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肺水腫

執筆者:

Sanjiv J. Shah

, MD, Northwestern University Feinberg School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 3月
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肺水腫は,肺静脈性肺高血圧と肺胞内の液貯留(alveolar flooding)を伴った重度の急性左室不全である。所見は,重度の呼吸困難,発汗,喘鳴,ときに泡沫状の血痰である。診断は臨床的に行われ,胸部X線による。治療には酸素,硝酸薬静注,利尿薬のほか,ときにモルヒネを使用するとともに,駆出率が低下した心不全患者には,短期間の陽性変力薬の静注と補助換気(気管挿管と機械的人工換気または二相性陽圧換気)を行う。

左室充満圧が突然上昇すると,血漿成分が肺毛細血管から間質および肺胞内へと急速に移動する結果,肺水腫が引き起こされる。誘発因子は年齢と国によって異なるが,約半数の症例は急性冠動脈虚血に起因し,一部は 高血圧 高血圧の概要 高血圧とは,安静時の収縮期血圧(130mmHg以上),拡張期血圧(80mmHg以上),またはその両方が高値で維持されている状態である。原因不明の高血圧(本態性高血圧)が最も多くを占める。原因が判明する高血圧(二次性高血圧)は通常,睡眠時無呼吸症候群,慢性腎臓病,または原発性アルドステロン症に起因する。高血圧は重症となるか長期間持続しない限... さらに読む 高血圧の概要 による 駆出率が保持された心不全 駆出率が保持された心不全(HFpEF) 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 駆出率が保持された心不全(HFpEF) など基礎にある有意な 心不全 心不全 (HF) 心不全は心室機能障害により生じる症候群である。左室不全では息切れと疲労が生じ,右室不全では末梢および腹腔への体液貯留が生じる;左右の心室が同時に侵されることもあれば,個別に侵されることもある。最初の診断は臨床所見に基づいて行い,胸部X線,心エコー検査,および血漿ナトリウム利尿ペプチド濃度を裏付けとする。治療法としては,患者教育,利尿薬,ア... さらに読む 心不全 (HF) の代償不全の結果として発生するほか,残りは不整脈,急性弁膜症,または急性の体液量過剰(しばしば輸液を原因とする)から生じる。服薬または食事に関するアドヒアランス不良がしばしば関与する。

症状と徴候

患者は極度の呼吸困難,不穏,および窒息感を伴う不安により受診する。血痰を伴う咳嗽,蒼白,チアノーゼ,および著明な発汗がよくみられ,一部の患者では口腔内に泡沫が生じる。明らかな喀血はまれである。脈拍は速く低容量であり,血圧は一定しない。著明な高血圧は心予備能が大きいことを意味し,収縮期血圧100mgHg未満の低血圧は予後不良の徴候である。吸気時の捻髪音が両肺野の前胸部および背部で広範囲に聴取される。著明な喘鳴(心臓喘息)が生じることがある。努力呼吸の音が大きいため,心臓の聴診はしばしば困難となるが,重合奔馬調律(summation gallop)―III音(S3)およびIV音(S4)の重なったもの―が認められることがある。右室不全の徴候(例,頸静脈怒張,末梢浮腫)がみられることもある。

診断

  • 臨床的評価で明らかになる重度の呼吸困難と断続性ラ音

  • 胸部X線

  • ときに血清脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)またはN-terminal-pro BNP(NT-pro-BNP)

  • 心電図検査,心筋マーカー,および必要に応じて病因に対するその他の検査

COPDの増悪 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,毒素の吸入(しばしばタバコ煙)に対する炎症反応によって引き起こされる気流制限である。比較的まれな原因として,非喫煙者におけるα1-アンチトリプシン欠乏症および様々な職業曝露がある。症状は数年かけて発現する湿性咳嗽および呼吸困難であり,一般的な徴候には呼吸音の減少,呼気相の延長,および喘鳴などがある。重症例で... さらに読む 慢性閉塞性肺疾患(COPD) が左室不全による肺水腫に類似することがあり, 肺性心 肺性心 肺性心とは,肺動脈性肺高血圧症を引き起こす肺疾患に続発して右室拡大が生じる病態である。続いて右室不全へと至る。所見には,末梢浮腫,頸静脈怒張,肝腫大,胸骨近傍の挙上などがある。診断は臨床的に行い,心エコー検査による。治療は原因に対して行う。 肺性心は肺またはその血管系の障害により生じるもので,左室不全,先天性心疾患(例,心室中隔欠損症),または後天性弁膜症に続発した右室拡大は肺性心とは呼ばない。肺性心は通常慢性に経過するが,急性かつ可逆... さらに読む 肺性心 が生じている場合は,さらに両室不全による肺水腫に類似することもある。肺水腫は心疾患の既往のない患者において主症状となる場合もあるが,そうした重度の症状があるCOPD患者にはCOPDの既往があるのが通常である(ただし,呼吸困難があまりに重度なために患者がそのことを伝えられない場合もある)。

