遺伝性けい性対麻痺

執筆者:Michael Rubin, MDCM, New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center
レビュー/改訂 2021年 6月
プロフェッショナル版を見る

遺伝性(家族性)けい性対麻痺は、けい縮を伴う筋力低下(けい性麻痺)が脚に徐々に起こるまれな一群の遺伝性疾患です。

  • 遺伝性けい性対麻痺の患者では、過剰な反射、けいれん、けい縮が起こり、歩行が困難になります。

  • 医師は同じ病気をもつ家族がほかにいないか調べ、同様の症状がみられる他の病気の可能性を否定します。遺伝子検査を行うこともあります。

  • 治療法としては、理学療法、運動、けい縮を軽減する薬の使用などがあります。

脊髄の病気の概要も参照のこと。)

遺伝性けい性対麻痺は、男女ともに、どの年齢層にも起こりえます。約10万人に1~10人の割合で発生します。

この病気には多くの型があり、様々な遺伝子異常から生じます。いずれの病型でも、脳から脊髄(そして筋肉)へ信号を伝える神経線維の変性が起こります。

脊髄の複数の領域が侵されることがあります。

症状

遺伝性けい性対麻痺の症状は、1歳から高齢までのあらゆる年齢で始まることがあり、病気の型によって異なります。

反射が亢進し、脚の筋肉のけいれん、ひきつり、けい縮が起こり、脚の動きがこわばってぎこちなくなります(けい性歩行)。徐々に歩行が困難になります。内股になりつま先で歩く傾向があるため、つまずいたり、よろめいたりしやすくなります。足の親指のところで靴がすりへることがしばしばあります。疲労もよくみられます。人によっては、腕の筋肉にも筋力低下が起こり、こわばりが生じます。通常、感覚と膀胱や腸管の機能は影響を受けません。

通常は症状の悪化がゆっくり続きますが、ときに青年期を過ぎて横ばい状態になることもあります。余命が短くなることはありません。

遺伝性けい性対麻痺の多くの病型は、脊髄以外の部位も損傷します。これらの病型は、眼の異常、筋肉を制御できない、難聴、知的障害、認知症、末梢神経疾患などの他の問題を引き起こすことがあります。

診断

  • 同様の症状を引き起こす他の病気の可能性を否定する

  • 家族内でこの病気をもつ人を特定する

  • ときに遺伝子検査

遺伝性けい性対麻痺を診断するためには、同様の症状がみられる多発性硬化症脊髄圧迫など他の病気の可能性を否定し、遺伝性けい性対麻痺の家族歴がないかを調べます。

病気を引き起こす遺伝子を調べる血液検査(遺伝子検査)が行われることもあります。

治療

  • 理学療法と運動

  • けい縮を軽減する薬

遺伝性けい性対麻痺の治療は、すべての病型で症状の緩和に重点が置かれます。

理学療法と運動は、運動機能と筋力の維持、関節可動域と持久力の改善、疲労の軽減、けいれんとけい縮の予防に役立ちます。

バクロフェン(筋弛緩薬)は、けい縮を軽減する上で最初に選択される薬剤です。代わりにボツリヌス毒素(しわの治療や筋肉を麻痺させるために使用される細菌毒素)、クロナゼパム、ダントロレン、ジアゼパム、またはチザニジンが使用されることもあります。

人によっては副子、ステッキ、または松葉杖が助けになります。少数の人では車いすが必要になります。

quizzes_lightbulb_red
医学知識をチェックTake a Quiz!
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS