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三尖弁逆流症

(三尖弁閉鎖不全症)

執筆者:

Guy P. Armstrong

, MD, Waitemata District Health Board and Waitemata Cardiology, Auckland

医学的にレビューされた 2018年 6月
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三尖弁逆流症(TR)は,三尖弁の閉鎖不全により,収縮期に右室から右房に向かって逆流が生じる病態である。最も一般的な原因は右室の拡大である。症状や徴候は通常みられないが,重症TRでは頸部の拍動,全収縮期雑音,および右室由来の心不全または心房細動が引き起こされる。診断は身体診察および心エコー検査による。TRは通常良性で治療を必要としないが,一部の患者では弁輪形成術,弁修復術,または弁置換術が必要になる。

病因

三尖弁逆流症としては以下のものがある:

  • 原発性

  • 二次性(最も多い)

原発性の三尖弁逆流症は比較的頻度が低い。それは静注薬物使用者の 感染性心内膜炎 感染性心内膜炎 感染性心内膜炎は,心内膜の感染症であり,通常は細菌(一般的にはレンサ球菌またはブドウ球菌)または真菌による。発熱,心雑音,点状出血,貧血,塞栓現象,および心内膜の疣贅を引き起こすことがある。疣贅の発生は,弁の閉鎖不全または閉塞,心筋膿瘍,感染性動脈瘤につながる可能性がある。診断には血液中の微生物の証明と通常は心エコー検査が必要である。治療... さらに読む 感染性心内膜炎 カルチノイド症候群 カルチノイド症候群 カルチノイド症候群は, カルチノイド腫瘍患者の一部に発生する病態で,皮膚紅潮,腹部痙攣,および下痢を特徴とする。右側の心臓弁膜症が数年後に生じることがある。本症候群は,腫瘍によって分泌される血管作動性物質(セロトニン,ブラジキニン,ヒスタミン,プロスタグランジン,ポリペプチドホルモンなど)に起因し,その腫瘍は典型的には転移性の消化管カルチノイドである。診断は臨床的に,また尿中5-ヒドロキシインドール酢酸の高値を示すことによる。腫瘍の局在... さらに読む カルチノイド症候群 ,鈍的胸部外傷, リウマチ熱 リウマチ熱 リウマチ熱は,A群レンサ球菌咽頭感染症の合併症として発生する急性の非化膿性炎症であり,関節炎,心炎,皮下結節,輪状紅斑,舞踏運動などを引き起こす。診断は,病歴,診察,および臨床検査から得た情報に対する,改変Jones診断基準の適用に基づく。治療には,アスピリンまたはその他のNSAIDの投与,重症心炎発生時のコルチコステロイド投与,残存するレンサ球菌の根絶と再感染防止のための抗菌薬投与が含まれる。... さらに読む リウマチ熱 ,特発性粘液腫様変性,先天異常(例,三尖弁裂隙, 心内膜床欠損 房室中隔欠損症 房室中隔欠損症は,一次孔型心房中隔欠損と共通房室弁で構成される病態で,さらに流入部(房室中隔型)心室中隔欠損(VSD)を伴う場合もある。これらの異常は心内膜床の発育不良が原因で発生する。VSDがないか,VSDは小さく房室弁機能が良好な患者では,無症状に経過することもある。VSDが大きいか,有意な房室弁逆流がある場合には,しばしば哺乳時の呼吸困難,発育不良,頻呼吸,発汗などの心不全徴候がみられる。心雑音,頻呼吸,頻脈,および肝腫大がよくみ... さらに読む ), エプスタイン奇形 エプスタイン奇形 その他の先天性心奇形としては,以下のものが挙げられる: 大動脈肺動脈窓 大動脈二尖弁 修正大血管転位症 両大血管右室起始症 さらに読む (先天奇形により三尖弁尖が右室側へ下方偏位する), マルファン症候群 マルファン症候群 マルファン症候群は結合組織の異常から成り,結果として眼,骨格,および心血管系の異常を来す(例, 大動脈解離につながる上行大動脈の拡張)。診断は臨床的に行う。治療には,上行大動脈の拡張を遅らせるための予防的β遮断薬投与,および予防的大動脈手術などがある。 マルファン症候群の遺伝形式は 常染色体優性である。基礎的な分子生物学的異常は,ミクロフィブリルの主要成分であり細胞の細胞外基質への固定を助ける糖タンパク質フィブリリン-1( さらに読む マルファン症候群 ,または特定の薬剤(例,エルゴタミン,フェンフルラミン[fenfluramine],フェンテルミン[phentermine])によって生じた弁の異常が原因である。医原性の原因として,三尖弁を横断するペースメーカーのリードや,右室の心内膜心筋生検時に生じた弁損傷などがある。

症状と徴候

中等症から重症の三尖弁逆流症の徴候としては,融合した著明なcv波と急峻なy谷を伴う頸静脈怒張や,ときに肝腫大と末梢浮腫などがみられる。重症TRでは,右頸静脈で振戦が触知されることがあり,また収縮期の肝拍動や胸骨左縁下部の右室拍動も触知されることがある。

聴診

  • 胸骨左縁中央または下部で最もよく聴取される全収縮期雑音(聴取されないことも多い)

聴診では,I音は正常のこともあれば,三尖弁逆流雑音があるとほとんど聴取できないこともあり,II音は分裂している(肺高血圧症では肺動脈弁成分[P2]が大きくなる)場合もあれば,肺動脈弁の迅速な閉鎖によりP2と大動脈弁成分(A2)が融合するために単一となる場合もある。右室機能障害による心不全があると,右室由来のIII音が胸骨近傍で聴取されることがある。

