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小児における脱水

執筆者:

Michael F. Cellucci

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

レビュー/改訂 2020年 7月
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脱水とは体内水分量が著しく欠乏している状態のことであり,程度は様々であるが電解質も欠乏している状態である。症状および徴候として,口渇,嗜眠,粘膜の乾燥,尿量の減少,および,脱水の程度が進行するにつれて,頻脈,低血圧,ショックなどが現れる。診断は病歴と身体診察に基づく。治療は,経口または静注での水分および電解質補充により行う。

脱水は,依然として世界中の乳幼児における疾患発生および死亡の主要な原因である。脱水は,ある疾患(最も頻度が高いのは 下痢 小児の下痢 下痢とは,小児の正常なパターンから逸脱した頻回の軟便または水様便の排出である。 下痢には,食欲不振,嘔吐,急激な体重減少,腹痛,発熱,または血液の排出が伴うことがある。下痢が重症で持続する場合は脱水の可能性が高い。脱水が認められない場合でも,慢性の下痢によって通常体重は減少するか,または増加しなくなる。... さらに読む )の1つの症状または徴候である。乳児は特に脱水の悪影響を受けやすく,その理由は,ベースラインの水分要求量がより多いこと(代謝率がより高いことに起因),蒸散による喪失がより多いこと(容量に対する体表面積の比が大きいことに起因),および口渇を伝えられない,もしくは水を求められないことである。

病因

脱水の病因は以下の通りである:

  • 水分喪失量の増加

  • 水分摂取量の減少

  • これら両方

水分喪失量が増加する部位で最も多いのは消化管であり, 嘔吐 乳児および小児における悪心・嘔吐 悪心とは嘔吐が今にも起こりそうな感覚で,心拍数増加や唾液分泌亢進などの自律神経系の変化をしばしば伴う。典型的には悪心と嘔吐は続いて起こるが,別々に起こることもある(例,頭蓋内圧亢進により,悪心が先行せず嘔吐が起こりうる)。 嘔吐は不快であり,水分が失われかつ経口による水分補給が制限されるため,脱水を引き起こしうる。... さらに読む 下痢 小児の下痢 下痢とは,小児の正常なパターンから逸脱した頻回の軟便または水様便の排出である。 下痢には,食欲不振,嘔吐,急激な体重減少,腹痛,発熱,または血液の排出が伴うことがある。下痢が重症で持続する場合は脱水の可能性が高い。脱水が認められない場合でも,慢性の下痢によって通常体重は減少するか,または増加しなくなる。... さらに読む ,またはその両方(例, 胃腸炎 胃腸炎 胃腸炎は,胃,小腸,および大腸の粘膜組織に炎症が生じる病態である。大半の症例が感染性胃腸炎であるが,薬剤や化学的毒性物質(例,金属,植物性物質)の摂取後に発生する場合もある。感染は食品,水,またはヒトからヒトの経路を介して成立する。米国では,毎年6人に1人が食中毒にかかると推定されている。症状としては食欲不振,悪心,嘔吐,下痢,腹部不快感... さらに読む )による。その他の喪失源は,腎臓(例, 糖尿病性ケトアシドーシス 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA) 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は糖尿病の急性代謝性合併症で,高血糖,高ケトン血症,および代謝性アシドーシスを特徴とする。高血糖は浸透圧利尿を引き起こし,体液と電解質の有意な減少をもたらす。DKAは主に1型糖尿病で生じる。悪心,嘔吐,および腹痛を引き起こし,脳浮腫,昏睡,および死亡に進展する恐れがある。DKAの診断は,高血糖の存在下で高... さらに読む ),皮膚(例, 大量発汗 多汗症 多汗症とは発汗が過剰になった状態であり,局所性とびまん性があり,原因は多岐にわたる。腋窩,手掌,および足底の発汗については,ストレス,運動,または高温環境による正常な反応である場合が大半である;びまん性の発汗については,通常は特発性であるが,該当する所見がみられる患者においては,悪性腫瘍,感染症,または内分泌疾患も疑うべきである。診断は明... さらに読む 熱傷 熱傷 熱傷とは,熱,放射線,化学物質,または電気の接触によって生じる,皮膚またはその他の組織の損傷である。熱傷は,深度(浅達性[superficial]および深達性[deep]部分層熱傷[partial-thickness]と全層熱傷[full-thickness])および総体表面積に占める割合に基づいて分類される。合併症および関連する問題には... さらに読む 熱傷 ),およびサードスペースへの喪失(例,腸閉塞ないしイレウスが生じた腸管内腔への喪失)である。

