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パーキンソン病

(Parkinson病)

執筆者:

Hector A. Gonzalez-Usigli

, MD, HE UMAE Centro Médico Nacional de Occidente

医学的にレビューされた 2018年 12月
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パーキンソン病は,安静時振戦,筋強剛(固縮),緩徐で減少した動作(運動緩慢),および歩行または姿勢の不安定性を特徴とする,緩徐に進行する神経変性疾患である。診断は臨床的に行う。治療は脳内のドパミン系の機能を回復することを目的とし,レボドパに加えてカルビドパおよび/または他の薬剤(例,ドパミン作動薬,MAO-B阻害薬,アマンタジン)を投与する。認知症のない患者における生活に支障を来す難治性の症状には,脳深部刺激療法または凝固術ならびにレボドパおよびアポモルヒネポンプが役立つことがある。

パーキンソン病の有病率はおよそ以下の通りである:

  • 40歳以上で0.4%

  • 65歳以上で1%

  • 80歳以上で10%

平均発症年齢は約57歳である。

パーキンソン病は通常,特発性である。

若年性パーキンソニズムはまれであり,小児期または青年期に発生する。21歳から40歳までに発症したものは,ときに若年発症パーキンソン病と呼ばれる。若年発症パーキンソン病では遺伝性の原因がより高い頻度でみられ,これらの病態は高齢で発症するパーキンソン病とは以下の点で異なる場合がある:

  • より進行が遅い。

  • ドパミン作動薬に非常によく反応する。

  • ほとんどの障害が抑うつ,不安,疼痛などの非運動症状に起因する。

非定型パーキンソニズム 二次性および非定型パーキンソニズム 二次性パーキンソニズムとは,パーキンソン病と類似した特徴を有するが,病因が異なる疾患群である。非定型パーキンソニズムとは,パーキンソン病の特徴の一部を示すが,一部の異なる臨床的特徴および異なる病因をもつ,パーキンソン病以外の神経変性疾患の一群である。診断は臨床的評価およびレボドパへの反応による。可能な場合は原因に対する治療を行う。 ( 運動障害疾患および小脳疾患の概要も参照のこと。)... さらに読む とは,一部パーキンソン病と似た特徴をもつが,一部の臨床的特徴は異なり,予後がより不良で,レボドパに全くまたはあまり反応せず,異なる病態をもつ一群の神経変性疾患を指す(例, 多系統萎縮症 多系統萎縮症(MSA) 多系統萎縮症は,錐体路,小脳,および自律神経の障害を引き起こし,間断なく進行する神経変性疾患である。この疾患概念には,かつては異なるとされていた3つの疾患,すなわち,オリーブ橋小脳萎縮症,線条体黒質変性症,およびシャイ-ドレーガー症候群が含まれる。症状としては,低血圧,尿閉,便秘,運動失調,筋強剛,姿勢不安定などがある。診断は臨床的に行う。治療は循環血液量の増量,圧迫帯,および血管収縮薬による対症療法となる。... さらに読む 進行性核上性麻痺 進行性核上性麻痺(PSP) 進行性核上性麻痺は,眼球の随意運動を進行性に障害し,動作緩慢,進行性体軸性ジストニアを伴う筋強剛,仮性球麻痺,および認知症をもたらす,まれな中枢神経系の変性疾患である。診断は臨床的に行う。治療は症状の緩和に焦点を置く。 ( 運動障害疾患および小脳疾患の概要も参照のこと。) 進行性核上性麻痺の原因は不明である。 基底核および脳幹のニューロンが変性し,異常なリン酸化を示すタウタンパク質を含んだ神経原線維変化も認められる。基底核および深部白質... さらに読む レビー小体型認知症 レビー小体型認知症およびパーキンソン病認知症 レビー小体型認知症は,皮質ニューロン細胞質内のレビー小体と呼ばれる細胞封入体を特徴とする,慢性の認知機能低下である。パーキンソン病認知症(Parkinson disease dementia)は,黒質のレビー小体を特徴として認知機能が低下する病態であり,パーキンソン病の後期に発生する。 ( せん妄および認知症の概要と 認知症も参照のこと。) 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。... さらに読む ,および大脳皮質基底核変性症といった神経変性疾患)。

病態生理

シヌクレインはニューロンおよび神経膠細胞のタンパク質であり,これが非可溶性の線維へと凝集し,レビー小体を形成する。

パーキンソン病の病理学的特徴は以下の通りである:

