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原発性胆汁性胆管炎( PBC)

(原発性胆汁性肝硬変)

執筆者:

Jesse M. Civan

, MD, Thomas Jefferson University Hospital

最終査読/改訂年月 2018年 2月
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原発性胆汁性胆管炎(PBC;以前は原発性胆汁性肝硬変として知られていた)は,肝内胆管の進行性の破壊を特徴とし,胆汁うっ滞,肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には,門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む ,肝不全に至る自己免疫性肝疾患である。初診時には通常は無症状であるが,疲労感がある場合や胆汁うっ滞(例,そう痒,脂肪便)または肝硬変(例,門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の予防のほか,ときに門脈下大静脈吻合術または肝移植を行う。... さらに読む ,腹水)の症状がみられる場合もある。臨床検査では,胆汁うっ滞,IgMの上昇,および特徴的所見として血清中に抗ミトコンドリア抗体が認められる。診断および進行度判定のために肝生検が必要となる場合がある。治療法としては,ウルソデオキシコール酸,オベコチール酸,コレスチラミン(そう痒に対して),脂溶性ビタミンの補給のほか,進行例に対する最終手段としての肝移植 肝移植 肝移植は,実質臓器の移植の中で2番目に多い。(移植の概要も参照のこと。) 肝移植の適応としては以下のものがある: 肝硬変(米国では移植全体の70%;そのうち60~70%がC型肝炎によるもの) 劇症型の肝壊死(fulminant hepatic necrosis)(約8%) 肝細胞癌(約7%) さらに読む などがある。

病因

PBCは成人で最も頻度が高い,慢性胆汁うっ滞を伴う肝疾患である。ほとんど(95%)が35~70歳の女性に発生する。PBCは家族集積もみられる。遺伝的素因(おそらくX染色体が関与する)が一因になると考えられている。免疫調節機能に先天性の異常がある可能性がある。

自己免疫性の機序が予想されており,95%を超える症例でミトコンドリア内膜上の抗原に対する抗体が認められる。これらの抗ミトコンドリア抗体(AMA)は,PBCの血清学的特徴であるが,細胞毒性はなく,胆管傷害には関与しない。

PBCは他の自己免疫疾患(RA 関節リウマチ(RA) 関節リウマチ(RA)は,主に関節を侵す慢性の全身性自己免疫疾患である。RAは,サイトカイン,ケモカイン,およびメタロプロテアーゼを介した損傷を引き起こす。特徴として,末梢関節(例,手関節,中手指節関節)に対称性に炎症が生じ,結果として関節構造が進行性に破壊される(通常は全身症状を伴う)。診断は特異的な臨床所見,臨床検査結果,および画像所見に基づく。治療としては,薬物療法,理学療法,およびときに手術を行う。疾患修飾性抗リウマチ薬は症状のコ... さらに読む 関節リウマチ(RA) 全身性強皮症 全身性強皮症 全身性強皮症は,皮膚,関節,および内臓(特に食道,下部消化管,肺,心臓,腎臓)におけるびまん性の線維化および血管異常を特徴とする,原因不明のまれな慢性疾患である。一般的な症状としては,レイノー現象,多発性関節痛,嚥下困難,胸やけ,腫脹などがあり,最終的には皮膚の硬化と手指の拘縮が起こる。肺,心臓,および腎臓の病変がほとんどの死亡の原因である。診断は臨床的に行うが,臨床検査は診断の裏付けになり,予後予測に役立つ。特異的治療は困難であり,合... さらに読む 全身性強皮症 シェーグレン症候群 シェーグレン症候群(SS) シェーグレン症候群(SS)は,比較的よくみられる原因不明の慢性,自己免疫性,全身性,炎症性の疾患である。外分泌腺のリンパ球浸潤およびそれに続く二次的な分泌機能障害による,口腔,眼,およびその他の粘膜の乾燥を特徴とする。SSは様々な外分泌腺または他の器官に影響を及ぼすことがある。診断は,眼,口腔,および唾液腺の障害に関連する特異的な基準,自己抗体,ならびに(ときに)病理組織学的検査による。治療は通常,対症療法である。... さらに読む シェーグレン症候群(SS) ,CREST症候群,自己免疫性甲状腺炎,尿細管性アシドーシス 尿細管性アシドーシス 尿細管性アシドーシス(RTA)は,腎臓における水素イオンの排泄障害(1型),重炭酸塩の再吸収障害(2型),またはアルドステロンの産生もしくは反応の異常(4型)によってアシドーシスと電解質異常が生じる病態である。(3型は極めてまれであるため,ここでは考察しない。)無症状の場合もあれば,電解質異常の症候を呈する場合や,慢性腎臓病に進行する場合もある。診断は,誘発試験に反応した尿pHおよび電解質の特徴的な変化に基づく。治療はpHおよび電解質平... さらに読む など)と関連している。

