慢性肉芽腫症の患者では、皮膚、肺、リンパ節、口、鼻、尿路、腸の長引く感染症がみられます。
この病気の診断は、血液検査の結果に基づいて下されます。
治療では、感染症を予防し、感染症にかかる回数や重症度を軽減する薬を用いるほか、輸血と幹細胞移植を行います。
(免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患の概要 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む も参照のこと。)
慢性肉芽腫症は 原発性免疫不全症 原発性免疫不全症 免疫不全疾患では、免疫系が正常に働かないことにより、通常に比べて感染症を頻繁に発症したり、繰り返したり、感染症が重症化したり、長引いたりします。 免疫不全疾患は通常、薬の使用や、がんなどの長期間に及ぶ重篤な病気が原因で発症しますが、遺伝性の場合もあります。 この病気になると感染症を繰り返すだけでなく、普通の人がかからないような感染症が起き... さらに読む の一種です。通常、 X連鎖劣性遺伝 単一遺伝子疾患の遺伝 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む 疾患として遺伝します。X連鎖とは、この病気がX(性)染色体上の遺伝子の突然変異に起因することを意味します。X連鎖劣性遺伝疾患は男児にのみ発生します。慢性肉芽腫症は、X連鎖ではなく、 常染色体劣性遺伝疾患 劣性遺伝疾患 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む として遺伝することもあります。常染色体劣性遺伝疾患が遺伝するには、両親からその病気の遺伝子を1つずつ受け継いで2つそろう必要があります。
通常、食細胞(白血球 免疫系の構成要素 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守る仕組みとして、免疫系が備わっています。侵入物としては以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕虫[ぜんちゅう]など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む の種類で、好中球、好酸球、単球、マクロファージを含む)は微生物を取り込んで殺します。しかし、慢性肉芽腫症では、食細胞は細菌や真菌を取り込みはするものの、これらを殺すための物質(過酸化水素、スーパーオキシドなど)をつくることができません。
慢性肉芽腫症の症状
慢性肉芽腫症の症状は、通常は小児期の早い時期に現れますが、まれに青年期までみられないこともあります。皮膚、肺、リンパ節、口、鼻、尿路、腸に慢性感染症が起こります。骨の感染症(骨髄炎 骨髄炎 骨髄炎は、通常は細菌、抗酸菌、または真菌によって引き起こされる骨の感染症です。 細菌、抗酸菌、または真菌が血液を介して、あるいは近くの感染組織や汚染された傷口から(こちらの場合が多い)広がって、骨に感染することがあります。 患者には骨の一部の痛み、発熱、体重減少がみられます。 血液検査と画像検査を行い、骨のサンプルを採取して検査します。 抗菌薬が数週間投与され、感染が起きた骨を除去するために手術が必要になることもあります。 さらに読む )がみられることもあります。肛門の周りと肺や肝臓の内部に膿瘍(膿がたまった空洞)ができます。
リンパ節 リンパ系の概要 リンパ系は 免疫系の極めて重要な一部です。具体的には胸腺、骨髄、脾臓、扁桃、虫垂、小腸にあるパイエル板など、感染やがんに対抗する特殊な白血球を作り出して処理する臓器や組織が含まれます。 静脈系と同様に、リンパ系も全身にわたる体液循環の経路になっています。リンパ系は以下の要素で構成されています。... さらに読む は、中に細菌がぎっしり詰まるために大きくなります。リンパ節を覆う皮膚の表面が破れると、膿が排出されます。
肝臓や脾臓が大きくなります。
小児の成長が遅れる場合もあります。
慢性肉芽腫症の診断
血液検査
ときに遺伝子検査
慢性肉芽腫症を診断するには、血液検査を行って微生物に対する食細胞の活性を測定します。
この病気を引き起こす特定の遺伝子変異の有無を調べる遺伝子検査を行います。
慢性肉芽腫症の治療
感染症を予防、治療するための抗菌薬と抗真菌薬
インターフェロンガンマ
顆粒球輸血
幹細胞移植
感染を予防するために、通常はトリメトプリム/スルファメトキサゾールという抗菌薬の配合剤を生涯にわたり定期的に内服します。真菌感染予防に役立てるために、通常は抗真菌薬(イトラコナゾールなど)も定期的に内服します。
インターフェロンガンマ(免疫系を調節する薬)を週3回注射すれば、感染症が起こる回数を減らし、かかった場合も軽症にとどめることができます。
通常の治療法でほかに有効なものがない場合は、顆粒球輸血(顆粒球と呼ばれる食細胞を体内に注入する)により救命できることがあります。顆粒球は数種の食細胞を含む白血球の一種です。
幹細胞移植 造血幹細胞移植 造血幹細胞移植とは、健康な人から幹細胞(未分化細胞)を採取し、重篤な血液疾患がある人にそれを注射することです。 ( 移植の概要も参照のこと。) 幹細胞は未分化の細胞で、分裂しながら、より分化した他の細胞に変わっていきます。幹細胞は以下のものから採取することができます。 静脈からの採血 骨髄(骨髄移植) さらに読む により治癒する慢性肉芽腫症の患者もいます。組織型と血液型が類似した近親者が最善のドナーです。ドナーになる意思があれば、組織型と血液型が患者と一致するかどうか判定する検査をすることが可能です。移植前に、免疫系を抑制する薬(免疫抑制薬 免疫系の抑制 移植とは、生きて機能している細胞、組織、臓器を体から摘出して、同じ人間の別の部分、または別の人間の体に移し替えることをいいます。 最もよく行われている移植は 輸血です。毎年、何百万人もが治療として輸血を受けます。しかし、一般には移植というと臓器(実質臓器移植)や組織の移植を指します。... さらに読む )を投与して移植の拒絶反応の予防に役立てます。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
免疫不全財団:慢性肉芽腫症とその他の食細胞障害(Immune Deficiency Foundation: Chronic granulomatous disease and other phagocytic cell disorders):慢性肉芽腫症の診断と治療に関する情報を含む一般的な情報