  • 黒質線条体におけるシヌクレインに満たされたレビー小体

しかしながら,シヌクレインは迷走神経背側運動核,マイネルト基底核,視床下部,新皮質,嗅球,交感神経節,消化管の筋層間神経叢など,神経系の他の多くの部位にも蓄積しうる。レビー小体は時系列的に出現し,パーキンソン病は全身性シヌクレイノパチーの比較的後期になって生じると多くの専門家は考えている。その他のシヌクレイノパチー(シヌクレイン蓄積症)としては, レビー小体型認知症 レビー小体型認知症およびパーキンソン病認知症 レビー小体型認知症は,皮質ニューロン細胞質内のレビー小体と呼ばれる細胞封入体を特徴とする,慢性の認知機能低下である。パーキンソン病認知症(Parkinson disease dementia)は,黒質のレビー小体を特徴として認知機能が低下する病態であり,パーキンソン病の後期に発生する。 ( せん妄および認知症の概要と 認知症も参照のこと。) 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。... さらに読む 多系統萎縮症 多系統萎縮症(MSA) 多系統萎縮症は,錐体路,小脳,および自律神経の障害を引き起こし,間断なく進行する神経変性疾患である。この疾患概念には,かつては異なるとされていた3つの疾患,すなわち,オリーブ橋小脳萎縮症,線条体黒質変性症,およびシャイ-ドレーガー症候群が含まれる。症状としては,低血圧,尿閉,便秘,運動失調,筋強剛,姿勢不安定などがある。診断は臨床的に行う。治療は循環血液量の増量,圧迫帯,および血管収縮薬による対症療法となる。... さらに読む などがある。パーキンソン病は,自律神経機能障害や認知症といった他のシヌクレイノパチーと共通の特徴をもつことがある。

まれに,レビー小体なしにパーキンソン病が生じることがある(例,PARK 2遺伝子の変異による病型)。

パーキンソン病では,黒質,青斑,および他の脳幹ドパミン作動性細胞群の色素性ニューロンが変性する。黒質ニューロンの脱落は,被殻(基底核の一部)の背側のドパミンの枯渇をもたらし,パーキンソン病の運動症状の多くを引き起こす(基底核 基底核 基底核 の図を参照)。

基底核

基底核

病因

パーキンソン病の少なくとも一部の症例には,遺伝的素因が存在する可能性が高い。約10%の患者にパーキンソン病の家族歴がある。いくつかの異常遺伝子が同定されている。遺伝形式は,一部の遺伝子は常染色体優性,その他は常染色体劣性である。

遺伝性の型では,発症年齢はより若い傾向があるが,経過は典型的に,晩期発症の非遺伝性と思われるパーキンソン病より良性である。

症状と徴候

多くの患者では,パーキンソン病の症状は潜行性に始まる。

一側の手の安静時振戦がしばしば初発症状となる。振戦は以下のような特徴がある:

  • 緩徐で粗大

  • 静止時に最大となり,運動中に軽減し,睡眠時には消失する

  • 振幅は感情的緊張や疲労により増加する

  • しばしば手関節および指が侵され,ときに,手で丸薬を丸めるまたは小さい物体を扱うときのように,母指を示指にすり合わせるように動く(丸薬丸め運動)

通常,手や足が最初に侵され,非対称的であることが多い。顎および舌も侵されることがあるが,声には影響は及ばない。疾患が進行するにつれ,振戦は目立たなくなることもある。

多くの患者において,筋強剛が振戦とは独立して生じる。こわばった関節を医師が動かすと,筋強剛の度合いが変動して,半律動的なぴくぴくした動きが生じ,つめ車のような印象を与える(歯車様筋強剛)。

緩徐な運動(動作緩慢)が典型的である。また運動の振幅が減少し(運動減少),開始が困難になる(無動)。

筋強剛および運動減少は筋肉痛や疲労感の一因となることがある。開口して瞬目が減少した仮面様顔貌(表情の減少)を呈する。過剰な唾液分泌(流涎)が日常生活に支障を来すことがある。発声不全が生じ,単調でときに吃音調の特徴的な構音障害がみられる。

運動減少と遠位筋の制御障害により小字症(非常に小さな文字を書くこと)が起こり,日常生活動作が次第に困難になる。前兆なしに,歩行を含む随意運動が突然停止する場合がある(すくみ足と呼ばれる)。