胸部X線を直ちに施行すれば,通常は診断が得られ,著明な間質性浮腫が認められる。ベッドサイドでの血清BNP/NT-proBNP値の測定(肺水腫では上昇し,COPDの増悪では正常)は,診断に疑いがある場合に役立つ。心電図検査,パルスオキシメトリー,および血液検査(心筋マーカー,電解質,BUN,クレアチニン,重症患者では動脈血ガス)を施行する。心エコー検査は肺水腫の原因(例, 心筋梗塞 急性心筋梗塞 急性心筋梗塞は,冠動脈の急性閉塞により心筋壊死が引き起こされる疾患である。症状としては胸部不快感がみられ,それに呼吸困難,悪心,発汗を伴う場合がある。診断は心電図検査と血清マーカーの有無による。治療法は抗血小板薬,抗凝固薬,硝酸薬,β遮断薬,スタチン系薬剤,および再灌流療法である。ST上昇型心筋梗塞に対しては,血栓溶解薬,経皮的冠動脈インターベンション,または(ときに)冠動脈バイパス術による緊急再灌流療法を施行する。非ST上昇型心筋梗塞... さらに読む 急性心筋梗塞 ,弁機能障害,高血圧性心疾患, 拡張型心筋症 拡張型心筋症 拡張型心筋症は,心室拡大と収縮機能障害を主体とする心不全を引き起こす心筋機能障害である。症状としては,呼吸困難,疲労,末梢浮腫などがある。診断は臨床的に行われ,ナトリウム利尿ペプチド高値,胸部X線,心エコー検査,およびMRIによる。治療は原因に対して行う。心不全が進行性かつ重度の場合には,心臓再同期療法,植込み型除細動器,中等度から高度の弁逆流に対する修復術,または心臓移植術が必要となることがある。... さらに読む 拡張型心筋症 )を同定する上で役立つ可能性があり,治療法の選択に影響を及ぼすこともある。低酸素血症が重度となる可能性がある。二酸化炭素蓄積は二次性低換気の後期にみられる予後不良の徴候である。

治療

  • 原因の治療

  • 酸素

  • 利尿薬の静注

  • 硝酸薬

  • 強心薬の静注

  • モルヒネ

  • 換気補助

初期治療としては,原因の同定,非再呼吸式マスクによる100%酸素投与,起座位,フロセミド投与(0.5~1.0mg/kgの静注または5~10mg/時の持続注入),ニトログリセリン投与(0.4mgを5分毎に舌下投与し,その後は10~20μg/分で点滴静注,収縮期血圧が100mmHgを超える場合は必要に応じて最大300μg/分まで5分毎に10μg/分ずつ漸増)などを行う。モルヒネ(1~5mgを1回または2回静注)が重度の不安および呼吸仕事量を軽減する目的で長年にわたり使用されてきたが,その使用により転帰が不良になる可能性が観察研究で示唆されていることから,使用が減ってきている。低酸素症が重度の場合には,二相性気道陽圧法(BiPAP)による非侵襲的な換気補助が役立つ。CO2蓄積が認められるか意識障害がある場合は, 気管挿管 気管挿管 人工エアウェイを必要とする患者の多くは,気管挿管によって管理可能である。経口気管挿管は,一般的には喉頭鏡による直視下で行われるが,経鼻気管挿管よりも通常手早く施行できるため無呼吸および重症(critically ill)の患者で選択され,経鼻気管挿管は意識があり自発呼吸を行っている患者または経口挿管を避けるべき状況にのみ用いられる。 (呼吸停止の概要および気道確保および管理も参照のこと。)... さらに読む および 機械的人工換気 機械的人工換気の概要 機械的人工換気には以下の種類がある: 非侵襲的,様々な種類のフェイスマスクを使用する 侵襲的,気管挿管を伴う 適切な手法の選択および使用には呼吸力学の理解が必要である。 気管挿管および機械的人工換気の適応は極めて多彩であるが(Professional.see table 気道管理が必要となる状況),一般には,気道の確保または十分な酸素化もしくは換気の維持が困難であることを示す徴候が臨床的または臨床検査により認められる場合に,機械的人工換... さらに読む が必要となる。

特異的な追加治療は病因に依存する:

  • 急性心筋梗塞またはその他の急性冠症候群には,血栓溶解療法または直接的な経皮的冠動脈形成術を単独もしくはステント留置と併用で施行する

  • 重症高血圧には,血管拡張薬を静注する

  • 上室または心室頻拍に対しては,カルディオバージョン

  • 頻拍性心房細動にはカルディオバージョンが望ましい。心室拍数を低下させるには,β遮断薬の静注,ジゴキシンの静注,またはカルシウム拮抗薬静注の慎重投与

急性心筋梗塞患者では,肺水腫発生前の体液の状態は通常は正常であるため,利尿薬は急性代償不全を呈する慢性心不全患者の場合より有用性が低く,低血圧の誘因となりうる。収縮期血圧の100mmHg未満への低下またはショックがみられる場合は,ドブタミンの静注および大動脈内バルーンパンピング(カウンターパルセーション)が必要になることがある。

一部の新規薬剤,例えば静注のBNP(ネシリチド[nesiritide])やカルシウム感受性陽性変力薬(レボシメンダン[levosimendan],ピモベンダン),ベスナリノン,イボパミンなどは,当初は有益な効果をもたらす可能性があるが,標準療法と比較して転帰を改善しないようであり,死亡率は上昇する可能性がある。現在,ヒト妊娠ホルモンであるリラキシン2の遺伝子組換え体であるセルラキシンが,急性心不全患者を対象とする大規模第III相試験において検討されている。

要点

  • 急性肺水腫は,急性冠動脈虚血,基礎にある心不全の代償不全,不整脈,急性弁膜症,または急性の体液量過剰によって発生する可能性がある。

  • 症状としては,重度の呼吸困難,発汗,喘鳴,ときに泡沫状の血痰がみられる。

  • 通常は身体診察と胸部X線で十分に診断可能であり,原因の同定を目的として,心電図検査,心筋マーカー,ときに心エコー検査を施行する。

  • 原因を治療し,酸素および静注フロセミドおよび/または硝酸薬を必要に応じて投与する;まず非侵襲的な換気補助を試し,必要であれば気管挿管と補助換気を行う。

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