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末梢動脈疾患

(末梢血管疾患)

執筆者:

John W. Hallett, Jr.

, MD, Medical University of South Carolina

最終査読/改訂年月 2019年 7月
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末梢動脈疾患(PAD)とは,虚血を引き起こす四肢(ほぼ常に下肢)の動脈硬化症である。軽度のPADは無症状のこともあれば,間欠性跛行を引き起こすこともあり,重度のPADは安静時痛とそれに随伴する皮膚萎縮,脱毛,チアノーゼ,虚血性潰瘍,壊疽を引き起こすことがある。診断は病歴聴取,身体診察,および足関節上腕血圧比の測定による。軽度のPADに対する治療法としては,危険因子の是正,運動,抗血小板薬,症状に応じたシロスタゾールや,ときにペントキシフィリンなどがある。重度のPADには通常,血管形成術または外科的バイパス術が必要であり,肢切断が必要になることもある。治療を行う場合,予後は一般に良好であるが,冠動脈疾患または脳血管疾患をしばしば合併するため,死亡率は比較的高くなっている。

病因

末梢動脈疾患(PAD)の有病率は米国では約12%で,女性より男性に多い。危険因子は動脈硬化 アテローム性動脈硬化 アテローム性動脈硬化は,中型および大型動脈の内腔に向かって成長する斑状の内膜プラーク(アテローム)を特徴とし,そのプラーク内には脂質,炎症細胞,平滑筋細胞,および結合組織が認められる。危険因子には,脂質異常症,糖尿病,喫煙,家族歴,座位時間の長い生活習慣,肥満,高血圧などがある。症状はプラークの成長または破綻により血流が減少ないし途絶した... さらに読む アテローム性動脈硬化 のそれと同じであり,具体的には高齢,高血圧 高血圧の概要 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,または原発性アルドステロン症に起因する。高血圧は重症となるか長期間持続しない限... さらに読む 高血圧の概要 糖尿病 糖尿病(DM) 糖尿病(DM)はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリンお... さらに読む 脂質異常症 脂質異常症 脂質異常症とは,血漿コレステロール,トリグリセリド(TG)値,もしくはその両方が高値であること,またはHDLコレステロールが低値であることであり,動脈硬化発生に寄与する。原因には原発性(遺伝性)と二次性とがある。診断は,総コレステロール,TG,および各リポタンパク質の血漿中濃度測定による。治療は食事の変更,運動,および脂質低下薬である。 (脂質代謝の概要も参照のこと。) 脂質測定値は連続的であるため,脂質濃度の正常値と異常値を区切る自然... さらに読む 脂質異常症 (低比重リポタンパク質[LDL]コレステロール高値,高比重リポタンパク質[HDL]コレステロール低値),喫煙(受動喫煙を含む)または他の形態のタバコ使用,および動脈硬化の家族歴である。肥満,男性,およびホモシステイン高値も危険因子である。

症状と徴候

典型的な末梢動脈疾患では,歩行時に下肢の疼痛,疼き,痙攣,不快感,または疲労感が生じ,安静時には軽減する間欠性跛行を引き起こす。跛行は通常は腓腹部に起こるが,足,大腿部,股関節,殿部,またはまれに腕にも起こりうる。跛行は運動誘発性の可逆的な虚血の臨床像であり,この点は狭心症と同様である。PADの進行とともに,症状が現れることなく歩行できる距離が短縮したり,重度のPAD患者では安静時から疼痛が生じたりすることがあり,これらは不可逆的な虚血を反映している。安静時痛は通常,遠位でより強く,下肢の挙上により悪化し(しばしば夜間に痛みを引き起こす),下肢が心臓より低い位置にあると軽減する。疼痛は灼熱感,絞扼感,疼きなどの性状を呈するが,この所見は非特異的である。

末梢動脈疾患患者の約20%は無症状であるが,これはときに患者が下肢の虚血を誘発するほどの活動を行わないことに起因する。一部の患者では非定型症状(例,非特異的な運動耐容能低下,股関節痛や他の関節の痛み)がみられる。

軽度のPADはしばしば何の徴候も示さない。中等度から重度のPADでは,一般的に末梢動脈(膝窩動脈,後脛骨動脈,足背動脈)で脈拍の減弱または消失がみられるが,脈拍を触知できない場合はドプラ超音波検査で血流を検出できることが多い。

