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複合性局所疼痛症候群(CRPS)

(反射性交感神経性ジストロフィーおよびカウザルギー)

執筆者:

John Markman

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry;


Sri Kamesh Narasimhan

, PhD, University of Rochester

最終査読/改訂年月 2014年 4月
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複合性局所疼痛症候群(CRPS)は,軟部組織もしくは骨損傷後(I型)または神経損傷後(II型)に発生して,当初の組織損傷から予測されるより重度で長期間持続する,慢性の神経障害性疼痛である。その他の症状として,自律神経性の変化(例,発汗,血管運動異常),運動機能の変化(例,筋力低下,ジストニア),萎縮性の変化(例,皮膚または骨萎縮,脱毛,関節拘縮)などがみられる。診断は臨床的に行う。治療法としては,薬剤投与,理学療法,交感神経ブロックなどがある。

かつて,CRPS I型は反射性交感神経性ジストロフィー (Reflex Sympathetic Dystrophy Syndrome AssociationによるComplex Regional Pain Syndrome: Treatment Guidelines も参照),II型はカウザルギーと呼ばれていた。どちらの病型も若年成人で最もよくみられ,女性の方が男性より2または3倍多い。

病因

CRPS I型は,典型的には外傷(通常は手または足)に続いて発生し,挫滅損傷(特に下肢)で最もよくみられる。一方で四肢切断,急性心筋梗塞,脳卒中,または癌(例,肺,乳房,卵巣,中枢神経系)に続発することもあり,約10%の症例では原因不明である。CRPS II型はI型と類似するが,末梢神経に明らかな損傷が認められる。

病態生理

病態生理は明らかでないが,末梢の侵害受容器および中枢神経系の感作と神経ペプチド(サブスタンスP,カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の放出が疼痛および炎症の持続に寄与する。CRPSは他の神経障害性疼痛症候群よりも交感神経系の関与が強く,中枢性に交感神経活動が亢進するとともに,末梢の侵害受容器にノルアドレナリン(交感神経伝達物質)に対する感作が生じ,これらの変化によって発汗異常や血管収縮による血流低下を来すことがある。しかしながら,交感神経系に対する処置(中枢性または末梢性の交感神経ブロック)が奏効するのは一部の患者のみである。

症状と徴候

症状は非常に多彩で,単一のパターンに従うものではなく,感覚異常,局所の自律神経異常(血管運動または発汗),および運動異常がみられる。

疼痛(焼けつくような痛みや疼くような痛み)がよくみられる。1つの末梢神経の分布には一致せず,環境変化や精神的ストレスにより悪化することがある。アロディニアや痛覚過敏が生じることもある。疼痛によって患肢の使用が制限されることも多い。

皮膚の血管運動性変化(例,発赤,斑状,青白い変色;皮膚温の上昇または低下)や発汗運動の異常(皮膚の乾燥または発汗過多)がみられることもある。かなり強い限局性の浮腫が生じることがある。その他の症状としては,萎縮性の異常(例,光沢を伴う皮膚萎縮,爪の亀裂や過度の伸長,骨萎縮,脱毛)や運動機能の異常(筋力低下,振戦,攣縮,手指の屈曲固定または内反尖足位を伴うジストニア)などがある。関節可動域がしばしば制限され,ときに関節拘縮に至ることもある。症状のために切断後の義肢装着が困難になることもある。

心理的苦痛(例,抑うつ,不安,怒り)がよくみられ,それらは原因不明という状況,効果的な治療法の欠如,長期に及ぶ経過によって助長される。

診断

  • 臨床的評価

CRPSと確定診断するには,以下の臨床基準を満たす必要がある:

  • 疼痛が発生している(通常は灼熱痛)

  • アロディニアまたは痛覚過敏を認める

  • 局所の自律神経失調(血管運動または発汗運動異常)を認める

  • 症状を説明できる他の疾患の所見を認めない

他にも疾患がある場合は,CRPSの可能性がある,ないしCRPSの可能性が高いと考えるべきである。

その他の症状や所見が診断の裏付けとなる場合があり,具体的には浮腫,萎縮性の異常,患部の皮膚温の変化などがある。臨床的評価の判断が難しい場合や,得られた所見が診断確定に有用と考えられる場合は,サーモグラフィーを用いて皮膚温の変化を測定してもよい。骨変化(例,X線写真での脱石灰化,3相骨シンチグラフィーでの集積亢進)が検出されることがあるが,通常は診断が難しい場合にのみ評価される。ただし,外傷後にはCRPS以外の患者でも画像検査で異常と認めることがある。

