中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)は,気道閉塞を伴わない換気ドライブの変化を特徴とする多様な病態の集合である。これらの病態のほとんどは,症状を伴わない呼吸パターンの変化を睡眠中に引き起こす。診断は臨床所見に基づき,必要に応じて睡眠ポリグラフ検査で確定する。治療は支持療法である。
中枢性睡眠時無呼吸症候群の病因
中枢性睡眠時無呼吸症候群患者は二酸化炭素レベルおよび換気ドライブの程度に基づいて2群に分類される。
高炭酸ガス血症と換気ドライブの低下を伴う群
血中炭酸ガス正常値または低炭酸ガス血症を呈するとともに換気ドライブが増加するが,無呼吸エピソード,周期性呼吸,またはその両方を伴う群
高炭酸ガス血症と換気ドライブの低下を伴う原因には,甲状腺機能低下症および中枢性病変(例,脳幹梗塞,脳炎,キアリII型奇形)などがある。
チェーン-ストークス呼吸は中枢性睡眠時無呼吸症候群の2つ目の病型に固有のパターンであり,呼吸調節中枢の固有の性質により,低酸素症およびアシドーシスに対する反応として過呼吸が生じ,その結果,再酸素化およびアルカローシスが起こり,低呼吸および無呼吸による低換気へとつながることに起因すると考えられている。
中枢性睡眠時無呼吸症候群は,高地では低圧低酸素状態のため健康な人にも発生する。
先天性中枢性肺胞低換気症候群(オンディーヌの呪いの1形態)は,新生児における特発性CSAのまれな形態であり,ヒルシュスプルング病と関連している可能性がある。症例の80~90%はPHOX2遺伝子の変異が原因である。この変異は多様な表現型をとり,臨床的に明らかなレベルの症例は優性形式で遺伝する。
中枢性睡眠時無呼吸症候群の症状と徴候
中枢性睡眠時無呼吸症候群は通常無症状であり,長い呼吸休止,浅い呼吸,または不十分な睡眠に気づいた介護者またはベッドパートナーにより発見される。高炭酸ガス血症型の患者は,日中の傾眠(ときに覚醒中の眠気と呼ばれる),嗜眠,および朝の頭痛を経験することがある。
中枢性睡眠時無呼吸症候群の診断
中枢性睡眠時無呼吸症候群の治療
支持療法
中枢性睡眠時無呼吸症候群の一次治療は,基礎疾患の至適管理とオピオイド,アルコール,およびその他の鎮静薬の回避である。症状のある患者の二次治療として,試験的な酸素投与または,他の治療を行っても症状がある高炭酸ガス血症型CSA患者では,非侵襲的な持続陽圧呼吸または二相性陽圧換気が可能である。
CSAおよびチェーン-ストークス呼吸がみられる患者では,持続陽圧呼吸療法または酸素投与により無呼吸および低呼吸エピソードが減少することがあるが,臨床転帰への影響は明らかでない。アセタゾラミドは高地滞在が原因の中枢性睡眠時無呼吸症候群に効果的である。
電極による横隔神経および/または横隔膜のペーシングは,2歳以上で先天性中枢性肺胞低換気症候群の小児などに対する1つの選択肢である。
最近では,経静脈横隔神経刺激装置(transvenous phrenic nerve stimulation system)が利用可能になっている。このシステムは,1回換気量,流量,および酸素化を安定化させる律動的な呼吸パターンを作り出すようにプログラムされており,それにより睡眠中の呼吸を同調させ,病状の進行を変化させる可能性がある(1)。
治療に関する参考文献
1.Schwartz AR, Sgambati FP, James KJ, et al: Novel phrenic nerve stimulator treats Cheyne-Stokes respiration: Polysomnographic Insights.J Clin Sleep Med 16(5):817–820, 2020.doi: 10.5664/jcsm.8328
中枢性睡眠時無呼吸症候群についてのより詳細な情報
以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
American Sleep Apnea Association: Provides consumer information, education, and support for patients with sleep apnea