供血方法

執筆者:Ravindra Sarode, MD, The University of Texas Southwestern Medical Center
レビュー/改訂 2022年 2月
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健康な人が、輸血用に少量の血液を献血します。通常は約450ミリリットル(体内の総血液量の約10分の1未満)の献血が行われ、多くの場合、その血液は様々な成分(血液製剤を参照)に分けられ、別々の人に提供されます。

全血(つまり、すべての細胞成分を含む血液)として供血する場合は、全体で約1時間かかります。米国では、供血者は17歳以上(一部の地域では親または後見人の同意のうえで16歳以上)で体重が約50キログラム以上でなければなりません【訳注:日本では献血の量と種類によりますが16~69歳、男性45キログラム以上、女性40キログラム以上】。さらに、健康状態が良好でなければなりません。脈拍、血圧、体温を測定し、採血して赤血球の減少(貧血)がないか調べます。供血者には、健康状態、健康に影響のある事柄、訪れた国などについての質問も行われます。特定の疾患や因子があれば、恒久的に、または一定期間にわたり供血できません。典型的には、供血者にとって献血を危険にする要因や受血者への感染症伝播のリスクをもたらす要因が、不適格な因子とされます。供血を受け入れるか、拒否するかの決断が複雑なことがあります。アメリカ赤十字社では、ウェブサイトで詳細な情報を提供しています(献血の適格基準[Blood Donation Eligibility Requirements]を参照)

知っていますか?

  • 献血が恒久的に不適格となる病気はほとんどありません。

  • 献血が不適格となる病気のほとんどが一時的なものであるため、最初に不適格となったとしても、最終的に供血できる場合がほとんどです。

  • 献血血液は、様々な感染症について検査されるため、その血液を介して感染症が伝染する可能性はほとんどありません。

一般に、供血には56日以上の間隔を空けることになっています。供血者に謝礼を渡す慣行はほとんどなくなりました。それは、この慣行によって貧しい人々がすすんで供血者になろうとし、さらには不適格な状態を隠して献血に来るということもあったためです。

供血に適していると判断されると、リクライニングチェアに座るか、簡易ベッドに横になります。肘の内側の静脈が調べられ、どこから採血するか決定されます。採取する静脈の付近が完全に消毒されてから、針が刺され、一時的に滅菌テープで針が固定されます。通常は針を刺すときにチクッとした痛みを感じますが、あとは痛くありません。血液は針を通って採血バッグに入ります。実際の採血にかかる時間はほんの10分程度ですが、病歴聴取から採血後の短い休憩時間まで含めると、全体で約1時間かかります。

米国における供血量の標準単位は、約450ミリリットルです【訳注:日本では200ミリリットルまたは400ミリリットル】。供血された血液は、保存剤と血液凝固防止剤の入った血液バッグに封入されます。各供血から少量のサンプルを取り、感染性微生物の有無を調べます。

供血された血液の感染検査

供血された血液に感染性の微生物が含まれていると、輸血を介して感染症が伝染するおそれがあります。このため、供血資格は以前より厳しくなり、血液検査も以前より徹底的に行われるようになりました。供血された血液は、ウイルス性肝炎、エイズ、その他の一部のウイルス性疾患(ジカウイルスウエストナイルウイルスなど)、シャーガス病梅毒などを引き起こす微生物による感染がないか、必ず検査されます。

後天性免疫不全症候群(エイズ)

米国では、供血された血液は、エイズを起こすヒト免疫不全ウイルス(HIV)の有無についても検査されます。HIVに感染してから数週間は検査結果が陽性とならないことから、この検査は100%正確とはいえません。しかし、エイズが疑われる供血者にはスクリーニングの一環として問診が行われます。この問診では、エイズの危険因子に関すること、例えば、エイズが疑われる供血者かそのセックスパートナーに麻薬注射の経験がないか、男性同性愛者と性的関係をもったことがないかなどが尋ねられます。このような血液検査とスクリーニング問診が行われるため、米国では輸血を介してHIV感染が発生するリスクは極めて低くなり、最近の推定値によれば150万~200万件に1件の割合です。

ウイルス性肝炎

供血された血液は、輸血で感染を起こす型のウイルス性肝炎(B型とC型)を引き起こすウイルスについて検査されます。

これらの検査で、感染している血液を必ず識別できるわけではありませんが、検査法や供血者のスクリーニングがより厳格になったことで、C型肝炎の感染リスクはほとんどなくなりました。米国では現在、2,000,000単位の輸血で1件未満の感染例がみられるくらいのリスクしかありません。

B型肝炎はいまだに輸血による感染の可能性が最も高く、米国では1,000,000単位の輸血で約1件の感染例がみられる程度のリスクがあります。

梅毒

輸血で梅毒が伝染することはめったにありません。供血者のスクリーニングと梅毒の原因微生物についての血液の検査だけでなく、供血された血液を低温保存することで病原体を死滅させる対策もとられています。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  1. AABB:血液と生物学的治療推進のための協会:供血者と患者のための情報(AABB: Association for the Advancement of Blood and Biotherapies: Information for Donors and Patients):献血の安全性と処置について患者と供血者に情報を提供し、よくある質問に回答しています。

  2. 米国赤十字社の献血の適格基準(American Red Cross Eligibility Criteria):献血および血液製剤の提供資格に関する情報を提供しています。

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