姿勢不安定が生じる場合があり,転倒を引き起こすが,これはパーキンソン病の後期になってから起こる。歩き始める,曲がる,停止する動作が困難になる。足を引きずるように歩き,歩幅は小さく,腕は腰のところで曲げたままで,一歩毎にほとんどまたは全く腕を振らない。歩調が意図せず速くなってしまう一方,歩幅が徐々に短くなることがある;この歩行異常を加速歩行と呼び,すくみ足の前駆症状であることが多い。重心を移すと前や後ろに倒れそうになる(前方突進,後方突進)が,これは姿勢反射の消失によるものである。姿勢は前傾になる。

認知症は約3分の1の患者でみられ,通常はパーキンソン病の後期に発生する。認知症発症の早期予測因子は,視空間認知障害(例,運転中に道に迷う)および発話流暢性の低下である。

睡眠障害がよくみられる。夜間頻尿や寝返りができないために不眠症が生じる場合がある。 レム(急速眼球運動)睡眠行動障害 レム(急速眼球運動)睡眠行動障害 睡眠時随伴症は,入眠時,睡眠中,または睡眠からの覚醒時に起こる望ましくない行動である。診断は臨床的に行う。治療法としては薬物療法や精神療法などがある。 これらの疾患の多くは,病歴聴取と身体診察で診断を確定できる。( 睡眠障害または覚醒障害を有する患者へのアプローチも参照のこと。) 睡眠中に起こる起座,歩行,またはその他の複雑な行動で,通常は開眼していても自覚している形跡はない。睡眠時遊行症は小児期後期および青年期で最も頻度が高く,ノンレ... さらに読む を発症することもあり,この疾患では,正常なレム睡眠中にみられる脱力が生じないために,レム睡眠中に激しい身体運動が発生する。睡眠不足は抑うつや認知障害を増悪させることがあり,また日中の過度の眠気の原因ともなりうる。最近の研究では,レム睡眠行動障害はシヌクレイノパチーのマーカーであり, レビー小体型認知症 レビー小体型認知症およびパーキンソン病認知症 レビー小体型認知症は,皮質ニューロン細胞質内のレビー小体と呼ばれる細胞封入体を特徴とする,慢性の認知機能低下である。パーキンソン病認知症(Parkinson disease dementia)は,黒質のレビー小体を特徴として認知機能が低下する病態であり,パーキンソン病の後期に発生する。 ( せん妄および認知症の概要と 認知症も参照のこと。) 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。... さらに読む パーキンソン病認知症 レビー小体型認知症およびパーキンソン病認知症 レビー小体型認知症は,皮質ニューロン細胞質内のレビー小体と呼ばれる細胞封入体を特徴とする,慢性の認知機能低下である。パーキンソン病認知症(Parkinson disease dementia)は,黒質のレビー小体を特徴として認知機能が低下する病態であり,パーキンソン病の後期に発生する。 ( せん妄および認知症の概要と 認知症も参照のこと。) 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。... さらに読む の発生リスク増大を示唆することが示されている。

パーキンソニズムと関係のない神経症状がよくみられるが,これはシヌクレイノパチーが中枢神経系,末梢神経系,および自律神経系の他の部位に起こるからである。例として次のものが挙げられる:

  • ほぼ普遍的な心臓交感神経系の脱神経:起立性低血圧の原因となる

  • 食道運動障害:嚥下困難や誤嚥のリスクが上昇する原因となる

  • 腸管の運動障害:便秘の原因となる

  • 排尿遅延および/または尿意切迫:失禁につながりうる(よくみられる)

  • 嗅覚脱失(よくみられる)

一部の患者では,これらの症状の一部がパーキンソン病の運動症状が出現する前からみられ,しばしば徐々に悪化する。

診断

  • 主に運動症状に基づく臨床的評価

パーキンソン病の診断は臨床的に行う。特徴的な片側の安静時振戦,運動の減少,または筋強剛を示す患者では,パーキンソン病が疑われる。協調運動を見る指鼻試験の最中は,検査中の腕の振戦が消失(または減弱)する。

神経学的診察の際,患者は急速な交互運動または急速な連続運動をうまく行うことができない。通常,感覚や筋力は正常である。反射は正常であるが,著明な振戦または筋強剛のために生じにくくなることがある。

パーキンソン病による運動緩慢および減少と,皮質脊髄路の病変による運動減少および痙縮との鑑別が必要である。パーキンソン病と異なり,皮質脊髄路の病変は以下の症状を引き起こす:

  • 遠位の抗重力筋に好発する不全麻痺(筋力低下または麻痺)

  • 反射亢進

  • 伸展性足底反応(バビンスキー徴候)