足が心臓より低い位置にある場合に暗赤色を呈することがある(下垂時の発赤[dependent rubor]と呼ばれる)。一部の患者では足の挙上により色が喪失し,虚血による痛みが悪化する;足を下ろした際には,静脈の充満に時間がかかる(15秒以上)。患者が痛みを和らげるために下肢を動かさず,下垂させたままでいる場合を除き,浮腫は通常みられない。慢性PADでは,菲薄化して蒼白な(萎縮した)皮膚を呈し,体毛が薄くなるか脱落することがある。下肢遠位部および足に冷感を認めることがある。患側の下肢で過度の発汗とチアノーゼを呈することがあり,これはおそらく過剰な交感神経緊張に起因する。

虚血の悪化に伴い,潰瘍が出現することもあり(典型例では足趾または踵部,ときに下肢または足),特に局所の外傷後によくみられる。潰瘍は黒い壊死組織に取り囲まれる傾向がある(乾性壊疽)。通常は疼痛を伴うが,糖尿病またはアルコール依存症による末梢神経障害のある患者は痛みを感じないことがある。虚血性潰瘍の感染(湿性壊疽)は容易に起こり,進行の速い蜂窩織炎を引き起こす。

動脈閉塞のレベルが症状の部位に影響を及ぼす。大動脈-腸骨動脈のPADでは,殿部,大腿部,または腓腹部の跛行,股関節痛,および男性では勃起障害が生じることがある(Leriche症候群)。大腿膝窩動脈のPADでは,跛行は典型的には腓腹部に起き,大腿動脈より下位の脈拍は弱いか触知できない。より遠位の動脈に生じたPADでは,大腿膝窩動脈の拍動は触知できることがあるが,足部の脈拍は認められない。

動脈閉塞性疾患は,ときに腕(特に左鎖骨下動脈近位部)で発生することもあり,労作時の腕の疲労感をもたらし,ときに手の塞栓症を引き起こす。

診断

  • 足関節上腕血圧比

  • 超音波検査

  • 手術前の血管造影

末梢動脈疾患は臨床的に疑われるが,多くの患者は症状が典型的でないか症状を呈するほど活動的ではないため,十分に認識されていない。脊柱管狭窄症も歩行中の下肢痛の原因となりうるが,その疼痛(pseudoclaudicationと呼ばれる)の軽減には安静だけでなく座位をとる必要があり,また末梢の脈拍が完全なままであることから鑑別可能である。

診断は非侵襲的検査により確定される。最初に,両側の上肢および足関節で収縮期血圧を測定する;足関節の脈拍は触知が難しいことがあるため,ドプラ超音波検査用のプローブを足背動脈または後脛骨動脈の上に置いて測定してもよい。大動脈-腸骨動脈のPAD単独の症例を大腿膝窩動脈のPADおよび下腿のPADと鑑別する上では圧較差と容積脈波が役に立つことから,ドプラ超音波検査がしばしば用いられる。

足関節上腕血圧比(上腕での収縮期血圧に対する足関節での収縮期血圧の比)の低値(0.90以下)はPADを示唆し,軽度(0.71~0.90),中等度(0.41~0.70),重度(0.40以下)に分類できる。血圧比は正常(0.91~1.30)であるが依然としてPADが強く疑われる場合は,運動負荷試験 負荷試験 負荷試験では,心筋酸素需要を増大させた上で心電図検査やしばしば画像検査により心臓をモニタリングすることにより,梗塞の潜在的リスクがある虚血領域を同定することができる。年齢別の最大予測心拍数の85%(目標心拍数)達成または症状発生のいずれかが起こるまで,心拍数を上昇させる。 負荷試験は以下の目的で施行される: 冠動脈疾患(CAD)の診断 CADが判明している患者におけるリスクの層別化... さらに読む 負荷試験 後に血圧比を測定する。血圧比の高値(> 1.30)は,下肢血管が圧迫されなくなっていること(動脈壁の石灰化を伴うメンケベルグ型動脈硬化症 メンケベルグ型動脈硬化症 非アテローム性動脈硬化症(nonatheromatous arteriosclerosis)は,大動脈およびその主要分枝に加齢に伴い線維化が生じるものである。 (アテローム性動脈硬化も参照のこと。) 動脈硬化症(arteriosclerosis)とは,動脈壁の肥厚および弾性喪失を引き起こす複数の疾患の総称である。 そのうち最も頻度の高い形態であるアテローム性動脈硬化(atherosclerosis)は,冠動脈疾患や脳血管疾患を引き起こす... さらに読む メンケベルグ型動脈硬化症 において起こる現象)を示唆する。

