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ベリリウム症

(ベリリウム症)

執筆者:

Lee S. Newman

, MD, MA, Colorado School of Public Health

最終査読/改訂年月 2018年 3月
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急性ベリリウム症および慢性ベリリウム症はベリリウム化合物およびベリリウム製品からの塵や煙霧の吸入により起こる。急性ベリリウム症は現在ではまれである;慢性ベリリウム症は全身,特に肺,胸腔内リンパ節,および皮膚における肉芽腫の形成を特徴とする。慢性ベリリウム症は進行性の呼吸困難,咳嗽,および疲労を引き起こす。診断は病歴,ベリリウムリンパ球増殖試験,および生検による。治療はコルチコステロイドによる。

病因

ベリリウムへの曝露は頻度が高いにもかかわらず,多くの産業であまり認識されていない病因であり,そのような産業にはベリリウム採掘および抽出,合金の製造,金属合金の機械加工,電子機器,電気通信,核兵器製造,防衛,航空機,自動車,航空宇宙,ならびにメタルスクラップ,コンピュータ,および電子機器のリサイクルなどがある。ベリリウムは少量でも有毒であり,また多くの銅,アルミニウム,ニッケル,およびマグネシウムの合金に加えられるため,労働者は曝露およびそのリスクに気づかないことが多い。

病態生理

急性ベリリウム症は,肺実質のびまん性炎症性浸潤および非特異的な肺胞内肺水腫(intra-alveolar edema)を引き起こす化学性肺炎である。その他の組織(例,皮膚,結膜)が侵されることもある。急性ベリリウム症は,多くの産業が曝露量を低減したため現在ではまれであるが,1940~1970年にはよくみられ,多くの症例が急性から慢性ベリリウム症へと進行した。

慢性ベリリウム症は,ベリリウムおよびベリリウム合金を使用する産業では依然として一般的な疾患である。細胞媒介性の過敏症である点で,大半の塵肺症とは異なる。ベリリウムは,抗原提示細胞により,主にHLA-DP分子を介して,CD4陽性T細胞に提示される。次に血液,肺,または他の臓器のT細胞がベリリウムを認識し,増殖し,T細胞のクローンを形成する。これらのクローンは続いてTNF-α,IL-2,およびインターフェロン-γなどの炎症性サイトカインを放出する。これらのサイトカインが免疫応答を増幅し,その結果ベリリウムが沈着した標的臓器に単核細胞の浸潤および非乾酪性肉芽腫が形成される。

平均すると,ベリリウム曝露者の約2~6%にベリリウム感作(in vitroでベリリウム塩に反応して血中リンパ球の増殖がみられることにより定義される)が生じ,そのほとんどが疾患に進行する。ベリリウム金属および合金の機械製作工など,特定の高リスク集団では慢性ベリリウム症の有病率は > 17%である。秘書や警備員など,その場に居合わせて曝露した労働者にも感作および疾患が生じるが,頻度はより低い。典型的な病理学的変化は肺,肺門,および縦隔リンパ節のびまん性肉芽腫性反応で,組織学的にはサルコイドーシスと区別ができない。単核細胞および巨細胞を伴った肉芽腫形成も早期に起こりうる。気管支鏡下で肺を洗浄した際(気管支肺胞洗浄[BAL])に多数のリンパ球が認められる。これらのT細胞は,in vitroでベリリウムに曝露すると,血球と同程度に増殖する(ベリリウムリンパ球増殖試験[BeLPT]と呼ばれる)。

症状と徴候

慢性ベリリウム症の患者は,しばしば呼吸困難,咳嗽,体重減少,および胸部X線上で多様な所見を示し,典型的には中肺野および上肺野に結節陰影がみられ,肺門部および縦隔のリンパ節腫脹を伴うことが多い。患者は潜行性に進行する労作時呼吸困難,咳嗽,胸痛,体重減少,盗汗,および疲労を訴える。症状は,最初の曝露から数カ月以内に出現することもあれば,曝露停止後30年以上経過して出現することもある。無症状のままの場合もある。

診断

  • ベリリウムリンパ球増殖試験(末梢血または気管支肺胞洗浄で得られた細胞を用いる)

