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呼吸困難

執筆者:

Noah Lechtzin

, MD, MHS, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 4月
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呼吸困難とは,不快または苦しさを感じる呼吸である。患者による呼吸困難の感じ方および訴え方は原因によって異なる。

病態生理

呼吸困難は比較的頻度の高い症状であるが,呼吸に伴う不快感の病態生理はほとんど解明されていない。他の種類の有害な刺激に対する受容器とは異なり,呼吸困難に特化した受容器は存在しない(ただし,MRIを用いた最近の研究では,呼吸困難の知覚を仲介している可能性のある特定の領域が中脳でいくつか同定されている)。

呼吸困難の感覚は,化学受容器への刺激,呼吸運動の機械的異常,そして中枢神経系によるこれらの異常についての知覚の間で起こる複雑な相互作用の結果である可能性が高い。神経学的な刺激と肺および胸壁の機械的運動との間の不均衡をneuromechanical uncoupling(神経機械的解離)と記載している著者もいる。

病因

最も一般的な原因は以下のものである:

慢性肺疾患または慢性心疾患の患者における呼吸困難で最も一般的な原因は以下のものである:

  • 原疾患の増悪

しかし,このような患者で急性に他の病態が発生することもある(例,喘息の長期罹患患者では心筋梗塞が,慢性心不全の患者では肺炎が発生することがある)。

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病因論に関する参考文献

評価

病歴

現病歴の聴取では,呼吸困難の持続時間,発症の時間的要素(例,突発性,潜行性),および誘発または増悪因子(例,アレルゲンへの曝露,寒さ,労作,仰臥位)を対象に含めるべきである。呼吸困難を引き起こすために必要な活動レベルを評価することで重症度を決定しうる(例,安静時呼吸困難は階段を昇る時のみの呼吸困難より重症である)。呼吸困難の状態が患者の普段の状態からどれだけ変化しているかに注意すべきである。

システムレビュー(review of systems)では,胸痛または胸部圧迫感(肺塞栓症,心筋虚血,肺炎);下方になった部分の浮腫,起座呼吸,および発作性夜間呼吸困難(心不全);発熱,悪寒,咳嗽,および痰の産生(肺炎);黒いタール便または重度の月経(貧血を引き起こしうる潜在性の出血);ならびに体重減少または盗汗(がんまたは慢性肺感染症)などの,可能性のある原因を示唆する症状がないか検討すべきである。

既往歴の聴取では,呼吸困難を引き起こすことが知られている,喘息,COPD,および心疾患などの疾患に加え,他の病因の危険因子についても対象に含めるべきである:

  • 喫煙歴―がん,COPD,および心疾患の危険因子

  • 家族歴,高血圧,およびコレステロール高値―冠動脈疾患の危険因子

  • 最近の不動状態または手術,最近の長距離旅行,がんの存在または潜在がんの危険因子もしくは徴候,血栓の既往歴または家族歴,妊娠,経口避妊薬の使用,腓腹部の疼痛,下肢の腫脹,および深部静脈血栓症ー肺塞栓症の危険因子

職業曝露(例,ガス,煙,アスベスト)がないか調べるべきである。

身体診察

バイタルサインを評価して,発熱,頻脈,および頻呼吸がないか確認する。

診察では心血管系および肺に焦点を当てる。

肺の完全な診察を行い,特に空気の出入りは十分か,呼吸音は左右対称か,ならびに断続性ラ音,類鼾音,吸気性喘鳴,および呼気性喘鳴がないかを調べる。肺の硬化徴候(例,やぎ声,打診時の濁音)がないか検討すべきである。頸部,鎖骨上部,ならびに鼠径部の視診および触診を行い,リンパ節腫脹がないか調べるべきである。

視診で頸静脈怒張がないか,触診で下肢および仙骨前部に圧痕性浮腫がないか確認すべきである(ともに心不全を示唆する)。

過剰心音,心音減弱,または心雑音に注意しながら心音を聴取すべきである。奇脈 奇脈 心疾患が末梢および全身に及ぼす影響と心臓に影響を及ぼしうる心臓以外の疾患の所見を検出するため,全ての器官系をくまなく診察することが不可欠である。診察には以下を含める: バイタルサインの測定 脈拍の触診および聴診 静脈の視診 胸部の視診および触診 さらに読む  奇脈 (吸気時の収縮期血圧の低下が12mmHgを超える)を検査するには,まず血圧計のカフを収縮期血圧より20mmHg高くなるまで加圧した後,第1相のコロトコフ音が呼気時にのみ聴取できるようになるまでゆっくりと圧を下げる。カフをさらに減圧し,吸気時および呼気時ともに最初のコロトコフ音が聴こえる点を記録する。最初の点と2つ目の点との間に12mmHgを超える差があれば,奇脈が存在する。

結膜の蒼白がないかを確認すべきである。直腸診およびグアヤック法による便検査を行うべきである。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 診察中の安静時呼吸困難

