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門脈圧亢進症

執筆者:

Steven K. Herrine

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2018年 1月
本ページのリソース

門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の予防のほか,ときに門脈下大静脈吻合術または肝移植を行う。

門脈は,上腸間膜静脈と脾静脈が合流して形成され,腹部の消化管,脾臓,および膵臓からの血液を肝臓に送り込む。網内系細胞で覆われた血行路(類洞)において,終末門脈枝からの血液は肝動脈からの血液と合流する。類洞を出た血液は,肝静脈を通って下大静脈に流入する。

正常な門脈圧は5~10mmHg(7~14cmH2O)で,下大静脈圧を4~5mmHg上回っている(門脈圧較差)。値がこれより高くなった場合が門脈圧亢進症と定義される。

病因

門脈圧亢進症は,主として門脈内の血流に対する抵抗が増大することによって生じる。この抵抗の原因として一般的な病態は,肝臓内に生じた疾患であり,まれな原因としては,脾静脈または門脈の閉塞や肝静脈の流出障害などがある(Professional.see table 門脈圧亢進症の最も一般的な原因)。流量の増加は原因としてまれであるが,大きな脾腫を引き起こす血液疾患や肝硬変がある状態では,しばしば門脈圧の亢進につながる。

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門脈圧亢進症の最も一般的な原因

機序または部位

原因

肝前性

閉塞

脾静脈または門脈血栓症

門脈流量の増加(まれ)

原発性の血液疾患による大きな脾腫

肝内性

類洞前性

門脈周辺が侵されるその他の疾患(例,原発性胆汁性胆管炎サルコイドーシス,先天性肝線維症

類洞性

肝硬変(全ての病因)

類洞後性

類洞閉塞症候群(肝中心静脈閉塞症)

肝後性

閉塞

肝静脈血栓症(バッド-キアリ症候群

下大静脈の閉塞

右心への流入に対する抵抗

収縮性心膜炎

病態生理

肝硬変の状態では,組織の線維化と再生により,類洞および終末門脈枝の抵抗が増大する。しかしながら,その他の可逆的な要因が関与する場合もあり,具体的には類洞内皮細胞の収縮,血管作動性物質の産生(例,エンドセリン,一酸化窒素),細動脈の抵抗を誘導する様々な全身性の因子,場合によっては肝細胞腫大などがある。

門脈圧亢進症が長期に及ぶと,門脈大循環側副血行路が形成される。門脈大循環側副血行路は門脈圧をわずかに低下させるが,合併症を引き起こすことがある。下部食道やときに胃底部に生じる蛇行するように怒張した粘膜下血管(静脈瘤)が破裂すると,突如として極めて重篤な消化管出血が発生する。門脈圧較差が12mmHgを超えない限り,出血はまれである。胃粘膜血管のうっ血(門脈圧亢進性胃症)は,静脈瘤とは無関係に,急性または慢性出血につながる可能性がある。腹壁上に腹壁側副血行路を視認できることが多く,臍から放射状に伸びる静脈(メズサの頭)は非常にまれであるが,これは臍静脈と臍周囲静脈に大量の血流が生じていることを意味する。直腸周辺の側副血行路は直腸静脈瘤の形成につながり,出血を招くことがある。

門脈大循環側副血行路が生じると,血流が肝臓を迂回するようになる。そのため,門脈血流が増加すると,肝臓に到達する血流が減少する(肝予備能の低下)。さらに,腸管の毒性物質が大循環に直接流入することで,門脈大循環性脳症が引き起こされる。門脈圧亢進症により内臓で静脈うっ滞が生じると,スターリング力の変化により腹水の増大につながる。脾静脈圧が上昇する結果として,脾腫と脾機能亢進症がしばしば発生する。血小板減少,白血球減少,よりまれに溶血性貧血が生じることもある。

門脈圧亢進症は,しばしば循環動態の亢進を伴う。機序は複雑であるが,交感神経緊張の変化,一酸化窒素やその他の内因性血管拡張物質の産生,液性因子(例, グルカゴン)の活性亢進などが関与するようである。

症状と徴候

門脈圧亢進症自体は無症状であり,症状や徴候はその合併症に起因する。最も危険なものは急性静脈瘤出血である。典型的には,疼痛を伴わない上部消化管出血が突然みられ,しばしば大出血となる。門脈圧亢進性胃症による出血は,亜急性または慢性である場合が多い。腹水,脾腫,または門脈大循環性脳症がみられることもある。

