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プリオン病の概要

(伝染性海綿状脳症)

執筆者:

Pierluigi Gambetti

, MD, Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2017年 2月

プリオン病は,進行性で治療不能の致死的な脳変性疾患である。

主要な病型としては以下のものがある:

プリオン病は,細胞性プリオンタンパク(PrPC)という脳の正常な細胞表面タンパクのミスフォールディングによって生じるが,このタンパクの正確な機能は不明である。ミスフォールディングが起きたプリオンタンパクは,プリオンまたはスクレイピーPrP(PrPSc)と呼ばれる(ヒツジで発見されたプリオン病の原型を指す名称に由来する)。

プリオン(PrPSc)は病原性を有し,しばしば感染性を示す。以下の機序によってプリオン病を引き起こす:

  • 自己複製:PrPScがPrPCの構造変化を誘導してduplicate PrPScを形成させ,これが連鎖反応的に他のPrPCをPrPScへと変化させていく。この変換プロセスにより,PrPScが脳の様々な領域に広がっていく。

  • 神経細胞死を引き起こす

  • 伝播するようになる

正常なPrPCは水溶性で,プロテアーゼに感受性を示すが,PrPScの大部分は不溶性で,プロテアーゼによる分解に著明な抵抗性を示すため(これはアルツハイマー病のβアミロイドと同様で,βアミロイドはPrPScに似ている),緩徐ながら止めることのできない細胞内蓄積と神経細胞死を引き起こす。これに伴う病理的変化として,グリオーシスや特徴的な空胞(海綿状)変性などがあり,その結果として認知症やその他の神経脱落症状が生じる。症状および徴候は,PrPScへの最初の曝露後数カ月から数年を経て現れる。

認知症患者では,全例でプリオン病を考慮すべきである(特に認知症が急速に進行する場合)。

プリオン病の伝播

プリオン病の発生様式には以下のものがある:

  • 孤発性(原因なく自発的に発生するように見えるもの)

  • 遺伝性(家族性)

  • 感染による伝播

孤発性プリオン病は,最も頻度が高く,全世界での年間発生率は約1/1,000,000人である。始めにPrPScがどのように形成されるかは不明である。

家族性プリオン病は,20番染色体短腕にあるPrP遺伝子の異常によって生じる。プリオン病を引き起こす遺伝子変異は常染色体優性の形式で遺伝する(すなわち,変異を片親から受け継ぐだけで発症する)。また,浸透度も様々であり,変異の種類に応じて,その変異をもつ個人で生涯に臨床徴候が現れる割合も様々である。家族性CJDを引き起こす遺伝子異常もあれば,GSSを引き起こす異常や,CJDとGSSの特徴が混在する疾患を引き起こす異常もある。現在のところ,家族性の致死性不眠症である致死性家族性不眠症(FFI)を引き起こす変異は1つしか同定されていない。PrP遺伝子の変異があると,PrPCのアミノ酸配列が変化し,結果としてミスフォールディングが起こりPrPScになる。特定のコドン(遺伝子の構成単位である塩基配列)の小さな異常は,それ自体が疾患を引き起こすわけではないが,家族性およびその他のプリオン病の主要な症状や進行の速さを規定している可能性がある(1)。

感染により伝播するプリオン病はまれである。伝播の様式には以下のものがある:

  • ヒトからヒト:臓器および組織移植,汚染された手術器具の使用のほか,まれに輸血を介して,医原性に伝播することがある;あるいは,人肉食を介して伝播する場合もある(クールーなど)

  • 動物からヒト:汚染された牛肉の摂取を介して伝播する(vCJDなど)

プリオン病が人と人との偶発的接触によって伝染した例は報告されていない。

プリオン病は多くの哺乳類(例,ミンク,ヘラジカ,シカ,家畜のヒツジおよびウシ)で発生し,食物連鎖を介して動物種間で伝播することがある。しかしながら,動物からヒトへの伝播が観察されたのはvCJDだけであり,それらの事例はウシ海綿状脳症(BSE,狂牛病とも呼ばれる)に罹患した牛の肉をヒトが摂取した後に発生したものである。

米国西部の複数の州,カナダ,そして現在は韓国およびノルウェーにおいて(2),ヘラジカおよびシカのプリオン病である慢性消耗病(CWD)が感染動物の狩猟,食肉処理,または摂食によってヒトに感染する可能性が懸念されている。CWDが動物からヒトに伝播する可能性は低いものの,最近のデータによると,CWDが動物から動物への伝播を数回繰り返すと(野生で起こりうる),種間の障壁が弱まる可能性があることが示されている(3)

伝播に関する参考文献

  • 1.Gambetti P, Kong Q, Zou W, et al: Sporadic and familial CJD: Classification and characterisation. Br Med Bull 66 (1):213–239, 2003. doi: https://doi.org/10.1093/bmb/66.1.213.

  • 2.Benestad SL, Mitchell G, Simmons M, et al: First case of chronic wasting disease in Europe in a Norwegian free-ranging reindeer. Vet Res 47 (1):88.2016. doi: 10.1186/s13567-016-0375-4.

  • 3.Barria MA, Telling GC, Gambetti P, et al: Generation of a new form of human PrPSc in vitro by interspecies transmission from cervid prions. J Biol Chem 4;286 (9):7490–7495, 2011. doi: 10.1074/jbc.M110.198465.

プリオン病の治療

  • 支持療法

プリオン病に対する治療法はない。治療は支持療法による。

この疾患の診断を下したらすぐに患者に事前指示書(例,終末期ケアに関する希望など)を作成するよう勧める。

家族性プリオン病患者の家族には,遺伝カウンセリングが推奨される場合がある。

プリオン病の予防

プリオンは標準的な消毒法に抵抗性を示すため,他の患者や汚染された組織または器具を扱う外科医,病理医,検査技師は感染のリスクがある。

感染組織の取扱いは慎重に行い,汚染された器具は適切な方法で消毒することで,伝播を防ぐことができる。以下のうちいずれか1つを行うことが推奨される:

  • 132℃で1時間の高圧蒸気滅菌

  • 水酸化ナトリウム1Nまたは10%次亜塩素酸ナトリウム溶液への1時間の浸漬

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