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水痘(水ぼうそう)

執筆者:

Kenneth M. Kaye

, MD, Harvard Medical School

レビュー/改訂 2021年 9月
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やさしくわかる病気事典
本ページのリソース
  • 水痘はほとんどが小児に起こりますが、水痘ワクチンのおかげで発生数は大幅に減少しています。

  • 発疹が現れる前に、軽い頭痛、中等度の発熱、食欲低下、全身のけん怠感がみられます。

  • 診断は症状(特に発疹)に基づいて下されます。

  • ほとんどの小児は完全に回復します。しかし、容態が著しく悪化して死亡するケースもあります。

  • 定期予防接種が有効です【訳注:日本では2014年10月から定期接種が開始されました】。

  • 治療の目的は通常、症状を抑えることだけです。

1995年にワクチン接種が始まるまでは【訳注:日本では2014年に定期接種が開始されました】、90%の小児が15歳になるまでに水痘を発症していました。ワクチン接種により、現在では年間の患者数が約90%減少しました。しかしいくつかの国では、このワクチンが利用できないか、定期接種すべき小児ワクチンとして指定されていません。

水痘患者は、発疹出現の2日前から最後の水疱がかさぶたになるまでは、ほかの人に感染させる可能性があります。

知っていますか?

  • 水痘患者は、発疹出現の2日前から最後の水疱がかさぶたになるまでは、ほかの人に感染させる可能性があります。

免疫機能 免疫系の概要 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守る仕組みとして、免疫系が備わっています。侵入物としては以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕虫[ぜんちゅう]など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む が正常な小児では、水痘が重症化することはほとんどなく、たいていは皮膚と口の中がただれるだけです。しかし、ときにはウイルスが肺、脳、心臓、または肝臓に感染することもあります。そうした重篤な感染症は、新生児や成人、または 免疫機能が低下 免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む している人(HIV感染 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 症を患っている人や、 免疫機能を抑制する薬 免疫不全を引き起こす可能性がある主な薬剤 免疫不全を引き起こす可能性がある主な薬剤 または高用量のコルチコステロイドを使用している人など)によくみられます。

水痘にかかったことのある人は免疫ができ、再度かかることはありません。しかし、水痘に最初に感染した後も水痘帯状疱疹ウイルスは不活性の(潜伏)状態で体内に残っており、活動を再開して 帯状疱疹 帯状疱疹 帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは、 ウイルス感染症による痛みのある皮疹で、水痘を引き起こす水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化することで生じます。 ウイルスが再活性化する原因は分からないことが多いのですが、病気や薬によって免疫機能が低下したときに起こる場合があります。 帯状疱疹では痛みを伴う水疱の発疹が現れ、患部に慢性痛が生じることもあります。 典型的な水疱が皮膚に帯状に現れると、帯状疱疹の診断が下されます。... さらに読む 帯状疱疹 を起こすことがあります。高齢者には 帯状疱疹ワクチン 帯状疱疹ワクチン 帯状疱疹ワクチンには2種類あります。新型の帯状疱疹ワクチンは、予防効果が高く、効果の持続期間も長いため、旧型の帯状疱疹ワクチンより好んで使用されます。 新型のワクチンには、ウイルスの感染性をもたない部分だけが含まれています(組換えワクチンと呼ばれます)。このワクチンには生きたウイルスは含まれていません。 旧型の帯状疱疹ワクチンには、弱毒化された生きたウイルスが含まれています(弱毒生ワクチンと呼ばれます)。現在、米国では使用できなくなって... さらに読む が利用できます。このワクチンは、それ以降に帯状疱疹が発生するリスクを低下させます。

水痘(水ぼうそう)の感染経路

水痘は以下の経路で感染します。

  • 水痘帯状疱疹ウイルスを含む飛沫を吸い込む

  • 水痘または帯状疱疹によって生じた発疹に触れる

  • 妊婦から胎児に感染する

水痘の症状

水痘の症状は感染後7~21日で現れます。具体的には以下のものがあります。

  • 軽度の頭痛

  • 中等度の発熱

  • 食欲減退

  • 全身のだるさ(けん怠感)