  • 痙縮で,筋緊張を筋に加えられる伸張の割合および程度に比例して増加させるが,突如抵抗がなくなる(折りたたみナイフ現象)

瞬きの頻度低下,無表情,姿勢反射障害,歩行異常など,他の徴候の存在からパーキンソン病の診断が支持される。

高齢者では,パーキンソン病の診断を下す前に,自発運動の減少や小刻み歩行を引き起こしうる他の原因(例えば,重度の抑うつ,甲状腺機能低下症,または抗精神病薬もしくは特定の制吐薬の使用)を除外する必要がある。

パーキンソン病と二次性または非定型パーキンソニズムとの鑑別に役立てるため,しばしばレボドパに対する反応を検査する。持続性の大きな反応がみられれば,パーキンソン病の可能性が強く支持される。少なくとも用量1200mg/日のレボドパに対する反応が小さいか全くない場合は,他の種類のパーキンソニズムが示唆される。二次性または非定型パーキンソニズムの原因は以下によって同定できる:

  • 職業歴,薬歴,家族歴を含む,徹底的な病歴聴取

  • パーキンソン病以外の疾患に特徴的な神経脱落症状の評価

  • 神経画像検査:非定型の症状(例,早期からの転倒,早期からの認知障害,観念運動失行[手のジェスチャーを真似できない],反射亢進)がみられるとき

治療

  • カルビドパ/レボドパ(治療の主流)

  • アマンタジン,MAO-B阻害薬,または(少数の患者では)抗コリン薬

  • ドパミン作動薬

  • カテコールO-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬:常にレボドパと併用される(特にレボドパに対する反応が減弱してきたとき)

  • 手術:薬剤では症状が十分にコントロールされないか,耐えがたい有害作用が発現したとき

  • 運動および適応を助ける処置

パーキンソン病の症状を緩和するために多くの経口薬が一般的に使用されている(一般的に使用される主な経口抗パーキンソン病薬 一般的に使用される主な経口抗パーキンソン病薬 一般的に使用される主な経口抗パーキンソン病薬 の表を参照)。

レボドパは最も効果的な治療法である。しかしながら,パーキンソン病が進行した場合(ときに診断直後より),レボドパに対する反応が減弱してくることがあり,運動症状の変動やジスキネジアが起こる(以下 レボドパ を参照)。レボドパ服用回数を減らし,このような作用を最小限に抑えるため,障害が軽く比較的若年の患者には以下を検討する:

  • MAO-B阻害薬(セレギリン,ラサギリン)

  • ドパミン作動薬(例,プラミペキソール,ロピニロール,ロチゴチン)

  • アマンタジン(ピークドーズジスキネジアの軽減を試みている場合にも最良の選択である)

しかしながら,これらの薬剤で症状を十分にコントロールできない場合は,速やかにレボドパを開始すべきであり,これは,通常はレボドパによって生活の質を大幅に改善できるからである。現在では,レボドパの有効性が低下するのは疾患の進行のためであって,以前考えられていたようにレボドパへの累積曝露のためではないことがエビデンスから示唆されているため,レボドパを早期から使用しても,おそらく薬剤の無効化を早めることにはならない。

用量は高齢者ではしばしば減量される。症状を引き起こしたり悪化させたりする薬剤,特に抗精神病薬は避ける。

レボドパ

レボドパはドパミンの代謝前駆体で,血液脳関門を通過して基底核に入り,そこで脱炭酸化されてドパミンを形成する。末梢性脱炭酸酵素阻害薬のカルビドパを同時に投与することで,脳の外(末梢)でレボドパがドパミンに脱炭酸化されることを防ぐことができ,これにより脳内で治療濃度をもたらすのに必要なレボドパの用量を下げ,ドパミンによる末梢循環内の有害作用を最小限にすることができる。

レボドパは,動作緩慢および筋強剛の軽減に最も効果があるが,振戦もしばしば大きく軽減する。

レボドパのよくみられる短期的有害作用として,以下のものが挙げられる:

  • 悪心

  • 嘔吐

  • ふらつき

よくみられる長期的有害作用としては,以下のものがある:

  • 精神および精神医学的異常(例,錯乱を伴うせん妄,パラノイア,幻視,パンディング[複合的な反復常同運動])

  • 運動障害(例,ジスキネジア,運動症状の変動)

幻覚やパラノイアは,高齢者と認知障害または認知症のある患者で最もよくみられる。

疾患が進行するにつれ,次第に低用量でもジスキネジアが生じるようになる。時間の経過とともに,治療効果のために必要な用量とジスキネジアを引き起こす用量が近づいていく。

