かけて投与する(125mL/時)。しかしながら,水分過剰とその結果生じる低ナトリウム血症を回避するために,50%ブドウ糖液1Lを投与してもよい。

ヘムの静注はブドウ糖よりも効果的であり,重度の発作,電解質平衡異常,または筋力低下が生じた場合には速やかにこれを行うべきである。ヘムにより,通常3~4日で症状が消失する。ヘムによる治療が遅れると,神経障害が重症化し,回復が遅れ,場合によっては完全な回復が得られない。ヘムは,米国ではガラスバイアル中で滅菌水で溶解して使用する凍結乾燥ヘマチンとして入手できる。用量は3~4mg/kg,1日1回を4日間静注する。代替法としてアルギン酸ヘムがあり,これも同じ用量で投与するが,5%ブドウ糖または2倍もしくは4倍に希釈した生理食塩水で溶解する点が異なる。ヘマチンおよびアルギン酸ヘムは,静脈血栓症および/または血栓性静脈炎を引き起こす場合がある。こうした有害事象のリスクは,ヘムをヒト血清アルブミンと結合させて投与すると低下するようである。この結合によって,ヘマチンの凝集が発生する確率も低下する。そのため,ほとんどの専門家は,ヘマチンまたはアルギン酸ヘムをヒト血清アルブミンとともに投与することを推奨している。

発作の再発

重度の発作が繰り返し認められる患者は,腎障害または恒久的な神経学的損傷のリスクがあり,肝移植が1つの治療選択肢となる。肝移植の成功は,急性間欠性ポルフィリン症の恒久的な治癒につながる。肝臓のPBGデアミナーゼの欠乏が肝移植によって是正されれば,生化学的にも(PBGおよびALAの濃度の正常化),症状の上でも寛解に至る(1)。AIPに対して肝移植を行った症例報告は14例と限られているが,生存率は他の適応に対する肝移植の場合と同様である;すなわち,3カ月後の生存率は93%,5年後の生存率は77%であった。遺伝性コプロポルフィリン症に対して肝移植を行った例は報告されていない。肝移植を行ったALAD欠損性ポルフィリン症の1児では,入院期間が減少したものの生化学マーカーの改善はみられなかった(2)。

American Association for the Study of Liver Disease(AASLD)の最新のPractice Guidelineには肝移植の適応として肝性ポルフィリン症の明確な記載はなかったが,肝性ポルフィリン症は全身症状を伴う肝代謝性疾患に含めるのが適切と考えられる。Model for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアのexception point(例外点)が標準化されていない状況では,AIPへの肝移植はUnited Network for Organ Sharing(UNOS)において移植施設が所属する地域の審査委員会への嘆願に頼らざるを得ないだろう。

急性ポルフィリン症患者はたとえ肝臓が構造的に正常にみえるとしても(すなわち,肝硬変がない),肝臓の提供者になるべきではない;ポルフィリン症の診断を受けたことのないレシピエントに急性ポルフィリン症様の症状がみられているのがその理由であるが,このような結果は急性ポルフィリン症が肝臓の疾患であることを確立するのに貢献した。活動性疾患および末期腎不全を有する患者は,透析の開始時に神経損傷が進行するリスクがかなり高いため,腎移植(肝同時移植の有無を問わない)を考慮すべきである。

治療に関する参考文献

  • 1.Dowman JK, Gunson BK, Mirza DF, et al: Liver transplant for acute intermittent porphyria is complicated by a high rate of hepatic artery thrombosis.Liver Transpl 18: 195–200, 2012. doi: 10.1002/lt.22345.

