青年の身体的成長および性的成熟

執筆者:Evan G. Graber, DO, Nemours/Alfred I. duPont Hospital for Children
レビュー/改訂 2019年 2月
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青年期(通常は10歳から10代後期または20代初期)に,男児および女児とも成人の身長および体重に達し,思春期を経験する。男児については,性分化,アドレナーキ(adrenarche),および思春期を参照のこと;女児については,思春期を参照のこと。このような変化の起こる時期および速さは様々であり,遺伝と環境の両方の影響を受ける。

2歳以降では,CDCの成長曲線を用いて成長パラメータを記録する(1)。

参考文献

  1. 1.Grummer-Strawn LM, Reinold C, Krebs NF, Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Use of World Health Organization and CDC growth charts for children aged 0–59 months in the United States.MMWR Recomm Rep 10(RR-9):1–15, 2010.Clarification and additional information.MMWR Recomm Rep 59(36): 1184, 2010.

身体的成長

男児の成長スパートは12~17歳の間で起こり,典型的には13~15歳の間にピークがみられ,成長速度がピークに達する年には10cm以上の身長の伸びが予想される。女児の成長スパートは9歳半~13歳半の間に起こり,典型的には11~12歳半にピークがみられ,成長速度がピークに達する年には9cmの身長の伸びがみられることもある(1)。

思春期の発来が遅れた場合,身長の伸びがかなり減速することがある。遅れが病的でなければ,後に青年期の成長スパートによって遅れは取り戻され,遺伝的に決定された身長に達するまで,身長はパーセンタイル線と交差していく。18歳の時点で,男児ではほぼ2.5cmの成長が残っているが,女児では成長の余地は若干少なく,成長の99%が完了している。真性早発思春期の女児(8歳より前の乳房の発達)では,若年で初経を迎えるとともに成長スパートが早期に起こり,成長板が早期に閉じることによって最終的には低身長となる。早発思春期は8歳より前に始まる発達として定義されるが,一部の女児では8歳より前の発達が正常なこともある。

青年期には,全ての器官系および身体全体に大きな成長がもたらされ,女児の乳房や男女の生殖器および体毛に最も明白な変化が現れる。そしてこの過程が正常に進行した場合でさえも,相当程度の情緒的適応が必要である。変化の時期が非典型的である場合,特に身体的発達に遅れがある男子または発達の開始が早い女子においては,さらに多くの精神的ストレスが生じる可能性が高い。成長の遅い小児の場合,大抵は体質性の遅れであり,最終的には遅れは取り戻される。病的原因を除外する為の評価を行い,安心させることが必要である。

全ての青年に対し,栄養,健康,生活習慣に関する指導を行うべきであり,その際にはスポーツ,芸術,社会活動,地域社会への奉仕などの,青年の生活における活動上の役割に特別な注意を払う必要がある。乳児期の終わりから青年期にかけては,タンパク質およびエネルギーの相対所要量(gまたはkcal/kg体重)は徐々に減少していくが( see table 推奨される多量栄養素の食事摂取基準*,米国アカデミー,医学研究所,食品栄養委員会(Food and Nutrition Board, Institute of Medicine of the National Academies)),絶対所要量は増加する。15歳~18歳の男児のタンパク質必要量は0.9g/kg/日で,同年齢の女児では0.8g/kg/日である;つまり,15歳~18歳の男児におけるエネルギーの相対所要量は45.5 kcal/kgで,同年齢の女児では40 kcal/kgである。

身体的成長に関する参考文献

  1. 1.Tanner JM, Davies PS: Clinical longitudinal standards for height and height velocity for North American children.J Pediatr 107(3):317–329, 1985.

性的成熟

性的成熟は一般に男女とも決まった順序で進行する。性的発達の始まる年齢および速度は各人で異なり,遺伝因子および環境因子の影響を受ける。性的成熟の始まる時期は,1世紀前と比較すると今日の方が早いが,これはおそらく栄養,健康状態,および生活条件の改善によるものと考えられる(例えば,平均初経年齢は過去100年の間に約3年低下している)。性的成熟の基礎となる生理学的変化については, chapter on page 男性の生殖内分泌学および in Chapter 女性の生殖内分泌学を参照のこと。

男児の場合,性的変化は陰嚢と精巣の成長で始まり,陰茎の伸長(男児の陰茎成熟に関するタナー段階(I~V)の模式図)ならびに精嚢および前立腺の成長へと続く。次に陰毛が現れる(男児の陰毛発達に関するタナー段階(I~IV)の模式図)。腋毛および顔毛は陰毛の約2年後に現れる。成長スパートは通常,精巣の成長開始から1年後に始まる(思春期―男性の性徴がみられる時期)。最初の射精がある年齢の中央値(米国では12歳半から14歳の間)は心理学的,文化的,および生物学的要因の影響を受ける。最初の射精は,陰茎の成長が加速する時期から約1年後に起こる。女性化乳房は,通常乳房のふくらみという形を取るが,青年期早期の男児によく起こり,通常数年以内に消失する。

男児の陰茎成熟に関するタナー段階(I~V)の模式図

男児の陰毛発達に関するタナー段階(I~IV)の模式図

思春期―男性の性徴がみられる時期

バーは正常範囲を示す。体質の変化の平均値は得られていない。

ほとんどの女児で,乳房のふくらみが性的成熟の目に見える最初の徴候であり,続いてすぐに,成長スパートが始まる。その後まもなく,陰毛および腋毛が出現する。初経は一般に,乳房の発達開始から約2年後,身長の成長速度がピークに達した後で鈍化した頃に起こる。初経を迎える時期には大きな幅があるが,米国では大抵の女児は12歳か13歳で始まる( see figure 思春期―女性の特徴がみられる時期)。乳房の成長段階( see figure 女児の乳房成熟に関するタナー段階(I~V)の模式図)および陰毛の発達段階( see figure 女児の陰毛発達に関するタナー段階(I~V)の模式図)はタナー分類を用いて細かく評価できる。

性的変化の順序が乱されると成長に異常を来すことがあるため,医師は病的原因の存在を考慮すべきである。

女児の乳房成熟に関するタナー段階(I~V)の模式図

From Marshall WA, Tanner JM: Variations in patterns of pubertal changes in girls. Archives of Disease in Childhood 44:291–303, 1969; used with permission.

女児の陰毛発達に関するタナー段階(I~V)の模式図

From Marshall WA, Tanner JM: Variations in patterns of pubertal changes in girls. Archives of Disease in Childhood 44:291–303, 1969; used with permission.

思春期―女性の特徴がみられる時期

バーは正常範囲を示す。

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