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ベリリウム症

(ベリリウム症)

執筆者:

Lee S. Newman

, MD, MA, Colorado School of Public Health

最終査読/改訂年月 2014年 5月

急性ベリリウム症および慢性ベリリウム症はベリリウム化合物およびベリリウム製品からの塵や煙霧の吸入により起こる。急性ベリリウム症は現在ではまれである;慢性ベリリウム症は全身,特に肺,胸腔内リンパ節,および皮膚における肉芽腫の形成を特徴とする。慢性ベリリウム症は進行性の呼吸困難,咳嗽,および疲労を引き起こす。診断は病歴,ベリリウムリンパ球増殖試験,および生検による。治療はコルチコステロイドによる。

病因

ベリリウムへの曝露は頻度が高いにもかかわらず,多くの産業であまり認識されていない病因であり,そのような産業にはベリリウム採掘および抽出,合金の製造,金属合金の機械加工,電子機器,電気通信,核兵器製造,防衛,航空機,自動車,航空宇宙,ならびにメタルスクラップ,コンピュータ,および電子機器のリサイクルなどがある。ベリリウムは少量でも有毒であり,また多くの銅,アルミニウム,ニッケル,およびマグネシウムの合金に加えられるため,労働者は曝露およびそのリスクに気づかないことが多い。

病態生理

急性ベリリウム症は,肺実質のびまん性炎症性浸潤および非特異的な肺胞内肺水腫(intra-alveolar edema)を引き起こす化学性肺炎である。その他の組織(例,皮膚,結膜)が侵されることもある。急性ベリリウム症は,多くの産業が曝露量を低減したため現在ではまれであるが,1940~1970年にはよくみられ,多くの症例が急性から慢性ベリリウム症へと進行した。

慢性ベリリウム症は,ベリリウムおよびベリリウム合金を使用する産業では依然として一般的な疾患である。細胞媒介性の過敏症である点で,大半の塵肺症とは異なる。ベリリウムは,抗原提示細胞により,主にHLA-DP分子を介して,CD4陽性Tリンパ球に提示される。次に血液,肺,または他の臓器のTリンパ球がベリリウムを認識し,増殖し,Tリンパ球のクローンを形成する。これらのクローンは続いてTNF-α,IL-2,および インターフェロンiγなどの炎症性サイトカインを放出する。これらのサイトカインが免疫応答を増幅し,その結果ベリリウムが沈着した標的臓器に単核細胞の浸潤および非乾酪性肉芽腫が形成される。平均すると,ベリリウム曝露者の約2~6%にベリリウム感作(in vitroでベリリウム塩に反応して血中リンパ球の増殖がみられることにより定義される)が生じ,そのほとんどが疾患に進行する。ベリリウム金属および合金の機械製作工など,特定の高リスク集団では慢性ベリリウム症の有病率は > 17%である。秘書や警備員など,その場に居合わせて曝露した労働者にも感作および疾患が生じるが,頻度はより低い。典型的な病理学的変化は肺,肺門,および縦隔リンパ節のびまん性肉芽腫性反応で,組織学的にはサルコイドーシスと区別ができない。単核細胞および巨細胞を伴った肉芽腫形成も早期に起こりうる。気管支鏡下で肺を洗浄した際(気管支肺胞洗浄[BAL])に多数のリンパ球が認められる。これらのTリンパ球は,in vitroでベリリウムに曝露されると,血球と同程度に増殖する(ベリリウムリンパ球増殖試験[BeLPT]と呼ばれる)。

症状と徴候

慢性ベリリウム症の患者は,しばしば呼吸困難,咳嗽,体重減少,および胸部X線上で多様な所見を示し,典型的には中肺野および上肺野に結節陰影がみられ,肺門部および縦隔のリンパ節腫脹を伴うことが多い。患者は潜行性に進行する労作時呼吸困難,咳嗽,胸痛,体重減少,盗汗,および疲労を訴える。症状は,最初の曝露から数カ月以内に出現することもあれば,曝露停止後40年以上経過して出現することもある。無症状のままの場合もある。

診断

  • ベリリウムリンパ球増殖試験(血液または気管支肺胞洗浄で得られた細胞を用いる)

