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胸水

執筆者:

Richard W. Light

, MD, Vanderbilt University Medical Center

最終査読/改訂年月 2019年 7月
本ページのリソース

胸水は胸膜腔(pleural space)内における体液の貯留である。胸水には複数の原因があり,通常,漏出液または滲出液に分類される。検出は身体診察および胸部X線による;原因を同定するために胸腔穿刺および胸水分析がしばしば必要とされる。無症状の漏出液は治療の必要はない。症状のある漏出液およびほぼ全ての滲出液には,胸腔穿刺,胸腔ドレナージ,胸膜切除術,またはこれらの組合せが必要となる。

正常では,タンパク質が低いこと(< 1.5g/dL[< 15g/L])を除き血漿と同様の組成である胸水が10~20mL,臓側胸膜と壁側胸膜に薄く広がっており,肺と胸壁の間の動きを容易にしている。胸水は壁側胸膜に分布する体循環系の毛細血管から胸膜腔に入り,壁側胸膜の小孔およびリンパ管を経て出ていく。胸水は最終的に右房に排出されるため,排液は部分的に右心系の圧に依存する。胸水は,液体の胸膜腔への流入が多すぎる場合,または,胸膜腔からの流出が少なすぎる場合に蓄積する。

病因

胸水は通常,以下のように分類される:

  • 漏出液

  • 滲出液

胸水の分類は,胸水の検査特性に基づく(滲出性胸水の同定基準の表を参照)。片側性か両側性かを問わず,漏出液は通常広範な評価を行わずに治療可能であり,一方で,滲出液は原因の精査を要する。原因は多数存在する(胸水の原因の表を参照)。

漏出性胸水は静水圧の上昇および血漿膠質浸透圧の低下がある程度組み合わさることで生じる。心不全が最も一般的な原因であり,次いで,腹水を伴う肝硬変および低アルブミン血症(通常ネフローゼ症候群に起因する)が多い。

滲出性胸水は,毛細血管透過性の亢進を引き起こす局所的変化により,体液,タンパク質,細胞,およびその他の血清成分の滲出を来すことで生じる。原因は多数あり,最も一般的なものは,肺炎,悪性腫瘍,肺塞栓症,ウイルス感染症,および結核である。

黄色爪症候群は慢性滲出性胸水,リンパ浮腫,および栄養障害性の黄色爪を引き起こすまれな疾患であり,全てはリンパ流出障害の結果と考えられている。

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滲出性胸水の同定基準

検査

滲出液

感度(%)

特異度(%)

Lightの基準(次の3つのうち1つ以上):

98

77

  • 胸水中のLDH*

血清中LDHが ULNの3分の2

66

100

  • 胸水中:血清中の総タンパク質比

0.5

91

89

  • 胸水中:血清中のLDH比

0.6

93

82

胸水中の総タンパク質

3g/dL(30g/L)

90

90

胸水中のコレステロール

60mg/dL(1.55mmol/L)

43mg/dL(1.11mmol/L)

54

75

92

80

胸水中:血清中のコレステロール比

0.3

89

71

血清中のタンパク質 – 胸水中のタンパク質†

3.1g/dL(31g/L)

87

92

*溶血によるLDH上昇分の補正法 = LDH測定値 0.0012 × 赤血球数/μL。

† 胸水発症後に利尿薬を処方された患者で,Lightの基準を満たしているが,生化学的検査値にLightの基準のカットオフ値を15%以上超えるものがない場合に望ましい検査。

LDH = 乳酸脱水素酵素;ULN = 正常上限。

Data modified from Light RW: Pleural effusion. New England Journal of Medicine 346:1971–1977, 2002.