  • 意識レベルの低下もしくは興奮または錯乱

  • 呼吸補助筋の使用および不十分な空気の出入り

  • 胸痛

  • 断続性ラ音

  • 体重減少

  • 盗汗

  • 動悸

所見の解釈

病歴聴取および身体診察によって,しばしば原因が示唆され,さらなる検査の指針が得られる。(Professional.see table 急性*呼吸困難の主な原因 急性*呼吸困難の主な原因 急性*呼吸困難の主な原因 ,Professional.see table 亜急性*の呼吸困難の主な原因 亜急性*の呼吸困難の主な原因 亜急性*の呼吸困難の主な原因 ,およびProfessional.see table 慢性*呼吸困難の主な原因 慢性*呼吸困難の主な原因 慢性*呼吸困難の主な原因 )。重要な所見がいくつか存在する。呼気性喘鳴 呼気性喘鳴(wheezing) 呼気性喘鳴は,末梢気道の狭小化または圧迫された部位を空気が通る際に生まれる,比較的高調な笛様の雑音である。呼気性喘鳴は症状であり,また身体所見でもある。 呼気性喘鳴を伴う呼気相の延長。 末梢気道の狭小化または圧迫された部位を気流が通る際に乱流となり,気道壁の振動を引き起こす;この振動により呼気性喘鳴の音が生じる。 呼気相における胸腔内圧の上昇により気道が狭小化するほか,肺容量が減少するにつれて気道が狭小化するため,呼気性喘鳴(wheez... さらに読む は,喘息またはCOPDを示唆する。吸気性喘鳴 吸気性喘鳴(stridor) 吸気性喘鳴は,高調な,主に吸気時に生じる音である。異物誤嚥などの急性の病態と関連することが最も多いが,気管軟化症などの慢性の病態に起因することもある。 クループにおける吸気性喘鳴。 吸気性喘鳴は,胸郭外上気道の狭小化した箇所や部分的に閉塞した箇所を空気の乱流が急速に通り抜ける際に生じる。具体的な部位としては,咽頭,喉頭蓋,喉頭,および胸郭外の気管などがある。 大半の原因は急性の症状として顕在化するが,慢性ないし反復性の症状を呈する患者も... さらに読む は,胸郭外の気道閉塞(例,異物,喉頭蓋炎,声帯機能不全)を示唆する。断続性ラ音は,左心不全,間質性肺疾患,また硬化徴候を伴う場合は肺炎を示唆する。

しかしながら,心筋虚血および肺塞栓症などの生命を脅かす疾患の症状および徴候は非特異的なことがある。さらに,症状の重症度は原因の重症度に常に比例しているとは限らない(例,体調良好な健常者における肺塞栓症の症状は軽度の呼吸困難のみのことがある)。したがって,このような一般的な病態に対し強い疑いをもつことが賢明である。呼吸困難をより重症度の低い原因に帰する前に,これらの病態を除外することが,多くの場合適切である。

臨床予測ルール(clinical prediction rule)が肺塞栓症のリスク評価に役立つ可能性がある。酸素飽和度が正常であっても肺塞栓症が除外されるわけではない。

検査

全ての患者でパルスオキシメトリーを実施すべきであり,症状が明らかに既知の疾患の軽度または中等度の増悪である場合を除き,胸部X線も同様に実施すべきである。例えば,喘息または心不全の患者では,臨床所見が他の原因または著しく重症の発作を示唆しない限り,急性増悪(flare-up)が起こるたびに毎回胸部X線を撮る必要はない。

心筋虚血が臨床的に除外できる場合を除き,ほとんどの成人で心筋虚血を検出するために心電図検査(および疑いが強い場合は血清心筋マーカー検査)を行うべきである。

呼吸状態が重症または悪化している患者では,動脈血ガス分析を行い,より正確な低酸素血症の数値化,Paco2の測定,過呼吸を誘発する酸塩基平衡障害の診断,および肺胞気-動脈血酸素分圧較差を算出すべきである。

胸部X線および心電図検査を行っても診断が明らかにならず,肺塞栓症のリスクが中等度または高い(臨床予測ルールより)患者では,CT血管造影または換気血流シンチグラフィーを施行すべきである。肺塞栓症のリスクが低い患者にはDダイマー検査を施行してもよい(低リスク患者でDダイマーの値が正常であれば,効果的に肺塞栓症を除外できる)。

慢性呼吸困難では,CT,肺機能検査,心エコー検査および気管支鏡検査などの追加検査が必要となる場合がある。

治療

治療は基礎疾患の改善である。

低酸素血症は酸素投与により酸素飽和度 > 88%またはPaO2> 55mmHgを維持する必要があるが,この閾値以上であれば組織に十分な酸素が供給される。この閾値を下回るレベルは,酸素解離曲線の急勾配の部分に位置し,そこではわずかな動脈血酸素分圧の低下でも,Hbの酸素飽和度が大幅に低下しうる。酸素飽和度は,心筋または脳の虚血が懸念される場合,93%より高く維持すべきであるが,最近のデータでは,患者が低酸素症を呈していない限り,急性心筋梗塞の治療において酸素投与は有益とならないことが示唆されている。

モルヒネ0.5~5mgの静注は,心筋梗塞,肺塞栓症などの様々な病態における呼吸困難および末期疾患に伴うことが多い呼吸困難の不安や不快感の軽減に役立つ。しかしながら,オピオイドは換気運動を抑制し,呼吸性アシデミアを悪化させうるため,急性の気流制限(例,喘息,COPD)を呈する患者には悪影響を及ぼしうる。

要点

  • パルスオキシメトリーは検査の重要な要素である。

  • 酸素飽和度の低下(90%未満)は深刻な問題を示唆するが,飽和度が正常でも重篤でないとは限らない。

  • 呼吸補助筋の使用,突然の酸素飽和度低下,または意識レベルの低下は,緊急の評価および入院が必要である。

  • 心筋虚血および肺塞栓症は比較的よくみられるが,症状および徴候は非特異的なことがある。

  • 既知の疾患(例,喘息,COPD,心不全)の増悪が一般的であるが,患者が新たな病態を発症することもある。

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