  • 胸部X線またはCT

診断は,曝露歴,該当する臨床像,および血液またはBAL液もしくはその両方を用いたBeLPTの異常所見による。BAL液によるBeLPTは感度および特異度が非常に高く,慢性ベリリウム症をサルコイドーシスおよびその他のびまん性肺疾患と鑑別するのに有用である。胸部X線像は正常であることもあれば,結節状,網状,または淡いすりガラス様のびまん性浸潤影を示すこともあり,またしばしばサルコイドーシスにみられるパターンに似た肺門リンパ節腫脹を伴う。粟粒状のパターンが生じることもある。高分解能(薄層)CTはX線より感度が高いが,画像検査の結果が正常でも生検で疾患が証明される例もある。

予後

急性ベリリウム症は致死的となることがあるが,通常は,慢性ベリリウム症に進行しない限り予後は極めて良好である。慢性ベリリウム症はしばしば進行性の呼吸機能障害を引き起こす。早期の異常には,安静時および運動負荷試験時の気流閉塞および動脈血ガス分析上の酸素化の低下などがある。DLcoの低下および拘束性障害が後に現れる。肺高血圧症および右室不全が症例の約10%に発生し,肺性心により死に至る。ベリリウム感作から慢性ベリリウム症への進行は,職場の医学的サーベイランスで最初に発見されてから年に約6%の割合でみられる。ベリリウムの破片または塵の侵入により引き起こされた皮下の肉芽腫性結節は,通常切除されるまで消失しない。

治療

  • コルチコステロイド

  • 急性ベリリウム症では,ときに機械的人工換気

  • 慢性ベリリウム症では,ときに酸素投与,呼吸リハビリテーション,および右室不全の治療

  • 末期の慢性ベリリウム症では,ときに肺移植

急性ベリリウム症では,肺はしばしば水腫および出血を来す。重症患者では機械的人工換気が必要である。

慢性ベリリウム症患者の中には,疾患の進行が比較的遅いため,治療を全く必要としない者もいる。必要時にコルチコステロイドによる治療を行う;これにより症状が軽減し酸素化が改善される。治療は一般に,有意な症状があり,ガス交換の異常または肺機能もしくは酸素化の加速的低下が証明された患者においてのみ開始する。肺機能の異常を伴い症状を有する患者には,プレドニゾン40~60mgを1日1回,または隔日で3~6カ月経口投与する。その後,肺の生理機能およびガス交換の測定を繰り返して治療への反応を記録し,症状の改善および客観的改善を維持できる最少量(通常10~15mgを1日1回または隔日で経口投与)まで投与量を漸減する。コルチコステロイドによる治療は,通常,生涯を通じて必要である。サルコイドーシスと同様,メトトレキサートの追加(10~25mg,週1回経口投与)により,コルチコステロイドの必要量が減少するという症例報告がある。

慢性ベリリウム症の自然寛解はまれである。末期患者は,肺移植で救命できることもある。酸素投与療法,呼吸リハビリテーション,および右室不全の治療薬などのその他の支持療法が必要に応じて行われる。

予防

産業による塵埃を抑制することが,ベリリウム曝露の予防の基本である。感作および慢性ベリリウム症のリスクを低減するため,曝露量は実現しうる最低レベルまで下げなければならない―できれば現行のOccupational Safety and Health Administration(OSHA)基準の50倍以下のレベルが望ましい。血液によるBeLPTおよび胸部X線を用いた医学的サーベイランスは,間接的に曝露した者も含め,曝露された労働者全てに推奨される。急性例および慢性例ともに早期に発見しなければならず,罹患した労働者はさらなるベリリウム曝露を回避しなくてはならない。

要点

  • ベリリウム症はあまり認識されていないが,多くの産業における労働者が罹患する。

  • 診断確定には,高分解能CTおよびベリリウムリンパ球増殖試験(血液または気管支肺胞洗浄液から得られた細胞を用いる)を考慮する。

  • 症状のある患者はコルチコステロイドで治療する。

  • 予防法には,ベリリウムの塵埃の抑制および曝露労働者のサーベイランスがある。

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