虚血性肝炎

(急性肝梗塞,低酸素性肝炎,ショック肝)

執筆者:Whitney Jackson, MD, University of Colorado School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 2月
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虚血性肝炎は,血液または酸素の供給不足によりびまん性の肝傷害が生じる病態である。

肝臓の血管障害の概要も参照のこと。)

虚血性肝炎の病因

ほとんどの場合,原因は全身性の異常である:

肝臓の血管構造に生じる局所病変が原因となることは比較的まれである。虚血性肝炎は,肝移植時に肝動脈血栓症が生じた場合や,鎌状赤血球症の疼痛発作が生じた患者で肝動脈および門脈に血栓症が発生した(それにより肝臓への二重の血液供給路が障害された)場合に,発生することがある。肝臓の炎症を伴わない小葉中心性壊死が生じる(つまり真の肝炎ではない)。

虚血性肝炎の症状と徴候

症状としては,悪心,嘔吐,圧痛を伴う肝腫大などがある。

虚血性肝炎の診断

  • 臨床的評価と肝機能検査

  • ドプラ超音波検査,MRI,または動脈造影

危険因子と以下の臨床検査値異常がある場合には,虚血性肝炎を疑う:

  • 血清アミノトランスフェラーゼ値は劇的に上昇する(例,1000~3000IU/Lまで)。

  • 乳酸脱水素酵素(LDH)値は虚血から数時間以内に上昇する(急性ウイルス性肝炎とは異なる)。

  • 血清ビリルビン値は若干上昇するのみで,正常上限値の4倍を超えない。

  • プロトロンビン時間/国際標準化比(PT/INR)の延長

画像検査が原因の特定に役立ち,ドプラ超音波検査,MRI,または動脈造影により,閉塞した肝動脈や門脈の血栓症を同定することができる。

虚血性肝炎の治療

  • 肝再灌流

治療は原因に対して行い,肝灌流を回復させることを目的とし,特に心拍出量の改善と血行動態不安定の是正に重点を置く。

灌流が回復すれば,アミノトランスフェラーゼ値は1~2週間かけて低下していく。ほとんどの症例で,肝機能は完全に回復する。まれではあるが,すでに肝硬変がある患者では劇症肝不全が生じる可能性がある。

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