血圧比が1.30を超えているものの,それでもPADが強く疑われる場合は,動脈の狭窄または閉塞がないか確認するため,追加の検査(例,ドプラ超音波検査,足趾用カフを用いた第1趾での血圧測定)を行う。収縮期血圧が糖尿病患者以外で55mmHg未満,または糖尿病患者で70mmHg未満の場合,虚血性病変は治癒する可能性が低くなる;膝下切断の術創は,血圧が70mmHg以上であれば通常は治癒する。末梢動脈の機能不全は,経皮的酸素分圧(TcO2)でも評価することができる。TcO2値40mmHg未満は治癒不良の予測因子であり,20mmHg未満は極めて重度の四肢虚血と一致する。

血管造影では動脈狭窄または閉塞の部位および範囲を詳細に調べることができ,外科的修復または経皮的血管形成術(PTA)を施行する上で前提となる検査である。血管造影は異常所見の機能的意義に関する情報をもたらさないことから,非侵襲的検査を代用するものではない。MRアンギオグラフィーとCT血管造影は,造影剤を使用する血管造影に最終的に取って代わる可能性のある非侵襲的な検査である。

治療

  • 危険因子の是正

  • 運動

  • 抗血小板薬

  • ときに跛行に対するペントキシフィリンまたはシロスタゾール

  • アンジオテンシン(ACE)変換酵素阻害薬

  • 重症例に対する経皮的血管形成術(PTA)または手術

末梢動脈疾患の症状緩和および心血管疾患(CVD)の予防のため,全ての症例で積極的な危険因子の是正が必要であり,具体的には,禁煙 禁煙 ほとんどの喫煙者は禁煙したいと願い,それを試みているが,成功率は限られている。効果的な介入としては,禁煙カウンセリングとバレニクリン,ブプロピオン,ニコチン代替製品などの薬剤投与がある。 米国の喫煙者の約70%は,喫煙をやめることを望んでおり,少なくとも1回は禁煙を試みたことがあると言う。ニコチンの離脱症状は,禁煙の重大な障壁となりうる。 (タバコも参照のこと。) 離脱症状はしばしば強力で,多くの喫煙者は,たとえ健康面のリスクを認識して... さらに読む (必須);糖尿病,脂質異常症,および高血圧のコントロール;構造化された運動療法;ならびに食習慣の変更などを行うべきである。CVDのリスクを低減するためのスタチン系薬剤,ACE阻害薬,アスピリンに加えて(アテローム性動脈硬化の治療 食事 アテローム性動脈硬化は,中型および大型動脈の内腔に向かって成長する斑状の内膜プラーク(アテローム)を特徴とし,そのプラーク内には脂質,炎症細胞,平滑筋細胞,および結合組織が認められる。危険因子には,脂質異常症,糖尿病,喫煙,家族歴,座位時間の長い生活習慣,肥満,高血圧などがある。症状はプラークの成長または破綻により血流が減少ないし途絶した... さらに読む 食事 を参照),最近のランダム化プラセボ対照試験では,アスピリン単独に低用量リバーロキサバンを追加することで,CVDイベントおよび四肢の主要な有害事象(切断など)が減少することが示された(1 治療に関する参考文献 末梢動脈疾患(PAD)とは,虚血を引き起こす四肢(ほぼ常に下肢)の動脈硬化症である。軽度のPADは無症状のこともあれば,間欠性跛行を引き起こすこともあり,重度のPADは安静時痛とそれに随伴する皮膚萎縮,脱毛,チアノーゼ,虚血性潰瘍,壊疽を引き起こすことがある。診断は病歴聴取,身体診察,および足関節上腕血圧比の測定による。軽度のPADに対する治療法としては,危険因子の是正,運動,抗血小板薬,症状に応じたシロスタゾールや,ときにペントキシフ... さらに読む 治療に関する参考文献 )。β遮断薬は,PADが非常に重度でない限り,安全である(2 治療に関する参考文献 末梢動脈疾患(PAD)とは,虚血を引き起こす四肢(ほぼ常に下肢)の動脈硬化症である。軽度のPADは無症状のこともあれば,間欠性跛行を引き起こすこともあり,重度のPADは安静時痛とそれに随伴する皮膚萎縮,脱毛,チアノーゼ,虚血性潰瘍,壊疽を引き起こすことがある。診断は病歴聴取,身体診察,および足関節上腕血圧比の測定による。軽度のPADに対する治療法としては,危険因子の是正,運動,抗血小板薬,症状に応じたシロスタゾールや,ときにペントキシフ... さらに読む 治療に関する参考文献 )。

