診療記録(カルテ)の取扱い

執筆者:Michael R. Wasserman, MD, California Association of Long Term Care Medicine
レビュー/改訂 2021年 5月
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    電子媒体や紙のファイルで診療所に保管されている自分の診療記録をすぐに入手できないことがあるかもしれません。しかし米国では、実際のファイル自体は医師または医療機関が所有しているものの、各個人が自分の医療情報を「所有」しているとみなされており、これには情報を閲覧する権利、情報のコピーをもっておく権利、エラーの是正を求める権利も含まれます。一般には、明示的な許可なしに自分の診療記録をほかの人がみる権利はありませんが、医療を提供するために必要な場合は例外です(例えば、ケアを行う病院スタッフや医師から相談を受けた専門医は、あなたの診療記録をみるために、都度許可を得る必要はありません)。また、自分の診療記録をほかの人がみることを書面で許可することもできますが、これは家族がケアに関する決定に参加できるようにするうえで重要になるでしょう。裁判所の命令により記録のコピーや要約の提示が求められることもありますが、ある種の法的状況下に限られるため、ほとんどの人は経験することがありません。自分の診療記録を渡してくれるよう求めたり、他の医療従事者にそれを送ってもらうよう求めたりすると、通常は診療所や病院のスタッフが診療記録のコピーを作成するか、診療記録の要約を作成します。たいていの場合、必要なのは診療記録全体ではなく、最も有用な医療情報だけです(記録にはあまり有用でない情報も多数含まれていることがあります)。(医療の最大限の活用に関する序も参照のこと。)

    必要なことを常に把握しておくために、重要な医療情報は個人的に記録しておくとよいでしょう。記憶に頼らないようにしてください。予防接種の記録は小児期の間だけとっておくのが通例ですが、生涯を通じて残しておくとよいでしょう。投薬計画は紙に自分で書き留めるか、誰かに書いてもらうよう頼んで、診療記録と一緒に残しておきます。また、救急医療を受ける場合に備えて、投薬計画のコピーも常に手元に置きましょう。投薬計画に変更があったら書き換えます。検査結果のコピーも、後の参考になるため診療記録とともに保管しておきましょう。重要な検査結果(例えば、X線、心電図、心エコー検査、大腸内視鏡検査)のリストを保管しておくことも非常に役に立つ可能性があります。また、診療記録と一緒に症状を記録した日記をつけるとよいかもしれません。ほとんどの医療情報はコンピュータのソフトウェア、インターネットのプログラム、携帯電話のアプリで記録できますが、ファイルボックスやバインダーを使って保存してもかまいません。さらに、多くの診療所ではセキュアなポータルサイトが提供されており、検査結果、処方せんについての情報、診察の概要などを見ることができます。

    個人的な診療記録に盛り込むべき項目

    • 重大な、または慢性的な医学的問題

    • 現状の投薬計画

    • その他の治療

    • 薬へのアレルギー反応

    • 手術などでの入院(日付、場所、担当医の名前、診断)

    • 臨床検査や他の検査の結果

    • 家族歴

    • 予防接種(日付も)

    • 診療所の受診(日付、理由、検査結果、診断、指示)

    • 支払い状況

    • 事前指示書のコピー

    診療記録のコピーをとっておくと、医療への参加に役立ちます。例えば、医療従事者への説明がよりうまくできるでしょう。

    医師とのコミュニケーションにおけるプライバシーは、秘密保持に関する法律や倫理的原則によって守られます。またこうした法律によって、医師や病院が保管している診療記録の内容も守られます。この法律の1つに、医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)があります。HIPAAでは、医療情報の開示には通常、患者の同意書が必要であると規定しています。待合室では、HIPAAとプライバシー権を承知していることを確認する書面に署名を求められます。この書面には、医療情報を利用したり共有したりする方法も記載されています。またHIPAAは、特定のケースで医療情報を共有することを許可しています。例えば、以下のようなケースです。

    • 治療を連携して行ったり、円滑に進めたりする場合(複数の医療専門家や医療施設が関わっているときに特に重要)

    • 医師、他の医療専門家、病院が医療費の支払いを受ける場合

    このように、支払いを認めるのに必要な情報が健康保険業者で共有される可能性があり、健康保険業者は、保険請求の条件として医療情報を要求することもあります。医療情報の共有には患者の同意も必要で、通常は医療行為の前に確認されます。患者の同意書がない限り、雇用主や企業は医療情報を共有できません。

    診療記録を電子的に記録・保管する医療従事者が増えていますが、そうすることで、同じ患者をケアしている複数の医療専門家が、より簡単に、間違いも少なく患者の情報を共有できる可能性があります。

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