診断および治療を目的として,交感神経ブロック(星状神経節または腰部)を用いることができる。しかしながら,CRPSの全ての疼痛が交感神経依存性というわけではなく,また神経ブロックは交感神経以外の神経線維にも影響を及ぼす可能性があるため,偽陽性や偽陰性の判定がよくみられる。交感神経異常に対する別の検査として,生理食塩水(プラセボ)またはフェントラミン1mg/kgを10分かけて点滴静注しながら疼痛スコアを記録する方法があり,プラセボではなくフェントラミン投与後に疼痛が軽減すれば,交感神経依存性疼痛と示唆される。

予後

予後は様々であり,予測は困難である。CRPSは寛解することもあれば,何年も安定して経過することもあり,また少数の患者では,進行して他の部分にまで波及する。

治療

  • 集学的治療(例,薬剤,理学療法,交感神経ブロック,心理学的治療,ニューロモジュレーション,鏡療法)

治療は複雑であり,満足のいく効果は得られない場合が多く,特に開始が遅れるとその可能性が高くなる。具体的には,薬剤投与,理学療法,交感神経ブロック,心理学的治療,ニューロモジュレーションなどがある。比較試験はほとんど実施されていない。

三環系抗うつ薬,抗てんかん薬,コルチコステロイドなど,神経障害性疼痛に使用する薬剤の多く( 神経障害性疼痛に対する薬剤)を試してもよいが,特に優位性が示されたものはない。特定の患者には,オピオイド鎮痛薬による長期治療が有用となりうる。

交感神経依存性疼痛を有する患者の一部では,局所交感神経ブロックにより疼痛を緩和でき,それにより理学療法が可能になる。経口鎮痛薬(NSAID,オピオイド,様々な鎮痛補助薬)でも,リハビリテーションが可能になるまで疼痛を緩和できる可能性がある。

ニューロモジュレーションとしては,埋込み型脊髄刺激装置の使用が増えてきている。経皮的電気神経刺激(TENS)は,様々な刺激パラメータを設定して複数の部位に適用するが,長期間にわたり試すべきである。末梢神経を標的とする埋込み型神経刺激装置(例,一部の頭痛症候群に対する後頭神経刺激)が有益となりうる。ニューロモジュレーションのその他の方法としては,患部を強くさする手技(反対刺激)や鍼治療などがある。他よりも効果的なニューロモジュレーションの方法は明らかになっておらず,また,ある方法に対する反応が不良であっても,必ずしも別の方法でも反応不良となるわけではない。

オピオイド,麻酔薬,およびクロニジンのneuraxial infusionが有用となることもあり,またバクロフェンの髄腔内投与によって少数の患者でジストニアの軽減が得られている。

理学療法は必須である。目標には,筋力強化,可動域の増大,職業的リハビリテーションを含める。

幻肢痛または脳卒中によるCRPS I型の患者で鏡療法が有益であったことが報告されている。まず患者の下肢の間に大きな鏡を置く。鏡に健側の下肢を映し,患側(疼痛がある方または失った方)の下肢は患者から見えないようにして,2本の正常な下肢があるという印象を患者にもたせる。続いて患者に対し,鏡に映った正常な下肢を見ながら,疼痛がある方または失った方の下肢で,正常な下肢と同じ動きを試みるように指示する。この運動を1日に30分間,4週間にわたって行わせると,大半の患者が疼痛の大幅な軽減を報告する。

要点

  • CRPSは外傷(軟部組織,骨,または神経),四肢切断,急性心筋梗塞,脳卒中,または癌に続発することがあるが,明らかな原因がみられない場合もある。

  • 神経障害性疼痛,アロディニアまたは痛覚過敏,および局所の自律神経失調がみられ,かつ他の原因が同定されない場合には,CRPSと診断する。

  • 予後は予測困難であり,治療を行っても満足のいく効果は得られない場合が多い。

  • 複数の方法(例,神経障害性疼痛に対する薬剤,理学療法,交換神経ブロック,心理学的治療,ニューロモジュレーション,鏡療法)を用いて,できるだけ早期に治療する。

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