乳び胸水(乳び胸)はトリグリセリドを多く含む乳白色の胸水であり,胸管の外傷性あるいは腫瘍性(リンパ腫性が最も多い)の損傷により引き起こされる。乳び胸水は上大静脈症候群にも併発する。

乳び様(コレステロールまたは偽乳び)胸水は,乳び胸水に類似するがトリグリセリド値が低く,コレステロール値が高い。乳び様胸水は,肥厚した胸膜により胸水の吸収が遮断された際に,長期間貯留した胸水の中で溶解した赤血球および好中球からコレステロールが放出されることが原因と考えられている。

血胸は,胸膜腔内の血性の体液(胸水のヘマトクリット > 末梢血のヘマトクリットの50%)で,外傷に起因して,または,まれに凝固障害の結果として,もしくは主要血管(大動脈または肺動脈など)の破裂の後に生じる。

膿胸は胸膜腔内の膿である。膿胸は,肺炎,開胸手術,膿瘍(肺,肝臓,または横隔膜下),または,感染症を続発する穿通性の外傷の合併症として生じることがある。胸壁穿通性膿胸は膿胸の軟部組織への拡大であり,胸壁感染および体外排液を引き起こす。

trapped lungは,膿胸あるいは腫瘍によって生じた線維性の膜(fibrous peel)が肺を取り囲む状態である。肺が膨張できないため,胸腔内圧は正常より陰圧となり,壁側胸膜の毛細血管からの体液の漏出を増加させる。その体液は漏出液と滲出液の中間のボーダーラインの性状をもつ;すなわち,生化学的検査値がLightの基準(滲出性胸水の同定基準の表を参照)のカットオフ値から15%以内である。

医原性胸水は,栄養チューブの気管への移動または誤留置,あるいは中心静脈カテーテルによる上大静脈穿孔により,胸膜腔内に経管栄養または静注液が流入して生じることがある。

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胸水の原因*

原因

備考

漏出液

81%で両側性胸水;12%で右側性;7%で左側性

左室不全があると,間質液が増加し,臓側胸膜を超えて胸膜腔に流入する

腹水を伴う肝硬変(肝性胸水)

70%で右側性胸水;15%で左側性;15%で両側性

横隔膜の欠損部位を介する腹水の胸膜腔への移動

臨床的に明らかな腹水を伴う患者の5%に胸水がみられる

低アルブミン血症

まれ

> 90%で両側性胸水

血管内膠質浸透圧の低下による胸膜腔への漏出

他の部位の浮腫または全身浮腫を伴う

通常両側性胸水;一般的に肺下胸水

血管内膠質浸透圧の低下および体液量増加による胸膜腔内への漏出

後腹膜から胸膜腔内に尿が侵入することにより,尿胸を生じる

収縮性心膜炎

右心系の静脈静水圧の上昇

肝性胸水に類似した機序による強い全身浮腫および腹水を伴う患者もいる

胸腔内の陰圧が強まる

肝性胸水に類似した機序

透析液に類似した性状の胸水

trapped lung

線維性の膜に囲まれ胸腔内の陰圧が強まる

胸水は滲出性またはボーダーラインの性状でありうる

全身性毛細血管漏出症候群

まれ

全身浮腫および心嚢液を伴う

粘液水腫(甲状腺機能低下症

約5%に胸水がみられる

心嚢液も存在する場合は通常,静水圧の上昇による漏出液;胸水単独の場合は漏出液または滲出液

滲出液

肺炎(肺炎随伴性胸水)

単純性の場合もあれば,被包化かつ/または粘液膿性(膿胸)である場合もある

鑑別には胸腔穿刺が必要

悪性腫瘍

最も頻度が高いのは肺癌,乳癌,またはリンパ腫であるが,胸膜に転移するあらゆる腫瘍で生じる可能性がある

典型的には,鈍く,うずくような胸痛を引き起こす

約30%に胸水がみられる:

ほぼ常に滲出性;血性は < 50%

胸水の量に対し不釣り合いな呼吸困難があれば,肺塞栓症が疑われる

ウイルス感染症

胸水は通常少量で,実質浸潤を伴うことも伴わないこともある

肺症状より全身症状が優位

胸水は73%で左側性または左側の量が多い;20%で両側性および左右同等量;7%で右側性あるいは右側の量が多い

患者の10%で術後30日間,片側胸郭の > 25%が胸水で満たされる

術後出血に関連する血性胸水は消失する可能性が高い

非血性胸水が再発する可能性が高い;病因は不明であるが,おそらく免疫学的機序による

胸水がある場合,通常片側性(実質浸潤と同側)

結核タンパク質への過敏反応による胸水

胸水での結核菌培養の陽性率は < 20%

1~2%で胸水

広汎な肺実質サルコイドおよびしばしば胸郭外サルコイド

胸水を伴わない多くの患者で胸膜の肉芽腫

胸水はリンパ球優位

尿毒症

約3%に胸水

> 50%で胸水に続発する症状:最も頻度が高いのは発熱(50%),胸痛(30%),咳嗽(35%),および呼吸困難(20%)

除外診断

横隔膜下膿瘍

交感性肺下胸水を引き起こす

胸水は好中球優位

pHおよびグルコースは正常

可能性のある病因が多数存在:Pneumocystis jirovecii肺炎などの肺炎(肺炎随伴性胸水),その他の日和見感染症,結核,および肺カポジ肉腫

胸水が,リウマチ結節および変形性関節炎を伴う高齢男性に典型的にみられる

肺炎随伴性胸水と鑑別しなければならない(いずれも糖低値,pH低値,乳酸脱水素酵素高値を特徴とする)

胸水がSLEの最初の症候である可能性がある

薬剤性SLEによくみられる

胸水ではなく血液の血清学的検査により診断確定

薬物

多くの薬物,最も著明なのは,ブロモクリプチン,ダントロレン,ニトロフラントイン,インターロイキン2(腎細胞癌および黒色腫の治療に対し),およびメチセルジド(methysergide)

卵巣過剰刺激症候群

ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)およびときにクロミフェンによる排卵誘発の合併症として生じる症候群

hCG注射後7~14日後に発生する胸水

胸水は52%で右側性;27%で両側性

急性:約50%に胸水がみられる;77%で両側性,16%で左側性,8%で右側性

炎症性滲出液の横隔膜を介した移行および横隔膜の炎症による胸水

慢性:膵仮性嚢胞から瘻孔を介し,横隔膜を超え胸膜腔内に移行した胸水

腹部症状より胸部症状が優位

患者はがんと同様の悪液質を呈する

上大静脈症候群

胸水は通常,悪性腫瘍または中心静脈カテーテル内の血栓により胸腔内の静脈およびリンパ流が閉塞して生じる

滲出性または乳び胸の場合がある

患者は極めて重態

医学的緊急事態

縦隔および胸腔の感染に起因する罹患および死亡

良性石綿胸水

胸水は初回曝露から30年以上経過して発生

しばしば無症状

出現と消退を繰り返す傾向がある

中皮腫を除外しなければならない

良性卵巣腫瘍(Meigs症候群)

肝性胸水に類似した機序による

卵巣腫瘤,腹水,および胸水のある患者では,ときに手術が適応となる

診断には,腹水および胸水の術後消失が必要である

黄色爪症候群

胸水,リンパ浮腫,および黄色爪の三徴,ときに数十年の間隔を空けて現れる

胸水は比較的タンパク質濃度が高いが乳酸脱水素酵素濃度が低い

胸水は再発する傾向がある

胸膜性胸痛はない

*原因をおおよそ頻度の高い順に示している。

明らかな原因のない胸水は,しばしば,潜在性肺塞栓結核,または悪性腫瘍による。胸水の約15%は広範囲な検査を行っても病因が不明である;このような胸水の多くはウイルス感染によるものと考えられている。

