高齢者における薬物療法の概要

執筆者:J. Mark Ruscin, PharmD, FCCP, BCPS, Southern Illinois University Edwardsville School of Pharmacy;
Sunny A. Linnebur, PharmD, BCPS, BCGP, Skaggs School of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, University of Colorado
レビュー/改訂 2018年 12月
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    処方薬の使用は,加齢とともに大幅に増加する。2010~2011年の調査データによると,高齢者のうち,90%近くが1種類以上,80%近くが2種類以上,36%が5種類以上の処方薬を定期的に服用している(1)。OTC医薬品および栄養補助食品も含めると,使用率は大幅に増加する。女性の方がより多くの薬剤(特に向精神薬と関節炎の治療薬)を服用している。薬剤の使用はフレイルな高齢者,入院患者および介護施設入居者において最も多い;典型的な介護施設入居者は7~8種類の薬剤を定期的に服用している。

    高齢者に安全で効果的な薬物療法を施すことは,多くの理由から困難である:

    • 彼らは他のどの年齢層よりも多くの薬剤を使用しているため,有害作用や薬物相互作用のリスクが上昇し,アドヒアランス(服薬遵守)の維持はより困難になる。

    • 高齢者は,薬剤によって悪化する慢性疾患や薬剤の効果に影響を及ぼす慢性疾患が存在する可能性がより高い。

    • 彼らの生理的予備能は一般的に低下しており,急性および慢性疾患によってさらに低下する可能性がある。

    • 加齢は薬力学および薬物動態を変化させる可能性がある。

    • 高齢者は薬剤を入手する能力が低下しているか,購入する余裕がなくなっている可能性がある。

    高齢者における薬物療法を最適化するには主に2つのアプローチがある:

    • 費用対効果を最大にするために,適応通りに適切な薬剤を使用すること

    • 薬物有害作用を回避すること

    薬物有害作用のリスクがより高いため,過剰処方(ポリファーマシー)は高齢者の主要な問題として注目されている。しかし,適切かつ治療上有益な薬剤の過少処方もまた避けなければならない。(高齢者における薬物関連の問題および高齢者において注意を要する薬剤カテゴリーも参照のこと。)

    参考文献

    1. 1.Qato DM, Wilder J, Schumm LP, et al: Changes in prescription and over-the-counter medication and dietary supplement use among older adults in the United States, 2005 vs 2011.JAMA Intern Med 176(4):473-82, 2016.doi: 10.1001/jamainternmed.2015.8581.

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