大気汚染に関連する病気は 環境性肺疾患 環境性肺疾患の概要 環境性肺疾患は、有害な粒子、霧、蒸気、ガスなどを吸い込むことによって発生する病気で、通常は作業中に起こります。肺疾患が粒子を吸い込んだことに起因する場合は、塵肺(じんぱい)症という病名がよく用いられます。 吸い込んだ物質が気道や肺の中に達する範囲と引き起こす肺疾患のタイプは、吸い込んだ粒子の大きさや種類によって異なります。粒子が大きければ... さらに読む とみなされます。(環境性肺疾患の概要 環境性肺疾患の概要 環境性肺疾患は、有害な粒子、霧、蒸気、ガスなどを吸い込むことによって発生する病気で、通常は作業中に起こります。肺疾患が粒子を吸い込んだことに起因する場合は、塵肺(じんぱい)症という病名がよく用いられます。 吸い込んだ物質が気道や肺の中に達する範囲と引き起こす肺疾患のタイプは、吸い込んだ粒子の大きさや種類によって異なります。粒子が大きければ... さらに読む も参照のこと。)
先進国における主な大気汚染物質には、以下のものがあります。
二酸化窒素(石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料の燃焼による)
オゾン(日光が二酸化窒素や炭化水素へ与える影響による)
固体または液体の浮遊粒子
発展途上国では、バイオマス燃料(木材、動物の排泄物、作物)を燃やすことが、屋内の粒子状物質の重要な発生源です。また、タバコの副流煙も、屋内の空気の汚染の重要な発生源です。
喘息 喘息 喘息は、気道が何らかの刺激に反応して狭くなる(通常は可逆性)病態です。 症状としては、特定の誘因に反応して生じる、せき、喘鳴(ぜんめい)、息切れなどが最もよくみられます。 医師は、呼吸の検査(肺機能検査)を行って喘息の診断を確定します。 喘息発作を防ぐためには、誘因となる物質を吸い込まないようにするとともに、気道の開口を保つ薬を服用する必... さらに読む または 慢性閉塞性肺疾患 慢性閉塞性肺疾患(COPD) 慢性閉塞性肺疾患は、気道が狭くなる状態(閉塞)が持続する病気で、肺気腫や慢性閉塞性気管支炎、またはその両方に伴って発生します。 この病気の原因として最も重要なのは、紙巻タバコの喫煙です。 この病気になると、せきが出て、やがて息切れが現れます。 診断は、胸部X線検査と肺機能検査によって下されます。... さらに読む (COPD)の患者では、空気が高度に汚染されていると、発作(増悪)が誘発されることがあります。大気汚染に関連する肺疾患があると、心臓と血管の病気にかかるリスクが高まり、肺がんのリスクも高まります。また、交通量が多い地域に暮らしている人は、特にリスクが高くなります。
ほとんどの大気汚染物質が、気道の筋肉を収縮させ、気道狭窄の原因となります(気道過敏性)。
一般の人の中でも、特に小児は、大気汚染物質に長期間さらされると、呼吸器感染症にかかりやすくなり、呼吸器疾患の症状(せきや呼吸困難など)が増え、肺機能が低下します。
オゾンはスモッグの主成分で、肺にとっては強力な刺激物です。オゾン濃度は、夏場に高くなる傾向があり、1日の時間帯では昼前と昼過ぎに比較的高くなります。オゾンに短期間さらされただけでも、呼吸困難、胸痛、気道過敏性などが生じることがあります。オゾンの濃度が高い日に、屋外の活動に参加している小児は、喘息を発症する可能性が高くなります。長期にわたってオゾンにさらされると、わずかながら肺機能が恒久的に低下します。
硫黄分が多い化石燃料を燃焼させると、上気道内に蓄積しやすい酸性の粒子が生成されます。このような粒子は硫黄酸化物と呼ばれ、気道が炎症を起こして収縮する原因となり、呼吸困難などの症状を引き起こし、慢性気管支炎(気管支や太い気道の炎症)のリスクを高めます。
化石燃料(特にディーゼル燃料)の燃焼によって生じる粒子状の大気汚染物質は、複数の成分の混合物です。このような粒子は、気道に炎症を引き起こしたり、心臓などの他の器官に損傷を与える可能性があります。一部の研究データによると、粒子状の大気汚染物質は、あらゆる原因による死亡率(特に心臓や肺の病気による死亡率)を増加させることが示唆されています。