症状と徴候

胸水は無症状の場合があり,身体診察または胸部X線上で偶然発見されることがある。多くは,呼吸困難,胸膜性胸痛,またはその両方を引き起こす。胸膜性胸痛は,吸気時に悪化する漠然とした不快感または鋭い痛みであり,壁側胸膜の炎症を示唆する。痛みは通常炎症部位の上で感じられるが,関連痛もありうる。横隔胸膜の後部および周辺部は下位6本の肋間神経に支配されており,その部位への刺激は胸壁下部または腹部の痛みを引き起こし,腹腔内疾患と類似しうる。横隔神経によって支配されている横隔胸膜の中心部の刺激は,頸部および肩に関連痛を引き起こす。

身体診察では,触覚振盪音の消失,打診上の濁音,呼吸音の減弱が,胸水のある側に認められる。これらの所見は胸膜肥厚によっても生じることがある。多量の胸水がある場合,呼吸は通常速く浅い。

胸膜摩擦音は,頻度は低いものの古典的な身体徴候である。摩擦音は様々であり,断続性ラ音に類似しうる間欠的な音が若干聴取できるレベルから,完全に進行した粗く耳ざわりな,きしんだ,または革を擦るような音が吸気時および呼気時に呼吸と同期して聞こえるものまである。心臓近傍の摩擦音(胸膜心膜摩擦音)は心臓の拍動によって変化し,心膜炎の摩擦音と混同されることがある。心膜摩擦音は,第3および第4肋間胸骨左縁で最もよく聴取され,心拍動に同期したto and fro雑音を特徴とし,呼吸に大きく影響されない。胸水の検出に対し,身体診察の感度および特異度はおそらく低い。

診断

  • 胸部X線

  • 胸水分析

  • ときにCT血管造影またはその他の検査

胸水は,胸膜痛,説明のつかない呼吸困難,または示唆的徴候のある患者において疑われる。診断検査は胸水の存在を確定し,その原因を同定するために適応となる(胸水の診断の図を参照)。

胸水の存在

胸部X線は胸水の存在を実証するために行われる最初の検査である。胸水が疑われる場合,胸部X線の立位側面像を評価すべきである。立位画像では,75mLの胸水があれば後部肋骨横隔膜角が鈍化する。外側の肋骨横隔膜角の鈍化には,通常約175mLの胸水を要するが,多い場合は500mLを要する。より多量の胸水では,片側胸郭の一部が透過性を失い,縦隔偏位が生じうる;4Lを超える胸水では片側胸郭の透過性が完全に失われ,縦隔の対側への偏位も起こりうる。

被包化胸水は,胸膜癒着によって閉じ込められた,または肺の裂溝内に閉じ込められた胸水の集積である。X線上の陰影が液体なのか実質浸潤影なのかが不明な場合,または疑われる液体が被包化しているか流動性であるかが不明な場合は,側臥位X線,胸部CT,または超音波検査を行うべきである;これらの検査は立位X線より感度が高く,10mL未満の胸水も検出可能である。被包化胸水は,特に水平裂または斜裂に存在する場合,肺の充実性腫瘤と混同される可能性がある(偽腫瘍)。被包化胸水は,患者の体位および胸水の量の変化によって,形状および大きさが変化しうる。

ルーチンでのCTの適応はないが,肺が胸水のため不明瞭な場合,および被包化胸水と充実性腫瘤との鑑別に胸部X線では情報が不十分な場合に,CTは基礎にある肺実質の浸潤または腫瘤の評価に有用である。

胸水の原因

CT,超音波検査,または側臥位X線で厚さ10mm以上の胸水,および新たな,または病因不明の胸水を有する患者のほぼ全てに胸腔穿刺を行うべきである。一般に,胸腔穿刺を必要としないのは,左右対称の胸水があり胸痛および発熱がない心不全患者のみである;このような患者では,利尿薬を試すことができ,胸水が3日以上持続する場合を除いて胸腔穿刺を回避できる。

