ビタミンB6には,一群の密接に関連した複合体(ピリドキシン,ピリドキサール,ピリドキサミン)が含まれる。これらは体内でピリドキサールリン酸に代謝され,血液,中枢神経系,および皮膚代謝において多くの重要な反応に関わる補酵素として作用する。ビタミンB6は,ヘム生合成および核酸生合成,ならびに脂質,炭水化物,アミノ酸の代謝に重要である( ビタミンの供給源,機能,および作用 ビタミンの供給源,機能,および作用 の表を参照)。
ビタミンB6の食物由来の供給源としては,内臓肉(例,レバー),全粒粉シリアル,魚,豆類などがある。( ビタミンの概要 ビタミンの概要 ビタミンには以下のものがある: 脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,およびK) 水溶性ビタミン(ビタミンB群およびビタミンC) ビタミンB群には,ビオチン,葉酸,ナイアシン,パントテン酸,リボフラビン(B2),チアミン(B1),B6(例,ピリドキシン),B12(コバラミン)などがある。... さらに読む も参照のこと。)
病因
食事によるビタミンB6欠乏症は,まれではあるが,過剰な調理によって食物中のビタミンB6が枯渇しうるため発生する可能性がある。
二次性ビタミンB6欠乏症は,以下に挙げるものによって起こることが最も多い:
ピリドキシンを不活化する薬剤(例,抗てんかん薬,イソニアジド,サイクロセリン,ヒドララジン,コルチコステロイド,ペニシラミン)の使用
まれに,代謝要求の増大(例, 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。 (甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類できる(様々な病態における甲状腺機能検査の結果の表を参照)。... さらに読む で)の結果として二次性欠乏症が生じる。
まれに生じる先天性代謝異常がピリドキシン代謝に影響を及ぼすことがある。
症状と徴候
ビタミンB6欠乏症により,末梢神経障害,ならびに脂漏性皮膚炎,舌炎,および口角炎を伴うペラグラ様症候群が起こり,成人では,抑うつ,錯乱,脳波異常,および痙攣発作が起こることもある。
まれに,乳児において,欠乏症または依存症により痙攣発作が起こる。痙攣発作は(特に乳児で)抗てんかん薬による治療に反応しないことがある。
正球性,小球性,または鉄芽球性貧血が発生することもある。
診断
治療
ピリドキシン
可能な場合,危険因子の除去
二次性ビタミンB6欠乏症に対しては,可能であれば原因(例,ピリドキシンを不活化する薬剤の使用,吸収不良)を是正すべきである。
通常,ピリドキシン50~100mgを1日1回経口投与すれば,成人の欠乏症は是正される。イソニアジドを服用している患者の大半には,ピリドキシン30~50mg/日の1日1回経口投与も行うべきである。代謝要求の増大による欠乏症には,1日当たりの推奨摂取量を超える用量が必要になることがある。先天性代謝異常症の症例の大半には,高用量のピリドキシンが効果的となりうる。
要点
ビタミンB6欠乏症は通常,ピリドキシンを不活化する薬剤(例,イソニアジド),タンパク質-エネルギー低栄養,吸収不良,アルコール依存症,または過剰喪失によって引き起こされる。
欠乏症により,末梢神経障害,脂漏性皮膚炎,舌炎,および口角炎が起こることがあり,成人では,抑うつ,錯乱,および痙攣発作が起こることがある。
臨床所見に基づいて欠乏症を疑い,診断する。
二次的原因を是正する,またはピリドキシンを補給する。