(不整脈の概要 不整脈の概要 正常な心臓は規則正しく協調的に拍動するが,これは固有の電気的特性を有する筋細胞によって電気パルスが生成・伝達され,それにより一連の組織化された心筋収縮が誘発されることによって生じる。不整脈と伝導障害は,そうした電気パルスの生成,伝導,またはその両方の異常により引き起こされる。 先天的な構造異常(例,房室副伝導路)や機能異常(例,遺伝性のイ... さらに読む も参照のこと。)
伝導ブロック(心臓内の電気刺激の伝導経路 心臓内の電気刺激の伝導経路 の図を参照)は多くの心疾患によって発生する可能性があり,これには他に心疾患の合併がない内因性の変性などがある。
心臓内の電気刺激の伝導経路
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右脚ブロック(RBBB― 右脚ブロック 右脚ブロック の図を参照)は,心疾患の所見がない人に発生することがある。前壁の 心筋梗塞 急性心筋梗塞 急性心筋梗塞は,冠動脈の急性閉塞により心筋壊死が引き起こされる疾患である。症状としては胸部不快感がみられ,それに呼吸困難,悪心,発汗を伴う場合がある。診断は心電図検査と血清マーカーの有無による。治療法は抗血小板薬,抗凝固薬,硝酸薬,β遮断薬,スタチン系薬剤,および再灌流療法である。ST上昇型心筋梗塞に対しては,血栓溶解薬,経皮的冠動脈インターベンション,または(ときに)冠動脈バイパス術による緊急再灌流療法を施行する。非ST上昇型心筋梗塞... さらに読む
に伴って発生する場合もあり,少なからぬ心筋障害を意味する。新たに出現したRBBBに対しては,心臓にある基礎的な病態の検索を試みるべきであるが,何も発見されないことが多い。 肺塞栓症 肺塞栓症(PE) 肺塞栓症とは,典型的には下肢または骨盤の太い静脈など,他の場所で形成された血栓による肺動脈の閉塞である。肺塞栓症の危険因子は,静脈還流を障害する状態,血管内皮の障害または機能不全を引き起こす状態,および基礎にある凝固亢進状態である。肺塞栓症の症状は非特異的であり,呼吸困難,胸膜性胸痛などに加え,より重症例では,ふらつき,失神前状態,失神,... さらに読む
の発生後には一過性のRBBBがみられることがある。RBBBはQRS波を変形させるが,心筋梗塞の心電図診断を著しく妨げることはない。
右脚ブロック
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左脚ブロック
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束枝ブロックは左脚の前枝または後枝に生じる。左脚前枝の伝導が途絶すると,中等度のQRS延長(120msec未満)と左軸偏位(前額面のQRS電気軸が−30°を超える)を特徴とする左脚前枝ブロックが生じる。左脚後枝ブロックでは右軸偏位(前額面のQRS電気軸が+120°を超える)がみられる。束枝ブロックと構造的心疾患の関連性はLBBBの場合と同じである。
束枝ブロックは他の伝導障害と併存することがあり,RBBBは左脚前枝または後枝ブロックと併存することがあり(2枝ブロック),左脚前枝または後枝ブロックはRBBBおよび第1度房室ブロックと併存することがある(不正確に3枝ブロックと呼ばれているが,第1度ブロックは通常,房室結節起源である)。
3枝ブロックとは,右脚ブロックと左脚前枝および左脚後枝の交代性ブロックの併存,または左脚および右脚の交代性ブロックを指す。心筋梗塞後の2枝または3枝ブロックの存在は,広範囲の心筋損傷を示唆する。2枝ブロックは,間欠性の第2度または第3度房室ブロックが存在しない限り,直接の治療を必要としない。真の3枝ブロックには,緊急のペーシングとその後の恒久的ペーシングが必要である。
QRS幅が延長するが(120msecを超える),QRSパターンがLBBBまたはRBBBに典型的なものでない場合は,非特異的心室内伝導障害と診断する。プルキンエ線維より末梢側で伝導遅延が生じる可能性もあり,これは心筋細胞間の遅い伝導に起因する。
適応となる特異的な治療法はない。