線維筋痛症

執筆者:Deepan S. Dalal, MD, MPH, Brown University
Reviewed ByBrian F. Mandell, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 3月
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線維筋痛症は,関節外を首座とする一般的な非炎症性疾患であり,全身性の疼痛(ときに重度),筋肉,腱付着部周囲,および隣接する軟部組織の広範な圧痛,筋硬直,疲労感,意識障害,睡眠障害,その他の様々な身体症状を特徴とする。診断は臨床的に行う。治療法としては,運動,局所の加温,ストレス管理,睡眠を改善する薬剤,非オピオイド鎮痛薬などがある。

線維筋痛症ではいずれの線維筋性組織も侵される可能性があり,特に後頭,頸部,肩関節,胸部,腰部,および大腿が侵されやすい。これらの部位には,症状がみられるものの,特異的な組織学的異常はみられない。線維筋痛症の症状および徴候は全身性であり,オーバーユースまたは微小外傷が関連していることが多い軟部組織の限局性の疼痛および圧痛(筋筋膜性疼痛症候群)とは対照的である。

線維筋痛症は一般的な疾患であり,男性より女性で約7倍多いが(通常は若年または中年女性),男性,小児,および青年にも発生することがある。この性差のため,男性ではときに見落とされる。関係のない他の全身性リウマチ性疾患に併発することが多く,そのため,診断および管理が複雑になる。線維筋痛症では,全身性の疼痛症候群の一部として鵞足部や転子部などの滑液包がよく侵されるが,非常に局所的な増悪(「flare」)は線維筋痛症ではない患者の場合と同様に評価すべきである。

線維筋痛症の病因

最新のエビデンスから,線維筋痛症が中枢を介した痛覚感受性の疾患である可能性が示唆されている。原因は不明であるが,ステージ4の睡眠の中断が一因である可能性があり,精神的ストレスも同様である。線維筋痛症は,ウイルス性やその他の全身性感染症(例,ライム病,おそらくCOVID-19[1])または心的外傷的出来事(トラウマ)に続いて一時的に発生することがあるが,抗ウイルス薬や抗菌薬による治療の追加または延長については,効果が実証されていないため,適応とならない。

病因論に関する参考文献

  1. 1.Ursini F, Ciaffi J, Mancarella L, et al: Fibromyalgia: a new facet of the post-COVID-19 syndrome spectrum?Results from a web-based survey.RMD Open.7(3):e001735, 2021.doi: 10.1136/rmdopen-2021-001735.PMID: 34426540; PMCID: PMC8384499.

線維筋痛症の症状と徴候

こわばりと疼痛がしばしば広範囲で緩徐に始まり,うずく感覚を伴う。疼痛は広範囲にわたり,疲労感,筋挫傷,またはオーバーユースで悪化することがある。

患者には典型的に様々な身体症状がみられる。疲労感がよくみられ,また集中困難および全般的な意識障害の感覚などの認知障害も同様に一般的である。多くの患者にはさらに,過敏性腸症候群間質性膀胱炎,または片頭痛もしくは緊張型頭痛の症状がみられる。錯感覚がみられる場合があり,典型的には両側性で,しばしば移動性である。

炎症性関節疾患(例,関節リウマチ)患者における筋骨格痛や,閉塞性睡眠時無呼吸症候群またはうつ病患者における睡眠障害など,併存疾患によって症状が増悪することがある。

患者はストレスを感じたり,緊張したり,不安や疲労感を覚えたり,ときに抑うつ状態になったりする。患者は成績優秀な完全主義者であることが少なくない。

触診すると,筋肉の特異的で独立した部位(圧痛点)に一様でない圧痛を認める点を除き,身体診察では著明な所見は認められない。圧痛のある部位には,腫脹,発赤,熱感はない;このような所見は,別の診断を示唆しているはずである。

線維筋痛症の診断

  • 臨床基準

  • 通常は他の疾患を除外するための検査および詳細な身体診察

以下がみられる患者では,線維筋痛症を疑う:

  • 全身性の疼痛および圧痛,特に身体所見と不釣り合いな場合

  • 広範囲の症状にもかかわらず臨床検査の結果が陰性

  • 主症状として疲労感

広範囲にわたる疼痛が3カ月以上持続している患者では,線維筋痛症の診断を考慮すべきであり,特に様々な身体症状を伴っている場合は強く考慮すべきである。体の左側および右側,ウエストより上および下,ならびに体幹骨(頸椎,胸部前方もしくは胸椎,または腰部)に疼痛がある場合,疼痛が広範囲であるとみなす。

診断はAmerican College of Rheumatologyの臨床基準(1)に基づき,この基準には,関節痛および通常は関節以外の疼痛(ときに広範囲にわたる全身の疼痛を含む)と他の様々な認知症状および身体症状(上で挙げたものなど)の組合せを重症度で分類したものが含まれる。過去の基準は,18ある特定の圧痛点のうちいくつかに圧痛がみられることに依存するものであった。この基準は,圧痛を一貫性をもって評価することが困難であること,圧痛点は強さが変動する場合があること,ならびに症状のみに基づく基準を設けることに利点があると考えられたことから,削除された。しかしながら,圧痛はかなりの頻度でみられるため,一部の専門医は現在もその系統的評価を続けている。

みられる症状の他の原因を調べる検査として,赤血球沈降速度(赤沈)またはC反応性タンパク(CRP)とクレアチンキナーゼ(CK)のほか,おそらくは甲状腺機能低下症およびC型肝炎(疲労感および全身性の筋肉痛を生じることがある)の検査も行うべきである。線維筋痛症では,典型的には,これらの検査で異常がみられない。その他の検査(例,リウマチ性疾患に対する血清学的検査)については,病歴聴取,身体診察,またはルーチン臨床検査での所見から可能性が示唆される場合にのみ行うべきである。

考えられるピットフォールを回避するために,以下を考慮すべきである:

パール&ピットフォール

診断に関する参考文献

  1. 1.Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles MA, et al: 2016 revisions to the 2010/2011 fibromyalgia diagnostic criteria.Semin Arthritis Rheum 46(3):319–329, 2016.doi: 10.1016/j.semarthrit.2016.08.012.

