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抜毛症(トリコチロマニア)

(抜毛症)

執筆者:

Dan J. Stein

, MD, PhD, University of Cape Town

最終査読/改訂年月 2018年 6月
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本ページのリソース

抜毛症は,自身の毛髪を抜くことを繰り返し,それにより毛髪が喪失することにより特徴づけられる。

抜毛症の患者は,美容以外の理由で毛髪を繰り返し引っ張ったり,引き抜いたりする。最も多いのは頭皮,眉,および/または眼瞼からの抜毛であるが,あらゆる部位の体毛が対象となりうる。抜毛の部位は時間の経過とともに変化することがある。

この行動を若干自動的に(すなわち,十分に意識することなく)行う患者もいれば,この行動をより意識している患者もいる。抜毛は強迫観念または外見に関する悩みに誘発されるものではないが,緊張感または不安感が先行して,それが抜毛により軽減することがあり,しばしばその後に満足感を覚える。

典型的には,抜毛症の患者は毛を引き抜く行動をやめたり頻度を減らしたりしようと試みるが,不成功に終わる。

典型的には,抜毛は思春期の直前または直後に始まる。本障害の時点有病率は約1~2%である。抜毛症の成人の約90%は女性である。

症状と徴候

通常,抜毛は慢性に経過し,症状は一進一退を繰り返す。

脱毛のパターンは患者により異なる。一部分の毛髪が完全に喪失する患者もいれば,睫毛および/または眉毛のみが喪失する患者,毛が薄くなるだけの患者もいる。

抜毛に様々な行動(儀式)を伴う場合もある。患者は引き抜く対象とする特定の種類の毛髪を入念に探すことがあり,また毛を必ず特定の方法で引き抜こうとすることもある。患者は毛を抜いた後に,指に挟んで転がしたり,毛の房を歯に挟んで引っ張ったり,毛を噛んだりすることがある。多くの患者が毛を飲み込む。毛髪を飲み込むことで,ときに毛髪胃石 胃石 胃石は,部分的に消化された物質や未消化の物質が緊密に凝集したもので,胃で最も多くみられる。胃石はあらゆる年齢層で起きる可能性があり,行動障害,胃内容排出の異常,または消化管の解剖学的構造の異常がある患者でしばしば発生する。多くの胃石は無症状であるが,症状を引き起こす場合もある。化学的に溶解できるものもあれば,内視鏡的摘出手術を要するものや,外科手術を要するものもある。 (消化管異物の概要も参照のこと。)... さらに読む 胃石 (飲み込んだ毛髪が固く凝集し,胃から排出されなくなったもの)が形成されることがあり,これによりまれに身体的合併症(例,胃閉塞または胃穿孔)を来し,外科的な除去が必要になる場合がある。

患者は自分の外見や自分の行動をコントロールできないことに当惑したり,恥ずかしく感じたりすることがある。多くは脱毛部位を覆う(例,かつらやスカーフを着用する)ことで脱毛を隠そうとする。脱毛を隠すために,広範にわたる部位から毛を引き抜く患者もいる。患者は他者から脱毛を見られる可能性のある状況を避けることがある;典型的には,家族以外の他者の前で毛を引き抜くことはない。

他者またはペットの毛を引き抜いたり,線維性の物体(例,衣服,毛布)の線維を引き抜いたりする患者もいる。

大半の患者には,皮膚をむしる 皮膚むしり症 皮膚むしり症は,皮膚をむしる行為を繰り返し,それにより皮膚病変が生じることにより特徴づけられる。 皮膚むしり症の患者は,美容以外の理由で(すなわち,患者が魅力的でない,またはがんではないかと思い込んだ病変を除去するためではない)皮膚を繰り返しむしる,または掻破する。健康な皮膚をむしる患者もいれば,胼胝,ざ瘡,または痂皮などの軽微な病変をむしる患者もいる。 皮膚を若干自動的に(すなわち,十分に意識することなく)むしる患者もいれば,この行動... さらに読む ,爪を噛むなど,他の身体集中反復行動 身体集中反復行動症 身体集中反復行動症(body-focused repetitive behavior disorder)は,身体集中反復行動(例,爪を噛む,唇を噛む,頬を噛む)およびその行動をやめようとする試みにより特徴づけられる。 身体集中反復行動症は,Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition(DSM-5)で挙げられているように,他の特定される強迫症および... さらに読む も認められる。多くの患者でうつ病 うつ病(単極性障害) 抑うつ障害群は,機能を妨げるほど重度または持続的な悲しみ,および興味または喜びが減退することにより特徴づけられる。正確な原因は不明であるが,おそらくは遺伝,神経伝達物質の変化,神経内分泌機能の変化,および心理社会的因子が関与する。診断は病歴に基づく。通常,治療は薬物療法,精神療法,またはその両方,および電気痙攣療法から成る。 うつ病という用語は,しばしばいくつかの抑うつ障害群のいずれかを指して用いられる。一部はDiagnostic... さらに読む もみられる。