T細胞が細い胆管を攻撃する。CD4およびCD8陽性Tリンパ球は胆管上皮細胞を直接の標的とする。この胆管に対する免疫学的攻撃の誘因は不明である。感染因子(細菌またはウイルス)や毒性物質などの異種抗原への曝露が要因となっている可能性がある。これらの異種抗原は内因性タンパク質と構造的に類似しているため(分子擬態[molecular mimicry]),続いて起こる免疫反応は自己免疫性かつ永続的となると考えられる。胆管の破壊および消失は,胆汁の生成および分泌障害(胆汁うっ滞)につながる。続いて,胆汁酸などの毒性物質が滞留することで,さらなる傷害が引き起こされる(特に肝細胞)。そのため慢性胆汁うっ滞は,肝臓の門脈周囲領域において細胞の炎症および瘢痕化を引き起こす。最終的には,肝線維化 肝線維化 肝線維化は,損傷部が過度の組織増生を伴って治癒することで,肝臓内に過剰な結合組織が蓄積した状態である。細胞外基質の過剰産生,分解不良,またはその両者が同時にみられる。誘因は慢性傷害であり,特に炎症がみられる場合である。線維化自体は症状を引き起こさないが,門脈圧亢進症(瘢痕によって肝臓内の血流に異常が生じる)や肝硬変(瘢痕により正常な肝構築... さらに読む 肝硬変 肝硬変 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には,門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む へと進行するにつれて,肝臓の炎症は減少する。

自己免疫性胆管炎は,ときに別の疾患とみなされる。自己免疫性胆管炎は,抗核抗体(ANA),抗平滑筋抗体またはその両方などの自己抗体を特徴とし,PBCと類似した臨床経過および治療に対する反応を示す。しかしながら,自己免疫性胆管炎ではAMAが認められない。

症状と徴候

約半数の患者は無症状である。症状や徴候は進行過程のどの段階でも生じる可能性があり,疲労がみられる場合や,胆汁うっ滞(およびその結果生じる脂肪吸収不良,さらにビタミン欠乏症や骨粗鬆症を来すこともある),肝細胞機能障害,または肝硬変を反映する場合がある。

症状は通常潜行性に発生する。そう痒,疲労,口腔乾燥,およびドライアイは,半数を超える患者で最初の症状となり,数カ月ないし数年にわたって他の症状に先行することもある。その他の初期症状としては,右上腹部不快感(10%),圧痛を伴わない硬い肝腫大(25%),脾腫(15%),色素沈着(25%),眼瞼黄色腫(10%),黄疸(10%)などがある。最終的には,肝硬変の全ての特徴と合併症が発生する。PBCに伴い末梢神経障害や他の自己免疫疾患が発生することもある。

