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失認

執筆者:

Juebin Huang

, MD, PhD, Department of Neurology, University of Mississippi Medical Center

最終査読/改訂年月 2019年 2月
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失認とは,1つまたは複数の感覚において対象を同定できなくなった状態である。診断は臨床的に行うが,しばしば神経心理学的検査のほか,原因を同定するために脳画像検査(例,CT,MRI)も施行される。予後は損傷の性質および程度と患者の年齢に依存する。特異的な治療法はないが,言語療法および作業療法が機能の代償に役立つことがある。

失認はまれである。

病因

失認は,知覚,記憶,および同定のプロセスを統合する脳領域の損傷(例,梗塞 虚血性脳卒中 虚血性脳卒中とは,局所的な脳虚血に起因して突然生じる神経脱落症状のうち,永続的な脳梗塞(例,MRIの拡散強調画像で陽性となるもの)を伴うものである。一般的な原因は(頻度の高い順に)太い動脈のアテローム血栓性閉塞;脳塞栓症(塞栓性脳梗塞);深部の細い脳動脈の非血栓性閉塞(ラクナ梗塞);および近位部の動脈狭窄に加えて動脈分水嶺領域の脳血流量を減少させる血圧低下を伴うもの(血行力学性の脳卒中)である。診断は臨床的に行うが,出血を除外して脳卒中... さらに読む 虚血性脳卒中 腫瘍 頭蓋内腫瘍の概要 頭蓋内腫瘍は脳またはその他の構造物(例,脳神経,髄膜)を侵しうる。腫瘍は通常,成人期初期または中期に発生するが,どの年齢層でも発生しうる;現在は高齢者における頻度が増加している。脳腫瘍はルーチンの剖検の約2%で発見される。 腫瘍は良性の場合もあるが,頭蓋内には腫瘍が増大する余地がないため,たとえ良性の腫瘍でも重篤な神経機能障害や死を招く可... さらに読む 頭蓋内腫瘍の概要 膿瘍 脳膿瘍 脳膿瘍は脳内に膿が蓄積した状態である。症状としては,頭痛,嗜眠,発熱,局所神経脱落症状などがある。診断は造影MRIまたはCTによる。治療は抗菌薬に加えて,通常はCTガイド下穿刺吸引術または外科的ドレナージによる。 (脳感染症に関する序論も参照のこと。) 脳膿瘍は,脳の炎症領域が壊死に陥り,その周囲を神経膠細胞と線維芽細胞が被膜で覆うことによって形成される。膿瘍周囲の浮腫は,膿瘍そのものと同様に,頭蓋内圧を亢進させることがある。... さらに読む 脳膿瘍 ,または外傷 外傷性脳損傷(TBI) 外傷性脳損傷(TBI)は,脳機能を一時的または恒久的に障害する脳組織の物理的損傷である。診断は臨床的に疑い,画像検査(主にCT)により確定する。初期治療は確実な気道確保,十分な換気,酸素化,および血圧の維持で構成される。損傷が重度の患者では,しばしば外科手術が必要となり,頭蓋内圧亢進の追跡および治療のためにモニターを設置し,頭蓋内圧亢進に... さらに読む 外傷性脳損傷(TBI) によるもの)または変性(例,アルツハイマー病 アルツハイマー病 アルツハイマー病は進行性の認知機能低下を引き起こし,大脳皮質および皮質下灰白質におけるβアミロイド沈着および神経原線維変化を特徴とする。 (せん妄および認知症の概要と認知症も参照のこと。) 神経認知障害の1つであるアルツハイマー病は,認知症の最も一般的な原因であり,高齢者の認知症の60~80%を占める。米国では,65歳以上の人々の10%がアルツハイマー病を有すると推定されている。アルツハイマー病の有病率は加齢とともに上昇する:... さらに読む パーキンソン病認知症 レビー小体型認知症およびパーキンソン病認知症 レビー小体型認知症は,皮質ニューロン細胞質内のレビー小体と呼ばれる細胞封入体を特徴とする,慢性の認知機能低下である。パーキンソン病認知症(Parkinson disease dementia)は,黒質のレビー小体を特徴として認知機能が低下する病態であり,パーキンソン病の後期に発生する。 (せん妄および認知症の概要と認知症も参照のこと。) 認知症とは,慢性的かつ全般的で,通常は不可逆的な認知機能の低下である。... さらに読む )によって生じる。

種類

個々の脳病変がそれぞれ異なる形態の失認を引き起こすこともあり,いずれの感覚にも起こりうる。典型的には,以下のうち1つの感覚のみが侵される:

