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筋萎縮性側索硬化症(ALS)とその他の運動ニューロン疾患(MND)

(Lou Gehrig病;ルー・ゲーリッグ病;シャルコー症候群)

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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筋萎縮性側索硬化症とその他の運動ニューロン疾患の特徴は,皮質脊髄路,前角細胞,延髄運動核,またはこれらが複合的に,着実に間断なく進行性に変性することである。症状の重症度は様々であり,筋力低下,筋萎縮,線維束性収縮,情緒不安定,呼吸筋筋力低下などがある。診断は,神経伝導検査,筋電図検査,ならびにMRIおよび臨床検査による他疾患の除外に基づき行う。治療は支持療法による。

末梢神経系疾患の概要も参照のこと。)

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,最も頻度の高い運動ニューロン疾患(MND)である。MNDは末梢神経系だけでなく中枢神経系も侵す。病因は通常不明である。最も強く障害される運動系の部位に応じて病名がつけられ,症状もそれに応じて異なる。

類似の特徴を有するミオパチーは,筋膜,収縮器官,または細胞内小器官の疾患である。

MNDは上位と下位に分類できる;一部の疾患(例,ALS)は両方の特徴を有している。MNDは男性により多く,50代に最もよくみられる。

症状と徴候

上位MND(例,原発性側索硬化症)は,脳幹(皮質延髄路)または脊髄(皮質脊髄路)に分布する運動皮質のニューロンを侵す。一般に症状としては,硬直,巧緻運動障害,および運動のぎこちなさがみられ,通常は最初に口,喉,またはその両方を侵し,続いて四肢へと広がっていく。

下位MNDは,前角細胞または脳神経運動核あるいは骨格筋へと伸びるそれらの遠心性線維の軸索を侵す。球麻痺では,脳幹にある脳神経運動核(延髄核)のみが侵される。通常,患者は顔面の筋力低下,嚥下困難,および構音障害を訴えて受診する。脊髄性筋萎縮症のように(脳神経ではなく)脊髄神経の前角細胞が侵された場合,通常みられる症状としては,筋力低下,筋萎縮,線維束性収縮(肉眼で分かる筋攣縮),筋痙攣などがあり,これらはまず手,足,または舌に現れる。前角細胞を攻撃するエンテロウイルス感染症であるポリオ,およびポリオ後症候群も下位MNDである。

身体所見は,上位MNDと下位MNDとの鑑別( 上位運動ニューロン病変と下位運動ニューロン病変の識別),および下位MNDによる筋力低下とミオパチーによる筋力低下との鑑別( 筋力低下の原因の鑑別:下位運動ニューロンの機能障害とミオパチー*)に有用である。

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上位運動ニューロン病変と下位運動ニューロン病変の識別

特徴

上位病変

下位病変

反射

亢進

減弱または欠如

萎縮

なし*

あり

線維束性収縮

なし

あり

緊張

上昇

低下または欠如

*四肢を長期間使わないと生じることがある。

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筋力低下の原因の鑑別:下位運動ニューロンの機能障害とミオパチー*

特徴

下位運動ニューロンの機能障害

ミオパチー*

筋力低下の分布

遠位 > 近位

近位 > 遠位

線維束性収縮

ありうる

なし

反射

減弱

しばしば保たれる

*神経機能は正常。

>= より障害が強い。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

ほとんどのALS患者は,手(最も多い)または足の痙攣,筋力低下,および筋萎縮からなるランダムな非対称性の症状を訴えて受診する。筋力低下は,前腕,肩,および下肢に進行する。程なくして線維束性収縮,痙縮,深部腱反射亢進,伸展性足底反応,巧緻運動障害,硬直した動き,体重減少,疲労,ならびに顔の表情および舌の動きの制御困難が生じる。

その他の症状としては,嗄声,嚥下困難,言語不明瞭などがあり,嚥下が困難になるために,唾液が増加するようであり,患者は液体でむせやすくなる。

疾患の後期には,情動調節障害(pseudobulbar affect)が生じ,不適切で不随意かつ制御不能の過剰な笑いや号泣がみられる。感覚系,意識,認知,自発的眼球運動,性機能,ならびに尿道および肛門括約筋は通常保たれる。

死因は通常呼吸筋不全である;患者の50%は発症後3年以内に死亡し,5年生存するのは20%,10年生存するのは10%である。30年以上生存することはまれである。ALSを伴う進行性球麻痺(球型ALS)は,より急速に悪化し,死に至る。

進行性球麻痺

脳神経および皮質延髄路に支配される筋が主に侵され,その結果,進行性の咀嚼,嚥下,および発話困難;鼻声;咽頭反射の減弱;線維束性収縮ならびに顔面筋および舌の動きの減弱;ならびに口蓋運動の減弱を来す。誤嚥のリスクがある。皮質延髄路が侵されると,情緒不安定を伴う情動調節障害が生じることがある。

一般に,病変は広がり,球外部にも障害を及ぼす;そのような場合は,球型ALSと呼ばれる。

嚥下困難のある患者の予後は極めて不良である;誤嚥による呼吸器系合併症があれば1~3年以内に死亡することが多い。

進行性筋萎縮症

多くの症例,特に小児期に発症した例における遺伝形式は常染色体劣性である。その他の症例は散発性である。本疾患はあらゆる年齢で発生する。

前角細胞病変は単独で生じることもあれば,皮質脊髄路病変と比べて著明なこともあるが,他のMNDと比べて良性の進行を示す傾向がある。

線維束性収縮が最初の臨床像となることがある。筋萎縮および顕著な筋力低下が両手に始まり,両腕,肩,および下肢へと進行し,最終的に全身に広がる。患者は25年以上生存することもある。