三尖弁逆流の雑音はしばしば聴取されない。明らかになる場合は全収縮期雑音を呈し,患者に起座位または立位をとらせてベル型の聴診器を使用することにより,胸骨左縁中部または下部か心窩部で最もよく聴取される。雑音はTRが軽微で肺高血圧症に起因している場合には高調となり,TRが高度で他の原因がある場合には中等度の高さとなる。雑音が全く聴取されない場合には,頸静脈波のパターンと収縮期の肝拍動の有無による診断が最善となる。雑音は呼吸により変動し,吸気時に増強する(Carvallo徴候)。

診断

  • 心エコー検査

中等度または高度のTRは,病歴聴取と身体診察で示唆されることがある。確定診断は心エコー検査による。

高度TRは,心エコー検査で以下の所見を少なくとも1つ認めることを特徴とする:

  • 断層エコー像で接合不全またはflailを認める

  • カラードプラ像で大きな逆流ジェットを認める

  • 弁近傍に大きな血流収束帯を認める

  • 縮流幅(vena contracta width)が7mmを超える

  • 肝静脈に収縮期逆流を認める(高度TRに特異的)

  • 経三尖弁E波が優位で1cm/秒を上回る

  • ドプラ心エコーで早期にピークを迎える持続的で高密度な三角形のTRジェットを認める

TRが中等度または高度の場合,最高逆流速度を用いると肺動脈圧を過小評価することになる。2次元心エコー検査では,一次性TRで存在する構造的異常を検出できる。

右室の大きさおよび機能の評価方法としては,現在は 心臓MRI MRI 心臓の画像検査によって,心臓の構造および機能を描出することができる。標準的な画像検査としては以下のものがある: 心エコー検査 胸部X線 CT MRI さらに読む MRI が好まれているが,これは一般的には心エコーの画質が十分でない場合に施行するべきである。

心電図検査と胸部X線がしばしば試行される。

臨床検査は必要ないが,施行した場合,重症TR患者では肝機能障害を認めることがある。

心臓カテーテル検査 心臓カテーテル法 心臓カテーテル法とは,末梢の動脈または静脈から心腔,肺動脈,冠動脈,および冠静脈までカテーテルを挿入する手技である。 心臓カテーテル法は,以下のものを含む様々な検査に用いることができる: 血管造影 血管内超音波検査(IVUS) 心拍出量(CO)の測定 さらに読む 心臓カテーテル法 は,高度TRがある場合の肺動脈圧の正確な測定や,手術が予定されている場合の冠動脈の解剖学的評価が目的の場合に適応となる。カテーテル検査の所見としては,右房圧波形における心室収縮時の著明なcv波などがある。

予後

重症三尖弁逆流症は,たとえ当初は多年にわたり良好に耐容されている場合でも,最終的には予後不良である。左心系の弁逆流と同様に,容量負荷が生じた心室は最終的に不可逆的な代償不全を来す。

治療

  • 原因の治療

  • ときに弁輪形成術,弁修復術,または弁置換術

ごく軽度の三尖弁逆流は正常所見であり,特に対応は必要ない。原因(例,心不全,心内膜炎)に対する薬物治療が適応となる。

重症三尖弁逆流症患者には,薬物治療にもかかわらず症状がみられる場合,または進行性で中等度の右室拡大もしくは機能障害が認められた場合,早急に手術を行うべきである。左心系の病変に対する手術の際には,中等度または軽度TRで拡張した弁輪径が40mmを超える場合,弁修復も行うべきである。

外科的な選択肢としては以下のものがある:

  • 弁輪形成術

  • 弁修復術

  • 弁置換術

弁輪形成はTRが弁輪の拡大に起因する場合に適応となり,三尖弁の弁輪に人工のリングを縫着するか,弁輪の外周の大きさを個々の状況に合わせて縮小する。

弁修復または弁置換は,TRが一次性の弁異常に起因する場合,または弁輪形成が技術的に不可能な場合に適応となる。TRがカルチノイド症候群またはエプスタイン奇形に起因する場合には,三尖弁置換術の適応である。右心系の低圧に関連する血栓塞栓症のリスクを低減するために生体弁を使用するが,右心系では左心系とは異なり,生体弁でも耐久期間が10年を超える。生体弁には一時的な抗凝固療法が必要である(人工弁置換患者に対する抗凝固療法 人工弁置換患者に対する抗凝固療法 いずれの心臓弁も狭窄または閉鎖不全(逆流とも表現される)を起こす可能性があり,その場合,症状出現のかなり前から血行動態に変化が生じる。弁の狭窄または閉鎖不全は,個々の弁で独立して起こる場合が最も多いが,複数の弁膜症が併存する場合もあれば,1つの弁に狭窄と閉鎖不全が併発する場合もある。... さらに読む を参照)。

要点

  • 三尖弁逆流症(TR)は通常,正常な弁が右室拡大の影響を受けることで発生し,内因性の弁障害(例,感染性心内膜炎,カルチノイド症候群,または特定の薬剤に起因するもの)はさほど多くない。

  • 頸静脈怒張を認めることがあり,また重症のTRでは,腹部膨満,肝腫大,末梢浮腫を来すことがある。

  • 聴診所見としては,起座位または立位で胸骨左縁中部もしくは下部または心窩部で最もよく聴取される全収縮期雑音があり,この雑音は吸気時に増強する。

  • TRは通常,良好に耐容されるが,重症例では弁輪形成,弁修復,または弁置換が必要になることがある。

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