小児の脱水

執筆者:Christopher P. Raab, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University
レビュー/改訂 2021年 8月 | 修正済み 2022年 9月
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やさしくわかる病気事典

脱水は体からの水分の喪失であり、通常は嘔吐または下痢が原因です。

  • 脱水は、著しい量の体内の水分と、様々な程度で電解質が失われると生じます。

  • 症状には、のどの渇き、活動性の低下、唇や口の中の乾燥、尿量の減少などがあります。

  • 重度の脱水は生命を脅かすことがあります。

  • 脱水の治療には水分と電解質を口から与え、重篤な場合には静脈内投与します。

脱水は、摂取する水分よりも失う水分が多い場合に起こります。電解質という物質も失われます。電解質は血流中と細胞内のミネラルで、生命に不可欠なものです。ナトリウムカリウム、塩化物、重炭酸塩などが電解質の例です。

原因

脱水は通常、以下が原因です。

脱水のあまり一般的でない原因は、以下のものです。

  • 小児期によくみられる病気にかかっている場合や、新生児の母乳哺育がうまくいっていない場合などで十分な水分を摂取していない

ただし、嘔吐、下痢、またはその両方があっても、必ずしも脱水が起こるわけではありません。

症状

脱水を起こした乳児に以下がみられる場合、すぐに治療が必要です。

  • 頭部の柔らかい部分がへこんでいる

  • 両目がくぼんでいる

  • 泣いているのに涙が出ない

  • 口の中が乾燥している

  • 尿の量が少ない

  • 覚醒レベルおよび活動性が低下している(嗜眠)

軽度の脱水では典型的に口の中や唇が乾燥し、のどの渇きが強くなり、小児の排尿回数が少なくなることもあります。

中等度の脱水では、相互に関わることや遊びの量が減り、口の中が乾燥し、排尿回数が少なくなります。中等度から高度の脱水では、心拍数の上昇およびふらつきがみられる可能性があります。

重度の脱水では、うとうとした状態(嗜眠)になり、これはすぐに医師の評価を受けるか、救急医療機関に搬送される必要がある徴候です。涙は出なくなります。皮膚が青みがかった色(チアノーゼ)になり、呼吸が速くなります。ときに、脱水によって、血液中の塩分濃度が異常に低くなったり高くなったりすることがあります。この塩分濃度の変化は、脱水の症状や嗜眠状態を悪化させる可能性があります。重症例では、けいれん発作昏睡が生じたり、脳の損傷が起こり死亡することがあります。

診断

  • 医師による診察

  • ときに血液検査と尿検査

医師は、小児の診察時に、体重が減少したかどうかを確認します。たった数日の間に体重が減少した場合は、脱水によるものである可能性が非常に高くなります。どの程度体重が減少したかがもし分かれば、脱水の重症度(軽度、中等度、または重度)を判定する上で役立ちます。

中等度から重度の脱水の小児では通常、血液検査と尿検査を行い、体内の電解質濃度、脱水の程度、および必要な補液の量を把握します。

治療

  • 失われた水分の補給

脱水は、ナトリウムや塩化物などの電解質を含む水分を与えることで治療します。脱水が軽度であれば、一般に水分は口から与えます。特別な経口補水液も利用できますが、軽度の下痢または嘔吐のみがある小児では、必ずしも必要ではありません。どの年齢の小児でも、嘔吐による脱水には、まずは水分を少量ずつ頻回に与えることを約10分おきに繰り返すことで、その後の治療効果が高まります。小児が飲んだ水分を吐かないようになったら、与える水分の量を徐々に増やして、与える回数を減らします。下痢が唯一の症状であれば、1回に与える水分をより多めに、回数をより少なめにします。嘔吐と下痢の両方がみられる場合は、電解質を含む水分を少量ずつ頻回に与えます。この治療により下痢が増えた場合は、静脈からの水分補給(輸液)のために小児の入院が必要になることがあります。

乳児や小児が水分をまったく受けつけない場合、またはぐったりするなどの深刻な脱水の徴候が現れた場合は、静脈からの水分および電解質補給や、鼻から胃または小腸に挿入したチューブ(経鼻胃管)を通して電解質溶液を与えるなどの集中治療が必要になることがあります。

乳児

乳児の脱水は、電解質を含む液体を飲ませることで治療します。母乳は乳児が必要とする水分と電解質のすべてを含んでいるため、可能なときにはこれを与えるのが最善の治療です。母乳で育てていない乳児の場合は、経口補水液(ORS)を与えます。ORSには、一定量の糖分と電解質が含まれています。ORSには水に混ぜる粉末のものとあらかじめ混ぜられている液体のものとがあり、薬局またはスーパーマーケットで処方せんなしで購入することができます。小児に与えるORSの量は体重によりますが、一般に小児の体重1キログラムに対しておよそ100~165ミリリットルのORSを24時間で与えます。したがって、9キログラムの小児には24時間で900~1500ミリリットル与えることになります(10キログラムの小児は24時間で1000~1650ミリリットルを摂取する必要があります)。

年長児

1歳以上の小児には、透明な出汁やスープ、透明な炭酸飲料、ゼラチン、水で2倍に薄めたジュース、アイスキャンデーなどを1口ずつ与えます。真水、薄めていないジュース、スポーツドリンクは、どの年齢でも脱水の治療には理想的ではありません。これらは塩分の含有量が非常に低い上に、ジュースには多くの糖分のほか、消化管を刺激する成分が多く含まれているからです。ORSがこの代わりになります(特に中等度の脱水に対して)。12~24時間、小児が水分摂取に耐えられれば、通常の食事を再開します。

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