酸素と二酸化炭素の交換

執筆者:Rebecca Dezube, MD, MHS, Johns Hopkins University
レビュー/改訂 2023年 1月
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    呼吸器系の最も基本的な機能は、酸素を取り込み、二酸化炭素を排出することです。吸い込まれた酸素は肺へ入り、肺胞に達します。肺胞の内面を覆う細胞の層とそれを取り巻く毛細血管は、それぞれ細胞1個分の厚みしかなく、互いに密接しています。空気と血液を隔てるこの距離は、平均すると約1マイクロメートル(1センチメートルの1/10,000)の厚さしかありません。そのため、酸素はこの空気-血液障壁をすぐに通り抜け、毛細血管の血液の中へ入ります。同様にして、血液中の二酸化炭素は肺胞へ入り、体外へと吐き出されます。

    酸素を含んだ血液は肺から肺静脈を通って心臓の左側部分へ送られ、全身へと送り出されます(心臓の機能を参照)。酸素を失い、二酸化炭素を多く含んだ血液は、上大静脈と下大静脈という2本の太い静脈を通って心臓の右側部分に戻ります。その後、この血液は肺動脈を通って肺へと送られ、肺で酸素を受け取り、二酸化炭素を放出します。

    安静にしているときでも、酸素の取り込みと二酸化炭素の排出を維持するために、毎分5~8リットル程度の空気が肺を出入りしており、毎分約0.3リットルの酸素が肺胞から血液中に送られます。同時に、ほぼ同量の二酸化炭素が血液中から肺胞へ運ばれ、体外へと吐き出されます。運動中は、毎分100リットルを超える空気を呼吸して、そこから毎分3リットルの酸素を取り込むこともできます。酸素が体内で使用される速度は、体がエネルギーを消費する速度の1つの指標となります。息を吸ったり吐いたりできるのは呼吸筋の働きによります。

    肺胞はいほうくう毛細血管もうさいけっかんあいだでのガス交換こうかん

    呼吸器系こきゅうきけい機能きのうは、酸素さんそ酸化炭素さんかたんそという2種類しゅるい気体きたい移動いどうさせることです。気体きたい移動いどうは、はいにある数百万すうひゃくまん肺胞はいほうとそれらをかこ毛細血管もうさいけっかんあいだおこなわれます。しめすように、まれた酸素さんそ肺胞はいほうから毛細血管もうさいけっかんない移動いどうし、酸化炭素さんかたんそ毛細血管もうさいけっかんから肺胞内はいほうない空気中くうきちゅうへと移動いどうします。

    肺を流れる血液中に外気から酸素を取り込むには、呼吸、拡散、灌流という3つの過程が欠かせません。

    • 呼吸は、空気が肺に出入りする過程のことです。

    • 拡散は、体がエネルギーを使ったり努力したりすることなく、肺胞と肺の毛細血管との間で自然に起こっている気体の移動のことです。

    • 灌流は、心血管系が肺全体へ血液を送り出す働きをいいます。

    このような体内における循環は、酸素を含む大気と、酸素を消費する体内の細胞とを結びつけるために欠かせない働きです。例えば、全身の筋肉細胞に酸素を行きわたらせるには、肺だけではなく、酸素を運ぶ血液の働きや、その血液を筋肉に運ぶ循環器系の能力が欠かせません。さらに、心臓から送り出された血液の一部が気管支動脈に入り、気道に栄養を供給します。

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