ファスナー（スライダー部分，ファスナーの歯と歯の間，またはその両方）に陰茎の皮膚が挟まっている場合は，ワイヤーカッターまたは骨剪刀を用いてスライダー部分を半分に切断するか，陰茎が挟まったファスナーの部分だけ分離して愛護的に開くことで解放する。ファスナーを開こうとすると，挟まれた皮膚を損傷することがある。ときに，挟まれた部分の皮膚を切除する手術が必要になることがある。
（性器外傷も参照のこと。）
適応
包皮，陰茎皮膚，または陰嚢皮膚のファスナーによる絞扼
禁忌
絶対的禁忌
なし
相対的禁忌
なし
合併症
合併症としては以下のものがある：
皮膚の損傷
陰茎の裂傷
治療の遅れによる浮腫は，手技をより困難にし，組織損傷および壊死のリスクを高める可能性がある。
陰茎への損傷（特に臨床所見から尿道損傷が示唆される場合）は泌尿器科医が評価すべきである。
器具
消毒液（例，ポビドンヨード）
鉱油
強力なワイヤーカッターまたは骨剪刀
頑丈なハサミ（ズボンの生地とファスナーを切断するため）
小さな剪刀（例，眼科剪刀）（ファスナーの歯を一つ一つ除去するため，必要に応じて特定部分のファスナーの歯と歯の間の布を切断するため）
表面麻酔クリームまたはアドレナリン無添加の局所麻酔薬（例，1％または2％リドカインと25Gまたは27G針および約3mLシリンジ）
その他の留意事項
この状態は疼痛を伴い，患者は怯えたり当惑したりしていることもある。手技を行うには，通常は患者に落ち着くよう穏やかに伝えるだけで十分である。ときに軽度の鎮静が役立つことがある。
体位
患者を仰臥位にする。手技を行いやすくするため，必要であればまず包帯用のハサミを用いてズボンのファスナー周辺を切開するが，これにより患部を牽引する痛みが軽減され，ズボンを脱がせることができる。
処置のステップ-バイ-ステップの手順
25Gまたは27G針で患部に局所麻酔薬を注射するか，麻酔用クリームを塗布する。
頑丈なワイヤーカッター（ニッパー）または骨剪刀を用いて，ファスナーの幅が広く開いた方の先端でスライダーの表裏をつないでいる中央部分を切断する。（陰茎皮膚からのファスナーの除去の図を参照のこと。）スライダーは2つの部分に分かれて外れ，ファスナーを除去できるようになる。
ほかに，カッターが手元にない場合は，ファスナーと患部の組織に鉱油を大量に塗布して滑りを良くする。
10分間放置して，鉱油がスライダー部分，ファスナーの歯，および皮膚の表面に広がるのを待つ。
ファスナーをゆっくり下げるのを一度だけ試みる。この方法が成功する可能性が低いと考えられる場合，または不成功に割った場合は，次のステップに進む。ファスナーを何度も開けようとして，挟まれた組織を傷つけないこと。
別の方法として，カッターが手元にない場合は，小さな剪刀（例，眼科剪刀）でファスナーの歯と歯の間の布を切って，ファスナーの歯と歯の分離を試みる。
陰茎皮膚からのファスナーの除去
これらの方法が不成功に終わったか，実行不可能な場合：
Elliptical skin excisionまたは緊急包皮環状切除の可能性を考慮して，泌尿器科へのコンサルテーションを行う。
アフターケア
出血は局所を愛護的に圧迫することで制御する。
お湯と石鹸で患部を洗浄する。
抗菌薬軟膏（例，バシトラシン）を塗布し，滅菌ガーゼでゆるく包む。
注意点とよくあるエラー
1回目の試行でファスナーが開けられなければ，ファスナーを開ける試みは中止する。
アドバイスとこつ
容易に入手できないため，適切な頑丈なカッターをあらかじめ入手し，便利な場所に保管しておく。