診断

  • 臨床基準

抜毛症の典型的な診断基準には以下が含まれている:

  • 毛を引き抜く行為が認められる

  • 毛を引き抜くのをやめようと繰り返し試みている

  • その行為により著しい苦痛または障害を経験している

苦痛には当惑感または恥辱感(例,自分の行動をコントロールできないことや脱毛による美容上の結果による)を含めてもよい。

治療

  • SSRIまたはクロミプラミン

  • N-アセチルシステイン

  • オランザピン

  • 認知行動療法(通常は習慣逆転法)

SSRI 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) うつ病の治療には,いくつかの薬物クラスおよび薬物が使用できる: 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) セロトニン調節薬(5-HT2遮断薬) セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 ノルアドレナリン-ドパミン再取り込み阻害薬 さらに読む またはクロミプラミン(強力なセロトニン作動性の効果を有する三環系抗うつ薬)が有用となる場合があり,特に患者にうつ病または不安症群が併存している場合はその傾向が強い。抜毛については,デシプラミン(ノルアドレナリンの再取り込みを阻害する三環系抗うつ薬)よりもクロミプラミンの方が効果的なようである。抜毛症患者を対象としたSSRIの研究では期待外れの結果が報告されているが,それらの研究には症例数の少なさとそれゆえの統計学的な検出力不足による限界がある。

ある比較試験では,N-アセチルシステイン(グルタミン酸受容体部分作動薬)が成人に対して効果的であったが(1 治療に関する参考文献 抜毛症は,自身の毛髪を抜くことを繰り返し,それにより毛髪が喪失することにより特徴づけられる。 抜毛症の患者は,美容以外の理由で毛髪を繰り返し引っ張ったり,引き抜いたりする。最も多いのは頭皮,眉,および/または眼瞼からの抜毛であるが,あらゆる部位の体毛が対象となりうる。抜毛の部位は時間の経過とともに変化することがある。 この行動を若干自動的に(すなわち,十分に意識することなく)行う患者もいれば,この行動をより意識している患者もいる。抜毛は... さらに読む 治療に関する参考文献 ),別の小規模研究では,小児においてプラセボを上回る効果が示されなかった(2 治療に関する参考文献 抜毛症は,自身の毛髪を抜くことを繰り返し,それにより毛髪が喪失することにより特徴づけられる。 抜毛症の患者は,美容以外の理由で毛髪を繰り返し引っ張ったり,引き抜いたりする。最も多いのは頭皮,眉,および/または眼瞼からの抜毛であるが,あらゆる部位の体毛が対象となりうる。抜毛の部位は時間の経過とともに変化することがある。 この行動を若干自動的に(すなわち,十分に意識することなく)行う患者もいれば,この行動をより意識している患者もいる。抜毛は... さらに読む 治療に関する参考文献 )。低用量のオランザピンなどのドパミン受容体遮断薬が効果的であるとした限定的なエビデンスもあるが,リスク-ベネフィット比を注意深く評価する必要がある。

抜毛症の具体的な症状に合わせて個別化した認知行動療法が,現時点で第1選択の精神療法である。行動療法の側面が強い習慣逆転法が推奨されており,具体的には以下で構成される:

  • 気づきの訓練(例,セルフモニタリング,行動の引き金になる因子の特定)

  • 刺激統制法(抜毛を始める可能性を低下させるために状況を変えること―例,誘因の回避)

  • 競合反応訓練(抜毛の代わりに,こぶしを握りしめる,編み物をする,手の上に座るなど他の行動を行うよう指導する)

治療に関する参考文献

  • 1. Grant JE, Odlaug BL, Kim SW: N-Acetylcysteine, a glutamate modulator, in the treatment of trichotillomania: A double-blind, placebo-controlled study.Arch Gen Psychiatry 66 (7):756–763, 2009.doi: 10.1001/archgenpsychiatry.2009.60.

  • 2. Bloch MH, Panza KE, Grant JE, et al: N-Acetylcysteine in the treatment of pediatric trichotillomania: A randomized, double-blind, placebo-controlled add-on trial.J Am Acad Child Adolesc Psychiatry 52 (3):231–240, 2013.doi: 10.1016/j.jaac.2012.12.020.

要点

  • 抜毛症では,抜毛は強迫観念または外見に関する悩みに誘発されるものではないが,緊張感または不安感が先行して,それが抜毛により軽減することがあり,しばしばその後に満足感を覚える。

  • 脱毛のパターンは,一部分の毛が薄くなる場合から,睫毛および/または眉毛のみの喪失,一部分の毛髪の完全な喪失まで様々である。

  • 典型的には,抜毛症患者は毛を引き抜く行動をやめたり頻度を減らしたりしようと試みるが,不成功に終わる。

  • 個別の抜毛症の症状を治療するために個別化した認知行動療法(特に習慣逆転法)のほか,場合によりクロミプラミン,SSRI,N-アセチルシステイン,または別の薬剤を用いて治療する。

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