  • 胸部X線またはCT

ベリリウム症の診断は,曝露歴,該当する臨床像,および血液またはBAL液もしくはその両方を用いたBeLPTの異常所見による。

急性ベリリウム症は,全身性の徴候および症状(結膜炎,皮膚炎,咽頭炎,喉頭気管気管支炎)に加え,非常に高レベルの曝露に続き急性に発症する乾性咳嗽および進行性労作時呼吸困難の病歴に基づいて,慢性疾患と鑑別される。また,曝露から1~3週間以内に画像所見が現れる。慢性ベリリウム症では,徴候および症状が1年以上にわたり存在し,臨床症状は無症状から乾性咳嗽,進行性呼吸困難,疲労,盗汗まで多様である( 1 診断に関する参考文献 急性ベリリウム症および慢性ベリリウム症はベリリウム化合物およびベリリウム製品からの塵や煙霧の吸入により起こる。急性ベリリウム症は現在ではまれである;慢性ベリリウム症は全身,特に肺,胸腔内リンパ節,および皮膚における肉芽腫の形成を特徴とする。慢性ベリリウム症は進行性の呼吸困難,咳嗽,および疲労を引き起こす。診断は病歴,ベリリウムリンパ球増殖試験,および生検による。治療はコルチコステロイドによる。... さらに読む )。BAL液によるBeLPTは感度および特異度が非常に高く,慢性ベリリウム症を サルコイドーシス サルコイドーシス サルコイドーシスは単一または複数の臓器および組織に生じる非乾酪性肉芽腫を特徴とする炎症性疾患であり,病因は不明である。肺およびリンパ系が侵される頻度が最も高いが,サルコイドーシスはどの臓器にも生じうる。肺症状は,無症状から咳嗽,労作時呼吸困難,および,まれであるが肺または他臓器の機能不全に至るまで様々である。通常まず肺病変をきっかけに診断... さらに読む サルコイドーシス およびその他のびまん性肺疾患と鑑別するのに役立つ。血清アンジオテンシン変換酵素の値は感度が低く,陽性であっても曝露と疾患とを鑑別できないため,ルーチンに測定されることはない( 2 診断に関する参考文献 急性ベリリウム症および慢性ベリリウム症はベリリウム化合物およびベリリウム製品からの塵や煙霧の吸入により起こる。急性ベリリウム症は現在ではまれである;慢性ベリリウム症は全身,特に肺,胸腔内リンパ節,および皮膚における肉芽腫の形成を特徴とする。慢性ベリリウム症は進行性の呼吸困難,咳嗽,および疲労を引き起こす。診断は病歴,ベリリウムリンパ球増殖試験,および生検による。治療はコルチコステロイドによる。... さらに読む )。

胸部X線像は正常であることもあれば,結節状,網状,または淡いすりガラス様のびまん性浸潤影を示すこともあり,またしばしばサルコイドーシスにみられるパターンに似た肺門リンパ節腫脹を伴う。粟粒状のパターンが生じることもある。高分解能(薄層)CTはX線より感度が高いが,画像検査の結果が正常でも生検で疾患が証明される例もある。

診断に関する参考文献

  • 1.Stoeckle JD, Hardy HL, Weber AL: Chronic beryllium disease: Long-term follow-up of sixty cases and selective review of the literature.Am J Med 46 (4):545–561, 1969.

  • 2.Newman LS, Orton R, Kreiss K: Serum angiotensin converting enzyme activity in chronic beryllium disease.Am Rev Respir Dis 146 (1):39–42, 1992.

予後

急性ベリリウム症は致死的となることがあるが,通常は,慢性ベリリウム症に進行しない限り予後は極めて良好である。慢性ベリリウム症はしばしば進行性の呼吸機能障害を引き起こす。早期の異常には,安静時および運動負荷試験時の気流閉塞および動脈血ガス分析上の酸素化の低下などがある。DLcoの低下および拘束性障害が後に現れる。 肺高血圧症 肺高血圧症 肺高血圧症は,肺循環における血圧の上昇である。肺高血圧症には二次性の原因が数多く存在し,中には特発性の症例もある。肺高血圧症では,肺の血管が収縮かつ/または閉塞する。重症の肺高血圧症は,右室への過負荷および右室不全を引き起こす。症状は,疲労,労作時呼吸困難であり,ときに胸部不快感および失神がみられる。肺動脈圧の上昇を証明することで診断がつ... さらに読む および右室不全が症例の約10%に発生し,肺性心により死に至る。

ベリリウム感作から慢性ベリリウム症への進行は,職場の医学的サーベイランスで最初に発見されてから年に約6%の割合でみられる。ベリリウムの破片または塵の侵入により引き起こされた皮下の肉芽腫性結節は,通常切除されるまで消失しない。