運動(35~50分間のトレッドミルまたはトラックの歩行を運動・安静・運動のパターンで週3~4回実施)が重要であるが,十分に実践されていない治療法である。監督下での運動プログラムは,非監督下でのプログラムより,おそらく優れているようである。運動は無症状で歩ける距離を延長させ,生活の質を改善する。その機序としては,側副血行路の増加,微小血管の拡張を伴う内皮機能の向上,血液粘稠度の低下,赤血球の濾過性の向上,虚血に誘発された炎症の軽減,酸素抽出の増大などが想定されている。

下肢を心臓より低い位置に保つように患者に助言する。夜間の疼痛を軽減するためには,足への血流を改善するためにベッドの頭側を約10~15cm挙上させてもよい。

患者にはまた,寒冷刺激や血管収縮を引き起こす薬剤(例,多くの鼻閉改善薬や感冒薬に含まれているプソイドエフェドリン)の使用を避けるように助言する。

予防的なフットケアが重要であり,特に糖尿病患者では極めて重要である。これには,外傷や病変に関する毎日の足の視診;足専門医(podiatrist)による胼胝および鶏眼の治療;毎日の足の洗浄(低刺激性の石鹸とぬるま湯で洗浄した後,ゆっくりと完全に乾燥させる);熱傷,化学損傷,および機械的損傷(特によく合っていない履き物による損傷)の回避などがある。足潰瘍の管理 直接的な創傷ケア 褥瘡(pressure ulcer)とは,骨突出部と体外の硬い表面の間で軟部組織が圧迫された領域に生じる壊死および潰瘍である。持続的な機械的圧迫に摩擦,ずれ力,湿潤が組み合わさって生じる。危険因子としては,年齢65歳以上,循環および組織灌流の障害,体動不能,低栄養,感覚低下,失禁などがある。重症度としては,圧迫しても消退しない皮膚の紅斑か... さらに読む 直接的な創傷ケア については,本マニュアルの別の箇所で考察されている。

薬物治療

末梢動脈疾患の患者において,抗血小板薬 抗血小板薬 急性冠症候群(ACS)の治療は,苦痛の軽減,血栓形成過程の停止,虚血の解消,梗塞範囲の制限,心仕事量の軽減,ならびに合併症の予防および治療を目的として計画する。ACSは医学的緊急事態であり,その予後は迅速な診断と治療に大きく影響される。治療は診断と同時に行う。治療法としては,血行再建術(経皮的冠動脈インターベンション,冠動脈バイパス術,または血栓溶解療法による)とACSおよび基礎にある冠動脈疾患を治療するための薬物療法がある。... さらに読む は症状をいくらか軽減し,歩行距離を延長させる可能性があるほか,より重要なこととして,アテローム形成を緩和して,急性冠症候群および一過性脳虚血発作の予防に役立つ。選択肢としては,アスピリン81~162mg,経口,1日1回,アスピリン25mg + ジピリダモール200mg,経口,1日1回の併用,クロピドグレル75mg,経口,1日1回またはチクロピジン250mg,経口,1日2回の単剤もしくはアスピリンとの併用投与などがある。典型的には,まずアスピリンを単剤で使用し,それで末梢動脈疾患が進行する場合には,他の薬剤を追加するか,別の薬剤に切り替える。

跛行の軽減には,ペントキシフィリン400mg,経口,1日3回を食事とともに投与するか,シロスタゾール100mg,経口,1日2回の投与を行い,患部の血流を改善して組織の酸素化を促進することによって間欠性跛行を軽減することができるが,これらの薬剤は危険因子の是正と運動に代わるものではない。ペントキシフィリンの使用については,その有効性のエビデンスが一貫していないため,議論のあるところである。ペントキシフィリンの有害作用はまれで軽度であるため,2カ月以上の試験的投与も正当化されると考えられる。シロスタゾールの最も頻度の高い有害作用は頭痛および下痢である。シロスタゾールは,重度の心不全がある患者では禁忌である。