病態生理

喪失する水分はどのタイプでも様々な濃度の電解質を含んでいるため,水分喪失は電解質のある程度の喪失を必ず伴う。電解質喪失の正確な量と種類は,原因(例,下痢の場合,著しい量の重炭酸塩が失われるが,嘔吐の場合はそうではない)によって異なる。しかし,水分喪失には常に血漿よりも低濃度のナトリウムが含まれている。そのため,何らかの補液がない場合,血清ナトリウム値は上昇する(高ナトリウム血症)。

高ナトリウム血症 高ナトリウム血症 高ナトリウム血症は,血清ナトリウム濃度が145mEq/L(145mmol/L)を上回る状態と定義される。体内の総ナトリウム量に対して体内総水分量が不足していることを意味し,水分摂取量が水分喪失量よりも少ないことにより引き起こされる。主な症状は口渇である;他の臨床症状は主に神経症状(浸透圧によって水が脳細胞外へ移動することによる)で,錯乱,... さらに読む によって,水は細胞内および間質腔から血管内腔へ移動し,少なくとも一時的に,血管内容量の維持を助ける。低張液(例,真水)を用いた補液では,血清ナトリウム値は正常化することもあるが,低下することもある(低ナトリウム血症)。 低ナトリウム血症 低ナトリウム血症 低ナトリウム血症とは,血清ナトリウム濃度が136mEq/L(136mmol/L)未満に低下することであり,溶質に対する水分の過剰が原因である。一般的な原因としては,利尿薬の使用,下痢,心不全,肝疾患,腎疾患,抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)などがある。特に急性低ナトリウム血症では,臨床症状は主として神経学的なものであり(浸透圧... さらに読む では,血管内容量を犠牲にして血管内腔から間質へある程度の水分の移動が生じる。

症状と徴候

脱水の症状と徴候は欠乏の程度( Professional.see table 脱水の臨床的相関 脱水の臨床的相関 脱水の臨床的相関 )と血清ナトリウム値によって異なる。間質から血管内腔への水の移動のため,水分喪失が同程度の場合,高ナトリウム血症の患児の方が低ナトリウム血症の患児より重症感が強い(例,粘膜乾燥が強く,皮膚が青白く軟らかい)。しかし,血管内腔から水が移動している低ナトリウム血症の患児に比べ,高ナトリウム血症の患児の方が血行動態は良好である(例,頻脈の程度が低く尿量も良好)。低ナトリウム血症を伴う脱水状態の患児は,一見すると軽度の脱水状態のようにしか見えない場合もあるが,ナトリウムの値が正常または高値の患児と比べて,実際には低血圧および心血管虚脱に近づいている。

診断

  • 臨床的評価

一般に,脱水は以下のように定義される:

  • 軽度:血行動態の変化を伴わない(乳児では体重の約5%,青年では約3%)

  • 中等度:頻脈(乳児では体重の約10%,青年では約5~6%)

  • 重度:灌流障害を伴う低血圧(乳児では体重の約15%,青年では約7~9%)

しかし,脱水を評価するために症状と徴候を組み合わせて用いることは,1つの徴候のみの使用より正確な方法である。

急性の脱水を来した患児で脱水の程度を評価する他の方法は体重の変化である;短期間に1日当たり1%を超える体重減少は全例,水分の欠乏を示すものとみなされる。しかしこの方法は,罹病前かつ最近の正確な体重を知っているかどうかに依存する。親による推定値は通常は不適当であり,体重10kgの小児における1kgの誤差は脱水の割合に換算すると10%の誤差となり,これは軽度の脱水と重度の脱水の差に相当する。

