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膀胱癌

執筆者:

Viraj A. Master

, MD, PhD, Emory University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2019年 9月
本ページのリソース

膀胱癌は通常,移行上皮癌(尿路上皮癌)である。通常は血尿(最も多い)または頻尿や尿意切迫などの刺激性排尿症状がみられ,続いて尿路閉塞により疼痛が生じる可能性がある。診断は膀胱鏡検査および生検による。治療は,高周波治療,経尿道的切除術,膀胱内注入,根治的手術,化学療法,外照射療法,またはこれらの組合せによる。

米国では,毎年約80,000例の膀胱癌が新たに発生し,約17,670例が死亡している(2019年の推定値)(1)。膀胱癌は男性では4番目に頻度の高いがんであるが,女性での頻度はそれほど高くなく,発生率の男女比は約3:1である。膀胱癌は黒人と比較して白人でより多くみられ,発生率は年齢とともに上昇する。

危険因子としては以下のものがある:

  • 喫煙(最も頻度が高い危険因子で,新規症例の50%以上の原因)

  • フェナセチンの過剰使用(鎮痛薬乱用)

  • シクロホスファミドの長期使用

  • 慢性的な刺激(例,住血吸虫症,長期カテーテル留置,または膀胱結石に起因するもの)

  • 炭化水素,トリプトファン代謝物,工業化学薬品への曝露,特に芳香族アミン(染色工業で使用されるナフチルアミンなどのアニリン色素)およびゴム,電線,ペンキ,繊維工業で使用される化学薬品への曝露

膀胱癌には以下の組織型がある:

  • 移行上皮癌(尿路上皮癌):膀胱癌の90%超を占める。大半は乳頭癌であり,表在性かつ高分化型で,外側に増殖する傾向がある;無茎性腫瘍はより潜行性で,早期に浸潤し,転移を起こす傾向がある。

  • 扁平上皮癌:比較的頻度が低く,通常は膀胱の寄生虫感染または慢性的な粘膜刺激がある患者で発生する。

  • 腺癌:原発腫瘍として発生する場合もあれば,まれに腸管に生じた癌からの転移である場合がある。転移を除外すべきである。

40%を超える患者では,膀胱内の同一または別の部位で再発がみられ,特に腫瘍が大型または低分化型であるか,複数ある場合にその傾向が強くなる。膀胱癌は,リンパ節,肺,肝,および骨に転移する傾向がある。変異型の腫瘍遺伝子p53の発現が,進行と化学療法への抵抗性の両方に関連する場合がある。

膀胱の上皮内癌は,悪性度は高いが非浸潤性であり,通常は多巣性で,再発しやすい傾向がある。

総論の参考文献

症状と徴候

大部分の患者は原因不明の血尿(肉眼的または顕微鏡的)を呈する。一部の患者は貧血を呈し,血尿は評価中に検出される。刺激性の排尿症状(排尿困難,灼熱感,頻尿)および膿尿も,受診時に一般的に認められる。骨盤痛は進行癌で起こり,骨盤内腫瘤が触知可能なことがある。

診断

  • 膀胱鏡検査および生検

  • 尿細胞診

膀胱癌は臨床的に疑われる。尿細胞診を行うこともあり,悪性細胞を検出できることがある。診断および臨床病期診断のために,異常のある領域の膀胱鏡検査および生検か腫瘍の切除が必要である。尿抗原検査が利用可能であるが,診断でのルーチンな施行は推奨されない。尿抗原検査は,癌が疑われるが細胞診が陰性の場合に施行される。

アミノレブリン酸ヘキシルエステルの膀胱内注入後に青色光を用いて行う膀胱鏡検査により,膀胱癌の検出率だけでなく,無再発生存期間も改善できる。しかしながら,この検査により無増悪生存期間が延長する効果は示されていない。

膀胱癌の70~80%を占める早期例(T1またはより表在性)では,生検と膀胱鏡検査の併用で十分な病期診断が可能である。しかしながら,生検にて表在性の扁平な腫瘍よりも浸潤度が高いことが判明した場合は,筋層を含めた追加生検が施行される。筋層浸潤が判明した場合(T2以上)は,腫瘍の進展範囲を判定し,転移の評価のために腹部および骨盤CTならびに胸部X線が施行される。浸潤性の腫瘍がある患者には,膀胱鏡検査および生検のための麻酔時に併せて双合診(男性では直腸診,女性では直腸内診)を行う。標準のTNM(tumor, node, metastasis)病期分類システムが用いられる(膀胱癌のAJCC/TNM分類の表および膀胱癌のTNM分類の定義の表を参照)。