診断

  • 肝機能検査

  • 抗ミトコンドリア抗体

  • 超音波検査としばしばMRCP

  • 肝生検

無症状の患者では,肝機能検査で異常が検出された際,特にアルカリホスファターゼ値とγ-グルタミルトランスペプチダーゼ値の上昇がみられた際に,PBCが偶然検出される。古典的症状(例,原因不明のそう痒,疲労,右上腹部不快感,黄疸),または胆汁うっ滞性肝疾患を示唆する臨床検査結果(アルカリホスファターゼ値およびGGT値の上昇を認めるが,アミノトランスフェラーゼ[ALTおよびAST]値の異常は最小限)がみられた中年女性では,PBCを疑う。通常,血清ビリルビン値は早期には正常であり,その上昇は疾患の進行と予後の悪化を示唆する。

PBCが疑われる場合は,肝機能検査と血清IgM(PBCで増加する)およびAMAの測定を行うべきである。酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)による検査は,PBCに対する感度が95%,特異度が98%であるが,自己免疫性肝炎(1型)では偽陽性となる可能性がある。その他の自己抗体(例,ANA,抗平滑筋抗体,リウマトイド因子)を認めることもある。肝外胆道閉塞を除外すべきである。最初は超音波検査を施行する場合が多いが,最終的には磁気共鳴胆道膵管造影(MRCP)のほか,ときに内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)が必要となる。期待余命が短いか,肝生検 肝生検 肝生検では,肝組織の構造と肝損傷(種類,程度,線維化)の証拠について組織学的情報が得られ,その情報は,診断だけでなく,病期分類,予後,および管理においても必須である。得られるのは小さな組織片のみであるが,その検体は通常(たとえ局所病変が複数ある場合も)病変全体を代表する。 肝生検は,ベッドサイドまたは超音波ガイド下で経皮的に施行する。合併症発生率がわずかに低く,肝臓を描出した上で巣状病変を標的にできることから,超音波ガイド下の方が好まし... さらに読む の禁忌がある場合を除き,通常は肝生検を施行する。肝生検では確定診断が得られ,早期であっても,特徴的な胆管病変を検出できることがある。PBCが進行するにつれ,他の種類の肝硬変との形態学的な識別は困難になっていく。肝生検は,以下に示すPBCの4段階の組織学的進行度の判定にも有用である:

  • 1期:炎症,異常な結合組織,またはその両方が門脈域に限局して認められる

  • 2期:炎症,線維化,またはその両方が門脈域および門脈周囲領域に限局して認められる

  • 3期:架橋線維化

  • 4期:肝硬変

AMAは検出されないが,その他の点ではPBCの診断基準を満たす場合は,自己免疫性胆管炎と診断する。

予後

通常,PBCは15~20年かけて末期へ進行するが,進行の速さは一様でない。生活の質は長年にわたり低下しないこともある。無症状の患者では,2~7年のうちに症状が出現する傾向があるが,10~15年にわたり症状がみられないこともある。一旦症状が発生すると,期待余命は10年となる。急速な進行の予測因子として以下のものがある:

  • 症状の急速な悪化

  • 進行した組織学的変化

  • 高齢

  • 浮腫の存在

  • 自己免疫疾患の合併

  • ビリルビン,アルブミン,PT,またはINRの異常

そう痒の消失,黄色腫の縮小,黄疸の発生,および血清コレステロール値の低下がみられる場合は予後不良である。

治療

  • 肝傷害の阻止または回復

  • 合併症(慢性胆汁うっ滞および肝不全)の治療

  • ときに肝移植

飲酒や肝毒性のある薬剤は全て中止すべきである。ウルソデオキシコール酸(15mg/kg,経口,1日1回)は肝傷害を軽減し,生存期間を延長し,肝移植の必要時期を遅らせる。約20%の患者では,4カ月以上が経過しても生化学的改善が認められないが,それらの患者では,疾患が進行し,数年以内に肝移植が必要となる可能性がある。オベチコール酸は,ウルソデオキシコール酸に十分に反応しない,または耐えられない患者に使用できる。進行した肝疾患がある場合は,オベチコール酸は慎重に使用すべきである。