  • 聴覚(聴覚失認―電話の着信音などの音を介して対象を同定できない状態)

  • 味覚(味覚失認)

  • 嗅覚(嗅覚失認)

  • 触覚(触覚失認)

  • 視覚(視覚失認)

その他の失認として,1つの感覚内で非常に特異的かつ複雑なプロセスが侵されるものがある。

相貌失認とは,一般的な顔の特徴や物体は同定できるにもかかわらず,親しい友人などよく知っている顔を同定できない,または一群の対象の中から個々の対象を弁別できない状態である。相貌失認はしばしば下側頭葉の損傷に伴って発生し,多くの場合,両側性の小さな病変が特に紡錘状回によくみられる。

病態失認とは,障害の存在に対する認識の欠如,または存在する障害への病識の欠如を指す。これはしばしば右(非優位)半球の頭頂葉損傷(通常は急性脳卒中または外傷性脳損傷によって起こる)に合併する。複数の失認がみられる患者は,ある失認には気づいていなくとも,他の失認については完全に認識している場合がある。病態失認の患者は,運動障害を否定し,たとえ半身が完全に麻痺していても,どこも悪いところはないと主張する。麻痺した部位を見せられると,患者はそれが自身の体の一部であることを否定することがある。

しばしばみられる関連現象として,患者が麻痺した部位や感覚が低下した部位(半側不注意),あるいはその周囲の空間(半側空間無視)を無視することがある。半側空間無視は身体の左側に起こることが最も多い。

頭頂葉の病変からは体性感覚失認が生じることもある。体性感覚失認のある患者は,損傷部位とは反対の手に置かれたありふれた物体(例,鍵,安全ピン)をなかなか同定できない。しかしながら,その物体を見れば,直ちに認識し,同定することができる。

後頭側頭葉の病変は以下の症状を引き起こす:

  • よく知っている場所を認識できない(環境失認)

  • 視覚障害(視覚失認)

  • 色覚異常(一色覚)

右側頭葉の病変は以下の症状を引き起こす:

  • 音を解釈できない(聴覚失認)

  • 音楽の知覚の障害(失音楽)

診断

  • ベッドサイドでの神経学的検査

  • 神経心理学的検査

  • 脳画像検査

ベッドサイドで,患者に視覚,触覚,その他の感覚を用いて一般的な物体を同定するように指示する。半側空間無視が疑われる場合は,身体の麻痺部分または患側視野内の物体を同定するように指示する。

個々の感覚における一次性な障害を検出するため,または失認に対する検査の妨げとなりうるコミュニケーション能力の評価を行うため,より詳細な神経学的診察 神経学的診察に関する序論 神経学的診察は,診察室に入ってくる患者を注意深く観察することから始まり,観察は病歴聴取の間も継続する。機能面の障害が明確になるように,患者への介助は最小限に留めるべきである。姿勢や歩容とともに,患者が診察台に移動する際の速さ,対称性,および協調運動を注意深く観察する。また患者の物腰,服装,および応答から,患者の気分および社会的適応について... さらに読む を行う。例えば,軽い触覚に異常があると,たとえ皮質機能に異常がなくても,物体を知覚できない可能性がある。また,失語も患者による意思表出を妨げる。神経心理学的検査は,より微妙な失認の同定に役立つことがある。

中枢病変(例,梗塞,出血,腫瘤)の評価,および変性疾患を示唆する萎縮がないかの確認のために,脳画像検査(例,場合により血管造影プロトコルを用いるCTまたはMRI)が必要である。

予後

失認からの回復には,以下の因子が影響する:

  • 病変の種類,大きさ,局在

  • 障害の程度

  • 患者の年齢

  • 治療の有効性

自然に治癒する,または可逆的な原因の場合,回復の大部分が最初の3カ月以内にみられるが,最長1年までは引き続き様々な程度まで改善が得られる。

治療

  • 原因の治療

  • 言語療法または作業療法

可能であれば,失認の原因を治療する(例,脳膿瘍に対し外科手術かつ/または抗菌薬,脳腫瘍に対し外科手術かつ/または放射線)。

言語療法士または作業療法士によるリハビリテーションは,患者が障害を代償する方法を学習するのに役立つ。

要点

  • 失認はまれであるが,あらゆる感覚が侵される可能性がある。

  • 失認の診断は,患者に物体を同定するよう指示するか,または微妙な失認の場合は神経心理学的検査を実施することによる。

  • 脳画像検査を施行して,原因病変を評価する。

  • 障害を代償するため,言語療法士または作業療法士によるリハビリテーションを勧める。

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