脱力感や疲労感がしばしばみられます。
血液検査で鉄の量を測定することにより診断されます。
治療は通常、鉄に結合して体内から除去する薬を用いて行われます(キレート療法)。
鉄過剰症を引き起こす遺伝性疾患の ヘモクロマトーシス ヘモクロマトーシス ヘモクロマトーシスは、鉄が過剰に吸収される遺伝性疾患で、体内に鉄が蓄積され、臓器に損傷を与えます。 米国には、100万人以上のヘモクロマトーシス患者がいます。男性の方が女性より多く罹患します。致死的となることもありますが、たいていは治療可能です。( 鉄過剰症の概要も参照のこと。) 鉄は摂取する食事から吸収されます。ほとんどの鉄は赤血球に収容されます。 この疾患では鉄が体のあらゆる場所に蓄積して損傷を与えます。... さらに読む よりも、重度の合併症が起こる可能性は低くなります。(鉄過剰症の概要 鉄過剰症の概要 鉄は生命になくてはならないものです。したがって、人間の体では食物からの鉄の吸収や、赤血球からの鉄の再利用が厳密にコントロールされています。毎日少量の鉄が失われており、たとえ健康的なメニューでも、食事中に含まれる鉄の量はほんのわずかです。そのため、体内に過剰な鉄が蓄積されることはまれですが、鉄が過剰に蓄積される(鉄過剰症)原因としては以下の... さらに読む も参照のこと。)しかし、心臓、肝臓、内分泌器官に合併症がみられる場合もあります。
二次性鉄過剰症の原因
二次性鉄過剰症は通常、赤血球が作られるのを妨げる疾患で発生し、その例として以下のものが挙げられます。
ヘモグロビンの構造や機能の遺伝性疾患(例えば、 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症 鎌状赤血球症は、鎌状(三日月形)の赤血球と、異常な赤血球の過剰破壊による慢性貧血を特徴とする、遺伝性のヘモグロビン(酸素を運搬する赤血球内のタンパク質)の遺伝子異常です。 必ず貧血がみられ、ときとして黄疸がみられます。 貧血、発熱、息切れなどが悪化し、長管骨、腹部、胸部などに痛みを伴うと、鎌状赤血球症の疼痛発作(症状が急速に悪化する危険な状態)が疑われます。 電気泳動法と呼ばれる特別な血液検査を使用して、鎌状赤血球症かどうかを判定するこ... さらに読む 、 サラセミア サラセミア サラセミアは、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球中のタンパク質)を形成する4つのアミノ酸の鎖のうち1つの鎖の生産が不均衡なために生じる遺伝性疾患群です。 サラセミアの種類によって症状が異なります。 黄疸のほか、腹部の膨満感や不快感を訴える人もいます。 通常、診断には特別なヘモグロビン検査が必要です。 サラセミアが軽い場合は、ほとんど治療を必要としませんが、重症になれば、骨髄移植が必要になることもあります。 さらに読む 、 鉄芽球性貧血 貧血の概要 貧血とは、赤血球の数が少ない状態をいいます。 赤血球には、肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしているヘモグロビンというタンパク質が含まれています。赤血球数が減少すると、血液は酸素を十分に供給できなくなります。組織に酸素が十分に供給されないと、貧血の症状が現れます。... さらに読む )
異常に赤血球が破壊される疾患(遺伝性球状赤血球症やピルビン酸キナーゼ欠損症などの出生時から存在している溶血性貧血― 表 貧血の主な原因の詳細 貧血の主な原因の詳細 を参照)
このような疾患では、体に吸収される鉄の量が増加することがあります。しかし、新たな赤血球を作り出すことが困難なため、すべての鉄を体が常に使用できるとは限りません。そのような場合に鉄過剰症が発生する可能性があります。
以下のような形で鉄が過剰に体内に入った場合にも、鉄の蓄積が起こります。
量が過剰または期間が長すぎる鉄補充療法
男性と閉経後女性は、通常は鉄剤を必要としません。鉄剤を服用すると、体内に過剰な鉄が入りますが、通常は危険になるほどではありません。
二次性鉄過剰症の症状
鉄過剰症が軽度であれば、通常症状はありません。軽度でない場合には、典型的には脱力感や疲労感がみられます。重度の鉄過剰症では、以下にあげるような ヘモクロマトーシスと同様の症状 症状 ヘモクロマトーシスは、鉄が過剰に吸収される遺伝性疾患で、体内に鉄が蓄積され、臓器に損傷を与えます。 米国には、100万人以上のヘモクロマトーシス患者がいます。男性の方が女性より多く罹患します。致死的となることもありますが、たいていは治療可能です。( 鉄過剰症の概要も参照のこと。) 鉄は摂取する食事から吸収されます。ほとんどの鉄は赤血球に収容されます。 この疾患では鉄が体のあらゆる場所に蓄積して損傷を与えます。... さらに読む がみられます。
皮膚が黒っぽくなる
関節の痛み
二次性鉄過剰症の診断
血液検査
二次性鉄過剰症は、以下の成分の血中濃度を測定する検査によって診断されます。
鉄
フェリチン(鉄を蓄えるタンパク質)
トランスフェリン(赤血球中に鉄が存在しない場合に血液中で鉄を運ぶタンパク質)
二次性鉄過剰症の治療
血液の除去またはキレート療法
治療の目標は、体内の鉄の量を減らすことです。一部では、血液を除去する治療(瀉血[しゃけつ])が行われます。しかし、二次性鉄過剰症の場合は 貧血 貧血の概要 貧血とは、赤血球の数が少ない状態をいいます。 赤血球には、肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしているヘモグロビンというタンパク質が含まれています。赤血球数が減少すると、血液は酸素を十分に供給できなくなります。組織に酸素が十分に供給されないと、貧血の症状が現れます。... さらに読む も多くみられます。瀉血により貧血が悪化するため、その場合は鉄 キレート療法 キレート療法 生物学に基づく実践の1つであるキレート療法は、特定の分子が金属原子(カルシウム、銅、鉄、鉛など)に結合する化学反応を原理としています。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤は金属と結合することで、それが体内から排泄されるようにします。このような薬剤は、 鉛中毒、 鉄の過剰摂取やその他の重金属中毒の治療のために、通常医療でよく使用されます。( 統合、補完、代替医療の概要も参照のこと。)... さらに読む が行われます。
鉄キレート療法は、デフェラシロクスやデフェリプロン(deferiprone)の経口投与や、デフェロキサミンの皮下または静脈内投与によって行われます。ときにデフェラシロクスとデフェリプロン(deferiprone)を併用することもあります。
経口投与する鉄キレート薬は、体内の鉄の量を減らすのに非常に効果的です。経口鉄キレート薬の副作用には、腹痛、下痢、発疹などがあります。この治療では、ときに肝臓や腎臓に障害を与えることがあるため、血液検査を定期的に行い、これらの臓器の機能を継続的にモニタリングします。
鉄キレート療法を目的としたデフェロキサミンの点滴は、通常一晩かけて行われます。副作用には、消化器の不調、低血圧、重度のアレルギー反応(アナフィラキシー)があります。長期に使用すると、ときには聴力低下や視力障害がみられることがあります。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
鉄関連疾患協会(Iron Disorders Institute):鉄の不均衡を引き起こす病気についての情報(これらの疾患とともに生きるための検査やヒントなど)を提供します。