カルビドパ/レボドパの用量は,最大限の効果に達するか有害作用が出現するまで,患者が耐えられる限り4~7日毎に増量する。カルビドパ/レボドパ配合錠,25/100mg半錠,1日3回または1日4回(12.5/50mg,1日3回または1日4回)などの低用量から開始して,25/100mg錠を1錠,2錠,または3錠,1日4回までゆっくり増量することで,有害作用のリスクを最小限に抑えることができる。タンパク質がレボドパの吸収を低下させることがあるため,レボドパはできれば食事とともに服用するべきではない。

レボドパによる末梢の有害作用(例,悪心,嘔吐,体位性のふらつき)が優勢となった場合は,カルビドパの増量が有用となりうる。カルビドパを最大150mgまで増量することは安全であり,レボドパの効力を低下させない。大半のパーキンソン病患者は,レボドパ400~1200mg/日を分割して2~5時間毎に服用する必要があるが,吸収不良のある一部の患者には最大3000mg/日の服用が必要になる。

可溶性即放経口型のカルビドパ/レボドパは水なしで服用できる;この剤形は嚥下が困難な患者に有用である。用量は非可溶性即放型カルビドパ/レボドパと同じである。

カルビドパ/レボドパの徐放製剤を利用できるが,食事とともに服用すると誤って吸収され,即放型より長く胃に留まるため,通常は夜間症状の治療にのみ使用される。

ときには,レボドパによる幻覚またはせん妄があっても,運動機能維持のためにレボドパを投与せざるを得ないことがある。

精神病症状は経口クエチアピン,またはクロザピンで治療されている;これらの薬剤は,他の抗精神病薬(例,リスペリドン,オランザピン,全ての定型抗精神病薬)とは異なり,パーキンソン症状を悪化させない。クエチアピンは25mg夜から始めて,最大400mg夜または200mg,1日2回まで,1~3日毎に25mgずつ増量することができる。クロザピンの効果が最も高いが,無顆粒球症のリスク(患者の1%で起こると推定されている)があるためにその使用は限られている。クロザピンを使用する際の用量は,12.5~50mg,1日1回から12.5~25mg,1日2回までとする。血算は6カ月間毎週行い,その次の6カ月は2週間に1回行い,以降は4週間毎に行う。しかしながら,頻度は白血球数によって異なる可能性がある。最近のエビデンスでは,ピマバンセリン(pimavanserin)は精神病症状に対して効力があり,パーキンソン症状を悪化させないことが示唆されている;また,薬剤のモニタリングは必要ないようである。効力および安全性のさらなる確認が待たれるが,ピマバンセリン(pimavanserin)はパーキンソン病における精神病症状に対して第1選択の薬剤となりうる。

2~5年間の治療後には,多くの患者でレボドパに対する反応に変動が生じ,レボドパのwearing off現象が生じ始めるのに応じて,症状のコントロールが効果的と無効との間で予測不能に変動(オンオフの変動)することがある。症状は,次の予定された服用の前に生じることがある(オフ効果と呼ばれる)。ジスキネジアとオフ効果は,レボドパの薬物動態特性(特に,経口薬であるため半減期が短いこと)と疾患の進行が組み合わさって生じる。

ジスキネジアは,以前考えられていたようにレボドパへの累積曝露と直接関連するものではなく,主に疾患の進行によって引き起こされる。疾患の進行は,経口レボドパのパルス投与と関連するが,これによりグルタミン酸受容体,特にNMDA(N-メチル-d-アスパラギン酸)受容体の感受性が高まり,変化する。最終的には,毎回投与後の改善期間が短くなり,薬剤性のジスキネジアにより,無動からジスキネジアへと病状が変動するようになる。従来,こうした変動には,レボドパをできる限り低用量に抑え,非実用的ではあるが,投与間隔を1~2時間毎と短くすることで対処している。オフ(無動)時間を減少させるための代わりの方法としては,COMTおよび/またはMAO阻害薬のほか,ドパミン作動薬の補助的使用などがあり,アマンタジンはジスキネジアを確実にコントロールすることができる。

レボドパ/カルビドパ腸管ゲル製剤(欧州で使用可能)は,口側小腸に挿入された投与チューブにつないだポンプを用いて投与される。この製剤は,薬剤で軽減できない顕著な運動症状の変動またはジスキネジアがあり,脳深部刺激療法の適応がない患者の治療法として研究されている。この製剤はオフ時間を大幅に減少させ,生活の質を上昇させるようである。