ACE阻害薬はいくつかの有益な作用を示す。ACE阻害薬はアテローム形成を抑制するほか,ブラジキニンの分解を阻害し,一酸化窒素の放出を促進することにより,強力な血管拡張薬としても作用する。間欠性跛行がみられる患者を対象としてラミプリル10mg,経口,1日1回を評価したランダム化試験では,トレッドミルの無痛歩行時間および最大歩行時間がプラセボと比較して有意に延長したことが示された。

跛行を軽減する可能性のある他の薬剤についても研究が行われており,具体的にはL-アルギニン(内皮依存性血管拡張薬の前駆体),一酸化窒素,血管拡張性プロスタグランジン,および血管新生増殖因子(例,血管内皮増殖因子[VEGF],塩基性線維芽細胞増殖因子[bFGF])などがある。重度の四肢虚血患者では,血管拡張性プロスタグランジン注射剤の長期投与により疼痛を軽減して,潰瘍の治癒を促進する可能性がある。

経皮的血管形成術(PTA)

閉塞血管を拡張させる上では,PTAの単独施行またはステント留置との併用が外科手術によらない第一の手段である。ステントを内挿するPTAは,バルーンによる圧迫のみと比較して,動脈の開存をより良好に維持し,再閉塞率が低いと考えられる。ステントは血流の速い太い動脈(腸骨動脈および腎動脈)において最も効果があり,細い動脈や閉塞が長い場合には,それほど有用ではない。

PTAの適応は手術の適応と同様である:

  • 日常生活に支障を来す間欠性跛行

  • 安静時の疼痛

  • 壊疽

適切な病変は,血流を制限する腸骨動脈の短い狭窄(3cm未満)と浅大腿-膝窩動脈領域の単発性または多発性の短い狭窄である。浅大腿動脈の完全閉塞(最長10~12cm)でも拡張は成功しうるが,結果は5cm以下の閉塞の方が良好である。PTAは大腿-膝窩動脈バイパスの近位側にある限局性の腸骨動脈狭窄にも有用である。

PTAはびまん性の病変,閉塞部位の長い病変,偏心性の石灰化プラークにはそれほど有用ではない。そのような病変は特に糖尿病患者でよくみられ,しばしば細い動脈を侵す。

PTAの合併症としては,拡張部位における血栓症,末梢での塞栓,フラップによる閉塞を伴う内膜解離,ヘパリンの使用に関連する合併症などがある。

患者の選択(完全かつ十分な血管造影に基づく)が適切であれば,初期成功率は腸骨動脈で85~95%,大腿部および腓腹部の動脈では50~70%に達する。再発率は比較的高いが(3年以内に25~35%),PTAの再施行が成功する場合がある。

手術

血管の大手術に安全に耐えることができ,かつ非侵襲的治療に反応しない重度の症状のある患者は,手術の適応である。目標は症状の軽減,潰瘍の治癒,および肢切断の回避である。多くの患者は基礎疾患として冠動脈疾患を有しており,そのためPADの外科手術中に急性冠症候群が発生するリスクがあるため,通常は手術前に心臓の評価を行う。

血栓内膜除去術(閉塞病変部の外科的除去)は,大動脈-腸骨動脈,総大腿動脈,または深大腿動脈の限局的で短い病変に対して用いられる。

血行再建術(例,大腿-膝窩動脈バイパス術)では,閉塞病変をバイパスするために人工または自家(しばしば伏在静脈またはその他の静脈)材料を使用する。血行再建術は肢切断を予防し,跛行を軽減する上で有用である。

血管の大手術を受けることができない患者では,末梢の閉塞が重度の虚血痛を引き起こしている場合,交感神経切除術が効果的となることがある。化学的な交感神経ブロックが外科的な交感神経切除術と同等に効果的であるため,後者はほとんど行われていない。

肢切断は最後の手段としての手術であり,コントロール不良の感染,耐え難い安静時痛,および進行性の壊疽がみられる場合に適応となる。切断は,義足を最も有効に使用できるように膝関節を残すため,できるだけ末梢で行うべきである。

