破折歯・脱臼歯

執筆者:Michael N. Wajdowicz, DDS, Veterans Administration
レビュー/改訂 2020年 11月
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歯の破折および脱臼は歯科的緊急事態であり迅速な治療を必要とする。

歯牙破折

歯の破折は深さによって次のように分類される。

  • エナメル質のみ

  • 象牙質露出

  • 露髄

破折がエナメル質のみであれば,患者は歯の粗造面または鋭利な部分に気づくが,それ以外は無症状である。破折部を滑らかにしたり審美の改善を目的とした歯科処置を待機的に行う。

歯髄は露出せずに象牙質が露出している場合,患者は通常冷風および冷水に対して過敏性を示す。治療は弱い鎮痛薬の投与と歯科医師への紹介である。歯科処置ではコンポジットレジン(歯冠色充填材)で修復するか,破折の範囲が大きい場合は人工歯冠を用いて露出した象牙質を被覆する。

歯髄が露出(歯からの出血により示唆される),または歯が動揺している場合は,歯科医師への紹介は急を要する。通常,根管治療を行う。

歯根破折と歯槽骨骨折は視診ではわからないが,歯(多数歯にわたる場合もある)の動揺により確認できる場合もある。矯正用アーチワイヤーまたはポリエチレン線を何本かの隣在歯に接着し固定する場合もまた,歯科医院への紹介は急を要する。

歯牙脱臼

脱臼した乳歯は通常壊死し,感染するので再植しない。これらの歯はまた癒着状態になり,脱落しないため,永久歯の萌出を妨げてしまうことがある。

永久歯が脱臼した場合,患者は脱臼歯を直ちに抜歯窩へ戻し(触れてよいのは歯冠のみ),歯に対する処置でそれを固定する必要がある。もしこれができない場合,歯は生理食塩水もしくは牛乳に浸すか,または湿潤させたペーパータオルにくるみ歯科医に持って行き再植固定の処置を受けるべきである。これらの物が利用できない場合および患者に意識があり脱臼歯を誤嚥・誤飲するリスクがない場合は,歯科医院までの移動中,その歯を患者の口腔内に入れておくことができる。脱臼歯はもし汚れていれば冷水で10秒以内であれば愛護的に洗ってもよいが,再付着に役立つ生存可能な歯根膜線維を取り除いてしまう可能性があるためこすり洗いはすべきではない。

歯が脱臼した患者は数日間抗菌薬投与を受けるべきである。テトラサイクリンが最も効果的である;ただし,患者が8歳以下で歯が着色する可能性がある場合は,その他の抗菌薬を考慮すべきである(例,ペニシリンVK 500mgを6時間毎に経口投与)。さらに,脱臼歯が不潔な物と接触した場合,患者の破傷風免疫状態を評価すべきである。脱臼歯が見つからない場合は,誤嚥,軟組織への迷入,または嚥下された可能性がある。誤嚥を除外するために胸部X線が必要なことがあるが,嚥下された歯は無害である。

パール&ピットフォール

  • 生存可能な歯根膜線維を取り除いてしまう可能性があるため,脱臼歯はこすり洗いしないこと。

不完全脱臼歯は迅速に再植し固定すれば,通常,非常に長い期間保存できる。完全脱臼歯は30分から1時間以内の最小限の対処時間で抜歯窩に再植された場合,同じく長期間保存できることがある。不完全および完全脱臼歯は歯髄壊死を起こすため,通常最終的には根管治療が必要となる。再植が遅れると長期の保存率が低下し,最終的に歯根吸収が起こる。その場合でも患者はその歯を数年間は使用できる可能性がある。

破折歯・脱臼歯の要点

  • 象牙質は露出しているが露髄を伴わない歯牙破折は,充填材,またはときにクラウンを用いて処置を行う。

  • 露髄を伴う歯牙破折は根管治療が必要になる可能性が高い。

  • 脱臼乳歯は再植しない。

  • 脱臼永久歯は,可能であれば直ちに抜歯窩に戻すべきであり,もしこれができない場合は,愛護的に10秒以内で水洗してもよく(ただしこすらない),生理食塩水もしくは牛乳に浸漬するか,湿潤ペーパータオルにくるむ,または患者の口腔内に入れて,できる限り早急に抜歯窩への再植のため歯科医までもって行く。

  • 迅速に再植された脱臼歯は多くの場合保存されるが,最終的には根管治療が必要になる可能性が高い。

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