アマンタジン

アマンタジンは主に以下の目的で投与される:

  • レボドパに続発するジスキネジアの改善

  • 振戦の軽減

アマンタジンは,早期の軽度パーキンソニズムに対する単剤療法として有用であり,その後はレボドパの効果を増強するために使用できる。アマンタジンは,ドパミン系の活動,抗コリン作用,またはその両方を増強する。アマンタジンはNMDA受容体拮抗薬でもあるため,パーキンソン病およびジスキネジアの進行を遅らせるのに役立つ可能性がある。単剤療法として使用された場合,アマンタジンの有効性は数カ月で失われることが多い。

ドパミン作動薬

これらの薬剤は,基底核のドパミン受容体を直接活性化する。具体的には以下のものがある:

  • プラミペキソール(0.75~4.5mg,経口[1日総用量])

  • ロピニロール(3~6mg,経口,最大24mg[1日総用量])

  • ロチゴチン(経皮)

  • アポモルヒネ(注射)

一部の国ではブロモクリプチンがいまだに使用されているが,心臓弁線維化および胸膜線維化のリスクを高めるため,北米ではその使用は主に下垂体腺腫の治療に限定されている。

ペルゴリドは古い麦角系ドパミン作動薬であるが,心臓弁線維化のリスクを上昇させることから,市場から回収された。

経口ドパミン作動薬は単剤療法としての使用も可能であるが,その場合は数年以上にわたり効果が持続することはまれである。これらの薬剤を治療早期にレボドパ低用量と併用することは,ジスキネジアおよびオンオフ効果のリスクが高い患者(例,60歳未満の患者)で有用となる場合がある。しかしながら,ドパミン作動薬は,後期における補助療法としてなど,全ての病期において有用である可能性がある。有害作用は経口ドパミン作動薬の使用を制限する場合がある。患者の1~2%では,これらの薬剤は強迫性賭博,過度の買い物,性欲過剰,過食を引き起こすことがあり,原因となる薬剤の減量または中止が必要となり,その薬物クラスを避けることが必要になる可能性もある。

プラミペキソールおよびロピニロールは経口薬であり,パーキンソン病の初期にレボドパの代わりに投与されるか,レボドパと併用されるほか,禁忌がなく必要であれば,進行例の治療にも追加できる。これらの薬剤の半減期は6~12時間で,1日3回服用する即放性製剤として利用できる。これらの薬剤は1日1回服用する徐放性製剤としても利用でき,血中濃度のピーク値およびトラフ値をできる限り低く抑えるのに役立つ。日中の眠気は一般的な有害作用である。

ロチゴチンは1日1回経皮投与されるが,他の経路で投与される薬剤より連続的にドパミンを刺激する。用量は2mg,1日1回から開始して,通常は6mg,1日1回まで増量する。米国以外では,より高用量が推奨される場合もある。

アポモルヒネは,オフ効果の発現が頻回かつ重度である場合にレスキュー療法として注射できるドパミン作動薬である。作用発現は速いが(5~10分),持続時間は短い(60~90分)。アポモルヒネ2~6mgの皮下投与は,必要に応じて1日5回まで可能である。まず,起立性低血圧を確認するための試験投与として2mgを投与する。血圧は仰臥位および立位で投与前と投与後20分,40分,および60分に確認する。その他の有害作用は他のドパミン拮抗薬と同様である。悪心は,アポモルヒネ投与の3日前から トリメトベンズアミド(trimethobenzamide)を300mg,経口,1日3回で開始し,これを治療の最初の2カ月間継続することによって予防できる。

一部の国では,アポモルヒネを皮下ポンプで使用することが可能であり,機能改善手術の対象とならない進行したパーキンソン病患者に対して,レボドパ投与ポンプの代わりに使用できる。

選択的MAO-B阻害薬

選択的MAO-B阻害薬としては,セレギリンやラサギリンなどがある。

セレギリンは,脳内のドパミンを分解する2大酵素の1つを阻害し,それによりレボドパ1回量の作用を延長させる。軽度のオフ効果が認められる一部の患者では,セレギリンはレボドパの有効性を延長させるのに役立つ。最初にセレギリンを単独で用いると,軽度の症状がコントロールされ,結果としてレボドパの使用を約1年遅らせることができる。この薬剤からはアンフェタミン様の代謝物が生成されるため,非選択的MAO阻害薬を服用している患者が食品[例,ある種のチーズ]に含まれるチアミンを摂取すると,ときに高血圧クリーゼが誘発されるが,5mg,経口,1日2回の投与でこの作用が現れることはない。事実上,セレギリンには有害作用はないが,レボドパによるジスキネジア,精神的な有害作用,および悪心を悪化させる可能性があるため,レボドパの減量が必要である。セレギリンはまた,頬粘膜吸収用に作られた製剤(セレギリンザイディス)としても利用可能である。