臨床検査は通常,電解質異常(例, 高ナトリウム血症 高ナトリウム血症 高ナトリウム血症は,血清ナトリウム濃度が145mEq/L(145mmol/L)を上回る状態と定義される。体内の総ナトリウム量に対して体内総水分量が不足していることを意味し,水分摂取量が水分喪失量よりも少ないことにより引き起こされる。主な症状は口渇である;他の臨床症状は主に神経症状(浸透圧によって水が脳細胞外へ移動することによる)で,錯乱,... さらに読む 低カリウム血症 低カリウム血症 低カリウム血症とは,体内の総カリウム貯蔵量の不足またはカリウムの細胞内への異常な移動によって血清カリウム濃度が3.5mEq/L(3.5mmol/L)未満となった状態である。最も頻度の高い原因は腎臓または消化管からの過剰喪失である。臨床的特徴としては筋力低下や多尿などがあり,重度の低カリウム血症では心臓の興奮性亢進が生じることがある。診断は... さらに読む 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシス 代謝性アシドーシスは重炭酸イオン(HCO3)の一次性の減少で,通常は二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の低下を伴う;pHは著明に低下するか,またはわずかに正常範囲を下回る。代謝性アシドーシスは,血清中の未測定陰イオンの有無に基づいて高アニオンギャップまたはアニオンギャップ正常に分類される。原因には,ケトン体および乳... さらに読む または 代謝性アルカローシス 代謝性アルカローシス 代謝性アルカローシスは重炭酸イオン(HCO3)の一次性の増加で,二酸化炭素分圧(Pco2)の代償性の上昇を伴う場合と伴わない場合とがある;pHは高値またはほぼ正常範囲内である。一般的な原因としては,遷延性の嘔吐,循環血液量減少,利尿薬の使用,低カリウム血症などがある。アルカローシスが持続するためには,腎臓からのHC... さらに読む )の頻度がより高い中等度または重度の患児,および輸液療法が必要な患児でのみ実施される。脱水における臨床検査結果の他の異常値には,血液濃縮による相対的な赤血球増多,血中尿素窒素(BUN)の上昇,尿比重の上昇などがある。

治療

  • 補液(可能であれば経口)

脱水に対する最良の治療アプローチは,以下の項目を個別に考慮することである:

  • 急速輸液での必要量

  • 現在の欠乏量

  • 進行中の喪失の量

  • 維持必要量

容量(例,輸液の量),組成,および補充速度は,それぞれに対して異なる。治療パラメータを決定するために用いる数式と推定値から開始時の数値が得られるが,治療にはバイタルサイン,臨床所見,尿量,および体重のほか,ときに血清電解質レベルの継続的モニタリングが必要となる。

急速輸液

低灌流の徴候を有する患児には,等張液(例,生理食塩水または乳酸リンゲル液)のボーラス投与による急速輸液を行うべきである。血圧および灌流を回復させるために,十分な循環体液量を回復することを目標とする。蘇生段階では,中等度または重度の脱水を体重の約8%の欠乏にまで回復させるべきである。脱水が中等度の場合,20mL/kg(体重の2%)の静注補液を20~30分かけて投与し,10%の欠乏を8%までに減らす。脱水が重度の場合,20mL/kg(体重の6%)のボーラス投与が3回必要になる可能性が高い。急速輸液段階の終了点は,末梢循環および血圧の回復,ならびに心拍数の正常値(発熱がみられない小児の場合)への回復である。

欠乏量の補充

水分総欠乏量は,上述の方法で臨床的に推定される。ナトリウム欠乏量は通常,水分欠乏1L当たり約60mEq(60mmol/L)で,カリウム欠乏量は通常,水分欠乏1L当たり約30mEq(30mmol/L)である。中等度または重度の脱水は,急速輸液段階で体重の約8%の欠乏にまで軽減させておくべきである;この残りの欠乏量は10mL/kg/時(体重の1%/時)の8時間投与によって補充可能である。0.45%食塩水には1L当たり77mEq(77mmol/L)のナトリウムが含まれているため,通常は選択として適切な輸液であり,特に下痢の電解質含量が典型的には50~100mEq/L(50~100mmol/L)であることから下痢の患児に適切である( Professional.see table 原因から推定される電解質欠乏量 原因から推定される電解質欠乏量 原因から推定される電解質欠乏量 );生理食塩水が用いられることもある。カリウムの補充(通常,補液1Lにつき20~40mEq[20~40mmol/L]のカリウムを添加することによる)は,十分な尿量が確立するまでは開始すべきでない。

