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非アルコール性脂肪肝炎 (NASH)

執筆者:

Steven K. Herrine

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2018年 1月
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非アルコール性脂肪肝炎は,アルコール依存症のない患者に発生する症候群で,組織学的にアルコール性肝炎と鑑別できない肝傷害が生じる。危険因子(肥満,脂質異常症,耐糖能障害)を少なくとも1つ有する患者で最も多く発生する。発生機序はほとんど解明されていないが,インスリン抵抗性(例,肥満またはメタボリックシンドロームの場合と同様)が関連しているようである。大部分の患者は無症状である。臨床検査所見には,アミノトランスフェラーゼ値の上昇などがある。確定診断には肝生検が必要である。治療には,原因および危険因子の除去が含まれる。

(American Association for the Study of Liver Diseasesの非アルコール性脂肪性肝疾患の診断および管理に関する2017年版診療ガイドラインも参照のこと。)

NASH(ときに脂肪壊死とも呼ばれる)は,40~60歳の女性で最もよく診断されるが,あらゆる年齢層で起こりうる。発症した患者の多くには,肥満,2型糖尿病(または耐糖能障害),脂質異常症,メタボリックシンドロームなどがみられる。

病態生理

病態生理には,脂肪の蓄積(脂肪変性),炎症,様々な程度の線維化が関与する。脂肪変性は肝蔵にトリグリセリドが蓄積することで発生する。脂肪変性の機序として,超低比重リポタンパク質(VLDL)の合成低下と肝でのトリグリセリド合成の促進(おそらく脂肪酸酸化の減少または肝へ運ばれる遊離脂肪酸の増加による)の可能性が考えられている。炎症は脂質過酸化反応による細胞膜損傷の結果と考えられる。これらの変化が肝星細胞を刺激し,線維化を引き起こす可能性がある。NASHがさらに進行すると, 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた 肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には, 門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の 肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の予防のほか,ときに門脈下大静脈吻合術または肝移植を行う。... さらに読む を引き起こしうる。

症状と徴候

大部分の患者は無症状である。しかしながら,一部の患者では疲労,倦怠感,右上腹部の不快感を生じることがある。約75%の患者で肝腫大が生じる。進行した肝線維化が存在する場合には,脾腫を生じることもあり,通常これは門脈圧亢進症の発生を示唆する最初の所見である。NASHによる肝硬変の患者では,無症状のこともあり,さらに慢性肝疾患で通常みられる徴候を欠くこともある。

診断

肥満,2型糖尿病,脂質異常症などの危険因子を有する患者と,肝疾患を示唆する原因不明の臨床検査値異常がある患者では,本疾患を疑うべきである。最もよくみられる臨床検査値異常はアミノトランスフェラーゼ値の上昇である。 アルコール性肝疾患 アルコール性肝疾患 欧米諸国の大半ではアルコール摂取量が高くなっている。精神疾患の診断・統計マニュアル DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)によると,米国では任意の12カ月という期間で8... さらに読む アルコール性肝疾患 とは異なり,NASHではAST/ALT比が通常1未満となる。アルカリホスファターゼとγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)はときに高値となる。高ビリルビン血症,PTの延長,低アルブミン血症はまれである。

診断には,過度の飲酒がない(例,1日20g未満)ことの確固たる証拠(友人や近親者の証言など)が必要であり,さらに血清学的検査でB型およびC型肝炎を除外する必要がある(すなわち,B型肝炎表面抗原とC型肝炎ウイルス抗体がともに陰性)。肝生検では,アルコール性肝炎に類似した損傷がみられ,通常は大きな脂肪滴(大滴性脂肪沈着)を認める。生検の適応としては,糖尿病,肥満,または脂質異常症を有する患者において,原因不明の門脈圧亢進症の徴候(例,脾腫,血球減少)と原因不明のアミノトランスフェラーゼ値上昇が6カ月以上持続する場合などが挙げられる。

予後

予後の予測は困難である。おそらく大半の患者では,肝不全や肝硬変は発生しない。しかしながら,一部の薬剤(例,細胞傷害性薬剤)と代謝性疾患はNASHの加速に関与する。合併症(例,静脈瘤出血)が発生しない限り,予後は良好であることが多い。

治療

  • 原因の除去と危険因子の管理

広く認められている唯一の治療目標は,潜在的な原因と危険因子を排除することである。具体的な目標としては,薬物や毒性物質の使用中止,体重の減量, 脂質異常症に対する治療 治療 脂質異常症とは,血漿コレステロール,トリグリセリド(TG)値,もしくはその両方が高値であること,またはHDLコレステロールが低値であることであり, 動脈硬化発生に寄与する。原因には原発性(遺伝性)と二次性とがある。診断は,総コレステロール,TG,および各リポタンパク質の血漿中濃度測定による。治療は食事の変更,運動,および脂質低下薬である。 ( 脂質代謝の概要も参照のこと。)... さらに読む 治療 高血糖に対する治療 治療 糖尿病(DM)はインスリン分泌障害および様々な程度の末梢インスリン抵抗性であり,高血糖をもたらす。初期症状は高血糖に関連し,多飲,過食,多尿,および霧視などがある。晩期合併症には,血管疾患,末梢神経障害,腎症,および易感染性などがある。診断は血漿血糖測定による。治療は食事療法,運動,および血糖値を低下させる薬剤により,薬剤にはインスリンお... さらに読む などが挙げられる。チアゾリジン系薬剤とビタミンEがNASHにおける生化学的および組織学的異常の是正に役立つ可能性が予備的なエビデンスから示唆されている。その他の多くの治療法(例,ウルソデオキシコール酸,メトロニダゾール,メトホルミン,ベタイン,グルカゴン,グルタミン輸液)の確実な効果は証明されていない。

要点

  • NASHは,アルコール性肝炎に類似した組織学的肝傷害を引き起こすが,アルコール乱用のない患者で発生し,しばしば肥満,2型糖尿病,または脂質異常症の併発がみられる。

  • 通常は無症状であるが,一部の患者では右上腹部の不快感,疲労,倦怠感がみられる。

  • 最終的には門脈圧亢進症および肝硬変の徴候がみられるようになり,これらが最初の症状となることもある。

  • アルコール依存症(確証のある病歴で)とB型およびC型肝炎(血清学的検査で)を除外し,肝生検を施行する。

  • 可能であれば,原因を排除し,危険因子を管理する。

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