ラサギリンは,セレギリンと同じ酵素を阻害する。疾患の早期および後期に効果的であり,忍容性も良好である;ラサギリン1~2mg,経口,1日1回の使用は,セレギリンのそれと同様である。セレギリンと異なり,アンフェタミン様の代謝物が生成されることはないため,理論的には,患者がチアミンを摂取したときに高血圧クリーゼが起こるリスクがラサギリンではより低い。

抗コリン薬

抗コリン薬は疾患初期に単剤療法として,その後はレボドパの補助薬として用いることができる。振戦に最も効果的である。用量は非常に緩徐に増量する。有害作用には,認知障害や口腔乾燥などがあり,これらは高齢者においては特に煩わしく,薬剤の使用にあたり主要な問題となりうる。したがって,抗コリン薬は通常,振戦優位なパーキンソン病の若年患者とジストニアの要素が一部みられる若年患者にのみ使用される。まれに,認知障害または精神障害のない高齢患者で補助的治療として使用される。

マウスモデルを使用した一部の研究によると,抗コリン薬はタウ関連病態と神経変性を促進する可能性があるため,使用を制限すべきであるとされている;病態が促進される程度は,中枢性の抗コリン作用と相関する(1 治療に関する参考文献 パーキンソン病は,安静時振戦,筋強剛(固縮),緩徐で減少した動作(運動緩慢),および歩行または姿勢の不安定性を特徴とする,緩徐に進行する神経変性疾患である。診断は臨床的に行う。治療は脳内のドパミン系の機能を回復することを目的とし,レボドパに加えてカルビドパおよび/または他の薬剤(例,ドパミン作動薬,MAO-B阻害薬,アマンタジン)を投与する。認知症のない患者における生活に支障を来す難治性の症状には,脳深部刺激療法または凝固術ならびにレボ... さらに読む , 2 治療に関する参考文献 パーキンソン病は,安静時振戦,筋強剛(固縮),緩徐で減少した動作(運動緩慢),および歩行または姿勢の不安定性を特徴とする,緩徐に進行する神経変性疾患である。診断は臨床的に行う。治療は脳内のドパミン系の機能を回復することを目的とし,レボドパに加えてカルビドパおよび/または他の薬剤(例,ドパミン作動薬,MAO-B阻害薬,アマンタジン)を投与する。認知症のない患者における生活に支障を来す難治性の症状には,脳深部刺激療法または凝固術ならびにレボ... さらに読む )。

一般的に用いられる抗コリン薬として,ベンツトロピンおよびトリヘキシフェニジルがある。

振戦の治療には,抗コリン作用をもつ抗ヒスタミン薬(例,ジフェンヒドラミン25~50mg,経口,1日2回~1日4回,オルフェナドリン[orphenadrine]50mg,経口,1日1回~1日4回)がときに有用である。

抗コリン作用を有する三環系抗うつ薬(例,アミトリプチリン10~150mg,経口,就寝時)は,レボドパの補助薬として,抑うつの治療に有用となりうる。

カテコールO-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬

この種の薬剤(例,エンタカポン,トルカポン)は,レボドパおよびドパミンの分解を阻害することから,レボドパの補助薬として有用とみられている。レボドパを長期服用している患者において,レボドパに対する反応が服用間隔の終わりまでに進行性に減弱していく場合(wearing off効果として知られる)によく使用される。

エンタカポンは,レボドパおよびカルビドパとの併用で使用できる。レボドパの服用毎にエンタカポン200mgを投与し,最大200mg,1日8回まで投与する。

トルカポンは血液脳関門を通過できるため,より強力なCOMT阻害薬である;しかしながら,まれに肝毒性が報告されているため,あまり使用されない。エンタカポンでオフ効果を十分にコントロールできない場合は,適切な選択肢である。トルカポンの用量は100mgから最大200mg,1日3回まで徐々に増量する。肝酵素値を定期的にモニタリングしなければならない。ALTもしくはAST値が正常範囲の上限の2倍以上に上昇した場合,または肝傷害を示唆する症状と徴候が生じた場合は,トルカポンを中止すべきである。