進行中の喪失

進行中の喪失の量は直接的に測定(例,経鼻胃管,カテーテル,便の測定)するか,または推定(例,下痢便1回につき10mL/kg)する。補充は,喪失の急速さおよび程度に対して適切な時間間隔で,喪失量と同量の補充を行うべきである。進行中の電解質喪失の量は,喪失源または原因によって推定できる( Professional.see table 原因から推定される電解質欠乏量 原因から推定される電解質欠乏量 原因から推定される電解質欠乏量 )。尿を介した電解質の喪失量は,水分摂取量と疾患の経過に伴って変動するが,補充療法を行っても電解質異常が改善しない場合は測定してもよい。

維持必要量

(小児における維持輸液については,米国小児科学会[American Academy of Pediatrics]のclinical practice guidelineも参照のこと。)

基礎代謝による水分および電解質の必要量も考慮に入れなければならない。維持必要量は,代謝率に関連し,体温の影響を受ける。不感蒸泄(皮膚および気道からの蒸発による自由水の喪失)は,維持必要総量の約3分の1を占める(乳児ではこれよりやや多く,青年と成人ではやや少ない)。

用量を正確に決定しなければならない状況はまれであるが,一般的に腎臓が尿を著しく濃縮または希釈せずに済む量の水分投与を目指すべきである。最も一般的な推定法はHolliday-Segar式で,患児の体重を用いて代謝による消費量(kcal/24時間)を算出するが,その値は水分必要量(mL/24時間)にほぼ相当する( Professional.see page 体重毎の維持輸液必要量に対するHolliday-Segar式 体重毎の維持輸液必要量に対するHolliday-Segar式 体重毎の維持輸液必要量に対するHolliday-Segar式 )。より複雑な計算式(例,体表面積を用いるもの)が必要になることはまれである。

維持輸液量は個別に同時注入として投与できるため,欠乏量および進行中の喪失に対する補充注入の速度は,維持注入の速度に依存せずに設定および調節可能である。

基礎代謝推定値は,発熱(37.8℃を超えると1℃につき基礎推定値の12%ずつ増加),低体温,および活動度(例,甲状腺機能亢進またはてんかん重積状態で増加し,昏睡で減少する)から影響を受ける。

維持輸液の組成を計算する従来のアプローチも,Holliday-Segar式に基づくものである:この公式によると,患者は以下の量を必要とする:

  • ナトリウム:3mEq/100kcal/24時間(3mEq/100mL/24時間)

  • カリウム:2mEq/100kcal/24時間(2mEq/100mL/24時間)

(注:2~3mEq/100mLは,20~30mEq/L[20~30mmol/L]に相当する。)

この計算から,維持輸液は0.2~0.3%食塩水とカリウムを20mEq/L(20mmol/L)含有する5%ブドウ糖溶液とすべきことがわかる。その他の電解質(例,マグネシウム,カルシウム)はルーチンに加えない。正常では,血清浸透圧がその時々の抗利尿ホルモン(ADH)の分泌を制御している。ADHの分泌は,浸透圧ではなく血管内容量に対する反応としても起こりうる(浸透圧非依存性のADH分泌)。最近の文献では,入院し維持輸液として0.2%食塩水を投与された脱水の患児で,ときに 低ナトリウム血症 新生児の低ナトリウム血症 低ナトリウム血症は,血清ナトリウム濃度が135mEq/L(135mmol/L)未満の状態である。有意な低ナトリウム血症は痙攣発作または昏睡を引き起こすことがある。治療は,生理食塩水静注による慎重なナトリウム補充である;まれに,特に痙攣が起こっている場合は3%食塩水が必要である。... さらに読む が生じることが示唆されている。これは,血管内容量に関連するADH分泌と,刺激(例,ストレス,嘔吐,脱水,および低血糖)に関連する大量のADH分泌によるものである可能性が高い。ADHは自由水貯留を促進する。医原性低ナトリウム血症は,重篤度の高い小児および手術後入院してストレスがより大きな要因となっている小児にとってより大きな問題となる可能性がある。

この医原性低ナトリウム血症の可能性により,多くの医療センターは現在,脱水の患児の維持輸液として0.45%または0.9%食塩水(生理食塩水)などのより等張に近い輸液を用いている。米国小児科学会(American Academy of Pediatrics)の最新のclinical practice guideline (2018)では,生後28日から18歳までの全患者に対して,適切な塩化カリウムおよびブドウ糖を含む等張液を維持輸液として投与することが推奨されている。この方針の変更には,進行中の喪失を同じ輸液で補うと同時に,維持に必要な量を補充できるため,管理がより簡単になるという利点もある。適切な維持輸液の選択については依然として臨地実戦の幅(practice variation)存在するが,輸液を受けている脱水患者には綿密なモニタリング(血清電解質濃度のモニタリングを含む)を行うことが重要という考えには,全ての臨床医が同意する。