圧迫療法

下肢を外部から空気で圧迫して末梢の血流を増加させる方法は,手術適応のない重症PAD患者に対する救肢の選択肢である。理論的には,浮腫をコントロールし,動脈血流,静脈還流,および組織の酸素化を改善するが,その使用を裏付けるデータは限られている。空気カフまたはストッキングを下腿に装着し,拡張期,収縮期,または両時相の一部の期間にわたってリズミカルに膨らませる操作を,週数回,1~2時間ずつ行う。

幹細胞移植

骨髄幹細胞は小血管に分化することが可能である。臨床試験において,重症四肢虚血患者の下肢に対する腸骨稜骨髄を採取源とする自家造血幹細胞移植の評価が進められている。この治療法は全ての患者に適切とは限らないが,そうしなければ切断が必要になるであろう一部の患者にとって代替療法となることが確認される可能性があり,現時点の成績では,移植2年後に60~70%で切断が回避されたことが示されている;初期の小規模試験の結果は有望であったが,複数の盲検プラセボ対照試験で便益が示されなかった(3, 4 治療に関する参考文献 末梢動脈疾患(PAD)とは,虚血を引き起こす四肢(ほぼ常に下肢)の動脈硬化症である。軽度のPADは無症状のこともあれば,間欠性跛行を引き起こすこともあり,重度のPADは安静時痛とそれに随伴する皮膚萎縮,脱毛,チアノーゼ,虚血性潰瘍,壊疽を引き起こすことがある。診断は病歴聴取,身体診察,および足関節上腕血圧比の測定による。軽度のPADに対する治療法としては,危険因子の是正,運動,抗血小板薬,症状に応じたシロスタゾールや,ときにペントキシフ... さらに読む 治療に関する参考文献 )。

遺伝子治療

遺伝子治療も研究されている。VEGFをコードするDNAの導入は,側副血行路の増殖を促す可能性がある。

治療に関する参考文献

  • 1.Anand S, Bosch J, Eikelboom JW, et al, on behalf of the COMPASS Investigators: Rivaroxaban with or without aspirin in patients with stable peripheral or carotid artery disease: an international, randomized, double-blind, placebo controlled trial.Lancet 391(10117):218–229, 2018.doi: 10.1016/S0140-6736(17)32409-1

  • 2.Gerhard-Herman MD, Gornik HL, Barrett C, et al: 2016 AHA/ACC Guideline on the management of patients with lower extremity peripheral artery disease.Circulation 155:e686–e725, 2017.

  • 3.Rigato M, Monami M, Fadini GP: Autologous cell therapy for peripheral arterial disease: Systematic review and meta-analysis of randomized, nonrandomized, and noncontrolled Studies.Circ Res 120(8):1326–1340, 2017.doi: 10.1161/CIRCRESAHA.116.309045.Epub 2017 Jan 17.Review.

  • 4.Teraa M, Sprengers RW, Schutgens RE, et al: Effect of repetitive intra-arterial infusion of bone marrow mononuclear cells in patients with no-option limb ischemia: The randomized, double-blind, placebo-controlled Rejuvenating Endothelial Progenitor Cells via Transcutaneous Intra-arterial Supplementation (JUVENTAS) trial.Circulation 131(10):851–860, 2015.doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.114.012913.Epub 2015 Jan 7.

要点

  • 末梢動脈疾患(PAD)はほぼ全例が下肢で発生する。

  • 50~75%の患者では,脳血管や冠動脈にも有意な動脈硬化が認められる。

  • 症状を呈する場合,PADは間欠性跛行を引き起こすが,これは歩行時に生じて安静時に軽減する下肢の不快感で,狭心症と同様,運動により誘発される可逆的な虚血の臨床像である。

  • 重度のPADでは安静時にも疼痛が生じることがあり,これは不可逆的な虚血や,足の虚血性潰瘍を反映する所見である。

  • 足関節上腕血圧比(上腕での収縮期血圧に対する足関節での収縮期血圧の比)の低値(0.90以下)はPADを示唆する。

  • 動脈硬化の危険因子を是正し,スタチン系薬剤,抗血小板薬,および,ときにアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,リバーロキサバン,ペントキシフィリン,またはシロスタゾールを投与する。

  • 経皮的血管形成術の単独施行またはステント留置との併用で閉塞血管を拡張できる場合があり,ときに手術(動脈内膜摘除術またはバイパス術)が必要である。

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