手術

薬剤が無効であるか耐えがたい有害作用が生じた場合は,脳深部刺激術や凝固術を含めた外科的治療を考慮してもよい。

レボドパに誘発されたジスキネジアまたは顕著な運動症状の変動がみられる患者には,基底核の過活動を調節して,それによりパーキンソン病のパーキンソン症状を減らすため,視床下核または淡蒼球内節の脳深部刺激術がしばしば推奨される。振戦のみの患者では,視床中間腹側核の刺激がときに推奨される;しかしながら,多くの患者は他の症状も有するため,振戦も他の症状も軽減する,視床下核の刺激が通常は望ましい。

凝固術は視床に向けた淡蒼球内節からの過活動を止めるのが目的であり,振戦優位なパーキンソン病の患者では振戦をコントロールするために視床切除がときに行われる。しかしながら,凝固術は可逆的ではなく,経過に合わせて調節することもできない;嚥下困難や構音障害といった重度の有害作用の可能性があるため,両側の凝固術は推奨されない。視床下核を含めた凝固術は,重度のバリズムを引き起こすため,禁忌である。

脳神経外科手術は認知障害や精神障害を増悪させる可能性があり,精神機能がさらに障害されるリスクが,運動機能のいかなる改善効果をも上回るため,認知障害,認知症,または精神障害のある患者は手術の候補とはならない。

集束超音波治療

集束超音波治療は,運動機能を妨げている少量の組織を破壊する目的で用いられる。治療目標は振戦の制御である。集束超音波治療はまだ実験段階であるが,将来利用できるようになる可能性がある。

理学療法

活動性を最大限に引き出すことが目標である。患者は可能な範囲で最大限,日常活動を増やすべきである。不可能であれば,定期的な運動プログラムを伴う理学療法または作業療法が,体調を整えるのに役に立つ可能性がある。治療者は適応方法を患者に教え,家庭に適切に適応できるよう助けることがある(例,転倒のリスクを減少させるために手すりを設置する)。

便秘(疾患,抗パーキンソン病薬,および/または非活動性による)を予防または緩和するために,高繊維食を摂取し,可能であれば運動し,十分な量の水分を飲むべきである。栄養補助食品(例,オオバコ)および刺激性下剤(例,ビサコジル10~20mg,経口,1日1回)が役立つ可能性がある。

介護者と終末期の問題

パーキンソン病は進行性なので,患者はいずれ日常生活に介助を必要とするようになる。パーキンソン病の身体的および心理的影響,ならびに患者の機能をできるだけ補助する手段について学ぶ方法を介護者に紹介すべきである。終末期のケアは介護者に疲労とストレスをもたらすため,支援団体と連絡を取って社会的および心理的支援を求めるよう介護者に促すべきである。

治療に関する参考文献

  • 1.Yoshiyama Y, Kojima A, Itoh K, Uchiyama T, Arai K: Anticholinergics boost the pathological process of neurodegeneration with increased inflammation in a tauopathy mouse model.Neurobiol Dis 2012 45 (1):329–36, 2012. doi: 10.1016/j.nbd.2011.08.017.

  • 2.Yoshiyama Y, Kojima A, Itoh K, et al: Does Anticholinergic Activity Affect Neuropathology?Implication of Neuroinflammation in Alzheimer's Disease.Neurodegener Dis 15 (3):140-148, 2015.doi: 10.1159/000381484.

要点

  • パーキンソン病はシヌクレイノパチーの一種であり,そのため他のシヌクレイノパチー(例,レビー小体型認知症,多系統萎縮症)と重複する可能性がある。

  • 特徴的な性質に基づきパーキンソン病を疑う:安静時振戦,筋強剛,緩徐および減少した動作,および姿勢と歩行の不安定性。

  • パーキンソン病と似た症状を引き起こす疾患とパーキンソン病の鑑別は,主に病歴と身体診察の結果に基づくが,レボドパに対する反応試験も参考し,ときに神経画像検査が有用となる場合もある。

  • 典型的にはレボドパ/カルビドパ(治療の主流)を使用するが,他の薬剤(アマンタジン,ドパミン作動薬,MAO-B阻害薬,COMT阻害薬)も,レボドパ/カルビドパの前および/または同時に使用する場合がある。

  • 最適な薬物療法に対する抵抗性の症状があり,認知障害や精神障害がない患者には,脳深部刺激術などの外科的手技を考慮する。

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