胸腔穿刺とその後の胸水分析は,原因が判明していて,何の症状も引き起こしてない慢性の胸水には不要である場合が多い。

パール&ピットフォール

  • 胸腔穿刺後の胸部X線撮影は,一般的に実施されてはいるものの,患者に気胸を疑う症状(呼吸困難または胸痛)がなく,また手技中に空気が胸腔内に入った可能性がなければ,繰り返し行う必要はない。

胸水の採取量が増え,気胸や腹腔内臓器の穿刺などの合併症のリスクが低くなることから,胸腔穿刺は可能であれば常に超音波ガイド下で行う。

胸水分析を胸水の原因を究明するために行う。胸水の分析は目視による確認から開始し,それにより以下が可能である:

  • 血性胸水もしくは乳び(または乳び様)胸水をその他の胸水と鑑別する

  • 膿胸を強く示唆する膿性胸水を同定する

  • 一部の中皮腫の特徴である粘稠性の胸水を同定する

胸水は常に,総タンパク質,乳酸脱水素酵素(LDH),細胞数および細胞分画,グラム染色,ならびに好気性および嫌気性細菌培養のために検査室に送るべきである。他の検査(ブドウ糖,細胞診,胸水の結核マーカー[ アデノシンデアミナーゼまたはインターフェロンγ],アミラーゼ,抗酸菌および真菌の染色および培養)は臨床状況に応じて用いられる。

胸水の分析は漏出液を滲出液と鑑別するのに役立つ;複数の基準が存在するが,単独の基準でこの2つを完璧に鑑別できるものはない。Lightの基準(滲出性胸水の同定基準の表を参照)を用いる際は,血清LDHおよび総タンパク質の値は,胸水のそれと比較するために,可能な限り胸腔穿刺の直後に測定すべきである。Lightの基準はほぼ全ての滲出液を正確に同定するが,漏出液の約20%を滲出液と誤って同定する。漏出性胸水が疑われ(例,心不全または肝硬変による),かつ生化学的検査値にLightの基準のカットオフ値を15%以上超えるものがない場合,血清と胸水のタンパク質濃度の差を測定する。その差が3.1g/dL(> 31g/L)より大きければ,その患者はおそらく漏出性胸水を有する。

画像検査が役立つ場合もある。胸水分析後も診断が不明のままであれば,肺塞栓,肺浸潤,または縦隔の病変を調べるためにCT血管造影が適応となる。肺塞栓の所見は長期間の抗凝固療法の必要性を示唆し,実質性浸潤は気管支鏡検査の必要性を,縦隔の病変は経胸壁穿刺吸引または縦隔鏡検査の必要性を示唆する。しかしながら,CT血管造影では患者が24秒以上息を止めることが必要で,全ての患者に施行できるわけではない。CT血管造影で何も見つからなければ,患者にがんの病歴,体重減少,持続性の発熱,もしくは悪性腫瘍または結核を示唆する他の所見が認められない限りは,経過観察が最善の方法であるが,認められる場合は胸腔鏡検査が適応となることがある。胸腔鏡検査を行えない場合には,胸膜の針生検を行ってもよい。胸膜肥厚または胸膜結節がある場合は,CTまたは超音波ガイド下生検が診断の助けになる。

結核性胸膜炎が疑われる場合は,胸水中の アデノシンデアミナーゼを測定する。> 40 U/Lであれば,結核性胸膜炎の診断に対し95%の感度および特異度がある。

胸水の診断

胸水の診断

*発熱,体重減少,がんの病歴,またはその他の示唆的症状の存在に基づく。

治療

  • 症状および基礎疾患の治療

  • 症状のある胸水は場合によりドレナージ

  • 肺炎随伴性胸水および悪性胸水に対するその他の治療

胸水自体は,多くの場合基礎疾患が治癒すれば(特に合併症のない肺炎,肺塞栓,および手術が原因の場合)自然に再吸収されるため,無症状であれば一般的に治療の必要はない。胸膜痛は通常非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)またはその他の経口鎮痛薬によって管理できる。ときに,短期間の経口オピオイドが必要となる。