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膀胱癌のAJCC/TNM*病期分類

病期

原発腫瘍

所属リンパ節転移

遠隔転移

0a期

Ta

N0

M0

0is期

Tis

N0

M0

I期

T1

N0

M0

II期

T2a,T2b

N0

M0

IIIA期

T3a,T3b,T4a

N0

M0

または

T1,T2,T3,T4a

N1

M0

IIIB期

T1,T2,T3,T4a

N2,N3

M0

IVA期

T4b

N0

M0

または

Tは問わない

Nは問わない

M1a

IVB期

Tは問わない

Nは問わない

M1b

* AJCC/TNM分類の定義については,膀胱癌のTNM分類の定義の表を参照のこと。

AJCC = American Joint Commission on Cancer;T = 原発腫瘍;N = 所属リンパ節転移;M = 遠隔転移。

Data from Amin MB, Edge S, Greene F, Byrd DR, et al: AJCC Cancer Staging Manual, 8th edition.New York, Springer, 2018.

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膀胱癌のTNM分類の定義

特徴

定義

原発腫瘍

Ta

非浸潤性乳頭癌

Tis

扁平腫瘍(上皮内癌)

T1

上皮下結合組織に浸潤している

T2

筋層に浸潤している

T2a

浅層筋(内側半分)に浸潤している

T2b

深層筋(外側半分)に浸潤している

T3

膀胱周囲組織に浸潤している

T3a

膀胱周囲組織への顕微鏡的浸潤を認める

T3b

膀胱周囲組織への肉眼的浸潤(膀胱外腫瘤)を認める

T4

隣接臓器に浸潤している

T4a

前立腺,子宮,または腟に浸潤している

T4b

骨盤壁または腹壁に浸潤している

所属リンパ節転移

NX

評価できない

N0

所属リンパ節転移を認めない

N1

小骨盤内の単一のリンパ節に転移を認める

N2

小骨盤内の2つ以上のリンパ節に転移を認める

N3

1つ以上の総腸骨リンパ節に転移を認める

遠隔転移

M0

遠隔転移を認めない

M1

遠隔転移を認める

M1a

総腸骨リンパ節より遠隔にあるリンパ節のみに転移を認める

M1b

リンパ節以外への遠隔転移

TNM = tumor, node, metastasis.

Data from Amin MB, Edge S, Greene F, Byrd DR, et al: AJCC Cancer Staging Manual, 8th edition.New York, Springer, 2018.

予後

表在性膀胱癌(TaまたはT1)が死亡をもたらすことはまれである。上皮内癌(Tis)はより悪性度が高い場合がある。膀胱筋層浸潤がある患者では,5年生存率は約50%であるが,化学療法感受性の患者ではネオアジュバント化学療法によりこの結果が改善する。一般に,進行性または再発した浸潤性膀胱癌患者の予後は不良である。膀胱の扁平上皮癌または腺癌についても,これらのがんが通常は高度に浸潤性で,しばしば進行期で検出されることから,予後不良である。

治療

  • 経尿道的切除と膀胱内注入による免疫療法または化学療法(表在癌が対象)

  • 膀胱摘除術または放射線療法と化学療法の併用(浸潤癌が対象)

表在癌

表在癌は経尿道的切除または高周波治療により完全に除去することができる。マイトマイシンC,ゲムシタビン ± ドセタキセルなどの化学療法薬を膀胱内に繰り返し注入することで,再発リスクが低下する可能性がある。上皮内癌やその他の高悪性度の表在性移行上皮癌では,経尿道的切除術後のBCG(カルメット-ゲラン桿菌)注入などの免疫療法による治療が,化学療法薬の注入よりも総じて効果的である。注入は,1~3年かけて週1回から月1回までの間隔で行うことができる。