年少の小児ではこれらの症状が現れないことが多いのですが、成人ではしばしば重い症状が出ます。

最初の症状が現れてから約24~36時間後に、平坦で赤い小さな斑点状の発疹が出現します。通常、体幹と顔に始まり、その後腕と脚に現れます。発疹が数個しか出ない人もいますが、頭皮や口の中を含め、全身の至るところにできる人もいます。

6~8時間以内にそれぞれの発疹が盛り上がります。そして赤みを帯びた皮膚を背景に、かゆみを伴い中に液体が入った丸い水疱ができ、最後にはかさぶたになります。数日間にわたって発疹ができ続け、次々にかさぶたに変わっていきます。水痘の最大の特徴は、発疹が次から次へと続発し、どの領域でも、様々な状態の斑がみられることです。ごくまれに、発疹に細菌が感染し、重度の皮膚感染症(蜂窩織炎 蜂窩織炎 蜂窩織炎(ほうかしきえん)は、皮膚とそのすぐ下の組織に生じる、広がりやすい細菌感染症です。 この感染症の最も一般的な原因はレンサ球菌またはブドウ球菌です。 患部の皮膚に発赤、痛み、圧痛がみられるほか、しばしば皮膚を触ると熱く感じたり、一部の人では発熱や悪寒が生じたり、より重篤な症状が現れたりすることもあります。 医師の診察や、ときに臨床検査の結果に基づいて診断されます。 この感染症の治療には抗菌薬が必要です。 さらに読む 蜂窩織炎 または 壊死性筋膜炎 皮膚の壊死性感染症 皮膚の壊死性感染症は、感染した部分の皮膚と組織が死んでしまうこと(壊死)を特徴とする重症の蜂窩織炎の一種で、壊死性 蜂窩織炎と壊死性筋膜炎がこのカテゴリーに含まれます。 患部の皮膚は赤くなって触れると熱く感じられ、ときに腫れることもあり、また皮膚の下に気泡が生じることがあります。 通常、患者は強い痛みを感じて非常に具合が悪くなり、高熱が出ます。 医師の診察、X線検査および臨床検査の結果に基づいて診断されます。... さらに読む 皮膚の壊死性感染症 )を引き起こすことがあります。

新しい発疹は通常5日目までにはできなくなり、ほとんどが6日目までにかさぶたになって、大半は20日以内に消えていきます。

ときおり、ワクチン接種を受けた小児が水痘になることもあります。こうした小児では、通常は発疹が軽く、発熱もあまりみられず、より短い期間で治ります。しかし、潰瘍に触れると感染が広がる場合があります。

口の中にできた発疹は、すぐに破れてただれ(潰瘍)になり、ものを飲み込むときに痛むことがよくあります。この、痛みのあるただれは、まぶた、上気道、直腸、腟にもできます。一番状態の悪い時期は通常、4~7日間続きます。

合併症

水痘による合併症のリスクは、新生児、成人、免疫機能が低下している人、特定の病気をもつ人で高くなります。

肝臓の炎症や出血の問題が起こることもあります。

妊婦が水痘を患った場合は、 肺炎 肺炎の概要 肺炎は、肺にある小さな空気の袋(肺胞)やその周辺組織に起きる感染症です。 肺炎は、世界で最も一般的な死因の1つです。 重篤な慢性の病気がほかにある患者において、肺炎はしばしば最終的な死因となります。 肺炎の種類によっては、ワクチンの接種によって予防できます。 米国では、毎年約400~500万人が肺炎を発症し(... さらに読む 肺炎の概要 などの重篤な合併症のリスクが高く、死亡することもあります。水痘は胎児に伝染する可能性があり、妊娠の第1または第2トリメスター前半【訳注:第1トリメスターは日本でいう妊娠初期に、第2トリメスターは妊娠中期にほぼ相当】に水痘を発症した場合、特にそのリスクが高まります。そうした感染が起こると、皮膚の瘢痕(はんこん)や先天異常、低出生体重につながる場合があります。

水痘の診断

  • 医師による評価

  • まれに、血液検査と潰瘍から採取したサンプルの検査

水疱の発疹や他の症状が非常に特徴的であるため、医師は通常、間違いなく診断できます。

水痘の予後(経過の見通し)