胸腔穿刺は症状のある胸水の多くに対して十分な治療法であり,再貯留する胸水に対して繰り返し行ってよい。除去可能な胸水量に特定の限度はない(1)。胸水除去は,胸水が排出されるまで,または患者に胸部圧迫感,胸痛,あるいは重度の咳嗽が生じるまで継続できる。

症状を引き起こす慢性および再発性の胸水は,胸膜癒着術またはカテーテル留置による間欠的ドレナージを用いて治療することがある。肺炎および悪性腫瘍による胸水は,追加的に特別な治療を必要とすることがある。

肺炎随伴性胸水および膿胸

予後不良因子(pH < 7.20,ブドウ糖 < 60mg/dL(< 3.33mmol/L),グラム染色または培養が陽性,小房形成)が存在する場合,胸水は胸腔穿刺 または胸腔ドレナージにより完全に排出すべきである。もし完全なドレナージが不可能な場合,血栓溶解(フィブリン溶解)薬(例,組織プラスミノーゲンアクチベーター10mg)と,生理食塩水100mLに溶解させたDNAse(例,ドルナーゼ アルファ5mg)を併用し,胸膜腔内に1日2回,3日間投与する。ドレナージの試みが不成功に終わった場合は,肺の膨張を可能にするため,胸腔鏡下で癒着の解除と肺を覆っている線維性組織の除去を行うべきである。胸腔鏡での処置も不成功に終わった場合は,開胸下での外科的な剥皮術(例,肺周辺の瘢痕,血栓,または線維状の膜の除去)が必要である。

悪性胸水

悪性胸水による呼吸困難が胸腔穿刺により緩和されるが,胸水および呼吸困難が再発する場合は,持続的(間欠的)ドレナージまたは胸膜癒着術が適応となる。無症状の胸水と,胸腔穿刺で緩和されない呼吸困難を引き起こす胸水は,追加処置は不要である。

留置カテーテルによるドレナージは,カテーテル挿入に入院を必要とせず,胸水を吸引瓶に間欠的に排出できるため,外来患者に望ましいアプローチである。胸膜癒着術は,癒着促進剤を胸膜腔内に注入し,臓側胸膜と壁側胸膜を融合させて間隙をなくすことによる。最も効果的で一般的に用いられる癒着促進剤は,タルク,ドキシサイクリン,およびブレオマイシンで,胸腔ドレーンまたは胸腔鏡によって投与される。胸膜癒着術は,縦隔が胸水のある側に偏位している場合または胸腔ドレーン挿入後に肺が膨張しない場合は,禁忌である。

胸水の腹膜へのシャント術(胸腔腹腔シャント)は,悪性胸水を有し胸膜癒着術が失敗した患者およびtrapped lungがある患者に有用である。

治療に関する参考文献

要点

  • 漏出性胸水は静水圧の上昇および血漿膠質浸透圧の低下がある程度組み合わさることで生じる。

  • 滲出性胸水は,毛細血管透過性の亢進が原因でタンパク質,細胞,およびその他の血清成分の滲出を来すことにより生じる。

  • 漏出性胸水の最も一般的な原因は,心不全,腹水を伴う肝硬変,および低アルブミン血症(通常ネフローゼ症候群による)である。

  • 滲出性胸水の最も一般的な原因は,肺炎,悪性腫瘍,肺塞栓,および結核である。

  • 評価には,胸水の存在を確認するための画像検査(通常は胸部X線)および原因の特定を補助するための胸水分析が必要である。

  • X線上の陰影が胸水か実質浸潤影かが不明な場合,または疑われる胸水が被包化しているか流動性であるかが不明な場合は,側臥位X線,胸部CT,または超音波検査を行うべきである。

  • 症状を引き起こす慢性および再発性の胸水は,胸膜癒着術またはカテーテル留置による間欠的ドレナージを用いて治療することがある。

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