線維筋痛症の治療

  • ストレッチ運動および有酸素運動,局所の加温,ならびにマッサージ

  • ストレス管理

  • 三環系抗うつ薬,セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬,GABA作動薬,シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)などの薬剤

  • 非オピオイド鎮痛薬

ストレッチ運動,有酸素運動,十分な熟睡,局所の加温,および愛護的なマッサージで症状が緩和することがある。総合的なストレス管理(例,深呼吸訓練,瞑想,心理的支援,必要な場合カウンセリング)が重要である。

症状がある筋肉を愛護的にストレッチする運動を毎日行うべきであり,ストレッチは約30秒間保持し,それを5回ほど繰り返すべきである。有酸素運動(例,速歩,水泳,エクササイズバイク)は,症状を軽減することがある。

睡眠の改善が極めて重要である。睡眠障害(例,閉塞性睡眠時無呼吸症候群)および睡眠の妨げとなりうるその他の因子について,スクリーニングを行うべきである。良好な睡眠衛生も重視すべきである。

線維筋痛症に対する薬物療法(例,アミトリプチリン,デュロキセチン,ミルナシプラン,およびプレガバリン)は,睡眠を改善し,ストレスを管理するための運動の補助的手段として用いることができ,これらで疼痛をいくらか軽減できる可能性がある。低用量経口三環系抗うつ薬(例,アミトリプチリン10~50mg)や薬理学的に類似するシクロベンザプリン(cyclobenzaprine)など,鎮静作用を有する薬剤を就寝時に服用することで,深い睡眠が促進され,筋肉痛が軽減する可能性がある。最小有効量を用いるべきである。セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(例,デュロキセチン)は妥当な代替薬であり,特に重度の疲労感と抑うつがみられる患者に適している。プレガバリンおよびガバペンチンは,より重度の睡眠障害を有する患者に特に有用となることがある。眠気,口腔乾燥,その他の有害作用により,これらの薬剤の一部または全てに患者(特に高齢患者)が耐えられなくなることがある。

非オピオイド鎮痛薬(例,アセトアミノフェン,非ステロイド系抗炎症薬[NSAID])が一部の患者で助けになることがある。オピオイドは避けるべきである。

1~5mLの0.5%ブピバカインまたは1%リドカインの時折の注射によって,日常生活に支障を来すほどの局所の圧痛が軽減する可能性があるが,定期的な使用がエビデンスで支持されておらず,線維筋痛症による広範囲にわたる疼痛には対処できないため,そのような注射を初期治療として頼るべきではない。

睡眠障害を悪化させている可能性のある薬剤を特定するために,患者が服用している薬剤を精査すべきである。そのような薬剤は避けるべきである。不安抑うつ,特に双極症がもしあれば,それらに対処すべきである。

また,カプサイシン,バイオフィードバックマッサージ催眠療法カイロプラクティックによる介入のほか,European Alliance of Associations for Rheumatology(EULAR)の線維筋痛症の管理に関する推奨で挙げられているその他の補完代替療法についても,エビデンスによる裏付けがある(1)。これらの治療法の一部がランダム化試験やシステマティックレビューで対照と比較して評価されているが,これらの治療法の全体的な効果は小さい。

治療に関する参考文献

  1. 1.Macfarlane GJ, Kronisch C, Dean LE, et al: EULAR revised recommendations for the management of fibromyalgia.Ann Rheum Dis.76(2):318-328, 2017.doi: 10.1136/annrheumdis-2016-209724.

線維筋痛症の予後

線維筋痛症は慢性である傾向があるが,ストレスが減れば自然に改善することがある。また線維筋痛症は頻回に再発することもある。包括的な支援プログラムによる治療を受ける患者については,機能予後は通常良好であるが,症状はある程度続く傾向にある。気分症が併存し,その対処が行われていない場合,予後不良となる可能性がある。

要点

  • 全身性の疼痛および圧痛と疲労感が説明できないか,何年も持続しているか,または身体所見や臨床検査所見に対して不釣り合いな場合は,線維筋痛症を疑う。

  • 赤血球沈降速度(赤沈)またはC反応性タンパク(CRP),クレアチンキナーゼ(CK),ならびに甲状腺機能低下症およびC型肝炎の検査を考慮するとともに,慢性疲労症候群リウマチ性多発筋痛症の可能性を考慮する。臨床的評価により全身性リウマチ性疾患が特異的に示唆される場合に限り,さらなる検査を行う。

  • 一見すると関節リウマチ全身性エリテマトーデスなどの全身性リウマチ性疾患の疼痛を伴う増悪のように思えるが,そうした増悪を確定する臨床所見も臨床検査所見も認められない患者では,線維筋痛症を考慮する。

  • 理学療法,ストレス管理,および睡眠の改善に重点を置くことで治療し,また疼痛に対して必要な場合は非オピオイド鎮痛薬の投与により治療する。

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