もともと健康な小児は、ほぼ全員が問題なく水痘から回復します。定期予防接種が開始される前は、米国で1年に約400万人が水痘を発症し、そのうち約100~150人が水痘の合併症によって毎年死亡していました。

成人が水痘を発症すると、重症になりやすく、死亡のリスクが高くなります。

水痘の予防

  • ワクチン接種

  • 場合により免疫グロブリン製剤

ワクチン接種

米国では、小児に対して水痘帯状疱疹ワクチンが定期接種されています。小児は2回の接種を受けます。1回目は12~15カ月時、2回目は4~6歳時に接種されます(乳児にゅうじ小児しょうに青年せいねんのための定期予防接種ていきよぼうせっしゅ 乳児にゅうじ小児しょうに青年せいねんのための定期予防接種ていきよぼうせっしゅ <ruby >乳児<rt >にゅうじ</rt></ruby>、<ruby >小児<rt >しょうに</rt></ruby>、<ruby >青年<rt >せいねん</rt></ruby>のための<ruby >定期予防接種<rt >ていきよぼうせっしゅ</rt></ruby> )。

より年長の小児や成人(特に妊娠可能年齢の女性と慢性疾患を抱えている成人)であっても、水痘にかかったことがなく、ワクチンを接種されたことがない場合には接種することがあります。その場合、4~8週間の間を空けて2回ワクチンを接種します。

以下に当てはまる人はワクチン接種を受けてはいけません。

  • 高用量のコルチコステロイドを使用している人など、免疫機能が低下している人

  • 定期的にアスピリンを服用している小児

  • 妊婦やワクチン接種から1~3カ月以内に妊娠を予定している女性

  • ワクチン接種の直前に多少の体調の悪さを感じている人

水痘(水ぼうそう)の感染予防

水痘にかかったことのない人への感染予防には、感染者の隔離が役立ちます。最後の水疱がかさぶたになるまで、小児も成人も学校や仕事に行ってはいけません。

水痘ウイルスにさらされた後の対応

合併症の起こるリスクが高い人が、水痘にかかっている人と接触した場合には、水痘ウイルスに対する抗体(水痘帯状疱疹免疫グロブリン)を投与することがあります。具体的には以下の人が該当します。

  • 白血病の人と免疫機能が低下している人

  • 水痘にかかったことがなく、ワクチンを受けたこともない妊婦

  • 母親が出産の5日前から2日後までに水痘を発症した新生児

水痘帯状疱疹免疫グロブリンによる治療は、水痘を予防し、かかったとしても重症になりにくくする効果が期待できます。

健康な人が水痘にさらされ、ワクチンを受けたことがない場合、3~5日以内にワクチンを接種すれば、水痘の予防や重症度の軽減に役立ちます。

水痘の治療

  • 軽症の人には、症状を軽減する処置

  • 中等度から重度の症状を発症するリスクがある人には、抗ウイルス薬

小児の軽症の水痘では、症状に対する治療だけで十分です。皮膚に湿布をあてると、強いこともあるかゆみを和らげたり、かくことを予防したりするために役立ちます。患部をかいてしまうと、感染が広がったりあとが残ったりする可能性があります。細菌感染症のリスクを小さくするために、皮膚を石けんと水で頻繁に洗う、手を清潔に保つ、引っかき傷をつくらないように爪を切る、衣類は清潔で乾いた状態に保つといった行動を心がけます。かゆみがひどい場合は、抗ヒスタミン薬などのかゆみを和らげる薬を内服することがあります。また、コロイド状のオートミール浴が役立つこともあります。

細菌感染症が起きた場合は、抗菌薬が必要になることがあります。

免疫機能が低下している1歳以上の人には、アシクロビルを静脈内投与することがあります。

抗ウイルス薬は症状の重症度を抑え、持続期間を短縮することができ、可能であれば発症から24時間以内に投与すべきです。

妊婦は水痘による重篤な合併症が発生するリスクが高いため、水痘の妊婦にはアシクロビルまたはバラシクロビルを投与することを推奨する専門家もいます。

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