大動脈炎はまれであるが,生命を脅かす可能性がある。報告されている発生率は年間100万人当たり1~3例である。
大動脈炎は以下により引き起こされる:
結合組織疾患(例, 高安動脈炎 高安動脈炎 高安動脈炎は,大動脈,その分枝,および肺動脈を侵す炎症性疾患である。主に若年女性に発症する。病因は不明である。血管の炎症によって動脈の狭窄,閉塞,拡張,または動脈瘤を生じることがある。患者には,四肢の間(両側の肢の間または同じ側の腕と下肢の間)に非対称性の脈もしくは血圧測定値の不一致,四肢の跛行,脳灌流量の減少による症状(例,一過性視覚障害,一過性脳虚血発作,脳卒中),および高血圧もしくはその合併症がみられることがある。診断は,大動脈造... さらに読む
, 巨細胞性動脈炎 巨細胞性動脈炎 巨細胞性動脈炎は,胸部大動脈,大動脈から派生する頸部の大型動脈,および頸動脈の頭蓋外分枝を主に侵す。リウマチ性多発筋痛症の症状がよくみられる。症状および徴候には,頭痛,視覚障害,側頭動脈の圧痛,咀嚼時の顎筋の痛みなどがある。発熱,体重減少,倦怠感,疲労もよくみられる。赤血球沈降速度の亢進およびC反応性タンパク値の上昇が典型的にみられる。診断は臨床的に行い,側頭動脈生検により確定する。高用量コルチコステロイドおよび/またはトシリズマブ,な... さらに読む , 強直性脊椎炎 強直性脊椎炎 強直性脊椎炎は,代表的な 脊椎関節症であり,体幹骨,末梢の大関節,および指の炎症,夜間の背部痛,背部のこわばり,脊柱後弯症の増強,全身症状,大動脈炎,心伝導異常,ならびに前部ぶどう膜炎を特徴とする全身性疾患である。診断には,X線上で仙腸関節炎を示す必要がある。治療は,非ステロイド系抗炎症薬および/または腫瘍壊死因子阻害薬もしくはインターロイキン17(IL-17)阻害薬と関節の柔軟性を維持する理学療法による。... さらに読む
, 再発性多発軟骨炎 再発性多発軟骨炎 再発性多発軟骨炎は,主として耳介および鼻の軟骨を侵すまれで突発性かつ炎症性の破壊的な疾患であるが,眼,気管気管支,心臓弁,腎臓,関節,皮膚,および血管を侵す可能性もある。診断は,臨床所見,検査所見,画像所見のほか,まれに生検所見の組合せによる。治療には通常,プレドニゾンおよび他の免疫抑制薬を必要とする。 再発性多発軟骨炎は男性と女性を均等に侵す;通常,発症は中年期である。 関節リウマチ,... さらに読む
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感染症(例, 細菌性心内膜炎 感染性心内膜炎 感染性心内膜炎は,心内膜の感染症であり,通常は細菌(一般的にはレンサ球菌またはブドウ球菌)または真菌による。発熱,心雑音,点状出血,貧血,塞栓現象,および心内膜の疣贅を引き起こすことがある。疣贅の発生は,弁の閉鎖不全または閉塞,心筋膿瘍,感染性動脈瘤につながる可能性がある。診断には血液中の微生物の証明と通常は心エコー検査が必要である。治療... さらに読む
, 梅毒 梅毒 梅毒は,スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)によって引き起こされる疾患で,臨床的に3つの病期に区別され,それらの間には無症状の潜伏期がみられることを特徴とする。一般的な臨床像としては,陰部潰瘍,皮膚病変,髄膜炎,大動脈疾患,神経症候群などがある。診断は血清学的検査のほか,梅毒の病期に基づいて選択される補助的検査による。第1選択の薬剤はペニシリンである。... さらに読む
, ロッキー山紅斑熱 ロッキー山紅斑熱(RMSF) ロッキー山紅斑熱(RMSF)は,Rickettsia rickettsiiによって引き起こされ,マダニによって伝播される。症状は高熱,重度の頭痛,および発疹である。 ( リケッチアとその近縁微生物による感染症の概要も参照のこと。) ロッキー山紅斑熱はリケッチア感染症の一種である。 RMSFの発生は西半球に限られている。RMSFは当初ロッキー山脈諸州で確認されたが,実際には米国全土と中南米各地で発生している。ヒトへの感染は,... さらに読む
,真菌感染症)
また, コーガン症候群 コーガン症候群 コーガン症候群はまれな自己免疫疾患で,眼および内耳を侵す。 コーガン症候群は若年成人に発生し,患者の80%は14~47歳である。本疾患は,角膜および内耳に共通する未知の自己抗原に対する自己免疫反応が原因であると考えられている。約10~30%の患者では重度の全身性血管炎もみられ,その中には生命を脅かす 大動脈炎も含まれる場合がある。 ( 角膜疾患に関する序論も参照のこと。) 主症状は,眼科系が38%,前庭聴覚系が46%,その両方が15%で... さらに読む の特徴(炎症性角膜炎,前庭および聴覚機能障害,および大動脈炎)の1つでもある。
炎症は通常,大動脈の3層(内膜,中膜,外膜)の全てに及び,大動脈もしくはその分枝の閉塞,または動脈壁の脆弱化を引き起こし,結果として 大動脈瘤 大動脈瘤の概要 動脈瘤とは,動脈壁の脆弱化により動脈が異常に拡張した状態である。一般的な原因としては,高血圧,動脈硬化,感染,外傷,遺伝性または後天性の結合組織疾患(例,マルファン症候群,エーラス-ダンロス症候群)などがある。動脈瘤は通常無症状であるが,疼痛を引き起こしたり,虚血,血栓塞栓症,自然解離,破裂を来して致死的となることもある。診断は画像検査(... さらに読む の形成につながることがある。
発生機序,症状と徴候,診断,および治療は病因により異なる。
しかしながら,治療では基礎疾患を治療することが基本原則となる。