診断

  • 通常は臨床的評価

慢性肝疾患の患者で側副循環,脾腫,腹水,または門脈大循環性脳症がみられる場合は,門脈圧亢進症があるとみなす。確証を得るには,頸静脈から挿入したカテーテルで肝静脈圧較差(概ね門脈圧を反映する)を測定する必要があるが,この手技は侵襲的であり,通常は行われない。肝硬変が疑われる場合は,画像検査が有用となりうる。超音波検査またはCTでは,しばしば腹部に拡張した腹腔内側副血行路が認められ,ドプラ超音波検査では門脈の開存性と血流を確認することができる。

食道胃静脈瘤および門脈圧亢進性胃症の診断には内視鏡検査が最適であり,さらに食道胃静脈瘤からの出血の前兆を同定できる場合もある(例,静脈瘤上にみられる赤い点)。

予後

急性静脈瘤出血での死亡率は50%を超える。予後は,肝予備能と出血の程度から予測できる。生存者では,1~2年以内の出血リスクが50~75%である。内視鏡治療または薬物療法を継続することで出血リスクは下がるものの,長期的な死亡率はわずかに下げるのみである。急性出血の治療については,Professional.see page 消化管出血の概要 : 治療およびProfessional.page numonly 静脈瘤 : 治療を参照のこと。

治療

  • 内視鏡による継続的な治療およびサーベイランス

  • 非選択的β遮断薬を単独または一硝酸イソソルビドと併用

  • ときに門脈短絡術

可能であれば,基礎疾患を治療する。出血を起こした食道胃静脈瘤に対する長期治療は,残存する静脈瘤を消失させるための複数回の内視鏡的結紮術と,静脈瘤の再発を検出するための内視鏡による定期的なサーベイランスである。

出血を起こした静脈瘤に対する長期の薬物療法としては,非選択的β遮断薬を使用するが,この種の薬剤は主に門脈血流を減少させることによって門脈圧を低下させるものの,その効果は一定しない。具体的にはプロプラノロール(40~80mg,1日2回,経口),ナドロール(40~160mg,経口,1日1回),チモロール(10~20mg,経口,1日2回),カルベジロール(6.25~12.5mg,経口,1日2回)などがあり,用量は心拍数が約25%下がる程度に漸減する。一硝酸イソソルビド(10~20mg,経口,1日2回)の追加により門脈圧をさらに下げられる場合がある。内視鏡治療と薬物療法の長期併用は,それぞれを単独で行う場合より若干有効性が高まる可能性がある。

いずれかの治療法で十分な反応が得られない患者には,経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)または比較的まれであるが門脈下大静脈吻合術を考慮すべきである。TIPSでは,肝臓内で門脈と肝静脈循環の間にステントを留置することで短絡路を形成する。(American Association for the Study of Liver Diseasesの診療ガイドライン,The Role of Transjugular Intrahepatic Portosystemic Shunt (TIPS) in the Management of Portal Hypertension: Update 2009も参照のこと。)外科的な短絡術と比較して,TIPSでは急死(特に急性出血時)は少ないものの,時間の経過とともにステントの狭窄や閉塞が生じるため,開存を維持するために処置を繰り返さなければならない場合もある。長期の有益性については不明である。患者によっては肝移植の適応となる。

まだ出血を起こしていない静脈瘤がある患者では,非選択的β遮断薬によって出血リスクを低減できる。

門脈圧亢進性胃症による出血に対しては,門脈圧を低下させる薬剤を使用することができる。薬物療法で効果が得られない場合は,短絡術を考慮すべきであるが,その効果は食道静脈瘤出血の場合より低くなることが多い。

脾機能亢進症については,臨床的な問題を生じることはまれであるため,特異的な治療は必要なく,脾臓摘出術は避けるべきである。

要点

  • 門脈圧亢進症の原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。

  • 合併症としては,急性静脈瘤出血(死亡率が高い),腹水,脾腫,門脈大循環性脳症などがある。

  • 門脈圧亢進症は臨床所見に基づいて診断する。

  • 急性静脈瘤出血の予防としては,定期的なサーベイランスと複数回の内視鏡的結紮術を開始する。

  • 再出血の予防としては,非選択的β遮断薬の単独もしくは一硝酸イソソルビドとの併用,経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS),またはその両方による治療を行う。

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