治療

  • コルチコステロイド

  • 急性ベリリウム症では,ときに機械的人工換気

  • 慢性ベリリウム症では,ときに酸素投与,呼吸リハビリテーション,および右室不全の治療

  • 末期の慢性ベリリウム症では,ときに肺移植

急性ベリリウム症では,肺はしばしば水腫および出血を来す。重症患者では機械的人工換気が必要である。

慢性ベリリウム症患者の中には,疾患の進行が比較的遅いため,治療を全く必要としない者もいる。必要時にコルチコステロイドによる治療を行う;これにより症状が軽減し酸素化が改善される。治療は一般に,有意な症状があり,ガス交換の異常または肺機能もしくは酸素化の加速的低下が証明された患者においてのみ開始する。

肺機能の異常を伴い症状を有する患者には,プレドニゾン40~60mgを1日1回,または隔日で3~6カ月経口投与する。その後,肺の生理機能およびガス交換の測定を繰り返して治療への反応を記録し,症状の改善および客観的改善を維持できる最少量(通常5~10mgを1日1回または隔日で経口投与)まで投与量を漸減する。コルチコステロイドによる治療は,通常,生涯を通じて必要である。サルコイドーシスと同様,メトトレキサートの追加(10~25mg,週1回経口投与)により,コルチコステロイドの必要量が減少するという症例報告がある。サルコイドーシスではアザチオプリンも使用されるが,これは慢性ベリリウム症には推奨されない。

慢性ベリリウム症の自然寛解はまれである。末期患者は, 肺移植 肺移植および心肺同時移植 肺移植または心肺同時移植は,呼吸機能不全または呼吸不全があり,最適な医療にもかかわらず死亡リスクが残る患者における選択肢の1つである。 最も頻度が高い肺移植の適応は以下のものである: COPD 特発性肺線維症 嚢胞性線維症 さらに読む で救命できることもある。酸素投与療法, 呼吸リハビリテーション 呼吸リハビリテーション 呼吸リハビリテーションとは,慢性呼吸器疾患を有する患者の機能を改善し,生活の質を高めるために,運動,教育,行動療法を用いることである。 慢性呼吸器疾患の多くの患者にとって,内科的治療は,疾患の症状および合併症を部分的に軽快させるに過ぎない。呼吸リハビリテーションの包括的プログラムにより,以下のようなかなりの臨床的改善がもたらされる可能性がある: 息切れが減る 運動耐容能が高まる... さらに読む ,および 右室不全 肺性心 肺性心とは,肺動脈性肺高血圧症を引き起こす肺疾患に続発して右室拡大が生じる病態である。続いて右室不全へと至る。所見には,末梢浮腫,頸静脈怒張,肝腫大,胸骨近傍の挙上などがある。診断は臨床的に行い,心エコー検査による。治療は原因に対して行う。 肺性心は肺またはその血管系の障害により生じるもので,左室不全,先天性心疾患(例,心室中隔欠損症),または後天性弁膜症に続発した右室拡大は肺性心とは呼ばない。肺性心は通常慢性に経過するが,急性かつ可逆... さらに読む 肺性心 の治療薬などのその他の支持療法が必要に応じて行われる。

予防

産業による塵埃を抑制することが,ベリリウム曝露の予防の基本である。曝露は実現しうる最低レベルに制限しなければならない;8時間の平均では空気1立方メートル当たり0.2μg未満,短期曝露の場合,15分間のサンプリングで空気1立方メートル当たり2.0μg未満でなければならない(OSHA Final Rule to Protect Workers from Beryllium Exposureを参照)。

血液によるBeLPTおよび胸部X線を用いた医学的サーベイランスは,間接的に曝露した者も含め,曝露した労働者全てに推奨される。急性例および慢性例ともに早期に発見しなければならず,罹患した労働者はさらなるベリリウム曝露を回避しなくてはならない。

要点

  • ベリリウム症はあまり認識されていないが,多くの産業における労働者が罹患する。

  • 診断確定には,高分解能CTおよびベリリウムリンパ球増殖試験(血液または気管支肺胞洗浄液から得られた細胞を用いる)を考慮する。

  • 症状のある患者はコルチコステロイドで治療する。

  • 予防法には,ベリリウムの塵埃の抑制および曝露労働者のサーベイランスがある。

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