亜鉛中毒

執筆者:Larry E. Johnson, MD, PhD, University of Arkansas for Medical Sciences
レビュー/改訂 2020年 5月
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    亜鉛(Zn)は主に骨,歯,毛髪,皮膚,肝臓,筋肉,白血球,および精巣に含まれる。亜鉛は,多数のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)デヒドロゲナーゼ,RNAポリメラーゼおよびDNAポリメラーゼ,ならびにDNA転写因子のほか,アルカリホスファターゼ,スーパーオキシドジスムターゼ,および炭酸脱水酵素など,数百の酵素の成分である。

    ミネラル欠乏症および中毒の概要も参照のこと。)

    成人で推奨されている亜鉛摂取の上限量は40mg/日である;より若年者では上限量は低くなる。中毒はまれである。

    長期間にわたり100~150mg/日の成分亜鉛を摂取すると,銅代謝が阻害され,血中銅濃度の低値,小赤血球症,好中球減少症,および免疫障害が生じる;高用量の投与は短期間のみとし,患者を注意深く経過観察すべきである。

    さらに大量の摂取(200~800mg/日)は,通常は亜鉛メッキした容器に入った酸性の食物や飲料の摂取によるものであり,食欲不振,嘔吐,および下痢を引き起こすことがある。慢性中毒の結果,銅欠乏症が生じることがあり,神経損傷を引き起こすことがある。

    真鍮鋳工熱(brass-founders’ ague)または亜鉛性振戦(zinc shake)とも呼ばれる金属フューム熱が,産業性の酸化亜鉛の蒸気を吸入することによって生じ,その結果,発熱,呼吸困難,悪心,倦怠感,および筋肉痛が生じる。発症は通常,曝露後4~12時間である。症状は,亜鉛がない環境で12~24時間過ごすと通常は消失する。

    亜鉛中毒の診断は通常,経過および曝露歴に基づく。

    亜鉛中毒の治療は,亜鉛への曝露の排除であり,解毒剤はない。

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