そう痒は,コレスチラミン6~8gの1日2回経口投与で管理できる場合がある。この陰イオン吸着作用を有する薬剤は,胆汁酸塩と結合することで,脂肪吸収不良を増悪させる可能性がある。コレスチラミンを長期服用する場合は,脂溶性ビタミンの補給を考慮すべきである。コレスチラミンはウルソデオキシコール酸の吸収を減少させるため,これらの薬剤を同時に服用させてはならない。コレスチラミンはその他の様々な薬物の吸収も減少させるため,影響を受ける可能性のある薬剤を患者が服用している場合は,コレスチラミンの服用前後3時間はその薬剤を服用しないように指示するべきである。

患者によっては,そう痒に対してウルソデオキシコール酸および紫外線照射が奏効するほか,リファンピシンまたはオピオイド拮抗薬(ナルトレキソンなど)の試験的投与が妥当となる患者もいる。

胆汁酸塩の欠乏による脂肪吸収不良がある患者は,ビタミンA,D,E,Kの補給により治療すべきである。骨粗鬆症には,カルシウムやビタミンDの補給に加えて,荷重運動,ビスホスホネート,またはラロキシフェンが必要となる場合がある。後期になると,門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症とは,門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは,肝硬変(先進国),住血吸虫症(流行地域),および肝血管異常である。続発症として,食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い,しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。治療としては,内視鏡検査,薬剤,またはその両方による消化管出血の予防のほか,ときに門脈下大静脈吻合術または肝移植を行う。... さらに読む 肝硬変の合併症 合併症 肝硬変は,正常な肝構築が広範に失われた肝線維化の後期の病像である。肝硬変は,密な線維化組織に囲まれた再生結節を特徴とする。症状は何年も現れないことがあり,しばしば非特異的である(例,食欲不振,疲労,体重減少)。後期の臨床像には,門脈圧亢進症,腹水,代償不全に至った場合の肝不全などがある。診断にはしばしば肝生検が必要となる。肝硬変は通常,不可逆的と考えられている。治療は支持療法である。... さらに読む に対する治療が必要になる。

肝移植 肝移植 肝移植は,実質臓器の移植の中で2番目に多い。(移植の概要も参照のこと。) 肝移植の適応としては以下のものがある: 肝硬変(米国では移植全体の70%;そのうち60~70%がC型肝炎によるもの) 劇症型の肝壊死(fulminant hepatic necrosis)(約8%) 肝細胞癌(約7%) さらに読む の結果は非常に良好である。一般的な適応は非代償性肝疾患(コントロール不良の静脈瘤出血,難治性腹水,難治性そう痒,および肝性脳症)である。肝移植後の生存率は,1年時点で90%超,5年時点で80%超,10年時点で65%超である。AMAは移植後も認められる傾向がある。数年以内に15%の患者が,10年以内に30%を超える患者でPBCが再発する。肝移植後の再発PBCは良性の経過をたどるようである。肝硬変の発生はまれである。

要点

  • PBCは,細い胆管に対する自己免疫反応により引き起こされる慢性進行性の胆汁うっ滞性肝障害であり,ほぼ全例が35~70歳の女性で発生する。

  • PBCは典型的には,15~20年かけて末期に進行する。

  • 原因不明のアルカリホスファターゼ値およびGGT値の上昇を認めるが,アミノトランスフェラーゼ値の異常は最小限である場合,特に胆汁うっ滞の全身症状や臨床像(例,そう痒,骨粗鬆症,ビタミンD欠乏症)がみられる場合には,PBCを疑う。

  • IgMおよび抗ミトコンドリア抗体を測定し,画像検査(肝外胆道閉塞を除外するため)と肝生検を施行する。

  • 肝毒性物質(アルコールを含む)の使用を中止し,ウルソデオキシコール酸で治療する(移植の必要時期を遅らせる可能性がある)。

  • 非代償性肝疾患(コントロール不良の静脈瘤出血,難治性腹水,難治性そう痒,肝性脳症)は移植の適応である。

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