(プリオン病の概要も参照のこと。)
致死性家族性不眠症(FFI)は,PrP遺伝子の常染色体優性変異によって生じる。平均発症年齢は40歳である(範囲は20代後半から70代前半まで)。期待余命は7~73カ月である。FFIの初期症状としては,入眠困難と睡眠維持困難のほか,認知機能低下,運動失調,精神症状などがある。後期には交感神経系の過活動(例,高血圧,頻脈,高体温,発汗)が起こることもある。
孤発性致死性不眠症(sFI)では,PrP遺伝子の変異がみられない。FFIと比べて平均発症年齢は若干高く,期待余命は若干長い。初期症状としては,認知機能の低下や運動失調などがある。睡眠の異常は,訴えとしては多くないものの,通常は睡眠検査の際に異常を観察できる。
急速に進行する認知障害に加えて,行動または気分の変化,運動失調,および睡眠障害がみられる患者では,可能性の低い候補として致死性不眠症を考慮すべきである。FFIまたはsFIが疑われる場合は,睡眠ポリグラフによる睡眠検査を行うべきである。遺伝子検査により家族性の病型の診断を確定できる。MRIと髄液中の14-3-3タンパクおよびタウタンパクの測定は有用でないが,睡眠ポリグラフおよびPET(視床での代謝低下を認める)で診断を確定することが可能である。
致死性不眠症の治療は支持療法のみである。