Msd マニュアル

Please confirm that you are a health care professional

読み込んでいます

慢性外傷性脳症(CTE:Chronic Traumatic Encephalopathy )

(ボクサー認知症)

執筆者:

Juebin Huang

, MD, PhD, Memory Impairment and Neurodegenerative Dementia (MIND) Center, University of Mississippi Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 2月

慢性外傷性脳症(CTE)は,繰り返す頭部外傷または爆発損傷に続発する進行性の脳変性疾患である。

ボクサー認知症は1920年代に同定され,より新しい用語である慢性外傷性脳症はこれと同じ疾患であると考えられている。慢性外傷性脳症については広く研究が行われてきた。この疾患は,頭部外傷を繰り返し起こした運動選手(アメリカンフットボール選手など)の引退後,あるいは爆発による閉鎖性頭部外傷のために脳損傷を負った兵士にみられることがある。

繰り返し頭部外傷を起こした人の中でも,なぜ一部の人だけが慢性外傷性脳症を発症するのか,また様々な頭部外傷を経験した後にこの疾患を発症するリスクとしてどのようなものがあるのか(例,頭部外傷の回数,加わった力の強さ)は,今のところ不明である。脳震盪(一見軽いものも含む)を複数回起こした運動選手の約3%が,慢性外傷性脳症を発症している。

慢性外傷性脳症の病態生理学的特徴は,過剰にリン酸化されたタウタンパクの沈着による神経原線維変化であり,これが血管周囲,皮質溝の深部,および軟膜下と脳室周囲領域に最も顕著にみられる。

症状と徴候

慢性外傷性脳症の初期症状として,典型的には以下の1つ以上がみられる:

  • 気分の乱れ:抑うつ,易怒性,および/または絶望感

  • 行動の異常:衝動性,爆発性,および/または攻撃性

  • 認知障害:記憶障害,遂行機能障害,および/または認知症

  • 運動系の異常:パーキンソニズム,運動失調,および/または構音障害

明確に異なる2つの臨床経過がある:

  • 若年成人期(例,30歳代)に気分の乱れや行動の異常が現れ,その後認知障害が現れる

  • 高齢期(例,60歳代)に認知障害が現れ,場合によっては気分の乱れや行動の異常がその後に現れる

診断

  • 臨床基準

慢性外傷性脳症の臨床診断基準としては以下のものがある:

  • 頭部外傷の既往

  • 慢性外傷性脳症に一致する症状と徴候

  • 臨床所見を説明できる,より可能性の高い疾患がないこと

これらの基準は研究の場でも使用されている。

通常,CTやMRIなどのルーチンに行われる脳画像検査の結果は正常である。現在のところ,in vivoでの妥当性が証明された慢性外傷性脳症の客観的バイオマーカーは存在しない。

慢性外傷性脳症の確定診断は,剖検時の神経病理学的検証に基づく。

治療

  • 支持療法

特異的な治療法はない。他の認知症の場合と同様に,支持療法が 助けになる可能性がある。例えば,居住環境は明るく,にぎやかで,親しみ慣れたものとし,見当識を強化できるような配慮を施す(例,大きな時計やカレンダーを部屋に置く)べきである。患者の安全を確保する対策(例,徘徊する患者に対して遠隔モニタリングシステムを使用する)を講じるべきである。

予防

予防対策が最も重要な介入である。慢性外傷性脳症は典型的には頭部外傷を繰り返すことで生じるため,脳震盪を起こした人には,安静にして競技への復帰は徐々に行うよう助言すべきである。1シーズンに数回の脳震盪を起こした選手には,競技を続けることのリスクについて助言すべきである。

ここをクリックすると家庭版へ移動します

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP