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女性化乳房

執筆者:

Irvin H. Hirsch

, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2014年 12月
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女性化乳房とは,男性において乳腺組織が肥大する病態である。女性化乳房は,乳房の脂肪が増加するものの乳腺組織の肥大はみられない偽性女性化乳房と鑑別する必要がある。

病態生理

乳児期および思春期にみられる男性乳房の腫大は正常である(生理的女性化乳房)。通常,腫大は一過性かつ両側性で,平滑でかつ硬く,乳輪下に対称性に分布する;乳房に圧痛を伴うこともある。思春期に発生する生理的女性化乳房は,通常は約6カ月から2年以内に消失する。同様の変化が老年期にも生じることがあり,片側性の場合と両側性の場合がある。ほとんどの腫大は,乳管ではなく間質の増殖に起因する。発生機序は通常,アンドロゲン作用の低下または エストロゲン作用の上昇である(例,アンドロゲン産生の減少, エストロゲン産生の増加,アンドロゲン遮断,性ホルモン結合グロブリンからの エストロゲンの置換遊離,アンドロゲン受容体の欠損)。

パール&ピットフォール

  • 乳児期および思春期には,両側性かつ対称性に平滑で硬く,圧痛を伴う乳輪下の乳房組織の腫大がみられるのは正常である。

評価を行っても女性化乳房の原因が明らかにされない場合は,特発性とみなす。女性化乳房が生理的なものであるために,あるいは,誘発事象をもはや確認できなくなっているために,原因を特定できない場合がある。

病因

乳児および男児で最も一般的な原因は以下のものである:

  • 生理的女性化乳房

成人男性で最も一般的な原因は以下のものである( 女性化乳房の原因):

乳癌(男性ではまれである)は,片側の乳房に異常を引き起こすが,女性化乳房と混同されることはまれである。

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女性化乳房の原因

原因

示唆する所見

診断アプローチ

慢性腎臓病

慢性腎臓病の既往

血清電解質,BUN,クレアチニン

尿検査

ときに尿培養ならびにNa,K,およびクレアチニンの尿中濃度測定

肝硬変

しばしば肝疾患の既往,飲酒,またはその両方

腹水,くも状血管腫,腹壁静脈怒張

ルーチンの臨床検査

ときに肝生検

使用歴

試験的な投与中止

副腎皮質腫瘍による女性化

触知可能な腫瘤,精巣萎縮

画像検査(MRIまたはCT)

甲状腺機能亢進症

振戦,暑さへの耐性低下,下痢,頻脈,体重減少,甲状腺腫,眼球突出

甲状腺機能検査

性腺機能低下症

思春期前の発症:第二次性徴の発達不全

思春期後の発症:性欲減退,勃起障害,気分の変化,筋肉量の低下と脂肪量の増加,骨減少症,精巣萎縮,軽度の認知機能変化

FSH,LH,および テストステロンの血清中濃度( 男性性腺機能低下症 : 診断

腫瘍随伴性症候群としてのヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の異所性産生

ときに原発性腫瘍の徴候または性腺機能低下症の症状および徴候

疑われる原発性腫瘍の評価

精巣腫瘍

精巣腫瘤

ときに性腺機能低下症の症状および徴候

超音波検査

低栄養後の摂食

筋肉および脂肪の減少,脱毛,皮膚の変化,感染の頻発,疲労,ビタミン欠乏症の徴候(例,骨減少症)

臨床的評価

選択的な臨床検査

特発性女性化乳房

女性化乳房以外に異常所見が認められず,症状もなく,明らかな原因も認められない

6カ月内に臨床的評価を再度行う

ときに血清 テストステロン濃度

FSH = 卵胞刺激ホルモン,LH = 黄体形成ホルモン。

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女性化乳房を引き起こす一般的な薬剤*

カテゴリー

薬剤

アンドロゲンの合成または活性を阻害する薬剤

シプロテロン(抗アンドロゲン薬)

デュタステリドおよびフィナステリド(5α還元酵素阻害薬)

ゴセレリン,histrelin,リュープロレリン,triptorelin(LH‐RH作動薬)

フルタミド,ビカルタミド,エンザルタミド,nilutamide(前立腺癌治療に使用される抗アンドロゲン薬)

抗菌薬

エファビレンツ

エチオナミド

イソニアジド

ケトコナゾール

メトロニダゾール

抗腫瘍薬

アルキル化薬

イマチニブ

メトトレキサート

ビンカアルカロイド系

心血管薬

ACE阻害薬(例,カプトプリル,エナラプリル)

アミオダロン

カルシウム拮抗薬(例,ニフェジピン,ジルチアゼム)

メチルドパ

レセルピン

スピロノラクトン

中枢神経系作用薬

ジアゼパム

ハロペリドール

メサドン

フェノチアジン系薬剤

三環系抗うつ薬

抗潰瘍薬

シメチジン

ラニチジン

オメプラゾール

ホルモン製剤

アンドロゲン

タンパク同化ステロイド

エストロゲン

ヒト成長ホルモン

レクリエーショナルドラッグ

アンフェタミン

エタノール

ヘロイン

マリファナ

一般用のハーブ製品

ラベンダーオイル

ティーツリーオイル

その他の薬剤

オーラノフィン

ジエチルプロピオン

ドンペリドン

メトクロプラミド

フェニトイン

ペニシラミン

スリンダク

テオフィリン

*女性化乳房とこれまでに関連づけられている全ての薬物が負荷‐再負荷試験で女性化乳房を惹起することが示されているわけではない。

薬剤は関連が認められる頻度の順に記載している。

評価

病歴

現病歴の聴取では,乳房腫大の持続期間,第二次性徴が完全に出現しているどうか,女性化乳房の発症と思春期の関連性,ならびに性器症状(例,性欲減退,勃起障害)および乳房症状(例,疼痛,乳頭分泌物)の有無を明らかにすることに努めるべきである。

系統的症状把握(review of systems)では,以下に示すような可能性のある原因を示唆する症状がないか検討すべきである:

  • 体重減少および疲労(肝硬変,低栄養,慢性腎臓病,甲状腺機能亢進症)

  • 皮膚の変色(慢性腎臓病,肝硬変)

  • 脱毛および頻回の感染症(低栄養)

  • 脆弱性骨折(低栄養,性腺機能低下症)

  • 気分および認知機能の変化(性腺機能低下症)

  • 振戦,暑さへの耐性低下,および下痢(甲状腺機能亢進症)

既往歴の聴取では,女性化乳房の原因となりうる疾患について言及するとともに,全ての処方薬およびOTC薬の使用歴を含めるべきである。

身体診察

バイタルサイン,皮膚,および全身状態の評価を含めて,徹底的な診察を行う。頸部を診察して,甲状腺腫がないか確認する。腹部を診察して,腹水,静脈怒張,疑わしい副腎腫瘤がないか確認する。第二次性徴の発達(例,陰茎,陰毛,腋毛)を評価する。精巣を診察して,腫瘤または萎縮がないか確認する。

乳房の診察は,患者を臥位にして両手を頭の後ろに置かせて行う。検者の母指と示指を乳頭のそれぞれ反対側から指同士が接するまで寄せる。このとき乳頭分泌物がないか注意する。しこりについて,その位置,硬さ,下部組織への固着,および皮膚の変化について評価する。乳房にしこりがある男性では,腋窩を診察して,リンパ節が関与していないか確認する。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下の所見は特に注意が必要である:

  • 限局性または偏心性の乳房腫脹,特に乳頭分泌物または皮膚への固着を認めるか,腫脹が硬い場合

  • 性腺機能低下症の症状または徴候(例,思春期遅発,精巣萎縮,性欲減退,勃起障害,除脂肪体重の割合の低下,視空間機能の喪失)

  • 甲状腺機能亢進症の症状または徴候(例,振戦,頻脈,発汗,暑さへの耐性低下,体重減少)

  • 精巣腫瘤

  • 成人における疼痛および圧痛を伴う女性化乳房の最近の発症

所見の解釈

偽性女性化乳房では,検者の母指と示指が乳頭上で接するまで,指の間に抵抗を感じない。対照的に女性化乳房では,直径0.5cmを超える組織の周縁が乳頭を対称性に取り囲み,その硬さは乳頭と同様である。以下のいずれかの特徴を伴う腫脹は乳癌を示唆する:

  • 位置が偏心性かつ片側性

  • 密または硬い

  • 皮膚または筋膜への固着

  • 乳頭分泌物

  • 皮膚の陥凹

  • 乳頭陥没

  • 腋窩リンパ節の関与

成人で最近発症して疼痛を引き起こしている女性化乳房は,ホルモン異常(例,腫瘍,性腺機能低下症)または薬剤が原因であることが多い。その他の診察所見も参考にある場合がある( 女性化乳房における所見の解釈)。

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女性化乳房における所見の解釈

所見

考えられる原因

頻脈,振戦,甲状腺腫,眼球突出

甲状腺機能亢進症

体重減少

慢性腎臓病

肝硬変

甲状腺機能亢進症

低栄養後の摂食

脆弱な皮膚

慢性腎臓病

低栄養

腹水,くも状血管腫

肝硬変

第二次性徴の発達不全

性腺機能低下症(思春期前の発症)

皮膚の変色

慢性腎臓病

肝硬変

精巣萎縮

肝硬変

性腺機能低下症(思春期後の発症)

精巣腫瘤

精巣(ライディッヒ細胞)腫瘍

検査

乳癌が疑われる場合は,マンモグラフィーを施行すべきである。他の疾患が疑われる場合は,適切な検査を行うべきである( 女性化乳房の原因)。包括的な検査は不要である場合が多く,特に女性化乳房が慢性で,身体診察時にのみ検出される患者では必要ない。加齢とともに性腺機能低下症の頻度がいくらか高くなることから,高齢男性(特にその他の所見が性腺機能低下症を示唆する場合)では血清 テストステロン濃度を測定することを推奨する専門家もいる。しかし,成人で疼痛を伴う女性化乳房が最近発症し,薬剤も明らかな病理学的原因も認められない場合は,LH,FSH, テストステロン エストラジオール,およびヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の血清中濃度の測定が推奨される。生理的または特発性女性化乳房の患者は,6カ月内に再評価を行う。

治療

大半の症例では,女性化乳房は通常自然に軽快するか,原因薬剤(おそらくタンパク同化ステロイドは例外である)の中止後または基礎疾患の治療後に消失するため,特異的な治療は必要ない。成人または青年男性で疼痛および圧痛が非常に煩わしい場合には,タモキシフェン10mg,経口,1日2回を試す臨床医もいるが,この治療法は常に効果的であるとは限らない。タモキシフェンは,前立腺癌に対して高用量抗アンドロゲン療法(例,ビカルタミド)を受けている男性における女性化乳房の予防にも有用となる可能性があり,また代替治療法として乳房の放射線療法がある。12カ月以上経過してから女性化乳房が消失する可能性は低い。このため,12カ月時点で患者が審美的に外観を許容できない場合は,過剰な乳房組織の外科的除去(例,脂肪吸引を単独または美容手術と併用)を行ってもよい。

要点

  • 女性化乳房は乳房の脂肪組織の増加と鑑別する必要がある。

  • 女性化乳房は生理的または特発性であることが多い。

  • 非常に多くの薬剤が女性化乳房の原因となりうる。

  • 臨床的に疑われる性器または全身性疾患について評価すべきである。

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