  • 2.Thunell S, Henrichson A, Floderus Y, et al: Liver transplantation in a boy with acute porphyria due to aminolaevulinate dehydratase deficiency.Eur J Clin Chem Clin Biochem 30: 599–606, 1992

予防

急性ポルフィリン症のキャリアは以下を避けるべきである:

  • 有害な可能性のある薬剤(薬物とポルフィリン症の表を参照)

  • 大量の飲酒

  • 喫煙

  • 身体的または精神的なストレスまたは消耗

  • 有機溶剤(例,ペンキまたはドライクリーニング)への曝露

  • 急激なダイエット

  • 絶食

肥満に対する食事は体重を徐々に減らすようなものとし,寛解期間中のみとすべきである。異型ポルフィリン症または遺伝性コプロポルフィリン症のキャリアは日光曝露を最小限にとどめるべきである;紫外線B波のみを遮断するサンスクリーン剤は無効であるが,酸化亜鉛または二酸化チタンを含有するものは有益である。American Porphyria FoundationおよびEuropean Porphyria Networkなどの支援団体からは,書面による情報が得られ,また直接のカウンセリングが受けられる。

患者をキャリアとして医療記録に目立つように記載すべきであり,患者はキャリアであることを証明し遵守されるべき注意事項を記したカードを携帯するか,メディカルアラートジュエリーを装着しておくべきである。

高炭水化物食は急性発作のリスクを低減する可能性がある。軽度の急性発作であれば,デキストロースまたはグルコースの摂取を増やすことで発作を治療できることがある。肥満および齲歯のリスクを減らすために,長期の使用は避けるべきである。

腎障害を予防するため,慢性的な高血圧は積極的に治療すべきである(安全な薬剤を用いる)。腎機能障害の所見が認められる患者は,腎臓専門医に紹介する。最近の症例報告からは, バソプレシン受容体拮抗薬であるトルバプタンが急性発作時の低ナトリウム血症の管理に役立つことが示唆されている。

急性ポルフィリン症のキャリア,特に活動性疾患を有する患者では肝細胞癌の発生率が高い。50歳以上の患者には,年1回または2回,超音波検査による肝臓のスクリーニングを含むサーベイランスを行うべきである。早期介入で治癒を得られる可能性があり,期待余命を延長させる。

再発性または予測可能な発作

再発性で予測可能な発作を経験する患者(典型的には月経周期と関連する発作を起こす女性)では,発症が起こるのが予想される少し前に予防的なヘム療法を行うと有益となる場合がある(1)。標準化されたレジメンはなく,専門医へのコンサルテーションを行うべきである。一部の女性にみられる頻回の月経前発作は,ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストおよび低用量エストロゲンの併用投与によって抑える。低用量の経口避妊薬がときに奏効するが,プロゲスチン成分がポルフィリン症を増悪させる可能性が高い。

新しい2種類の分子療法は,発作を減少させることが期待されている。ギボシランは,肝細胞内でALAS-1活性を抑制する低分子干渉RNA(siRNA)である。第I相試験において,ギボシラン群では急性発作,入院,および静注によるヘム療法の頻度/重症度が低下しただけでなく,測定可能な生化学的反応が認められた(2)。より規模の大きい第III相試験が進行中である。もう1つのアプローチはポルフィリノーゲンデアミナーゼHの野生型メッセンジャーRNA(mRNA)を肝細胞に導入することで,酵素の濃度を上昇させる方法であり,非臨床試験で有望であることが実証されている(3)。

予防に関する参考文献

要点

  • 急性ポルフィリン症は腹痛および神経症状の間欠的な発作を引き起こす;日光曝露が誘因となる皮膚症状が認められる病型もある。

  • 発作には,ホルモン,薬物,低カロリー・低炭水化物食,およびアルコール摂取など,多くの誘因がある。

  • 発作では通常,重度の腹痛(腹部の圧痛はない)および嘔吐がみられる;末梢神経系および中枢神経系のあらゆる構成要素が侵される可能性があるが,筋力低下の頻度が高い。

  • 発作時の尿はしばしば赤褐色である。

  • ポルフォビリノーゲン(PBG)の定性的な尿検査を実施し,そこで陽性となれば,δ-アミノレブリン酸(ALA)とPBGの測定により確認する。

  • 急性発作はブドウ糖の経口または静脈内投与により治療し,重度の発作はヘムの静注により治療する。

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