粒子がどんな物質からつくられているかによって、肺への影響は異なります。同じ物質から成る粒子でも、その大きさや形状によって影響が異なることがあります。ナノテクノロジー産業では、多様な用途に向けて、カーボンなどの様々な物質から極めて小さい粒子がつくり出されています。大きさが100ナノメーターより小さいものはナノ粒子や超微粒子と呼ばれます。比較のため例として、人の髪の毛の直径は約100,000ナノメーターであり、ナノ粒子1000個分が、1本の髪の毛の太さと同じになります。動物実験や研究室の実験で、高密度のナノ粒子や超微粒子は危険でありうることが証明されています。誤って非常に大量のナノ粒子にさらされた労働者の中には、肺の周りに液体がたまったり、肺の細い気道が傷害されたりした人もいます。しかし、ナノテクノロジー産業の労働者が取り扱っているナノ粒子の量や種類が人体に与える影響について、明確な知識がある医師はいません。ナノ粒子によるリスクを評価し、労働者を確実に保護することを目的とした研究が、現在行われています。
空気中の汚染物質の濃度は、場所や条件によって異なります。例えば、オゾンは温かく湿度の高い日に空気中に残りやすく、特に午後と夕刻の早い時間に濃度が高まります。一酸化炭素の濃度は、通勤による車の数が増えるときに高まる傾向にあります。空気質指数(Air Quality Index)は、特定の時点で空気がどの程度汚染されているかを示すのに用いられます。この空気質指数は、汚染度が高い日に屋外での活動をどうするかを決める指標として用いることができ、心臓または肺の病気がある人には特に有用です。
大気汚染関連疾患の診断
曝露歴
肺機能検査
医師が診断を下す際は、曝露歴、症状、 肺機能検査 肺機能検査 肺機能検査では、肺にためることができる空気の量、肺から空気を出し入れする能力、肺に酸素を取り込む能力を測定します。 肺機能検査は、肺疾患の具体的な原因を突き止めるというより、一般的なタイプや重症度を調べるのに適していますが、 喘息や 慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの特定の病気を診断するために使用されることもあります。 ( 肺疾患に関する病歴聴取と身体診察および 呼吸器系も参照のこと。)... さらに読む 、職場や家庭で空気中の既知の汚染物質に高濃度でさらされたかどうかを参考にします。喘息やCOPDなどの肺の病気のある患者には、大気汚染物質への曝露によってこれらの病気の症状が悪化したかどうかも尋ねられます。
検査を行っても、大気汚染関連疾患とその他の肺疾患の識別にはあまり役立たないことが多くあります。同じ職場で、同様の曝露を被る労働者の多くが、同じ肺疾患を発症すれば、診断が明らかになることがあり、突然大量の曝露が起こったときなどは特に参考になります。
大気汚染関連疾患の予防
大気汚染物質にさらされる可能性がある労働者は、空気によって運ばれるガス、粉塵、煙霧への曝露を制限する主要官庁発行の推奨策を遵守すべきです。小児や高齢者のほか、喘息、COPD、その他の肺疾患がある患者は、汚染物質の濃度が高いときに屋外で運動をするのを避けるべきです。
大気汚染関連疾患の治療
症状に対する治療
治療は症状の緩和に向けて行われます。例えば、 喘息を治療する薬剤 喘息の予防薬と治療薬 ほとんどの喘息患者は薬剤を服用することで、比較的普通の生活を送ることができます。喘息発作の治療に使用される薬剤のほとんどが、発作の予防にも使用できます(しばしば用量を減らして使用されます)。( 喘息も参照のこと。) 治療は、次の2種類の薬剤を基本にして行われます。 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID) 気管支拡張薬 抗炎症薬は、気道が狭くなる原因である炎症を和らげます。抗炎症薬には、コルチコステロイド(吸入、内服、静脈内投与が可能)、ロ... さらに読む (気管支を広げるために用いられる気管支拡張薬など)は、一部の症状を緩和します。症状がひどければ、酸素投与または 人工呼吸器 人工呼吸器 人工呼吸器は、肺への空気の出入りを補助するために用いる機械です。 呼吸不全の患者の一部は、人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)による呼吸の補助を必要とします。人工呼吸器によって命が助かることもあります。 人工呼吸器には、多くの使い方があります。通常は、合成樹脂製のチューブを鼻または口から気管に挿入します。人工呼吸器が数日以上必要な場合は、首の前側を小さく切開して(気管切開)、気管に直接チューブを通すこともあります。人工呼... さらに読む が必要になることがあります。