浸潤癌

筋層に浸潤した(すなわちT2以上)腫瘍には,通常は根治的膀胱摘除術(膀胱および周辺組織の切除)と尿路変向術の同時施行が必要であり,膀胱部分切除術が可能な患者は5%未満である。適応のない患者では,膀胱摘除術施行前にシスプラチンベースのレジメンで行うネオアジュバント化学療法が標準治療とみなされている。病期診断に加えて想定される治療効果のために手術時のリンパ節郭清が必要となるが,その対象範囲について議論がある。400例以上の患者を対象として限定的なリンパ節郭清術と拡大リンパ節郭清術を比較したランダム化試験では,無再発生存期間(RFS)に有意差はみられなかったものの,RFS,CSS(癌特異的生存期間),およびOS(全生存期間)の改善傾向が報告され,実施中のさらなる研究により,これらの結果がより詳細に説明される可能性が高い(1)

膀胱摘除術後に施行する従来法の尿路変向術では,尿を回腸導管を通して腹部のストーマに導き,体外の集尿袋に集める。自然排尿型代用膀胱造設術や導尿型代用膀胱造設術などの代替選択肢が一般的になりつつあり,これらは多くの患者に適切である。どちらの術式でも,体内リザーバーは腸管から作製される。自然排尿型代用膀胱造設術のリザーバーは尿道に接続される。リザーバーを空にするには,患者が骨盤底筋を弛めると同時に腹圧を上昇させることで,尿が尿道経由でほぼ自然に排出される。大半の患者が日中の尿禁制を維持できるが,夜間にはある程度の失禁が起こることがある。導尿型代用膀胱造設術では,リザーバーは禁制腹部ストーマに接続される。患者は1日を通して定期的な間隔で自己導尿を行い,リザーバーを空にする。

化学療法と放射線療法を組み合わせた膀胱温存プロトコルは,一部の高齢患者またはより侵襲的な手術を拒否する患者では適切な場合がある。これらのプロトコルで得られる5年生存率は36~74%であり,10~30%の患者では救済療法としての膀胱摘除術が必要になる。

進行または再発について患者を3~6カ月毎にモニタリングすべきである。

転移例および再発例

転移がある場合は,一般にシスプラチンベースの化学療法が必要であり,しばしば効果的であるが,転移がリンパ節に限定される場合を除き治癒はまれである。多剤併用化学療法は,転移性疾患を有する患者を延命する場合がある。シスプラチンに不適格な患者とシスプラチンベースの化学療法施行後に進行した患者に対しては,ペムブロリズマブやアテゾリズマブなどのPD-1およびPD-L1阻害薬を用いる新しい免疫療法が利用可能である。最初の分子標的療法薬であるエルダフィチニブ(erdafitinib)も,化学療法が不成功に終わったFGFR3およびFGFR2変異陽性患者における使用を適応として,FDAにより最近承認された。

再発例の治療は,再発時の臨床病期および部位と前治療に依存する。表在性腫瘍に対する経尿道的切除術後の再発は,通常は再切除または高周波療法で治療される。高悪性度表在性膀胱癌の再発例には,早期の膀胱摘除術が推奨される。

治療に関する参考文献

  • Gschwend JE, Jeck MM, Lehmann J, et al: Extended versus limited lymph node dissection in bladder cancer patients undergoing radical cystectomy: Survival results from a prospective, randomized trial.Eur Urol 75(4):604-611, 2019.doi: 10.1016/j.eururo.2018.09.047.

要点

  • 膀胱癌のリスクは喫煙,フェナセチンまたはシクロホスファミドの使用,慢性的刺激,特定の化学物質への曝露により上昇する。

  • 移行上皮癌(尿路上皮癌)は膀胱癌の90%超を占める。

  • 原因不明の血尿またはその他の泌尿器症状を呈する患者(特に中年男性または高齢男性)では,膀胱癌を疑う。

  • 膀胱癌の診断は膀胱鏡下での生検にて行い,さらに,筋層浸潤がみられる場合は病期診断のため画像検査を施行する。

  • 表在癌は経尿道的切除術または高周波療法によって切除し,その後,薬剤を膀胱に反復注入する。

  • 癌が筋層に浸潤している場合は,シスプラチンベースのネオアジュバント化学療法とその後の根治的膀胱摘除術および尿路変向術,または頻度は低いが放射線療法と化学療法の併用で治療する。

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