補液の実践例

生後7カ月の乳児が3日間にわたり下痢を起こし,体重が10kgから9kgに減少した。現在は3時間毎に下痢をしており,水分摂取を拒否している。粘膜の乾燥,皮膚ツルゴールの低下,著明な尿量減少,および血圧と毛細血管再充満は正常な頻脈という臨床所見から,10%の水分欠乏が示唆される。直腸温は37℃である。血清中のナトリウムは136mEq/L(136mmol/L),カリウムは4mEq/L(4mmol/L),塩素は104mEq/L(104mmol/L),重炭酸は20mEq/L(20mmol/L)である。

輸液量は,欠乏量,進行中の喪失の量,および維持必要量によって推定する。

体重を1kg減少させる総水分欠乏量は1Lである。

進行中の下痢による喪失は,生じたときに,おむつの重さを使用前と下痢の後に量ることによって測定する。

体重に基づいたHolliday-Segarの式による基準となる維持必要量は,100mL/kg × 10kg = 1000mL/日 = 1000mL/24時または40mL/時である。

ナトリウム値正常の患者の下痢による電解質の喪失量( Professional.see table 原因から推定される電解質欠乏量 原因から推定される電解質欠乏量 原因から推定される電解質欠乏量 )は,推定でナトリウムが80mEqでカリウムが80mEqである。

手技

輸液の選択

従来の補液の計算は,電解質の喪失量を正確に推定し,その特定量を供給できる補液を選択することを目的としている。このプロセスは体液バランスの病態生理の理解に役立つものの,実際には,多くの小児科医療施設で正確な電解質の必要量は計算されなくなっている。その代わりに,急速輸液が必要な場合は単に等張液が使用され,欠乏量の補充,進行中の喪失の補充および維持のためには,5%ブドウ糖液に0.9%または0.45%食塩水を混合した単一の輸液が使用されている。このようなより単純なアプローチで計算ミスの余地を最小限に抑ることができ,単一の輸液ポンプ使用で済ませることができ,しかも同様の臨床転帰が得られるようである。

急速輸液

この患児には,最初に乳酸リンゲル液200mL(20mL/kg × 10kg)のボーラスを30分かけて投与する。これにより,推定されるナトリウム欠乏量80mEqのうち26mEqが補充される。

欠乏量

残りの水分欠乏量は800mL(最初の欠乏量1000mLから急速輸液での200mLを引く)である。残りの量をその後の24時間で投与する。典型的には,半量(400mL)を最初の8時間に投与し(400 ÷ 8 = 50mL/時),残りの半量をその後の16時間で投与する(25mL/時)。

残りのナトリウムの欠乏量は54mEq(80 26 mEq)と推定される。使用される輸液は5%ブドウ糖/0.45%食塩水または5%ブドウ糖/0.9%食塩水(生理食塩水)である。これによりナトリウムの欠乏量(0.45%食塩水を使用する場合,0.8L × ナトリウム77mEq/L[77mmol/L] = ナトリウム62mEq)が補充される;腎機能が正常である限り,0.9%食塩水を使用してナトリウム62mEqを追加することに臨床的意義はない。

尿量が確立されれば,カリウムを20mEq/L(20mmol/L)の濃度で加える(安全上の理由で,カリウム欠乏量の完全な補充を急速には試みない)。

進行中の喪失

5%ブドウ糖/0.45%食塩水(5%ブドウ糖/0.9%食塩水)は,進行中の喪失の補充のためにも用いる;投与量および速度は下痢の量によって決定する。

維持輸液

5%ブドウ糖/生理食塩水を40mL/時の速度で投与し,尿量が確立されればカリウムを20mEq/L(20mmol/L)加える。代替として,最初の8時間で欠乏量を補充し,それに続いて16時間で1日分(すなわち,60mL/時)の維持輸液を行うことも可能である;24時間分の維持輸液を16時間で投与することで,投与時間を計算上通常の1.5倍まで短縮でき,同時の輸注(2つの速度制御ポンプを必要とする)を行わずに済む。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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