パール&ピットフォール

  • 上位および/または下位運動ニューロン性の筋力低下の特徴(例,伸展性足底反応に加え,萎縮および線維束性収縮)がある患者では,ALSまたは別の運動ニューロン疾患を疑う。

原発性側索硬化症および進行性仮性球麻痺

筋硬直および遠位筋筋力低下の徴候が次第に増大し,原発性側索硬化症では四肢が,進行性仮性球麻痺では下位脳神経が障害される。何年も経ってから線維束性収縮および筋萎縮が起こることがある。これらの疾患は通常,数年かかって完全な機能不全を来す。

診断

  • 電気診断検査

  • 脳MRIおよび(脳神経病変がなければ)頸髄MRI

  • その他の,治療可能な原因を確認するための臨床検査

有意な感覚異常を伴わない進行性,全身性の筋力低下により,診断が示唆される。

鑑別診断

純粋な筋力低下の原因であるその他の疾患を除外すべきである:

  • 神経筋伝達障害

  • 様々なミオパチー(非炎症性および薬剤性を含む)

  • 脊髄性筋萎縮症(主に小児)

  • 多発性筋炎

  • 皮膚筋炎

  • 甲状腺および副腎疾患

  • 電解質異常(例,低カリウム血症,高カルシウム血症,低リン血症)

  • 様々な感染症(例,梅毒,ライム病,C型肝炎)

  • 自己免疫性の運動神経障害

脳神経が侵されている場合,原因が治療可能である可能性は低い。上位および下位運動ニューロン徴候に加え,顔面筋力低下がみられる場合には,ALSが強く示唆される。

パール&ピットフォール

  • 脳神経が侵されていて,かつ所見がALSと矛盾しない場合は,治療可能な他の病態が原因となっている可能性は低い。

検査

電気診断検査を施行し,神経筋伝達障害または脱髄を示す所見がないか確認すべきである。MNDではこうした所見はみられず,通常は疾患の後期に至るまで神経伝導速度は正常である。針筋電図検査は最も有用な検査であり,非患肢でさえ線維性収縮,陽性波,線維束性収縮,およびときには巨大運動単位電位がみられる。

脳MRIが必要である。脳神経性の筋力低下を示す臨床所見も筋電図所見もない場合は,器質的病変を除外するために頸髄MRIが適応となる。

治療可能な原因がないか確認するために,臨床検査を行う。検査には血算,電解質,クレアチンキナーゼ,甲状腺機能検査などがある。

血清および尿タンパクを免疫固定電気泳動し,MNDにまれに伴う異常タンパクがないか確認する。基礎に異常タンパク血症が見つかれば,MNDが腫瘍随伴性であることが示唆され,異常タンパク血症の治療によりMNDが改善する可能性がある。

抗ミエリン関連糖タンパク(MAG)抗体は,ALSに類似することのある脱髄性運動神経障害に伴って認められる。

重金属曝露の可能性がある患者では,尿中に重金属が含まれていないか確認するために24時間蓄尿を行う。

臨床的に疑われるその他の疾患を除外するため,腰椎穿刺を行う;細胞球またはタンパクの値が上昇していれば,別の診断である可能性が高い。

危険因子または病歴から示唆される場合に限り,VDRL(Venereal Disease Research Laboratory)試験,赤沈,および特定の抗体(リウマトイド因子,ライム病抗体価,HIV,C型肝炎ウイルス,抗核抗体[ANA],[抗Hu腫瘍随伴症候群に対して]抗Hu抗体)の測定を行う。

患者が遺伝カウンセリングに関心をもっている場合を除き,遺伝学的検査(例,スーパーオキシドジスムターゼ遺伝子の変異または脊髄性筋萎縮症を引き起こす遺伝学的異常)と酵素測定(例,ヘキソサミニダーゼA)は施行すべきではない;これらの検査で検出される疾患に対する特異的な治療法はない。

治療

  • 支持療法

  • 球型ALSに対してリルゾール

MNDに対する特異的な治療法はない。しかしながら,グルタミン酸拮抗薬であるリルゾールを50mg,経口,1日2回で投与することで,球型ALS患者の生存期間を2~3カ月延長できる。

集学的チームによるアプローチは,患者が進行性の神経障害に対処する助けとなる。

以下の薬剤は症状軽減に役立つ可能性がある:

  • 痙縮に対して,バクロフェン

  • 痙攣に対して,キニーネまたはフェニトイン

  • 唾液産生を抑えるため,強力な抗コリン薬(例,グリコピロニウム,アミトリプチリン,ベンツトロピン,トリヘキシフェニジル,経皮的ヒヨスチン,アトロピン)

  • 情動調節障害(pseudobulbar affect)に対して,アミトリプチリン,フルボキサミン,またはデキストロメトルファンとキニジンの組み合わせ

進行性球麻痺の患者では,嚥下を改善させるための手術で限定的な効果が得られている。

要点

  • 感覚障害を伴わない,びまん性の上位および/または下位運動ニューロン性筋力低下がある患者では,MNDを考慮する。

  • 上位および下位運動ニューロン徴候に加えて顔面筋の筋力低下がみられる患者では,ALSを疑う。

  • その他の疾患を除外するため,脳MRIおよび電気診断検査ならびに臨床検査を行う。

  • 治療の中心は支持療法である(例,生活機能の障害に対する対処を援助するための集学的支援;痙縮,痙攣,情動調節障害などの症状に対して薬物治療)。

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