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前立腺肥大症(BPH)

(前立腺肥大症)

執筆者:

Gerald L. Andriole

, MD, Barnes-Jewish Hospital, Washington University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2016年 8月
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本ページのリソース

前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia:BPH)は,前立腺尿道周囲部が良性腺腫として増大した状態である。症状は下部尿路閉塞の症状である(尿勢低下,排尿遅延,頻尿,尿意切迫,夜間頻尿,残尿,終末時滴下,溢流性または切迫性尿失禁,完全尿閉)。診断は主に直腸指診と症状に基づき,膀胱鏡検査,経直腸的超音波検査,尿流動態検査,その他の画像検査が必要になることもある。治療選択肢としては,5α還元酵素阻害薬,α遮断薬,タダラフィル,手術などがある。

前立腺体積30mL超およびAmerican Urological Association Symptom Score( 前立腺肥大症に関するAmerican Urological Association Symptom Score)の中等度または重度の基準を用いた場合,前立腺肥大症の有病率は,前立腺癌のない55~74歳の男性で19%である。しかしながら,排尿基準の最大尿流速度10mL/秒未満と排尿後残尿量50mL超を加えた場合には,有病率はわずか4%となる。剖検研究によると,前立腺肥大症の有病率は31~40歳の8%から51~60歳には40~50%に上昇し,80歳以上では80%を超える。

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前立腺肥大症に関するAmerican Urological Association Symptom Score

スコア

最近の約1カ月間にわたり

全くなし

全回数の20%未満

全回数の50%未満

全回数の約50%

全回数の50%超

ほぼ常に

排尿後に尿が残っているように感じることは何回ありましたか。

0

1

2

3

4

5

排尿後2時間以内にもう再び排尿が必要になったことは何回ありましたか。

0

1

2

3

4

5

排尿中に数回にわたって尿が止まり再び出始めることは何回ありましたか。

0

1

2

3

4

5

排尿を我慢するのが難しいことは何回ありましたか。

0

1

2

3

4

5

尿の勢いが弱いことは何回ありましたか。

0

1

2

3

4

5

排尿の開始時にいきみなどの努力が必要になったことは何回ありましたか。

0

1

2

3

4

5

普段,夜就寝してから朝起床するまでの間に何回トイレに起きますか。

なし =

0

1回 =

1

2回 =

2

3回 =

3

4回 =

4

5回以上

= 5

American Urological Association Symptom Score = 合計 ______。

Adapted from Barry MJ, Fowler FJ, O’Leary MP, et al: The American Urological Association symptom index for benign prostatic hyperplasia. Journal of Urology 148:1549, 1992.

病因は不明であるが,おそらく加齢に関連したホルモン変化が関与している。

病態生理

複数の線維腺腫性結節が前立腺の尿道周囲部で発生し,結節の進行性増大により辺縁に追いやられている本来の線維筋性前立腺(外科的被膜)ではなく,おそらく尿道周囲の腺内に由来している。

前立腺部尿道の内腔が狭窄化および延長するに伴い,尿流は進行的に阻害される。排尿および膀胱拡張と関連した圧の上昇は,膀胱排尿筋の肥大,肉柱形成,小胞形成,憩室に進行する可能性がある。排尿後の残尿は滞留をもたらし,結石形成および感染の素因である。長期間の尿路閉塞は,たとえ不完全閉塞であっても,水腎症を引き起こし,腎機能の低下につながる可能性がある。

症状と徴候

下部尿路症状

前立腺肥大症の症状には進行性の下部尿路症状(LUTS)が含まれる:

  • 頻尿

  • 尿意切迫

  • 夜間頻尿

  • 排尿遅延

  • 排尿中断

頻尿,尿意切迫,および夜間頻尿は,残尿と膀胱の急速な充満に起因する。尿線の狭小化や尿勢の低下は,排尿遅延および排尿中断をもたらす。

疼痛および排尿困難は通常認められない。その後に残尿感,終末時滴下,溢流性尿失禁,完全な尿閉が発生することがある。排尿のためにいきむことで前立腺部尿道および膀胱三角部の表在静脈にうっ血が起きる可能性があり,破裂して血尿を生じることがある。いきむことで急性の血管迷走神経性失神が誘発される場合もあり,長期的には痔静脈の怒張や鼠径ヘルニアにつながる可能性もある。

尿閉

一部の患者は完全尿閉を突然発症し,著明な腹部不快感および膀胱拡張がみられる。尿閉は以下のいずれかにより誘発される可能性がある:

  • 排尿を長期間我慢する

  • 不動状態

  • 寒冷への曝露

  • 麻酔薬,抗コリン薬,交感神経刺激薬,オピオイド,アルコールの使用

症状スコア

症状は,7つの質問で構成されるAmerican Urological Association Symptom Scoreなどの症状スコアによって定量化できる( 前立腺肥大症に関するAmerican Urological Association Symptom Scoreを参照)。このスコアによって症状の進行をモニタリングすることも可能である;

  • 軽度の症状:1~7点

  • 中等度の症状:8~19点

  • 重度の症状:20~35点

直腸指診

直腸指診では,前立腺は通常腫大して圧痛は認められず,ゴム様の硬さを呈し,多くの症例では中心溝が消失している。しかしながら,直腸指診で検出された前立腺の大きさは判断の誤りにつながる場合があり,小さく思える前立腺が閉塞を引き起こすこともある。拡張した膀胱は,腹部の触診または打診で検出できることがある。

診断

  • 直腸指診

  • 尿検査および尿培養

  • 前立腺特異抗原濃度

  • ときに尿流測定および膀胱超音波検査

前立腺肥大症の下部尿路症状は,感染症前立腺癌などの他の疾患によっても生じることがある。さらに,前立腺肥大症と前立腺癌が並存する場合もある。触知可能な前立腺の圧痛は感染症を示唆するが,直腸指診での前立腺肥大症と前立腺癌の所見にはしばしば重複がみられる。癌は石のように硬い結節性で不規則に腫大した前立腺をもたらす可能性があるが,大半の癌患者,前立腺肥大症患者,あるいは併発患者は良性を思わせる前立腺の腫大を呈する。このため,症状または触知可能な前立腺異常を呈する患者では検査を考慮すべきである。

典型的には,尿検査および尿培養を行い,血清前立腺特異抗原(PSA)濃度を測定する。中等度から重度の閉塞症状を呈する男性では,尿流測定(尿量および尿流速度の客観的検査)を膀胱超音波検査による排尿後残尿量の測定とともに行うことがある。尿流速度15mL/秒未満は閉塞を示唆し,排尿後の残尿量100mL超は尿閉を示唆する。

PSA値

PSA値の解釈は複雑になる可能性がある。PSA値は,前立腺肥大症患者の30~50%で(前立腺の大きさと閉塞の程度に依存して)中等度に上昇し,前立腺癌患者の25~92%で腫瘍体積に依存して上昇する。

癌のない患者では,血清PSA値1.5ng/mL超は通常,前立腺体積が30mL以上であることを示唆する。PSA値が高値(4ng/mL超)となった場合は,他の検査や生検に関するさらなる話し合いや共同での意思決定が推奨される。

50歳未満または前立腺癌のリスクが高い男性では,より低いカットオフ値(PSA値2.5ng/mL超)が採用される場合がある。PSAの上昇率,結合PSAに対する遊離PSA比,その他のマーカーなどの他の測定も有用な場合がある(前立腺癌のスクリーニングおよび診断に関する詳細な考察については,本マニュアルの他の箇所を参照のこと)。

その他の検査

経直腸的生検は通常,超音波ガイド下で施行される。経直腸的超音波検査では前立腺体積も測定することができる。

さらなる検査の必要性は,臨床判断により評価しなければならない。造影剤を使用する画像検査(例,CT,IVU)は,発熱を伴う尿路感染症がある場合と重度の閉塞症状が持続している場合を除いて,必要になることはまれである。下部尿路閉塞によって通常もたらされる上部尿路異常には,尿管端部の上方転置(釣り針状),尿管拡張,水腎症などがある。疼痛または血清クレアチニン高値により上部尿路の画像検査が必要になった場合には,放射線または静注造影剤への曝露を回避できることから,超音波検査が望ましい場合がある。

治療

  • 抗コリン薬,交感神経刺激薬,オピオイドの回避

  • αアドレナリン遮断薬(例,テラゾシン,ドキサゾシン,タムスロシン,アルフゾシン),5α還元酵素阻害薬(フィナステリド,デュタステリド),また勃起障害が併発している場合はホスホジエステラーゼ5阻害薬タダラフィルの使用

  • 経尿道的前立腺切除術またはより侵襲性の低い処置

尿閉

尿閉は直ちに減圧処置を要する。標準尿道カテーテルの導入を最初に試み,標準カテーテルが導入できない場合は,チップ付きのチーマンカテーテルが効果的な場合がある。このカテーテルが通過しない場合は,軟性膀胱鏡またはブジーおよび後続物の挿入(ガイドおよび拡張器で徐々に尿道を開く)による手技が必要になることがある(本手技は通常は泌尿器科医が施行すべきである)。経尿道的アプローチが無効である場合には,恥骨上経皮的膀胱減圧術が用いられることがある。

薬物療法

煩わしい症状を伴う部分閉塞に対しては,全ての抗コリン薬,交感神経刺激薬,オピオイドは中止すべきで,感染症はいずれも抗菌薬で治療すべきである。

軽度から中等度の閉塞症状を呈する患者では,αアドレナリン遮断薬(例,テラゾシン,ドキサゾシン,タムスロシン,アルフゾシン)により排尿問題が軽減する可能性がある。5α還元酵素阻害薬(フィナステリド,デュタステリド)は,前立腺の大きさを縮小し,排尿問題を数カ月にわたり改善する可能性があり,特に前立腺が大きい患者(30mL超)でその可能性がある。両クラスの薬剤の併用は単剤療法より優れている。勃起障害を併発した男性では,タダラフィルの連日投与が両病態を軽減する上で有用となることがある。多くの一般用医薬品の補完代替薬が前立腺肥大症の治療用として宣伝されているが,徹底的に研究されたノコギリヤシも含めて,これまでにプラセボと比較して効力があることが示されたものはない。

手術

患者が薬物療法に反応しないか,再発性尿路感染症,尿路結石,重度の膀胱機能障害,上部尿路拡張などの合併症を発症する場合は,手術を施行する。経尿道的前立腺切除術(TURP)が標準手技である。勃起機能および尿禁制は通常は維持されるが,約5~10%の患者では術後に何らかの問題が発生し,そのうち最も頻度が高いのは逆行性射精である。TURP後の勃起障害の発生率は1~35%,尿失禁の発生率は約1~3%である。TURPを受ける男性の約10%では,前立腺が持続的に増大するために,10年以内に再手術が必要となる。TURPの代替として,様々なレーザー焼灼手技が用いられている。大きな前立腺(通常75g超)には,恥骨上または恥骨後式アプローチによる開腹手術が必要である。いずれの外科的手法にも,術後1~7日間にわたるカテーテルドレナージが必要である。

その他の手技

侵襲性の低い手技としては,マイクロ波高温度療法,電気蒸散術,高密度焦点式超音波療法,経尿道的ニードルアブレーション,ラジオ波蒸散術,高圧熱水注入療法(pressurized heated water injection therapy),尿道吊り上げ術(urethral lift),尿道内ステントなどがある。これらの手技を選択すべき条件はまだ十分に確立されていないが,診察室で施行できる手技(マイクロ波高温度療法とラジオ波療法)が頻用されるようになってきており,これらは全身麻酔も区域麻酔も必要ない。これらの治療が前立腺肥大症の自然経過を変化させる長期的な効果については,現在研究中である。

要点

  • 前立腺の肥大は加齢に伴って極めてよくみられるようになるが,症状を伴うことはあまり多くない。

  • 急性尿閉は,寒冷への曝露,長期にわたる排尿の我慢,不動状態,または麻酔薬,抗コリン薬,交感神経刺激薬,オピオイド,またはアルコールの使用により発生する可能性がある。

  • 患者を直腸指診,および通常は尿検査,尿培養,PSA値で評価する。

  • 前立腺肥大症患者では,抗コリン薬,交感神経刺激薬,およびオピオイドの使用を避ける。

  • 煩わしい閉塞症状には,軽減するためのαアドレナリン遮断薬(例,テラゾシン,ドキサゾシン,タムスロシン,アルフゾシン),5α還元酵素阻害薬(フィナステリド,デュタステリド),またはタダラフィル(勃起障害が併発している場合)の投与を考慮する。

  • 前立腺肥大症が合併症(例,再発性結石,膀胱機能障害,上部尿路拡張)を引き起こしているか,煩わしい症状が薬物療法で解消されない場合は,TURPまたはアブレーションを考慮する。

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