フォン・ヒッペル-リンドウ病(VHL)

執筆者:M. Cristina Victorio, MD, Akron Children's Hospital
レビュー/改訂 2021年 9月
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やさしくわかる病気事典

フォン・ヒッペル-リンドウ病は、いくつかの臓器に良性・悪性の腫瘍が発生する、まれな遺伝性の病気です。

  • フォン・ヒッペル-リンドウ病は遺伝子の突然変異によって引き起こされます。

  • 頭痛、視覚障害、高血圧などが生じることがあり、めまいや脱力感を覚えることもあります。

  • 医師は家族歴と身体診察の結果からこの病気を疑い、画像検査やその他の検査を行って、腫瘍やその他の異常がないか確認します。

  • 腫瘍は手術で切除したり、放射線で治療したり、レーザーや凍結療法で破壊したりします。

フォン・ヒッペル-リンドウ病は病神経皮膚症候群の1つです。神経皮膚症候群は神経系(脳、脊髄、末梢神経)と皮膚が侵される病気です。

フォン・ヒッペル-リンドウ病で腫瘍が最も発生しやすい部位は、脳と眼の網膜です。これらの腫瘍は血管腫と呼ばれ、血管からできています。別の臓器には、血管腫以外の腫瘍が生じます。副腎にできる腫瘍(褐色細胞腫)や、腎臓、肝臓、膵臓にできる嚢胞などがあります。フォン・ヒッペル-リンドウ病では、年齢が高くなるにつれて腎臓がんの発生リスクが高まります。そのリスクは60歳までに70%にもなります。

フォン・ヒッペル-リンドウ病の原因遺伝子は特定されています。この病気の発症に必要なのは1つの遺伝子(どちらかの親から1つ)のみです。父親か母親がこの病気の場合、子どもに遺伝する可能性は50%です。20%の患者では、新たに生じた(親から受け継いだものではない)遺伝子変異によって、この病気が発生します。この病気は36,000人に1人の割合で発生します。

フォン・ヒッペル-リンドウ病の症状

フォン・ヒッペル-リンドウ病の症状は典型的には10~30歳で現れますが、より低い年齢で発症する場合もあります。

症状は腫瘍の大きさと部位によって決まります。小児の場合、頭痛と、めまいもしくは筋力低下が生じることがあります。視力が損なわれたり、血圧が上昇したりすることもあります。協調運動障害が起きることもあります。約10%の患児には、内耳の腫瘍がみられ、聴力が傷害されます。

通常、網膜の血管腫は症状を引き起こしませんが、大きくなると著しい視力障害が生じることがあります。網膜の血管腫があると、網膜が剥離して黄斑(網膜の中心部)やその下部に水分が貯留したり、眼圧が高まって(緑内障になって)視神経が損傷したりします。

治療を行わないと、失明、脳損傷、または死亡に至ることがあります。死因は通常、脳の血管腫や腎臓がんの合併症です。

フォン・ヒッペル-リンドウ病の診断

  • 画像検査

  • 眼の診察

  • 遺伝子検査

医師は問診で患者の家族にフォン・ヒッペル-リンドウ病の人がいないかを確かめ、身体診察を行います。

この病気を示唆する所見がみられる場合、以下に示す様々な検査を行って、腫瘍やその他の異常がないか確認します。

以下のいずれかに該当する場合、フォン・ヒッペル-リンドウ病と診断されます。

  • フォン・ヒッペル-リンドウ病の家族歴があり、かつ、特徴的な腫瘍が眼、脳、脊椎、副腎、腎臓、または膵臓に1つ以上ある

  • フォン・ヒッペル-リンドウ病の家族歴が不明の人において、フォン・ヒッペル-リンドウ病に特徴的な腫瘍が2つ以上ある

医師は腫瘍を1つ見つけたら、ほかにもないか探します。

まだ診断に確信がもてない場合、医師は、VHL遺伝子の異常を同定して診断を確定するために、分子遺伝学に基づいた染色体検査を行います。

その人でVHL遺伝子の異常が同定された場合は、遺伝子検査を行って家族に異常な遺伝子がないか調べます。

フォン・ヒッペル-リンドウ病の治療

  • 手術またはときに放射線療法

  • 網膜の血管腫には、レーザー治療または凍結療法

  • ときにベルズチファンという薬

手術が可能なら、腫瘍は永続的な損傷が起こる前に切除します。手術の代わりに、腫瘍に対する高線量放射線療法を行うこともあります。副腎に腫瘍がある場合は、血圧をコントロールするための薬も必要になることがあります。進行した腎臓がんがある場合は、ほかの薬物治療を行うことがあります。

ベルズチファンは、すぐには手術で切除する必要がない腎臓がん、脳や脊椎の腫瘍、または膵臓の腫瘍がある成人に現在使用することができます。この薬は腫瘍を縮小させ、進行を止めます。病状が悪化するか、副作用が非常に重度になるまでは使用できます。

一般的には、網膜の血管腫はレーザー治療や凍結療法で破壊します。これらの治療なら、視力を維持しやすくなります。

新たな異常のスクリーニング

フォン・ヒッペル-リンドウ病では、新たな合併症や腫瘍が生じる可能性があるため、患者は生涯を通じて綿密なモニタリングを受け続けなければなりません。

フォン・ヒッペル-リンドウ病と診断された人には、スクリーニングのための以下の診察や検査を1年毎または2年毎に繰り返し行い、さらに症状が現れた際にも行います。

  • 身体診察

  • 眼腫瘍のスクリーニングのための眼の検査

  • 褐色細胞腫のスクリーニングのための血圧測定、尿検査、および血液検査

  • 腫瘍のスクリーニングのための脳と脊髄のMRI検査

  • 内耳腫瘍のスクリーニングのための聴覚検査

  • 腎臓がん、褐色細胞腫、および膵臓腫瘍のスクリーニングのための腹部のMRI検査または超音波検査

フォン・ヒッペル-リンドウ病と診断されたことはないが異常遺伝子をもっている人、または検査を受けたことはないが親または兄弟姉妹にフォン・ヒッペル-リンドウ病患者がいる人には、血圧のモニタリングと視覚、聴覚、および眼の問題がないか調べるために診察を毎年行います。

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