小児と青年における強迫症および関連症群

執筆者:Josephine Elia, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2021年 4月
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強迫症(強迫性障害とも呼ばれます)は、望んでいない疑念、アイデア、イメージ、衝動などが繰り返し頭の中に生じること(強迫観念)を特徴とし、その強迫観念によって起こる不安を軽減するために特定の行動(強迫行為)を繰り返さざるを得なくなる病気です。強迫観念と強迫行為によって、学校生活や様々な対人関係に多大な苦しみが生じ、支障をきたします。

  • 強迫観念とは、多くの場合、自分または愛する人が傷つけられる(例えば、病気にかかる、汚染される、死亡する)という心配や恐怖です。

  • 強迫行為とは、疑いを確かめるため(例、ドアにちゃんと鍵がかかっているか何回も確かめる)、何か悪いことが起こらないようにするため、あるいは自らの強迫観念により生じる不安を軽減するために行わなければならないと患者が感じる、度を過ぎた、繰り返し行う目的のある行動です。

  • 治療には、しばしば行動療法薬物療法が用いられます。

小児と青年における不安症の概要と成人における強迫症も参照のこと。)

平均すると、強迫症は19~20歳ごろから始まりますが、14歳未満で始まる症例も約25%以上を占めています。たいていの場合、成人に達すると強迫症は軽くなります。

強迫症には次のようないくつかの関連症群が含まれます。

  • 醜形恐怖症(身体醜形障害とも呼ばれる):外見に関する想像上の欠陥(鼻や耳の大きさなど)のことで頭がいっぱいになっているか、いぼなどの小さな異常を過剰に気に病むようになる

  • ためこみ:実際の価値とは無関係に物を取っておくことの必要性を強く感じ、物を手放すことに耐えられない

  • 抜毛症(毛髪を引っ張る

  • 皮膚むしり症

一部の小児(特に男児)では、チック症もみられます。

強迫症は遺伝要因と環境要因によって引き起こされると考えられています。遺伝子を特定する研究が行われています。

突然(一夜にして)発症する強迫症の少数のケースでは感染症が関与していることが、科学的にある程度証明されています。レンサ球菌が関与している場合は、小児自己免疫性溶連菌関連性神経精神障害(PANDAS:Pediatric Autoimmune Neuropsychiatric Disorder Associated with Streptococcus)と呼ばれます。その他の感染症(肺炎マイコプラズマ[Mycoplasma pneumoniae]感染症など)が関与している場合には、小児急性発症神経精神症候群(PANS:Pediatric Acute-onset Neuropsychiatric Syndrome)と呼ばれます。感染症と強迫症との関連についての研究が続けられています。

症状

強迫症の症状は徐々に進んでいくのが典型的で、大半の小児は最初のうちは症状を隠すことができます。

多くの場合、小児は傷つけられるという心配や恐怖(例えば、致死的な病気にかかるとか、自分自身や他者を傷つけるなど)で頭がいっぱいになっています。このような小児は、心配や恐怖との釣り合いを保つため、もしくは心配や恐怖を打ち消すために、何かをしなければならないと思い込んでいます。例えば、以下のことを繰り返し行うことがあります。

  • アラームを解除したか、もしくはドアの鍵をかけたかを確かめに行く

  • 過剰に手を洗い、荒れてひび割れした手を呈す

  • 様々な物を数える(階段など)

  • 椅子に座ったり立ち上がったりする

  • 特定の物を、常にきれいにして、きちんと並べている

  • 学校の課題を何度も訂正する

  • 食べものをきまった回数だけ噛む

  • 特定のものに触ろうとしない

  • 何度も安心させてもらいたがる(十数回の場合もあれば、多いときには1日に100回以上)

強迫観念と強迫行為に論理的なつながりがあることもあります。例えば、病気にかかりたくないという強迫観念がある小児は、かなり頻繁に手を洗います。しかし、まったく関連のないこともあります。例えば、祖父が心臓発作を起こさないようにと、50まで数を何度も数える子どももいます。小児自身が強迫行為に抵抗したり、強迫行為の実行を制止されたりすると、小児は極度の不安に陥り、ひどく心配します。

たいていの小児は、何かしら自分の強迫観念や強迫行為が異常であると思っており、自分でも恥ずかしいと思っていることも多いため、強迫行為を隠そうとしますが、自分の強迫観念や強迫行為が正当なものであると固く信じている小児もいます。

強迫症は約5%の小児が数年で、約40%が成人期の初期までに自然に治ります。それ以外の小児では、強迫症が慢性化する傾向がありますが、治療を続けることで正常な生活機能を取り戻せる場合がほとんどです。治療が効果を示さない小児の約5%では、小児の生活は依然として著しく損なわれたままです。

診断

  • 症状

強迫症は症状に基づいて診断されます。強迫症の小児が自分の強迫観念と強迫行為を医師に話せるほどに医師を信頼できるようになるには、何回かの受診が必要になります。

強迫症と診断するには、強迫観念や強迫行為が多大な苦痛を引き起こし、その小児の日常生活に支障をきたすものでなければなりません。

医師が感染症(PANDASやPANSなど)を疑う場合、通常は専門医に相談します。

強迫症を早発型精神病や自閉スペクトラム症、複雑性チック症などの他の精神障害と鑑別する際には、細心の注意を払う必要があります。

治療

  • 認知行動療法

  • ときに薬剤

認知行動療法を受けることができ、本人に行動療法を受ける気があれば、行動療法だけで十分な場合もあります。

必要な場合には、認知行動療法と選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれる抗うつ薬の一種を併用する治療が通常、強迫症に対して有効となります。この併用治療により、たいていの小児では日常生活への支障がなくなります。選択的セロトニン再取り込み阻害薬が無効に終わった場合は、別の種類の抗うつ薬であるクロミプラミンが処方されることがあります。しかし、この薬には重篤な副作用があります。これらで効果がない場合は、ほかの選択肢があります。

治療の効果がない場合、集中的な行動療法を実施でき、薬物療法の管理が可能な施設で入院治療を受ける必要がある場合もあります。

レンサ球菌感染症(PANDAS)や他の感染症(PANS)が関与している場合、通常は抗菌薬を使用します。必要であれば、認知行動療法と強迫症の治療に一般的に使用される薬剤が用いられます。

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