顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー

(ランドゥジー・デジェリン型筋ジストロフィー)

執筆者:Michael Rubin, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center
レビュー/改訂 2020年 7月
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顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは,最も頻度の高い病型の筋ジストロフィーである。大半の症例が20歳までに発症する。顔面筋および肩甲帯の筋力低下が特徴である。経過は様々である。診断はDNA解析による。治療は対症療法であり,通常は理学療法による。

筋ジストロフィーとは,筋肉が正常な構造と機能を維持するのに必要な遺伝子の1つまたは複数の異常を原因とする遺伝性かつ進行性の筋疾患であり,筋生検でジストロフィー変化(例,筋線維の壊死および再生)が認められる。

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHMD)は筋ジストロフィーで最も頻度の高い種類であり,1000人当たり7人に発生するのに対し,デュシェンヌ型またはベッカー型筋ジストロフィーは1000人当たり5人に発生する。常染色体優性遺伝疾患である。約98%の患者において,FSHMDは4番染色体長腕の4q35座の欠失が原因である。約10~33%の患者では,突然変異は遺伝性ではなくde novo(散発性)である。

症状と徴候

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは顔面筋および肩甲帯の筋力低下を特徴とする。症状は幼児期に発生することがあり,通常は青年期に著明になる;95%の症例が20歳までに発症する。最初の症状は緩徐に進行し,口笛,閉眼,腕挙上(肩甲骨固定筋の筋力低下が原因)の困難などがある。最終的には患者が表情の変化に気づく。

経過は様々である。患者の多くでは機能障害を来さず,期待余命は正常である。成人期に車椅子で生活する患者もいる。乳児型は顔面,肩関節,および骨盤帯の筋力低下を特徴とし,急速進行性で障害は常に重度である。筋症状以外で本疾患にしばしば合併する症状として,感音難聴や網膜血管異常などがある。

診断

  • DNA変異解析

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの診断は,特徴的 な臨床所見,発症年齢,および家族歴から示唆され,DNA検査によって確定される。

治療

  • 理学療法

筋力低下に対する治療法はないが,理学療法が機能の維持に役立つことがある(1)。

失明の予防のために網膜血管異常に対するモニタリングが不可欠である。

治療に関する参考文献

  1. 1.Tawil R, Kissel JT, Heatwole C, et al: Evidence-based guideline summary: Evaluation, diagnosis, and management of facioscapulohumeral muscular dystrophy: Report of the Guideline Development, Dissemination, and Implementation Subcommittee of the American Academy of Neurology and the Practice Issues Review Panel of the American Association of Neuromuscular & Electrodiagnostic Medicine. Neurology 85:357–364, 2015.doi: 10.1212/WNL.0000000000001783

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. Muscular Dystrophy Association: Information on research, treatment, technology, and support for patients living with a muscular dystrophy

  2. Muscular Dystrophy News Today: A news and information web site about muscular dystrophy

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