びまん性軸索損傷

執筆者:Gordon Mao, MD, Indiana University School of Medicine
レビュー/改訂 2021年 6月
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    びまん性軸索損傷は、脳の神経細胞の一部である軸索が広範囲に損傷した状態で、頭部外傷により起こる可能性があります。

    軸索は神経細胞の一部で、神経インパルスを通過させる役目をします。びまん性軸索損傷は、脳全体の軸索が損傷した状態です。

    神経細胞の典型的な構造

    神経細胞(ニューロン)は、大きな細胞本体と複数の神経線維でできていて、神経線維としては、信号を送るための長くのびた1本の突起(軸索)と、信号を受け取るための多数の枝(樹状突起)があります。軸索から送られて来た信号は、シナプス(2つの神経細胞同士の接合部のこと)を通過して別の細胞の樹状突起に伝わります。

    大きな軸索は、脳と脊髄では乏突起膠細胞に、末梢神経系ではシュワン細胞にそれぞれ包まれています。これらの細胞の膜はミエリンと呼ばれる脂肪(リポタンパク質)でできていて、この膜が軸索に何層にもしっかりと巻きついて、髄鞘と呼ばれる構造物を作っています。髄鞘は、ちょうど電気ケーブルを包んでいる絶縁体のようなものです。髄鞘がある神経では、髄鞘がない神経より神経信号がずっと速く伝わります。

    びまん性軸索損傷は通常、転倒・転落や自動車の衝突が原因で起こります。びまん性軸索損傷は、揺さぶられっ子症候群で起こることもあります。揺さぶられっ子症候群とは、乱暴に揺さぶられたり、投げつけられたりした乳幼児にみられる脳損傷をいいます。びまん性軸索損傷が起こると脳細胞が壊死し、脳が腫れる結果、頭蓋骨内の圧力(頭蓋内圧)が高まります。頭蓋骨内の圧力が高まると脳への血流が減少するため、損傷が悪化します。

    びまん性軸索損傷では、6時間以上持続する意識消失を起こします。ときに、脳損傷のその他の症状を伴うこともあります。頭蓋内圧が上昇すると、昏睡が起こることがあります。

    通常、びまん性軸索損傷はCTまたはMRI検査によって発見されます。

    びまん性軸索損傷の治療は、その他の頭部外傷の治療と同様です。例えば、医師は呼吸と血圧を十分な値に維持し、頭蓋骨内の圧力が上昇しすぎないよう対策を講じます。

    手術は役に立ちません。

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