がんを治癒させるには,患者の生涯にわたりがん再発の原因となりうるがん細胞を全て根絶する必要がある。主要な治療法として以下のものがある:
がんに対する全身療法としては以下のものがある:
ホルモン療法(前立腺癌,乳癌,子宮内膜癌などの特定のがんを対象とする)
モノクローナル抗体,インターフェロン,生物学的反応修飾物質,腫瘍ワクチン,細胞療法などの免疫療法(多くの種類のがんを対象とする)
レチノイド(急性前骨髄球性白血病を対象とする)やイソクエン酸デヒドロゲナーゼ-2(IDH2)阻害薬(急性骨髄性白血病を対象とする)などの分化誘導薬
ゲノミクス,細胞生物学,および分子生物学の新たな知見を活用して開発された分子標的薬(例,慢性骨髄性白血病に対するイマチニブ)
多くの場合,複数の治療法を併用することにより,患者および腫瘍の特徴のほか,患者の希望にも沿った,個々の患者に適した治療プログラムが策定される。これらの治療法は,主治療と同時に,あるいは主治療の開始前または終了後に併用することができる。主治療の後に行うアジュバント療法と主治療の前に行うネオアジュバント療法は,がんの再発予防と生存期間の延長を目的として行われる。
治療は全体として,状況に応じて放射線腫瘍医,外科医,および腫瘍内科医の間で調整されるべきである。治療法の選択肢は絶えず進歩しており,数多くの比較臨床試験が続けられている。利用可能かつ適切な場合は,臨床試験への参加を考慮し,患者と話し合うべきである。
治療方針の決定では,期待できる便益に対して有害作用の可能性を比較検討すべきであり,その決定には率直なコミュニケーションに加えて,集学的がん医療チームの関与が必要になる場合もある。終末期をどのように過ごすかという患者の希望(事前指示書を参照)は,たとえ微妙な時期に死について話し合うことが困難であるとしても,がん治療過程の早期に確認しておくべきである。
がん治療に対する反応
治療に対する反応を記載する目的で様々な用語が使用されている(がん治療に対する反応の定義の表を参照)。無病または無増悪生存期間は,治癒の指標としてしばしば用いられるが,がん種により異なる。例えば,肺癌,結腸癌,膀胱癌,大細胞型リンパ腫,および精巣腫瘍では,通常は無病生存期間が5年に達すれば治癒したとみなされる。一方,乳癌や前立腺癌では,5年を大きく過ぎてからも再発の可能性があり,そのような事象は腫瘍の休眠(dormancy)を示唆している(今や大きな研究分野となっている);これらのがんでは,10年間の無病状態の方がより正確な治癒の指標となる。
特定のがんについて,様々な治療法を単独または併用で用いた場合の生存率を一覧表に示した(各種のがんにおける5年生存率の表を参照)。