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自律神経性ニューロパチー

執筆者:

Phillip Low

, MD, College of Medicine, Mayo Clinic

レビュー/改訂 2021年 9月
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自律神経性ニューロパチーは、自律神経(自律的に[意識的な努力を必要とせずに]体内プロセスを調節している末梢神経)が侵される病気です。

  • 原因には、糖尿病、アミロイドーシス、自己免疫疾患、がん、過度の飲酒、特定の薬剤などがあります。

  • 立ち上がったときにふらつきを覚えたり、排尿障害、便秘、嘔吐などをきたしたりします。男性では勃起障害が生じることもあります。

  • 医師は身体診察と様々な検査を行い、自律神経の機能不全とその原因がないか確認します。

  • 可能であれば原因を是正または治療します。

自律神経性ニューロパチーの原因

自律神経性ニューロパチーの一般的な原因としては以下のものがあります。

ウイルス感染症が引き金となって、 自己免疫反応 自己免疫疾患 が生じ、自律神経が破壊されることもあります。

免疫系によって作られる抗体の中には、神経線維の表面を攻撃したり、神経線維を覆い信号が速く正確に伝わることを可能にしている組織を攻撃したりするものがあります。(この組織は 髄鞘 神経 と呼ばれます。)

ときに、免疫系によって作られた抗体がアセチルコリン受容体(アセチルコリンへの反応を可能にする神経細胞の一部)を攻撃することもあります。アセチルコリンは、自律神経系における情報伝達に用いられる化学伝達物質(神経伝達物質)の一種です。

自律神経性ニューロパチーのその他の原因としては、がん、薬物、過度の飲酒、毒性物質などがあります。

自律神経性ニューロパチーの症状

自律神経性ニューロパチーの一般的な症状は以下のものです。

結果として、ふらつきや失神しそうな感覚を覚えます。

男性では、勃起の開始や維持が困難になることがあります(勃起障害 勃起障害(ED) 勃起障害(ED)とは、性交を行うのに十分な勃起を達成または持続できないことです。 ( 男性の性機能障害の概要も参照のこと。) どんな男性でもときに勃起に至らない問題を抱えることがあり、そのような問題の発生は正常なことと考えられています。勃起障害(ED)は男性が次のような場合に起こります。 一切勃起できない 繰り返し短時間は勃起するが、性交に十分な時間ではない さらに読む )。意図せず尿が漏れることもあり(尿失禁 成人の尿失禁 尿失禁とは、自分では意図せずに尿が漏れることです。 尿失禁は、男女とも年齢を問わず起きる可能性がありますが、女性と高齢者でより多くみられ、高齢女性の約30%、高齢男性の約15%が尿失禁を起こしています。尿失禁は高齢者でより多くみられるものの、加齢に伴う正常な変化の一部ではありません。尿失禁は、利尿効果のある薬を服用した場合のように突然で一時的なこともあれば、長期にわたって持続すること(慢性)もあります。慢性の尿失禁であっても、ときに軽減... さらに読む 成人の尿失禁 )、多くは膀胱の活動が過剰になることが原因で起こります。逆に膀胱の活動が弱まって、排尿が困難になる場合もあります(尿閉 尿閉 尿閉とは、膀胱から尿をまったくまたはほとんど排出できなくなった状態のことです。 排尿後に膀胱内に残尿がみられる人では、同時に頻尿や尿失禁がみられる場合があります。 排尿が可能な場合は、排尿後に膀胱に残った尿の量を測定します。 カテーテルを用いて膀胱内の尿を除去した後、原因に対する治療を行います。 ( 排尿のコントロールも参照のこと。) さらに読む )。胃から内容物が送り出されるペースが遅くなるため(胃不全麻痺)、食事をしてもすぐに満腹感を覚えることがあり、嘔吐することさえあります。重度の 便秘 便秘 便秘は、排便しにくい、排便回数が少ない、便が硬い、または排便後に直腸が完全に空になっていない感覚(残便感)がある状態です。( 小児の便秘も参照のこと。) 便秘には急性のものと慢性のものがあります。急性便秘は突然起こり、はっきりと現れます。慢性便秘は、徐々に始まり数カ月ないし数年間持続することがあります。 毎日排便しなければ便秘だと思う人はたくさんいます。しかし、誰にとっても毎日排便があることが正常というわけではありません。1日1~3回の... さらに読む になることもあります。

体性神経にも損傷が起こった場合は、感覚が消失したり、手足にピリピリした感覚(刺すような痛み)が生じたり、筋力が低下したりすることがあります。

自律神経性ニューロパチーの診断

  • 医師による評価

  • ときに血液検査

症状から自律神経系の病気が疑われることがあります。 身体診察と特定の検査 診断 自律神経系は、血圧や呼吸数など、体内の特定のプロセスを調節している神経系です。意識的な努力を必要とせず、自動的(自律的)に機能するのが特徴です。 自律神経系の病気は、体のあらゆる部分とあらゆるプロセスに影響を及ぼす可能性があります。また、自律神経系の病気には、可逆性のものと進行性のものがあります。... さらに読む 診断 を行い、自律神経系の病気の徴候や原因(糖尿病 糖尿病 糖尿病は、体がインスリンを十分に生産しないかインスリンに正常に反応しないため、血中の糖分の濃度(血糖値)が異常に高くなる病気です。 排尿が増加し、のどが渇くほか、減量しようとしていなくても体重が減少することがあります。 糖尿病は神経の損傷をもたらし、触覚の問題を引き起こします。... さらに読む アミロイドーシス アミロイドーシス アミロイドーシスは、異常に折りたたまれたタンパク質がアミロイド線維を形成し、様々な組織や器官に蓄積して臓器が正常に機能しなくなり、臓器不全や死に至ることもあるまれな病気です。 アミロイドーシスの症状と重症度は、どの重要臓器が影響を受けるかによって異なります。 組織サンプル(生検サンプル)を採取し、顕微鏡で検査することにより、診断を確定しま... さらに読む アミロイドーシス など)がないか確認します。

ときに血液検査を行い、自己免疫反応の指標となる、アセチルコリン受容体に対する抗体の有無を確認します。自己免疫反応による自律神経性ニューロパチーの患者の約半数で、この抗体が認められます。

自律神経性ニューロパチーの治療

  • 原因が特定された場合は、それに対する治療

  • ときに免疫抑制薬

  • 重度の症状に対し、ときに免疫グロブリン製剤または血漿交換

自律神経系の病気の原因が特定されれば、それに対する治療を行います。自己免疫反応による神経障害は、免疫系を抑制して免疫反応を弱める薬剤(免疫抑制薬)によって治療されることがあります。そのような薬としては、アザチオプリン、シクロホスファミド、プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)などがあります。

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